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遮断地区



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【この小説が収録されている参考書籍】
遮断地区 (創元推理文庫)

遮断地区の評価: 8.00/10点 レビュー 3件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

テンポ良く

昨日、イレーヌを読んだせいか、テンポ良くストーリーが進み
小説らしく?終わるところが高評価に繋がったと思います。

小説が好きな人は一時の幻?一時だけ現実から離れて別の世界を見てみたい・・・
少なくとも私はそうなのですが。
普段とは違う世界を知って、そして考えて、目まぐるしい展開に心躍らされて次のページ次のページとハラハラドキドキを味わって・・・と、正統派の話でした。



ももか
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No.2:4人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

遮断地区の感想

たまたまの偶然がいくつも重なって起きていく負の連鎖。
格差が激しく、その最下層に位置する社会的弱者が暮らす公営団地で、一つの噂が独り歩きしやがて恐ろしい暴動に発展していくという怖い物語でした。
しかし、そこに至る過程が非常に緻密に描かれていて、群集心理とでもいうのか一旦動き出すと止めることのできない負のエネルギーは傍観者でいることを許されなくなっていきます。

機能不全の家族ばかりが登場しますが、他人事とは思えないほどのリアルさです。一角に押し込められた公営団地と言うのは日本にはまだあまり見受けられないとは思いますが、社会への不満や苛立ち、嫉妬や妬みと言った感情から、その不満を解消するためもっともらしいこじつけの理由をつけてより弱い立場の人への攻撃となっていく例は昨今の過激なヘイトスピーチだけでなく一杯あるような気がします。

その人の心持ちによっても大きく変る家族観。フェイ・ボールドウィンにとってはろくでなしの親であるメラニーですが、医師のソフィーから見れば上流社会に生きる人たちよりよほど健全にみえていて、人の評価や価値観は決して一つでないことがよくわかります。
しかしこのフェイと言う保健師さん、こう言う人当たり前のように一杯いそうな気がします。
世界中が病んでいるんだなと少しくらい気持ちにもなりますが、ジミーのような存在も必ずいるはずで、全く救いのない物語とも違います。

ミステリーとは少し違いますが、先が気になり読むのをやめることができなくなりました。
初めての作家さんなんですが、ほかの作品も読んでみたいと思わせる話でした。

たこやき
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No.1:4人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

バカの正義感ほど傍迷惑なものはない

最近の新大久保での人種差別デモもそうだが、常識ある人なら絶対に口にできないような罵詈雑言をまき散らす人々は、自らの言動が社会的敗者としての自分を慰撫することにすぎないことには無自覚で、むしろ社会を正す行為だと思っているところが救いがたく、また始末に悪い。歴史的に階級社会であり、また階層分化が激しくなっている英国社会でも、同様のことが起きているのだろう。
ミネット・ウォルターズの「遮断地区」は、経済格差、人種差別、人間関係の破たんなどの社会病理を背景に、ほんのささいな抗議行動が制御不可能な激しい暴動に変化していく様をダイナミックに描き、読者をぐいぐい引き込んでいく面白いパニック小説であり、きわめて読み応えのある社会派小説でもある。
社会的弱者を押し込めた袋小路のような公営団地で、思慮に欠ける巡回看護師がうかつに「小児性愛者が引っ越してきた」ことをもらしたことから、不安を覚えた母親たちが排斥デモを計画する。それに悪乗りしたのが、真夏の暑さに不満のエネルギーを溜め込んでいた不良少年グループで、酒やドラッグの力を借りて大騒動を巻き起こすことになる。興奮した群衆は警察を介入させないためのバリケードを築き、小児性愛者の家を焼き、リンチを実行しようとする。
物語の主役は「悪意ある社会的病理」だが、それに立ち向かって暴動からサバイブする主人公たちの言動に励まされるところが多いため、重苦しい結末にもかかわらず、読後感には救われるところがある。人は、社会は、簡単に狂ってしまうことを痛感すると同時に、「地獄への道は善意で敷き詰められている」ことを、あらためて考えさせられた。

iisan
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