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死者のノック



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死者のノックの評価: 3.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt

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No.1:
(3pt)

恐らく復刊はないだろう

フェル博士シリーズでは後期に属する作品で、比較的地味な作品である。私がカーの諸作を集めだした時はたまたま店頭に並んでいたが、現在では絶版で入手困難となっている。

大学で起こる数々のいたずら事件が次第にエスカレートし、しまいには殺人事件まで発展してしまう。しかもそれが密室殺人だというから正に純度100%のカーミステリと云える。
さらにカーはこの密室事件に更なる味付けを加えている。それはこの密室事件がウィルキー・コリンズが書き残した書簡に書かれた状況とそっくりだというのだ。

大学で頻発するいたずら騒動といえば、セイヤーズの傑作『学寮祭の夜』を思い浮かべるし、またいたずら騒動が事件の端緒になるという点では、同じくカーのHM卿シリーズであるバカミス『魔女の笑う夜』が挙げられる。
これら2つの作品は傑作・駄作と作品の質は違うものの、それぞれ印象強い特徴を持っているが、本作はなんとも上に書いた色々な趣向を盛り込んでいる割には凡庸であり、盛り上がりに欠ける。その最も大きな要因となっているのが解りにくい密室トリックの解説である。識者によれば本書のトリックの解説には明らかに訳者による勘違いの誤訳があり、それが読者の混乱を招いているそうだ。私もカーが今回やりたかったトリックは凡そ理解できたものの、果たして本当に出来るのかと懐疑的なところがあった。本稿を書くに当り、ネット書評家の感想を当ったが、それで合点が行ったくらいである。

さて後年カーは『血に飢えた悪鬼』でウィルキー・コリンズ自身を探偵役にしたミステリを著している。知っている方は多いと思うがウィルキー・コリンズは最初期の最長推理小説として名高い『月長石』の作者だが、この偉大な先達に対してカーは独自に研究をしていたのかもしれない。今となっては想像の領域を出ないが。
最初に長らく絶版となっていると書いたが、それは多分に上に書いた誤訳によるところが大きい。が、しかし改訳して復刊すべきほどの作品かと問われれば今まで述べたように首を傾げてしまう。恐らく当分この作品が復刊されることはないだろうと思われ、そうなると私の持っている本書はコレクターからしてみれば貴重な1冊となり、なんだか妙にこそばゆい感じがしたりしているのである。

Tetchy
WHOKS60S

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