(短編集)

シルエット: アイリッシュ短編集4



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    初公開日(参考)1974年03月
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    短編集

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    シルエット―アイリッシュ短編集 (4) (創元推理文庫 (120-6))

    1974年03月01日 シルエット―アイリッシュ短編集 (4) (創元推理文庫 (120-6))

    戦後のわが国に紹介されたミステリ作家のなかで、もっとも広く歓迎されたサスペンス・スリラーの第一人者ウィリアム・アイリッシュの傑作の粋を集めた待望の短編集。大都会のなかの人間の孤独、しのびよる死の影の戦慄、絶望と焦燥にさいなまれる犠牲者等、常に意表をつく技巧と主題の多様性に加えて、作者の独壇場ともいうべき哀切な雰囲気描写と緊迫したサスペンスは永遠に読者を魅了せずにはおかない強烈な磁力を秘めている。4には、「毒食わば皿」を巻頭に、「窓の明り」「青ひげの七人目の妻」「死の治療椅子」「殺しのにおいがする」「秘密」「パリの一夜」「シルエット」そして「生ける者の墓」の九編。 (「BOOK」データベースより)




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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (7pt)

    傑作と凡作の境目

    これほど続けてサスペンスを読むとやはり設定にヴァラエティを凝らしているとはいえ、展開が読めてくるのが悲しい現実。
    恐らく現在続々と出てくる小説で語られる話というものは実は既に世の中で語られた物語の焼き直しに過ぎない。今まで観たことのない、読んだことのない物語は果たして生まれないのではないかとも云われている。で、そんな中、傑作と呼ばれる作品は他の類似作品と何が違うのか、今回はその答えの1つを見つけたような気がする。

    今回収められた作品9編のうち、最も印象に残ったのは「秘密」。都会の片隅に住むケンとフランシス夫婦の物語。
    熱烈な恋愛を経て結婚した二人。ケンはプロポーズのときにフランシスに自分は過去、人を殺したことがある、それも意図的にと告げる。しかしそんなことは2人にとってなんら障害ではなかった。2人の生活は順調だったが、ある日ケンの上司が変わったことから生活が一変する。新しい上司パーカーとそりが合わないケンは給料を減額されたりと冷たい仕打ちを受けていたがついに不満が爆発して上司を殴り、解雇される。折りしも世間は不況。仕事を探すが見つからない。しかし元上司の伝手で新しい仕事を紹介され、勢い込んで面接に行ったがパーカーからの紹介状により不採用となる。絶望したケンは突発的にその夜、出かける。翌朝の新聞にはパーカー殺害の記事が。果たして夫の仕業なのか?というのが大まかなストーリー。
    この作品の良さは都会の片隅に静かに暮らす若い夫婦に訪れる不幸や不遇が、夫ケンがそりの合わない上司殺人の動機と有機的に絡み合う色づけになっている。凡作と傑作の違いはこういった味付けがしっかりしているか否かにあるとつくづく感じた。
    その味付けの最も濃い部分は夫ケンが失業して得たバイトが半身裸になって商品の宣伝をドラッグストアのショーウィンドウで実演するもの。技術者の彼が二束三文を得るためにプライドを捨ててまで仕事に打ち込む姿を見て涙する妻。こういった情に訴えるエピソードが物語の厚みを増す。あまりにも皮肉なラストはケンが過去に殺人を犯したという最初の告白が伏線となって不幸な夫婦をさらに不幸にする。物語のエッセンスが凝縮されている。全てが有機的に働いた、いい作品だ。

    準ベストは「生ける者の墓」だ。これも独特の設定で読むものを恐怖へ追い込むがオリジナリティがあるとは全面的には云えない。
    かつて自分の父親が生きたまま棺桶に入れられ、苦悶の表情で死ぬのを見てから葬式に出くわすと棺桶の死体が生きていると思ってしまうというトラウマがあり、それを克服しようとしていたところ、生きながら埋葬され、そこでわずかばかりの酸素で死を克服する団体に行き当たり、強制的に入会させられ、埋葬させられることが決まった。逃げようとするがその団体の包囲網は細かく、四六時中見張られていた。結婚を決意した彼女とニューヨークかイギリスへ逃亡することを決意したが、捕まってしまう。しかしなぜか釈放され、彼女は来ない。どうも彼女は私の身代りに埋葬されたらしいのだ。早く助けなければならない。彼女が死ぬまでに果たして間に合うのか?警察の必死の捜索が始まった。
    これはチェスタトンの『木曜の男』を想起させる。乱歩はこの最初のエピソードから材を得て『お勢登場』を書いたのではないかとも思え、作家たちの物語のアイデアが連鎖的に繋がっているように感じる作品。
    この作品はその構成の上手さにある。冒頭に墓を掘り起こす男を持ってきて、どういう理由でそんな行為をやっているのかを徐々に明らかにさせ、しまいには予想もつかない奇妙な犯行団体の話に着陸する。時系列に語っても物語の牽引力はあるのにこれを変えることでさらに読者を先へ先へと引っ張らせる。これも傑作と凡作の大きな違いだ。

    他に良かった水準作を簡単に述べていくと、まず「毒食わば皿」。気弱な男がのっぴきならない状況に追い詰められ、殺人を重ねていくノワール調のストーリー。詩的な文体で語るアイリッシュの手に掛かると不思議と男が殺人を重ねるのに必然性が生まれてくる。最後の妻の一言もツイストが利いている。
    「死の治療椅子」もいい。殺人の疑いをかけられた友人の歯科医の無実を晴らす刑事の捜査物語。本格ミステリ並みのトリックも入っているが、これは一読瞭然。しかし主眼はこれにあらず、自らにこの罠を仕込ませて証拠を確保する刑事の心境をサスペンス豊かに語るのがやはりアイリッシュ。チープな本格にせず、サスペンスとして処理したアイデアがよい。なかなかこうは行かない。

    他の「青ひげの七人目の妻」、「殺しのにおいがする」、「シルエット」は数あるアイリッシュサスペンスの1つとしてのみ記憶が残る程度か。アイリッシュが用意する手持ちのカードのうち、今回はこの結末を選んだ、それくらいの範疇で終わっている。
    戦争による精神障害の男の話「窓の明り」、パリに訪れた悪漢二人の誘拐解決劇「パリの一夜」も詩的な文体が横溢しているがちょっと合わなかった。

    前述にあるように続けてアイリッシュサスペンスを読んでいるものでいささか食傷気味になっているのは否めないが、それでもなお、読ませる作品を提供するこの作者の底力を思い知らされた短編集。限りなく8ツ星に近い7ツ星。

    Tetchy
    WHOKS60S
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    No.2:
    (4pt)

    十分

    古い本なのでそのぶんキレイではないですが、読むには十分です。貴重な本、ありがとうございます。
    シルエット―アイリッシュ短編集 (4) (創元推理文庫 (120-6))Amazon書評・レビュー:シルエット―アイリッシュ短編集 (4) (創元推理文庫 (120-6))より
    4488120067
    No.1:
    (5pt)

    幸福の隣に

    アイリッシュを読むと必ずと言っていいほど頭に浮かぶ曲がある。B.Joelの"Stranger"だ。あの曲をご存知の方ならこれでアイリッシュの雰囲気をつかんで頂けるだろう。ニューヨーク生まれでコロンビア大学卒業という経歴を持つ彼にふさわしいイメージかも。孤独と寂寥、不安と焦燥が入り混じったような文体に軽妙なトリック。幸福と隣合わせの哀切さや日常に潜む恐怖をどれだけ巧みに描写するかは、日常的なありふれたシチュエーションにおけるサスペンスを好んで映像化したヒッチコックが彼の作品をモチーフに『裏窓』を制作したことからも分かるだろう。
    この短編集で最も彼一流の哀愁を漂わせているのは『秘密』である。愛する人を守りたいという気持ちと無実の人間を救いたいという良心の要請との間に揺れる女性心理を巧みに描いている。彼女は過去に殺人を犯した自分の夫が再び殺人を犯したと思い、冤罪を訴え続ける被告を死刑から救おうと夫の過去の殺人を警察に密告してしまう。まさにエゴとヒューマニズムの葛藤。しかし彼女の選択は誰も救うことが出来なかった。何たる皮肉・・・。彼女が無実だと信じていた死刑囚は死刑の直前に殺人を自供し、夫は過去の殺人を問われ警察に逮捕されてしまう。自分が信じたものに裏切られる虚無感と愛するものに自ら引導を渡してしまった絶望感。人間の知恵の浅はかさを痛烈に感じた。冒頭の曇りのない幸福感との落差が見事に描かれている。
    冒頭部いつもとかわらぬ夜。月が出ていた。星も出ていた。そしてクライマックスの主人公の心の呟き ≪あたしは死人のように口を閉ざします。永久に死人になります。 だってもうあたしは死人なんですもの。≫ いつもとかわらぬ夜。月はなく、星も出ていない。
    切ない無常感にいつも涙が止まらない。
    シルエット―アイリッシュ短編集 (4) (創元推理文庫 (120-6))Amazon書評・レビュー:シルエット―アイリッシュ短編集 (4) (創元推理文庫 (120-6))より
    4488120067



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