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悪魔の羽根



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【この小説が収録されている参考書籍】
悪魔の羽根 (創元推理文庫)

悪魔の羽根の評価: 9.00/10点 レビュー 1件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点9.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

強い女と、それに気づかない男たち

現代の英国を代表する女性ミステリー作家ミネット・ウォルターズが2005年に発表した、長編第11作。国際政治の歪みに咲いた邪悪なあだ花のような犯罪者と戦う女性ジャーナリストの絶望と再生を描いた、大傑作サスペンスである。
2002年、内線で疲弊したシエラレオネで5人の女性が惨殺され、犯人として3人の少年兵が逮捕されたが、ロイター通信の女性記者コニーは、ダイヤモンドの闇商人のボディーガードを努める在留英国人ハーウッドの犯行を疑っていた。2年後の2004年、イラクを取材していたコニーはバグダッドで、戦争請負企業に雇われていたハーウッドに遭遇し、取材を始め、彼が偽名を使っており、本名はマッケンジーであることまでは突き止めた。しかし、戦争請負企業の壁に阻まれて取材は難航し、さまざな脅迫を受けるようになったコニーが両親が住むイギリスに渡ろうとした時、マッケンジーに拉致監禁されてしまう。3日後に解放されたコニーは記者会見も拒否し、マスコミを避けてイギリスの田舎に引っ込んでしまった。監禁中のことは警察にも曖昧にしか話さないコニーは、一体何を隠しているのだろうか?
という、ここまででも十分に面白い話なのだが、こらは全体の1/10ほどのプロローグに過ぎず、田舎で心身の回復に努めるコニーの心の変化と、執念深く追い掛けて来たマッケンジーとの対決が物語の主軸である。監禁のトラウマからマッケンジーの影におびえるコニーは、いかにしてマッケンジーの病的な暴力に対抗するのか?
コニーとマッケンジーの直接対決の事件はある種の闇の中、「羅生門」状態で、ことの真相はコニーが語る言葉でしか知ることが出来ない。彼女の強さに周囲は驚くが、とりわけ警察はそれが理解できず、事件の全容を求めて彼女と厳しい言葉の攻防を繰り広げることになる。アクションではなくディベートでサスペンスが盛り上がるというのは、さすがに「英国ミステリーの女王」と呼ばれるウォルターズならでは。参りました。
サブストーリーである風光明媚な英国の田舎の閉鎖社会の軋みの物語も、ウォルターズお得意のテーマで、十分に読み応えがあった。
謎解き、心理描写、スリル、社会性など多彩な魅力に満ちた作品として、多くのミステリーファンにオススメしたい。

iisan
927253Y1

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