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暗闇へのワルツ



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暗闇へのワルツの評価: 10.00/10点 レビュー 1件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点10.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(10pt)

恋は惚れた方が負け

まさかアイリッシュがこんな悲恋の物語を書こうとは思わなかった。冒頭、別人になりすました若き淑女の登場から、度重なる齟齬から発覚する、花嫁入替りの事実。その事実が発覚すると同時に主人公の巨万の富を持ち出して逃亡する花嫁。復讐の鬼と化した主人公は1年と1ヶ月と1日を費やし、とうとう彼女を捕まえる。しかし、そこで彼女の巧みな話術によって誑かされ、結局彼女とまた2人の生活を始める。それが彼の正に人生の大きな過ちの始まりだった。花嫁の捜索を頼んだ探偵を自ら殺めることで闘争の日々が始まり、拠点を転々とし、ついに私財も底を尽く。彼女に唆されて博打ぺてんを仕掛けたものの、呆気なくばれて、ついに一文無しになり、彼女は昔付き合っていた悪党に手紙を送り、とうとう主人公の保険金殺人を図るのだが・・・とまあ、波乱万丈な物語で特に主人公が復讐を成し得なかった辺りから正に先の読めない展開となり、主人公は人生の落伍者へと、花嫁は希代なる悪女へと転進していく。

この花嫁、ボニーの造型が素晴らしい。時には天使のような、時には状況の犠牲になったか弱い乙女のような、そして時には人生の酸いも甘いも経験し尽くした売女のような女として描かれ、しかもそれが全て違和感なく1人の女性としてイメージが分散しない。特に最後の辺りで主人公に毒殺を図る鬼気迫るやり取りは背筋が凍りつく思いがした。
こういった人物造型含め、心情を暗示させる風景描写、移ろいゆく人々の心情描写がアイリッシュは抜群に上手い。真似をしたい美文・名文の宝庫である。

恋は惚れた方が負けである。それは自分の人生経験でもそうだった。
しかしアイリッシュは最後までその愛を貫くことで人間は変わる、そんな美しくも儚い物語を綴ったのだ。

Tetchy
WHOKS60S

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