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コフィン・ダンサー



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コフィン・ダンサーの評価: 8.80/10点 レビュー 5件。 Sランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.80pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:6人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

メガトン級のどんでん返し!

リンカーン・ライムシリーズ第2作。
当初ディーヴァーはライムを単なるノンシリーズの登場人物として考えていたようだが、あまりにも好評だったため、シリーズ化したと述べている。これが今に至ってディーヴァー人気を決定付けるのだから、全く嬉しい限りだ。

さて今回のライムとアメリアの相手はコフィン・ダンサー。唯一の目撃者の証言からその上腕部に棺の前で女と踊る死神の刺青―表紙絵はそのイメージを捉えるのに大変助かった―があったことがわかり、それ以来通り名として呼ばれている。

前作と違うのは今回はあらかじめ敵の素性が誰なのか示されている点だ。匿名の誰かではなく、スティーヴン・ケイルという固有名詞を持った人物がターゲットを狙う様子が同時進行的に描かれる。

しかしだからといって油断してはいけない。何しろ作者はあのジェフリー・ディーヴァーだからだ。どこにどんなサプライズが潜んでいるか解らない。

特に冒頭のシーンには驚いた。
作品のイントロダクションとしてダンサーの最初の犠牲者が現れるが、この導入部のミスディレクションの冴えは久々にいきなり頭をガツンとやられるほどの不意打ちを食らった。最初の1章で既に私はディーヴァーの術中に嵌ってしまった。

また前作『ボーン・コレクター』の事件から1年半以上経ち、アメリアとライムの関係はもはや前作よりも深まっている。それは師弟関係としてもそうだが、お互いに恋愛感情を抱くまでになっている。

それがライムの葛藤を生み出す。四肢麻痺で現場に出られない自分の代わりに手足となって現場捜査をする存在であるアメリア・サックス。しかし現場の最前線に出ることは生命の危険度も増すことになる。従ってライムは大切な存在になりつつあるアメリアを危険な現場に晒すことを拒むようになる。

通常ならば相棒との信頼関係が深まることで、危険な現場ではお互いがお互いを守ろうとバックアップしあう姿勢が生まれるが、このライムという身動きの取れない人間だからこそパートナーに対する信頼と愛情が芽生えるにつれ、現場に送ることへの危惧と期待のジレンマに陥るというのは実に巧妙なプロットだ。

しかしこのライムの心境については作者はさらに巧妙な仕掛けを施している(かつての恋人クレア・トリリングはライムの指示で現場に向かい、ダンサーが仕掛けた爆弾によってこの世を去ってしまった)。なんとも細部に至るまで抜かりのない作品だ。

そして前作ではやたらと目に付いたライムの自殺願望は今回全く見られない。しかしそれは不自然とは思えない。なぜなら前述したとおり、前作から1年半経っており、彼はアメリアと一緒に仕事することで生き甲斐を見つけ、また技術の進歩から機械を介して照明を点けたり、CDをかけたり、電話を掛けたり、移動したりと健常者と変わらぬ生活をすることが出来るようになったからだ。
しかし今回はそれが逆に仇になる。音声で反応する機械は発生する側が冷静でないとなかなか認識しないのだ。それがゆえに詰まらぬミスで警察官を三名殺させてしまう。つまり自殺願望の鬱状態から新たに身障者が抱く錯覚がライムにとって一つネックになっている。

そして今回も詳述を極めた色んな専門的知識がふんだんに盛り込まれている。

まずは爆破犯に関する知識。概ね爆破犯は一つのテクニックを学ぶとそれを繰り返し使うことが多いとの事。つまり爆弾の種類、手法こそが爆破犯を限定する指紋の役割を果たすことになる。

また現場の血痕の形で犯人の意図や被害者の状況が判ったりもするし、指紋は同一人物の指紋であっても他の箇所から採取された指紋を繋ぎ合わせては証拠としては扱えないことも勉強になるし(アメリカだけの話かもしれないが)、映像解析をするならばJPEGファイルでは解像度が落ちるのでビットマップファイルで保存した方がいい、などとここまで細かい知識が開陳される。

しかし何といってもディーヴァーのその専門的知識が大いに活かされたのは物語の終盤にパーシーが航空機内に仕掛けられた爆弾との格闘の一部始終だ。
正に手に汗握るエンタテインメント。もうこれを読むと生半可な知識で書かれた航空パニック小説は読めなくなるなぁ。

特にこのシーンで重要な鍵となるのがライムの部屋の窓に巣食うハヤブサだ。このハヤブサは1作目から登場している小道具だが、本書では保護者の対象が飛行機業界の人間ということもあるのか、このハヤブサの物語に果たす役割が大きくなっている。
まさか1作目での心理描写用の小道具だと思っていたハヤブサがここまで物語に寄与するとは思わなかった。これぞディーヴァーの構成力の素晴らしさだろう。

そして素晴らしさといえば忘れていけないのはキャラクター造形だ
。2作目にしてますますライム、アメリア、ロン・セリットー、アル・クーパー、そして忘れてならない介護士のトムらのチームワークは団結力を増し、さらに前作では敵役でもあったFBI捜査官のフレッド・デルレイがチームにとって無くてはならない存在までになっている。

彼らに加えて新キャラクターの証人保護システム専門の刑事ローランド・ベル。温厚な性格ながら常に周囲に細心の注意を配り、保護者を守るためには自分の命を投げ出すことも厭わないプロフェッショナル。
また保護される側のパーシー・レイチェル・クレイも忘れがたい。決して美人でもなく、身長も低いがそのコンプレックスが原動力となって全ての航空機の操縦が出来、さらには整備も出来るパイロットの中のパイロット。彼の仕事に対する姿勢にライムは彼に通じるプロ意識を感じ、なんとライムでさえ説き伏せるほどの意志の強さを備える。

そして悪役コフィン・ダンサー。かつてライムが仕留め損ねた凄腕の殺し屋。爆破犯のセオリーを覆し、その都度新しい爆弾を作って殺しを遂行し、耳の形をいじったり、整形したり、傷痕を増やしたり、体重も増減させ、指紋さえも変えるという超人的な暗殺者。
わざと現場に証拠を残してライムに敢えて勝負を挑んだ前作の相手ボーン・コレクターとは違い、ダンサーは殺しの痕跡を残さずに現場を後にする。その中で残された僅かな証拠を採取し、知識と推理力を総動員して立ち向かうスティーヴン・ケイルとライムの応酬は敵の裏の裏を掻く“動”のチェスゲームの如き精緻さを極める。
いやあ本当にページを繰る手が止まらなかった。このダンサー対ライムの姿を描いた本書を読んでいる最中、大沢在昌氏の新宿鮫シリーズの第2作『毒猿』が頭をしばしば過ぎった。

また余談になるが『ボーン・コレクター』のウェブ上で挙げられた感想を読むと、ほとんどの人がリンカーン・ライム=デンゼル・ワシントンと脳内変換していたと書いてあったが、私は実はそうは思わなかった。もちろんこれは映画の影響によるのだが、作中の描写を読むと端正な顔立ちをした髪の長い髭を生やした白人という描写があったので、私は映画『7月4日に生まれて』で主演した時のトム・クルーズを擬えていた。本書で正にトム・クルーズのようなという一節を読んで我が意を得た気がした。

当初は作者は映画化されるときに、ライム役をクリストファー・リーヴを希望したという話をどこかで読んだ気がするが、リーヴに関しても本書では触れられているので映画化に対する不満やしこりがやはりあったのだろう。
これほどエンタテインメントに徹しながらも1作目以降映画化されていないのは不評だったのか、それとも作者の意向なのか判らないが、私見を云わせてもらえば、その理由の一端が本書の行間から見えたような気がした。

冒頭に書いたようにやはりディーヴァーはサプライズを仕掛けていた。しかもかなりメガトン級だ。
久々に地球がひっくり返るような錯覚を覚えたぞ!
しかもその明かし方は前作よりもさらに磨きが掛かっている。

いやはや参りました、ディーヴァー殿。
さて次はどんなサプライズを、エンタテインメントを提供してくれるのか、非常に愉しみだ。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.2:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)
【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[]  ネタバレを表示する

冒頭から引き込まれる


▼以下、ネタバレ感想

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松千代
5ZZMYCZT
No.1:5人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

ディ-ヴァ-の最高傑作か?

リンカ-ンライムシリ-ズの2弾目。
1弾目のボ-ンコレクタ-とはおもむきが変わって初めは多少違和感を感じる。
それは、ボ-ンコレクタ-が連続殺人犯を微小な証拠を集め科学捜査で犯人を追い詰めていく話だったのに対して、2弾目のコフィンダンサ-は暗殺者から事件証言者を守ることと暗殺者のコフィンダンサ-を捕まえる話なので、展開が弱いかなって思ったけど、はい、大間違いでした。

暗殺者と主人公ライムの裏の裏まで読んで手を打つその計算高さ、緻密さの頭脳戦をここまで表現出来るのは他に類を見ないし、これほどの緊張感と興奮は言葉では言い表せないほどすばらしい。

また、傭兵のケイルがすばらしすぎる。その徹底したスナイパ-ぶりや内に秘めた上官でもある亡き父親との会話も、心情の変化もキャラが立ちすぎている。

前作同様に、展開が速くあっという間で、既に満足という次元でも更に最後にこれでもかっていう驚きのどんでん返しがあって、もう世界最高峰と言っていいでしょう。

タカタソン
HU0OGV5Q

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