「私は東京都民を誘拐する計画をたてた。もちろん、一千万人全部をだ。

浚渫会社に勤めるぼくは、東京湾での廃船引揚げ作業従事した日から、妖しい夢にとり憑かれてしまった。

中年夫婦の離縁話をもち込まれ困惑する平四郎。

奈落に陥ちた薄幸の女の晩景を描く表題作の他、この作家ならではの独自の色彩をたたえる作品世界。

あと百日の生命と宣告された武士が、己れを醜く装うことで師の家の安泰と愛人の幸福をはかろうとする苦渋にみちた心情を描く『月の松山』。

様々な人間が日毎行き交う江戸の橋を舞台に演じられる、出会いと別れ。男女の喜怒哀楽の表情を瑞々しい筆致に描く傑作時代小説。

タカ派で著名な米国上院議員のストックホルム訪問を前にベックは特別警護の責任者となった。

確かに殺したはずの人間が、なぜか生きていた…。その謎の陰で、ある二つの遺体の行方に不審な事実が次々と判明して…。

お手伝い代わりにこき使う上司の妻に、激しい憎悪を抱く邦子。そのとき老女に手渡された一挺の拳銃。

日本最大の暴力団の組長が襲われ重傷を負った―この狙撃事件は、たまたま犯人に個人的恨みを抱く、3人の男たちの運命をも狂わせて行く…。

殿中での吉良への刃傷沙汰により浅野家は断絶、赤穂浪士は仇討の機を窺う。

アメリカ西海岸で技術コンサルタント事務所を開いているマードック・ロスは、スコットランドの古城に住む引退した物理学者の祖父に招かれ、友人のリーとともにイギリスへ向かった。

政界のボスとして著名な上院議員の、まだ生温かい死体には、ナイフが柄まで刺さっていた。

1888年3月、ロンドンの高級写真館で助手をつとめる男が毒殺された。

築六十年近くなる「樹影荘」にいつとなく奇妙なことが起こるようになった。

幼なじみの多津が嫁ぐ相手には隠し子がいる。

分譲マンションの水道の蛇口から異臭とともに人の髪の毛が……、つづいて受水槽内に若い女性の腐乱死体が発見された。

今は亡き〈不可能犯罪の巨匠〉ディクスン・カーの、長編小説以外の精華を集大成した一大コレクション。