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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数681件
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これは読み手は選ぶと思いますが斬新な作品かと。
それにしてもこの作者は変わった作品を描く人ですね。 まぁ作者名を知らずに読んだら「麻耶雄嵩」と断言したとは思いますが・・・ 問題編にて小出しに情報が与えられ、交互に登場する解決編で、我こそはのミステリマニア達が早押し形式による推理合戦を行うというもの。 題材は、嵐の館での密室殺人という典型的なグローズドサークル。 賞金をゲットできるのは最初に正解した人のみという事で、まだまだ物語も序盤、事件の全容も明らかにされていない段階であるにも関わらず、どんどん推理が披露されていく。 マニア達が、これまでの経験から、これから起こるだろう事を推測し予想を披露していくのですが、ほぼほぼ叙述トリックの打破が主眼に置かれます。 様々な解決が提示される多重解決ものになりますが、驚くべきは、その数がなんと15パターンにまで及び、そこには「ハサミ」「葉桜」「人形館」などなど、ミステリ好きならみんながよく知る、あんな事そんな事が、てんこ盛りなのです。 情報量が増える度に、新しい推理が展開されるのですが、当然、以前に提示された情報に対しても辻褄が合っている必要があります。 15種類といっても、15回の連鎖が必要な訳で、これは半端な労力ではないでしょう。 よく考えたもんだと感動すらおぼえます。 満点にしなかったのはラストの収束のさせ方ですかね。 臓器移植云々をどうこう言うレビュアーの方もいて、私もそれには否定はしないのですが、 ついでなんでいっその事、「樺山桃太郎は不可謬ですので、僕の結論も当然無謬です」と鮎さんよろしくブラックで押し通して欲しかった。 |
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半沢直樹シリーズ第4弾。
前作のロスジェネの表紙が六本木ヒルズ、そして今作が国会議事堂という事からも分かるように、物語のスケールが飛躍的に大きくなっています。 航空会社再生がテーマになりますが、政権交代からの前政権の施策の無効化などなど、まさにあのJAL再生タスクフォースを容易に連想できてしまいます。 「お前は前原だと思えばいいのか」とか「ひょっとして蓮舫なのか、蓮舫なんだよな」なんて想像したくなくても、勝手に頭が置き換えてしまう、そんな読書タイムになりました。 今回は敵が余りにも大き過ぎてさすがに無傷ではいられず、というより失ったものも大きかった。 このシリーズの「正義は勝つ」的展開は、相変わらずスカッとはさせてくれるのですが、どこか予定調和になりつつあります。 後ろ盾も無くしてしまった事が、次作以降にそれがどう影響するのか楽しみでもあるのですが、ちょっと話のスケールが大きくなりすぎて「次どうすんのさ」という心配の方が大きいかな。 大和田はまだ健在、そして黒崎とのタッグなんかも読んでみたいですね。 |
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「他者にその存在さえ知られない罪を完全犯罪と呼ぶ。では他者にその存在さえ知られない恋は完全恋愛と呼ばれるべきか?」
それってただの片想いじゃねぇか、と思いながらも、この冒頭の一節には惹かれるものがありました。 しかし、読後の感想としては、 「作者のネームバリューが過大評価させている」そんな印象です。 作中3つの殺人事件が起こります。 1つ目の殺人が終わった後は、もしかしたら「白夜行」的な作品になるのかな、という期待感がありました。 主人公の画家は成長するにしたがい、「もし完全犯罪を目論むとしたら凄い事をやりそうだ」的な雰囲気を持った人物に感じていましたし・・・ ところが、 2つ目の殺人で、島田荘司氏が頭に浮かんだのは私だけでしょうか? ただ、御大でもそういうオチにはしない、と一応フォローしておきますが・・・ で、この辺りから、「何か想像してたのと違うぞ」・・・と。 そして、3つ目は最早バカミスの領域かと・・・ まぁバカミスならバカミスでもいいのですが、そこまでの作品の雰囲気に合っていないというか・・・ 真面目にバカミスやらないでよ、って感じです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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当然ながら高いハードルを設定して読ませていただきました。
軽くとは行かないまでも、それをクリアしてくれた作品です。 昭和64年に起きた未解決の誘拐事件の話だという前知識はあり、さぁガッツリ誘拐事件、と思っていたのですが、そうではありませんでした。 物語の核となるのは、寧ろ、捜査の主役刑事部と事務方警務部の衝突です。 主人公の三上は、元刑事の広報官で事務方に属しています。 この「元刑事」というのがミソで、かつて所属し今も復職したいと願う刑事部と現在の所属である警務部の板挟みにあい自分の立場を見失いそうになります。 この手の警察小説の主人公は、自分の信念を曲げないビシっと1本筋の通った人物が多いのですが、三上はそうではなく、正直格好良くありません。 また事件解決に力を発揮できるポジションでないだけでなく、実際に彼の視点では今捜査状況がどうなっているのかも分かりません。 他の主要登場人物は筋が通っているだけに余計に・・・という感じです。 そんな人物の視点で彼の内面が長々語られる前半は少々退屈ですし、ラストのおいしいところも持って行かれます。 寧ろ奥さんの方が最後印象的な言葉を吐きます。 正直異色の切り口だとは思いましたが、個人的には正解だったのか若干疑問でした。 それでもこの作品に満足できたのは、ラスト100ページを切ってからの怒涛の展開。 一気に回収される伏線だけでなく、一つの事件に賭ける関係者の執念が爆発する。 残った者、去った者、去らざるを得なかった者、そして廃人にしか見えなかった者までが・・・ 読んでるこちらまで、グワーッと込み上がってくる。 この作者の作品に泣きの要素を入れたら無敵だと思った。 ここでも主人公は蚊帳の外だった気がせんでもないが・・・まぁいいか。 |
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半沢シリーズ3作目。
「危機感なきバブル世代」「割を食うロスジェネ世代」 主人公の半沢はバブル世代であり、ロスジェネ世代が敵意を剥き出しにするのはバブル世代だろうから、半沢VSロスジェネ世代という図式の物語なのかと思っていました。 このシリーズの代名詞にもなっている「倍返し」ですが、まさか後輩相手に倍返しするつもりか、なんて読む前は思ってましたが、ロスジェネ世代と半沢がダッグを組んで、という話でした。 テーマは「企業買収」 東京スパイラル社長の瀬名はどう考えてもホリエモンがモデルですね。 過去2作より、遥かに壮大なスケールとはなっていますが、弱者が強者に立ち向かうというこのシリーズの定番パターンは、子会社が親会社に反旗を翻すという形でしっかり踏襲されています。 っていうか、過去にこんな実例あるのか・・・と、無知な私などは考えてしまうのですが・・・ 作者は、半沢の口を借りて「世代論に根拠などない」と発言させてますね。 しかし、私はロスジェネ世代はやっぱり割りを食っていると思います。(私はロスジェネ世代ではありません) だから「世代論に根拠などない」には同意しかねるのですが、自分が育った時代に恨み言を言っていてもしょうがないですよね。 正直、作者の池井戸さんは、ロスジェネ世代に優しくないなぁ、と思いました。 厳しいながらもエールを送っているとは思いますけどね。 結局は半沢、になってしまうのは仕方ない気もしますが、このタイトルであれば、もう少しロスジェネ世代の活躍があっても・・・と思いましたね。 |
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新聞記者としてノンフィクションを書いてきた横山秀夫さんの処女作。
元新聞記者という先入観がそうさせるのか、横山さんの描く警察小説の緊張感や迫力は、フィクションだとは分かっていてもノンフィクションだと錯覚させられるような説得力を感じていました。 しかし、この作品は、これまで読んできた横山作品とは全く違う。 やはり処女作というところか。 が、面白くないのではない。 寧ろ凄く面白い。 ただ「らしくない」というか、落ち着いて考えてみると、正直この作者らしくない突拍子もないプロットだと思えます。 「処女作にしてさすが」なんていうレビューも散見されますが、それはちょっと違うんじゃないかな。 全然らしくないですよね。 もしかしたら、とてつもなく貴重な作品なのかもしれない、と個人的に感じております。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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「読書をした」そんな気持ちにさせてくれた本。
時代背景は第一次大戦前後、場所は東北。 そこに生きる主人公であるマタギの少年期から初老期までの波乱万丈の人生を描いた物語である。 この地では、男は余程の事がない限り、大人になればマタギになる。 主人公の富治は、弱冠16歳にて、父や兄と同じようにマタギとなるのだが、女性関係によりマタギという職を奪われただけでなく村をも追われてしまう。 紆余曲折の後、再度マタギとしての第3の人生を歩み出す・・・という物語。 逞しいというか力強いというか・・・男とは本来どういう生き物であるかというのを表現しているように思いました。 そういう男達の逞しい人生の裏側で、貧困という厳しい現実を背負う女達がおり、その表現者として、富治の嫁となるイクを登場させています。 私が心を打たれたのは富治よりも寧ろイクの生き様でした。 僅か12歳で身売りに出され富治とは比較にならない薄幸な人生を歩みながらも、結婚を契機に別人のように変貌を遂げる。 当時の女性はいつ誰から男につくす事を学んだのだろう。 彼女たちは幸せだったのだろうか。 |
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囁きシリーズの一作目。
(残念ながら)綾辻らしい作品と言えるんでしょうね。 サイトの「綾辻行人の作品一覧」を見ると、時期的には「迷路館」と「人形館」の間に入ってくる作品と考えてよいのでしょうか。 妙に納得できてしまうのだが・・・ 「迷路館」の真相が、この作品のヒントになり、(綾辻作品では今ではおなじみとなってしまった)精神異常の持ち主がワサワサ湧いてきて、館シリーズにも跳梁跋扈するようになり、ドバドバ血が流れ、多くの人間が死ぬのだが、狂気で全てを解決させるという・・・ 「綾辻始まったな」・・・な、ある意味記念すべき作品といえるのかもね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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シリーズ物のようだが、この作者さんは初読。
文章は軽快でテンポがあり非常に読みやすいのですが、最初から最後までどこかドタバタしています。 舞台は大阪。 無論関西弁が飛び交うことになるのですが、大阪人の私が聞いても(読んでも)どこか仰々しい。 いくら大阪人でも、このシチュエーションでこんな(ウケ狙いの)台詞は吐きませんよ、がやたらと多い。 こういうコメディタッチなところは、作者の意図的なものと思いますが、観覧車ジャックという派手な事件を扱った作品であるのに、おかげでサスペンス的な緊迫感がゼロですね。 まぁシリアスに描いて、あのラストだと正直転けますが・・・ 絶対に成功しない・・・ですよね。 登場人物が多く、それぞれに物語を持っていますが、そんなバラバラなストーリーが一つに繋がっていきます。 この作品の評価が高いのはここだと思います。実際評価されているレビュアーが多いですね。 分からないではないですが、個人的には「少し分かりやすすぎる」かなと。 |
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ミュージシャン、刑事、サイコパス・・・三者三様、3種類の「孤独」が描かれており、物語は、この三人の視点が入れ替わりながら進行します。
この作品で言う「孤独」とは、いわゆる”ひきこもり”のような、集団に溶け込めず、世の中の困難から背を向けている、といった「孤独」ではありません。 彼ら彼女らは、積極的に誰かとの繋がりを求めている、強いメッセージを発しているのだ、悲痛な「叫び」である。 この作品では、サイコパスによる連続殺人事件が発生します。 読むに耐えない猟奇的な内容なのですが、「如何に解決されるか」は物語の本質ではない。そんな気がしています。 主要人物達の屈折した思考をトレースし、彼らの「叫び」に耳を傾け、何を感じるか、共感できるかできないか、そんな作品な気がします。 サイコパスを追う、ミュージシャンと刑事、孤独な彼らの繋がりを求める叫びが、リレーに比喩されています。 個人的にそこが凄く好きです。 というか、上手く言えないのですが、この作品の「ポイント」な気がします。 ミュージシャンとしてもランナーとしても抜けた能力を持つ主人公は第1ランナー。 彼が光り輝けるのは、バトンを受け取ってくれる第2ランナーのおかげ。 女刑事はアンカー走者。チームのエース。 しかし、誰かがバトンを渡してくれなきゃ存在価値がない。 後は頼んだぞと、誰かが背中を押してくれるのを孤独に待っている。 「誰か俺のバトンを受け取ってくれ」 「誰か私にバトンを渡して」 そんな2人が惹かれ合い最後サイコパスと対峙する。 サスペンスだと思いますが、全編暗く重く、スピード感には欠けます。 が、それを求めていい作品ではないでしょう。 |
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「中学生がクラスメイトと殺し合いをする」
この過激な設定に興味、関心を示す人は意外と多いのではないかと思います。 確か残虐な事件の低年齢化が問題となった時代だったかな、とかその時代背景なども考えつつ読み始めたのですが、悪人として描かれているのは完全に大人の方ですね。 「悲惨な状況下におかれて人間はどう生きるか」 が主眼になるのかと思いきや、まず(作者にその方面に知識がないのか)サバイバル的な要素は皆無。 食料も薬も、見つけたもの勝ちではあるが、調達しようと思えばできるのである。 「自分も同じ状況になればどうするか」と多分殆どの読者が考えるでしょう。 そんな中、「逃げる」か「受け入れる」しか選択しない登場人物たち。 ここでいう「逃げる」とは、殺されないように逃げ惑う事であり、「この理不尽なゲームから何とか脱出を図ろうとする者」が殆ど現れないのである。 事務局を狙おうとしたのもわずか一人だけ。しかも中盤で死んでしまうし。 頭を使おうとする生徒が少ないと感じたのだが、人間追いつめられると考えることをしなくなるというのだろうか。 ちょっと有り得ない。 また、物語を進行させるという意味で必要なのも分かるのだが、ターミネータみたいな奴が一人混じってるし・・・ 登場人物はクラスメート42名。 その全ての登場人物について、その死亡時の状況が描かれており「知らない間に死んでいました」という人物がいない。 そりゃこれだけページ食うわ、である。 オタクがいたり、オカマがいたり、とそれなりにキャラを描こうとしているのだが、キャラに合った思考を元にゲームに挑むという事をしていない。 これはキャラであってキャラでない。 こういうのが好きな人も多分いるだろう。だからこそ映画化もされた訳で・・・ ただ読み物としてはどうなのだろう。 何か残るだろうか。 と、ここまでボロカスに言ってきたが、正直結構楽しんで読めたかな・・・と。 ただ映画は見る気しないなぁ。 こんなの2時間や3時間でまともに表現できるわけがない。 |
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相当前になりますが日本ホラー小説大賞を受賞した作品で、かなり骨太で読み応えのある作品だと思います。
ただ、他の方たちのレビューにもあるように、薬学部出身の作者による専門用語の登場頻度が高すぎますね。 適量ならビシっと作品を引き締めてくれたりするんですが、ちょっと長すぎですかね。 また、これを読み飛ばした場合、Y染色体のくだりなど、物語の把握に支障をきたす可能性があるのがたちが悪いです。 あと意図的なのかは不明ですが、視点や時系列が前触れもなく変わるので、その場その場の状況が理解できるまでに時間を要してしまいました。 色んな点で少し読みづらい作品だなと感じました。 ただ、ミトコンドリア視点の描写は失敗ではなかったかなと。 思考をトレースできた時点で、底知れぬ怖さではなくなってしまった気がします。 共生が寄生だったというアイデア、その発想は抜群だったと思います。 しかし、その後の展開が余りにも現実離れ過ぎ、突飛過ぎるように思えます。 鈴木光司氏の「らせん」に表向きは非常に似た流れになるのですが、「らせん」のパロディかと思えるくらいのドタバタ劇になってしまいます。 ジワジワ見せるのが怖いのに、この作品の場合、いきなり「ドッカーン」です。 「発火」って・・・まぁここまでは分からんでもないですが、「意外と軽症だった」ってどんな発火システムなんだろう? |
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静かで優しい時間が流れている作品です。
博士と家政婦と家政婦の息子の物語です。 息子は、博士から「ルート」というあだ名を授かっています。 「どんな数字にも身分を与えることができる」という数学記号のルートです。 まぁ元々阪神ファンに悪人はいないんだけどね。 「泣いた」というレビューをよく見かけます。 ページ数も多くなく数時間で読めてしまう作品で、お涙頂戴的なわざとらしい描写もありません。 寧ろ作者は意識的にそういう描写を省いているようにも思えます。 あっと驚くようなイベントが起こるわけでもありませんし、ましてや奇跡が起こるわけでもありません。 全編通して淡々としています。 ただ、その分、登場人物たちの何てことのない言葉、行為に、読み手が、文字として描かれていない何かを考えたり想像したりする余裕があるのでしょうね。 レビュアーの多くがどこで何を感じて泣けたのかは分かりません。恐らく感じ方は人それぞれでしょう。 でも泣かせどころは満載な気がします。 上っ面だけ読む人は恐らく泣けない。でもそうじゃない人は色んなところでいっぱい泣ける。そんな作品だと思いました。 ただ私を含め多くのレビュアーの方々が「ここは泣けたはず」なのがやはりラストでしょう。 そのシーンには衰弱していく博士の姿など作者は一切描いていない。 しかし読み手は必ず脚色して読んでいるはず。(でしょ?) そこに 「ルートが数学の先生になるんです」 実際これだけで十分過ぎるほど十分。 悲しみとか喜びとか安堵とか・・・そんな様々な感情が上手く均衡を保った状態で終わった、そんなきれいな終わり方だった。 |
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作者の作品は「私が殺した少女」に続いて2作目。
独特な気障な比喩というか言い回しというか、はハードボイルドそのものですが別段鼻につく訳でもない。 酒と女と暴力と・・・といった描写も少なく、どっぷりハードボイルドという感じでもなさそう。 登場人物が多く、その関係性がややこしい割に造形が浅く印象に残らない。 この手の作品は、探偵が孤軍奮闘するものであるが、それにしても魅力的な脇役すら登場しないために奥行きのない薄っぺらい作品になっている気がする。 ひきこもりの青年など、登場人物欄にはしっかり名前が明記されている割に「これだけかい?」という感じである。 更に、銃撃事件、誘拐事件、身代金事件と次から次へと色々なことが起こる。 結局は、警察官殺害事件と三日男爵関連の事件という2つの全く異なる事件が起こり、それが交差する点に探偵がいるという構図。 複雑、悪く言えばごちゃごちゃであり、結局最後の最後まで1点に焦点が合わないまま終わってしまった。 「私が殺した少女」は最後ビシっと決まったんですが、この作品はどこか発散したまま終わってしまった。 そんな気がします。 |
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黒乙一全開。
作中に「アイのメモリー」という短編童話が挿入されています。 これなら従来の黒乙一短編作品という事で、そもそも嫌いではないですし、それなりの評価は出来たのですが・・・ まぁ何れにせよ黒乙一は短編に限るな、と実感した次第です。 乱歩の短編に似た感じのがありましたかね。 あと、綾辻「暗黒館」とか。 一番似ているのは「フリークス」かな。 眼球移植による幻視というアイデア自体は既視感ありありですが、これまで読んだ乙一作品の中では最もミステリらしい作品ではあります。 ホラーとミステリの融合ってやつですかね。 綾辻さんの「フリークス」のレビューで、「こんなの描けるの綾辻しかいない」と書いたのですがいましたね、ここにも。 色々凝った事もやっておるのですが、全てグロさの前に吹き飛びます。 苦手です。 |
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恥ずかしながら下巻の中盤に差し掛かるまで主人公の女性が「模倣犯」に登場していたあの人だという事に気が付かなかった。
続編というよりスピンオフと言った方がいいだろう。 自分の子供を殺してしまうという事。 これが一般常識では普通でないという事は誰の目にも明らかで、世論も黙っていないはずである。 しかし、その子供がどうしようもないクズだったらどうだろう。 この作品には、どうしようもない自分の子供を殺してしまった親とそれを放置した親が登場します。 そして放置された側は更生しないまま社会復帰して再び犯罪を犯してしまう。 作者は少年法についても一石を投じているのかもしれません。 「殺してしまった」と「放置して傷口を広げてしまった」 親としての苦しみはその中味こそ異なるだろうが、苦しむ事自体はどちらも同じかなと思う。 しかし、後者に対する同情らしき描写が一切ない以上、作者は前者を正当化しようとしているのかなと感じます。 つまりは、楽園を得るために何かを切り捨てるという選択は必要悪なんだと。 全編通して淡々としているのですが、淡々としているだけに余計にえげつない。 単体なら、この内容で十分評価できるしさすが宮部みゆきというところなのですが、あの「模倣犯」の・・・と考えると、何ランクも落ちる作品と言わざるをえないです。 作者が大好きな超能力云々についても「模倣犯の」という作品の印象を大きく逸脱させている事は否定出来ない。 そこには目をつぶれたとしても、ピース、ヒロミ、カズ・・・色々な視点から描かれ、これでもかというくらい掘り下げられた人物描写がありました。 この作品にこれがあったか。 滋子視点で「敏子、等」「土井崎家、茜、誠子」「あおぞら会」とグループ化出来るように思うが、それぞれのつながりが弱いというか一体感がないというか・・・ これは、そのあたりの「浅さ」に起因しているのではないかと。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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40代中間管理職の男性を主人公にした5編の短編集。
社内の昇進や異動に絡んでくる人間関係。 この年代になると同期入社の間でももう明暗がはっきりとしている。 順番から行くと私かと思っていたところに他所から、しかも女性だったなんていうのは経験者には笑えないか。 それだけでなく、子供の進路で悩まされる家庭での話、親の介護問題なんかも現実感を帯びてのしかかってくる。 四十にして惑わず、なんて言葉があるが、人生の折り返し地点を迎え、社内でこれからピークを迎えられる人間などごく僅か。 殆どの人間は、子供の養育費、住宅ローンを抱え下り坂を迎えるのだ。 恋愛の話も含まれているが、これはおまけか? いやいや、恋愛でもやってなきゃやってられないのかもね。 「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ!」といった植木等の言葉はもう死語、っていうか当時のサラリーマンは気楽だったのかね。 今はこれでしょ。「独りモンはは気楽な稼業ときたもんだ!」 ホント羨ましいわ。 ただ、人生やり直せるとしても君らみたいにはなりたくないけどね(笑) 感想っていうか愚痴になってしまった。 若い人や女性はこれを読んでどう思ったかな。 |
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