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クイーン警視自身の事件



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【この小説が収録されている参考書籍】
クィーン警視自身の事件 (ハヤカワ・ミステリ 375)

クイーン警視自身の事件の評価: 6.50/10点 レビュー 2件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.50pt

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No.1:
(7pt)

リチャード・クイーンの我が世の春

シリーズの主人公エラリイは全く登場せず、純粋にその父親リチャード警視―本作では既に定年退職しているので正確には元警視―が事件解決に当たる物語。
これは現在世間ではエラリイ・クイーンシリーズの1つとして扱われているが、現代ならばスピンオフ作品とするのが妥当だろう。

クイーン元警視が主人公ということで物語の趣向は従来のパズラーから警察小説、いやプライヴェート・アイ小説に変わってきているのが興味深い。つまり証拠を元に推理するプロセスではなく、足と刑事の勘で捜査を進めていき、容疑者を犯人と断定する決定的な証拠がない時点でも直接的に自身の推理を披瀝し、容疑者にプレッシャーをかけるという手法を取っている。これがクイーンのシリーズ作品としては実に珍しいことだ。

そして警察小説ではなく、プライヴェート・アイ小説と訂正したのは既に警察を退職したリチャードがなかなか口を割らない容疑者を落とすため、警察が踏むべき手順を逸脱した捜査方法を取るからだ。
捜査令状を抜きにした不法侵入に証拠捏造。エラリイが活躍する作品では良識という存在だったリチャードがこれほどまでぶっ飛んだことをやるとは思わなかった。

これは思うに作者クイーンが私立探偵小説なるものを書きたかったに違いない。そこで理詰めで考えて行動するエラリイではその趣向には合わないとしてリチャードを退職警官と設定して著したのではないか。

だから肝心の事件の真相は私の予想したとおりだった。これは恐らく当時としてはショッキングな真相かつ驚愕の真相だったかもしれないが、現在となっては別段目新しさを感じないし、恐らく読者の半分くらいは真相を見破ることが出来るのではないだろうか。
もしかしたらそれ故に本書が長らく絶版の憂き目に遭っているのかもしれない。

しかし本書でもっとも面白いのは物語のサイドストーリーとしてリチャード・クイーンとハンフリイ家の保母ジェッシイ・シャーウッドの恋物語が語られることだ。前妻を亡くして30年後に訪れた我が世の春。熟年男女の恋愛が物語の横軸になろうなんてかつてのクイーン作品では考えられなかった演出だ。
63歳という年齢でありながら50代の夫人を魅了するリチャード。やもめが長かっただけになかなか本意を伝えず、不器用で拙い付き合い方を示す彼と看護婦一筋で人生を送ってきたジェッシイのようやく訪れた春を受け入れようか入れまいかと葛藤する熟年同士の恋模様は、今では稀有な純情恋物語としても読め、物語の絶妙なスパイスとなった。

とまあ、今回はリチャードが実は無頼派の気質を持っていることや老境に至ってなお女性を魅了する雰囲気を備えていることなど、シリーズでは垣間見れなかった意外な一面が見れたことで個人的には面白かった。そしてジェシイ・シャーウッドとの関係が次回作以降、どのようにシリーズに関ってくるのか非常に愉しみである。

今までどおり何もなかったかのようにいつもの様子で物語が展開するかもしれないが・・・。


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