死にゆく者への祈り
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[?] ネタバレを表示する
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シンプルでコンパクトなダークヒーロー物でした。作者本人がもっとも好きな自作品であると公言しているらしいです。 | ||||
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20年前に読んだ作品なのに、印象がまったく消えません。 | ||||
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未読の方はご注意ください
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ジャック・ヒギンズ作品を読むのは初めてだったが、久々に物語の世界に浸り続けることが出来る作品だった。原書は1973年発表(邦訳は1982年)とのことで古い作品であるのだが表紙は改刷されたようで 棺の上に置かれたチェスカと薔薇が美しい。(まさにGUNS N’ ROSES) 他のジャック・ヒギンズ作品も表紙を改めてもらいたいものだ。 いまや老舗の組織となってしまったIRAであるが、作品発表当時IRAの活動は活発で、私はU2の1983年作「WAR」 収録の“Sunday Bloody Sunday”で知ることになった。主人公マーチン・ファロンはそのIRAの生き残りだが、今はIRAからも追われる立場に陥ってしまった。切迫する中、パスポートを得るため仕方なく 闇組織のボス、ジャック・ミーアンからの暗殺依頼を引き受けるが、犯行をカトリック教のダコスタ神父とその姪アンナに知られてしまう。何故二人を殺さなかったのかジャックに問われるが、ある方法を使って神父の口封じを行う。マーチンはダコスタ神父とアンナをかばうが、ジャックの手が忍び寄る。 海外文庫は過剰な遠回しなもの言いや 馴染みの薄い比喩が多いため、何を表現しているのかわからない場合があるが本作品は非常に読みやすい。登場人物は少なくストーリーは単純だが、プロットをきちんと立てた前フリがあり、本編と関係なさそうな箇所の詳細が何故描かれているのか 終盤になればそれも判明する。 登場人物に個性がある(≒非現実的)が、著者ジャック・ヒギンズが元軍人で教職についていた影響もあるのだろう、銃器類に詳しく、知性的だ。元S.A.S隊員で、言語学と哲学の博士号2つを持つ勇敢なダコスタ神父、貧困の中から闇組織のボスまでのし上がった“伊達男”ジャック・ミーアン、残虐な組織人でありながらも死人には敬意を示し、芸術的なまでの死化粧を施す。悪役を単なる悪役では終わらせず、人物像に立体感を持たせるための奥行きも忘れていない。 そしてウィリアム・ワーズワースの詩を読み、オルガンとガンシューティングの名手である元IRA中尉 マーチン・ファロン。祖国のため断固たる信念のもと戦ったが理想を失い、自身を「歩く死骸」と表現する。それでも本人は飄々としており、イカれてると言われても「イカれてれば怖いものなしだ」と言い返す。しかし彼の行動はダコスタ神父とアンナの運命まで変えてしまう。オルガンの、ひとつの音栓の狂いがほかの音まで狂わせるように。 怒りに満ちていてもどこか冷静で、機転も利く男が何処で道を間違えてしまったのか マーチン本人すらわからない。後半、ダコスタ神父との会話で彼の苦悩が解き明かされる。「全てを燃焼しくつしても生きるに値するものも、またひとつないということだよ」 - 胸を打つようなセリフがあればこそ、印象に残るし感情移入もしたくなる。 神父の務めは魂を救うこと、はたしてダコスタ神父の祈りはマーチン・ファロンの魂を救えたのだろうか? 罪を流すかのように街にはまた雨が降る。 | ||||
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ヒギンズ独特の男のロマンあふれる世界観を堪能できました。 こういう美意識って普遍的なもんなんですよね | ||||
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発表当時の読まれ方が時を経て変わることはある。 本国では1973年に、邦訳は1982年に出版された本作は2017年の現在 多くの読者にどのように受け止められているのだろう。 翻訳エンタテイメントの読巧者各位や多くのプロ作家が大傑作と認定しているが それらの意見に小さい声で異論を唱えたい。 かつての「大傑作」は 経年によって「大怪作」になってしまったのではないか。 序盤で、ある殺人が描かれる――あっ、 未読の方々の楽しみを奪いたくないから内容に触れないが ノワール小説だから、これくらいは許していただけますよね。 で、この犯行にかかわる人物の造型が序盤と終盤とで まったく異なってしまっていると思うのだ。 この人物は非常に魅力的であり 物語を通して大活躍するけれど あのような動機で殺人を犯した人物が、あのような考え方や行動をするとは思えない。 とはいえ作者の力技でぐいぐいと読ませられてしまう。 この力技がクセモノで 登場人物たち全員が実に魅力的に描かれているのも力技だ。 この作品だけに出演するのはもったいない、 どころか、ちらっと登場しただけで退場してしまうのもいるのだ。 不自然な場面もいっぱいあるぞ。 たとえば、ある人物がある人物を火葬場に案内して 視察させるシーンがあるけれど なんのために案内しているのか。その行動目的がよくわからない。 重要な場面だけに、よく考えるほどに可笑しさが際立つように思えるのだ。 ノーテンキではあるけれど手に汗握るストーリー 類型的だが実に魅力的な登場人物たち。 アキラの渡り鳥シリーズの面白さや哀愁。 こうしたものと共通するものがあるのではないだろうか。 と、いうわけで、面白く読ませてくれた大怪作に星5つだ。 | ||||
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「」を見ていたら本書の装画が掲載されており無性に作品を再読したくなった。 ジャック・ヒギンズはイギリスで生まれているが、母親がアイルランド人で、北アイルランドのベルファストで幼少期を過ごしており、心情的にはアイルランド人で、IRA(アイルランド共和軍, Irish Republican Army)の闘士を主人公とした作品を数多く描いている。 本書は1973年に出版されたが、それはアイルランド統一運動がもりあがった時代であった。 また、アイルランド統一運動に対して、イギリス治安当局は1971年に一斉拘留を行い、1972年には「血の日曜日事件」とよばれる弾圧を行った。 IRAとその独立運動については、日本人には馴染みがあまりないと思われるが、私も、本書に先立ちwikiの解説を読み、YouTubeで歴史チャンネルのドキュメンタリーThe IRA's Secret HistoryとBBCの Northern Ireland Bloody Friday Documentaryを1.5倍速でサラリと見た後に、作品は原書でaudiobookを聞きながら読みはじめた。 あらすじ:天才的な銃の使い手であり、オルガンの名手でもある主人公マーティン・ファロンは元IRAの中尉。IRAの破壊工作中に誤ってスクールバスを爆破したことがきっかけとなり、IRAの大義を信用できなくなり、IRAを抜けた。そのためにIRAからもイギリスからも追われる身になっているが、逃亡用のパスポートと切符を得るために暗黒街の帝王から殺人を請け負ったが、その犯行をカソリックの牧師ダコスタ神父に目撃されてしまう。孤独な男の追い詰められた魂と、キリスト教信仰の問題を、暗黒街の帝王との戦いの中に描いていく。 英文は平易であるが、カソリックの牧師が身につける様々な衣装を表現する言葉には馴染みがなかったが、電子書籍だと、1クリックでgoogle imageを介して、その実物の写真が表示されるので便利。また、作品では音楽が重要な鍵となるが、音楽もその名称から1クリックでYouTubeにいき実際に音を聞くことができ、さらに様々な銃器についてもgoogle image、YouTubeとリンクされて、銃の写真、そして実際の銃器を使用している映像で銃音やその破壊力までも視聴することができて、今回の電子書籍による読書では一つ上の臨場感を楽しむことができた。 このやや暗すぎるといってもいい作品が、筆者の最も愛する作品なのだそうだが、ここでは筆者が心情的に支持するアイルランド人の独立運動と、しかし倫理的には支持できない暴力的な破壊活動の間で、それでも民族の自決という大義のため、このようにしか生きていけなかった多くの男達への鎮魂歌として作品を描いており、アイルランド人の誇りを哀愁を込めて描いた作品である。 一部、翻訳は原文と比較して精読してみたが、格調高い翻訳ではないが、平易に訳されており、無難な翻訳だと感じた。 異論がある人もいると思うが、電子書籍は、インターネットとリンクさせることができて、単に持ち運びが便利であるだけでなく、無限の可能性を秘めていると思う。ジャック・ヒギンズの殆どの作品が、古書でしか購入できなくなっているが、是非、電子書籍として復活させてほしい。 ちなみにIRAに関して言えば1998年には英国政府との間で和平合意が成立し、現在とりあえずテロ活動は終始しているということである。 | ||||
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かの有名な『鷲は舞い降りた』のようなスケールこそないものの、元IRA(アイルランド共和国軍)の天才的ガンマンで主人公のファロンが、警察、IRAからも追われる身となり、英国を脱出するためにパスポートを手に入れることと引き代えに、殺人を請け負う。その依頼人は暗黒街の大物ミーアンである。しかし、暗殺の現場をカトリック司教のダコスタ神父に目撃されてしまう。物語はこの3人をメインとして、ダコスタの盲目の姪、アンナとの切ない恋が絡んでくる....。さて、結末は如何に。 3人の男たちの生き様、変ろうとしても変れない人間の性、哀しさ、そして美しさが登場人物の行動や性格を通じて巧みに描かれており、読後の余韻も深く独特なものがある。もちろん、完成度も高く名作である。『鷲は舞い降りた』をいったん忘れて是非読んでいただきたい。 因みに、ヒギンズ自身が一番お気に入りの作品のようだ。 | ||||
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