ニューヨーク・ブルース: アイリッシュ短編集6



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    初公開日(参考)1977年04月
    分類

    長編小説

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    ニューヨーク・ブルース―アイリッシュ短編集 (6) (創元推理文庫 (120-8))

    1977年04月22日 ニューヨーク・ブルース―アイリッシュ短編集 (6) (創元推理文庫 (120-8))

    ミステリ短編の魅力を存分に味わえる、アイリッシュの作品集成第6巻。大都会のなかの人間の孤独、しのびよる死の影の戦慄、絶望と焦燥にさいなまれる犠牲者等、常に意表をつく技巧と主題の多様性に加えて、著者の独壇場ともいうべき哀切な雰囲気描写と緊迫したサスペンスは永遠に読者を魅了せずにはおかない強烈な磁力を秘めている。傑作「さらばニューヨーク」等13編を収録。(「BOOK」データベースより)




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    ニューヨーク・ブルース: アイリッシュ短編集6の総合評価:9.00/10点レビュー 2件。Bランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (8pt)

    作品の収録順が絶妙

    アイリッシュの短編は同じ趣向の作品が多く、テクニックは目立つものの、印象に残る作品は少なかった。しかし最後の最後でかなり印象深い作品が揃った。

    最初の2作、「三時」と「自由の女神殺人事件」は都会が生み出す人間心理の歪み、タイムリミットサスペンス、皮肉な結末と典型的な作品だったので今まで同様、水準作ではあるが突出したものはないなと思っていた。
    しかし、3作目の「命あるかぎり」からガラリと印象が変わった。まずこの作品、題名から連想する悲哀がこもった感動作では全然ない。夫の暴力に怯える女性の逃亡譚だが、結末はあまりに救いがなく、ゾクッとする。文体はアイリッシュの美文が連続する詩でも読んでいるかのような流れる文章であるがゆえ、最後のインパクトは強烈に印象に残った。

    この作品で心動かされたためにもはや作者の術中にはまったも同然で、続く「死の接吻」の、打って変わって軽妙な文章は小気味良く感じられ、内容もコン・ゲーム風クライムノベルと読ませる。去年物(ラスト・イヤー)と呼ばれる主人公の女性がたくましく、じわじわっと来る読後感がたまらなかった。
    次の表題作ははっきりいって文体に癖がありすぎて内容を十分に把握できなく、全くストーリーが頭に入ってこなかったが、その次の「特別配達」は貧乏人の善行を語る昔話的なお話で、非常に私好みだった。最後の台詞もよく、非常に微笑ましい。

    その他にも娘の恩人が数年後、殺人犯人となって助けを乞いに来る「借り」は長編にしてもおかしくないほどの濃密な内容だった。設定から語り口まで全てが一級品だと思ったし、主人公が刑事として最後に取った決断は予想と違い、結末も最後の台詞も良かった(特に冒頭の車が湖へ落ちていくシーンの描写は短く簡潔なのにすごく写実的。贅言を尽くすクーンツに読ませたいくらい)。
    「目覚めずして死なば」は少年の視点で誘拐事件の顚末を語る話。少年少女の世界を書いてもアイリッシュは上手く、普通ではちょっとおかしいだろうと思わせる状況を巧みに説得させる筆致もすごい。少年の視点で語っているがために主人公の無力感が伝わり、久々にドキドキした。なぜ刑事の父親が子供達の居場所を知ったのかが不明だが、愛嬌という事で。
    「となりの死人」と「ガムは知っていた」は典型的なアイリッシュ節で、中休み作品といった感じ。しかし最後の3編がまた素晴らしかった。

    まず「さらばニューヨーク」。前短編集収録の「リンゴひとつ」から派生したような話。あの話の登場人物の1つに同じ都会で貧困に喘ぐ夫婦が出てきたが、あれの別ヴァージョンのように貧困に喘ぐ夫婦がお金のために(それもたった500ドル!)殺人を犯してニューヨークを脱出しようとする話。
    「ハミングバード帰る」も読後がすごかった。盲目のママ・アダムスには何年か前に出て行った息子がいた。ラジオから息子が出て行った先で銀行強盗があったことが報じられていた。その矢先、鼻歌を歌いながら息子が突然帰ってくる。相棒と共に。どうも銀行強盗の犯人は息子らしい。怯えるママ・アダムスは息子を警察の手に引き渡す事を決意する。
    たった15ページで語られる話は濃密な物語だった。主人公が盲目であるための感覚的な筆致も素晴らしいし、なによりも最後に息子を信じたママ・アダムスを裏切る結末はどこか物哀しかった。
    そして最後の「送って行くよ、キャスリーン」。刑務所から出所した男が昔の恋人と最後の別れをするために逢いに行ったがために起こる悲劇を描いている。
    主人公の男を助ける刑事が調査をする辺り、冤罪を着せられた男をある男が救うために奔走する『幻の女』を思わせるが、こちらは正統派。バークという主役の男の人生を彩る哀しさ、彼を助ける刑事ベイリーの行動力に深く感動した。読後にこの題名が痛切に心に響き、アイリッシュの詩人ぶりを再認識させられた。

    本作が今までの作品集に比べ、好印象を持ったのは前述したように意外な結末だけでなく、主人公の心理に同調できるような作品が多かったこと。
    特に不安を掻き立てられる作品が2つも載ったことは短編を連続して読む身には心を大きく振幅させられた。本短編の作品順は出版元である東京創元社が決めたのだろうが、この並べ方はかなり良かった。短編集は作品の並べ方で傑作集と凡作集との評価が大きく分かれるのだろうと強く思った次第。


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    No.1:
    (5pt)

    ニューヨーク・ブルース

    創元推理文庫のアイリッシュ短編集もいよいよこれが最終巻。本作にはタイトルにもなっている『ニューヨーク・ブルース』の他にも『さらばニューヨーク』というタイトルの作品があったり、自由の女神を舞台にした『自由の女神事件』があったりと、彼の作品群の中でもひときわニューヨーク色の強い作品が集められています。
    『さらばニューヨーク』は彼の死後に発表された作品ですが、犯罪を犯した主人公が警察に追い詰められて感じる恐怖心がひたすら描かれるだけで、それがどんな犯罪なのかも明かされないという異色作です。それ以外の作品はいかにもアイリッシュらしいもので、無実の罪を着せられそうになった主人公の言うことを誰も信じてくれない孤独感や、その中でたった一人だけは自分を信じてくれることの幸せや、タイムリミットが迫り来る際の焦燥感が見事に描かれています。
    ニューヨーク・ブルース―アイリッシュ短編集 (6) (創元推理文庫 (120-8))Amazon書評・レビュー:ニューヨーク・ブルース―アイリッシュ短編集 (6) (創元推理文庫 (120-8))より
    4488120083



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