■スポンサードリンク
iisan さんのレビュー一覧
iisanさんのページへレビュー数1393件
閲覧する時は、『このレビューを表示する場合はここをクリック』を押してください。
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
デンマークの警察小説「特捜部Q」シリーズの第二作。カール・マーク警部補とアシスタント・アサドのコンビに女性アシスタント・ローセが加わって、特捜部Qがさらにパワーアップした大活躍を繰り広げる。
このローセの、「警察学校を最優秀で修業しながら運転免許試験に落ちて警察官になれなかったため、秘書として警察に入った」という設定が笑える。そのキャラクターも、アサドに負けず劣らずユニークで、シリーズとしての面白さに一味も二味も新味が加わったといえる。 今回の主題は、二十年前の殺人事件、それも犯人が服役中の事件の再捜査である。犯人がひとりではなく、共犯者として同じ寄宿制学校の複数の同級生、しかも、いずれも社会的な成功をおさめている人物がいることを確信した特捜部のメンバーが、警察上層部をはじめとする様々な圧力を受けながらも真相にたどり着いて行く。事件の背景は、社会的エリートの秘められた暴力性という、まあ、ありがちな設定だが、メンバーのひとりが女性で、しかもわざと路上生活者として生きているというのがユニークで、ストーリーに変化をもたらしてくれる。 ところどころで、犯人達の精神構造を表現する重要な道具として「時計じかけのオレンジ」が使われているのが、あの映画をリアルタイムで観た世代として非常に興味深かった。 次回以降の作品への期待は高い。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
結婚式の一ヵ月半前に突然、「ごめん。もう、会えない」と電話して姿を消した婚約者・刑事を捜して日本中を駆け巡るヒロインの純愛(?)物語。最後の最後に婚約者が失踪した理由が明かされるのだが、その真実がやや説得力が弱いため、ミステリーとしては満点を付けられなかった。しかし、読みごたえのある作品であることは間違いない。
山の手のお嬢様であるヒロインが、婚約者を捜してドヤ街や私娼窟を訪ね歩いたり、捜査関係者との触れ合いで徐々に人間性、社会性を深めて行くところは好感がもてた。また、娘を殺害された老刑事・韮山の怒り、苦悩、再生の物語は、これだけでも一作品になるのではないかと思うほど読みごたえがあった。「涙」ということでは、ヒロインが流す涙より、韮山が流す涙の方が共感する部分が多かった。 時代設定が、東京オリンピックに沸く1964年からの2年間で、しかも時代の出来事や風俗が重要な要素として頻繁に登場するので、もろに同時代を生きた者としては、そのときどきの自分を思い出すことが多く、懐かしさを感じる楽しいタイムトリップだった。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
事件捜査が主役ではない警察小説を確立した横山秀夫の連作短編集。今回は、県庁所在地から遠く離れ、警察署と官舎、寮が同じ敷地に建つという三ツ鐘署を舞台に、交通課、鑑識係、少年係、会計課などの7人の職員の物語が収録されている。
元来が徹底した階級社会、ムラ社会の警察組織、しかも職場と住居が一体化されているとあって、三ツ鐘署の職員の人間関係はきわめて微妙なバランスの上に成り立っており、いつ、どこで破たんするか知れない危険性をはらんで展開されることになる。そんな中で生きる職員たちの組織人としての建前と個人としての本音の葛藤が、これでもかというほど繰り返され、かなり息苦しいエピソードが続くことになり。 しかし、一度落ち込んだり壊れたりした人間性、人間関係を立て直そうという姿勢がうかがえるエンディングが多いこともあり、読後感は「真相」などに比べて明るいものが多い。 7作品の中では、警官と泥棒、それぞれの老いと技術の継承を通して人間の業を描いた「引き継ぎ」が一番面白く、印象に残った。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
女刑事・音道貴子シリーズの長編第2作は、デビュー作以上に読み応えがある作品だった。
音道が大量殺人犯グループに拉致・監禁されるという、とんでもないお話だが、監禁物ミステリーとしても、警察の捜査小説としても、はたまた音道の成長物語としても、一級品の読み物に仕上がっている。デビュー作の「凍える牙」は、犬を重要登場人物に据えたこともあって(個人的には)非常にファンタジー色が強い作品と評価したが、本作は、犯行動機や犯行手段、犯人の背景などの面で社会派ミステリーとしての完成度が高く、個人的にはこちらの方が高く評価できる。 デビュー作でコンビを組み、さんざん音道を悩ませた皇帝ペンギン・滝沢刑事が、こんどは警察の救出チームのメンバーとして登場し、大活躍を見せるのが面白い。相変わらず、女性刑事と組むことには難色を示しながらも、音道が刑事として優れた資質を持ち仲間として信頼できることを断言し、そんな仲間の救出のために全身全霊をかけて奮闘する。その言動の端々には、父親の娘に対するような愛情が見え隠れし、なかなかにハードボイルドでカッコいい! いやいや、カッコよ過ぎる。 シリーズとしてはもちろん、単発作品としても十分に楽しめる警察ミステリーだと思う。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
文庫本60ページ余りの作品で展開される各話のメリハリの効いた起承転結、絶妙の心理描写、人間心理を鋭く射抜く視点の確かさなどなど、短編の名手と称される横山秀夫の名人芸を堪能できる作品集だ。
いずれの作品も、過去の事件、事故にとらわれた人物が、その事件や事故に隠されていた真相に触れ、人間性、生き方を見つめるというテーマ性が共通している。事件捜査だけではない警察小説を確立した著者の得意なジャンルと言えるだけに、作品の完成度はどれもきわめて高い。 5作品の中では、親とはどういう存在であるかを苦渋とともに描いた「真相」が一番読みごたえがあったが、中年男性にとって生きがいとは何かを哀切に描いた「不眠」も忘れ難い印象を残した。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
もともと重い作品が多いトマス・H・クックだが、これは今まで以上に暗うつな気分にさせられる作品だった。ミステリーというよりは日本の私小説みたいな、徹底的に内向きのお話しで、通常のミステリーを読むようなカタルシスは味わえなかった。
最初から最後までホテルのラウンジでの二人の会話に終始し、現在と過去を行き来するだけの静かな物語。しかも、過去の出来事をいろいろな側面から見直してゆく(そこに、二転三転する真実が見えてくるのではあるが)だけなので、まるで老人のモノローグを聞いているような静けさで、ストーリーが展開されて行く。過去の事件の真実が明らかにされるという意味ではミステリー作品であるが、明かされるのは殺人事件の謎ではなく、その事件を巡る人物達の心模様である。これは果たして、ミステリー作品なのか? 好き嫌いがかなり分かれる作品だろう。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
ススキノを駈け抜ける〈俺〉シリーズも第12作になり、長寿作品に付きもののマンネリ感と安心感が強くなったようだ。熱は感じられないが、うま味は濃くなったような。細部を味わう作品とでも言えばいいのだろうか。本作だけを読む方にはオススメ度7、シリーズの読者にはオススメ度9という評価にした。
例によって、頼まれもしないのに犯人探しに奔走するのだが、今回は舞台がほとんどススキノに限られている上に、犯人の悪らつさや残虐さが抑えられているため、他の作品に比べるとストーリー展開のスピードに欠け、アクションシーンも少なくなっている。その理由は、作品中でも数ヵ所、五十代になった自分の衰えを嘆く部分が出て来るが、〈俺〉の年齢的な変化と言えるだろう。 〈俺〉シリーズの魅力の一つに、バカや田舎者に対する罵倒の辛辣さとボキャブラリーのユニークさがあると思っているが、今作品ではバカや田舎者にずいぶんやさしくなった印象を受けた。これも、〈俺〉が年を取って丸くなったせいかもしれない。 さらに、タイトルにもなっているように、今回は猫が主要な役割を果たしているが、猫とハードボイルドの相性はあまり良くないのではないか? パートナーの華と猫の二人に押されて、〈俺〉のハードボイルドな生き方が徐々に崩されかけている・・・さて、どうする〈俺〉? |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
カーソン・ライダー刑事シリーズの第二作は、解説者が書いている通りの“まさに全方位的なエンタテイメント・ミステリ”だ。
蝋燭と花で異常なまでに装飾された女性の遺体が発見され、それが30年前に殺された連続殺人犯につながっており、さらに現在の連続殺人とも密接に絡まって行く・・・・。 デビュー作に続くサイコミステリーとして、前作の印象を上手に生かしながら話が展開されて行く。しかし、前作が効果をあげているのは登場人物のキャラクターにまつわる部分だけであり、本筋は本作だけで本格派のミステリーとして完成しているので、この作品からライダー刑事シリーズに触れた読者もとまどうことはなく、面白く読めるだろう。特に、謎解きの上手さ、伏線の張り方の巧みさには舌を巻くしかない。読み終ったときに初めて気づかされる伏線の多さと答えの深さには、多くの読者が感動するしかないだろう。 それでもオススメポイントを「7」にしたのは、「百番目の男」、「ブラッド・ブラザー」に比べると技巧的な部分が勝ち過ぎていて、犯行動機や犯人像にやや物足りなさを感じたせいである。とはいえ、多くの方にオススメできる作品であることは間違いない。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
主人公は引退したFBI捜査官なので何の目新しさもないが、心臓移植手術後わずか60日余りで捜査に乗り出すという設定が極めてユニーク。しかも、捜査を依頼してきたのが心臓を提供したドナーの姉というのだから、そのユニークさは飛びぬけているというしかない。
病み上がり(というか、まだ治療中?)なので激しいアクションはできないが、それでも格闘シーンなどもあって読者をハラハラさせる主人公だが、FBI捜査官らしいち密な分析で犯人を割り出していくのが基本で、この謎解きの部分も非常によくできている。また、FBIものによく見られる地元警察との軋轢に、退職した上に私立探偵のライセンスも持っていない(つまり、なんの捜査権もない)主人公が絡んで複雑なパワーゲームを繰り広げるのも面白い。さらに、ハードボイルドには欠かせない恋人や家族との葛藤も丁寧に描かれていて、実に素直に読むことができた。 多くのハードボイルドファンを納得させる傑作だと思う。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
カーソン・ライダー刑事シリーズの第一作というより、ジャック・カーリイのデビュー作。
いや、あまりの上手さに驚いた。これで本当にデビュー作なんだろうか? ジェフリー・ディーヴァーを追いかける作家という評価も買いかぶりではないと実感した。 残念なことに(?)第4作の「ブラッド・ブラザー」を先に読んでしまったので、兄・ジェレミーの存在がそれほど衝撃的ではなかったが、本作から読み始めた人にはこの兄弟関係が強いインパクトを与えただろう。ただ、このシリーズ全体を貫く重要な要素になっているカーソンにつきまとう家族、過去の重さや深さは「ブラッド・ブラザー」の方がよく描けていたと思う。 ストーリーは、サイコサスペンスの王道を行く、首無し連続殺人事件。このなぞ解きだけでも十分に楽しめるレベルだが、登場人物のキャラクターやエピソードがしっかりしているので、物語として非常に厚みがあり、たんなるサイコ物ではない面白さがある。シリーズとして成功しているのも、当然だろう。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
カーソン・ライダー刑事シリーズの最新作。シリーズものを途中から読んだので、シリーズの最初から読んでいる読者とは面白さが違うと思うが、それでも十分に満足できる傑作だ。
主人公が刑事で、その兄がシリアル・キラーのサイコパスという、かなりあざとい設定だが、しっかりした構成と緻密なストーリー展開で違和感なく作品世界に入って行けた。 連続殺人事件の犯人探しと警察内部での対立や人間関係の面白さなど、読みどころは沢山あるが、犯人判明のどんでんがえしが強烈で、これだけでも高く評価できるだろう。 さらに、今後のシリーズ展開への期待を高めるラストシーンも印象的だった。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
Amazonでは批判的というか、面白くなかった、評価できなかったという書評がかなりある通り、好き嫌いが分かれる作品だと思う。その要因はドキュメンタリー的手法であり、登場人物の背景をきわめて丁寧に描いてドラマを作り上げて行く構成であり、なぞ解きより時代背景を重視した社会派小説的アプローチにあるのだろう。しかし、個人的には「模倣犯」に匹敵する傑作だと評価した。
これはあくまで趣味・嗜好の問題なので作品の出来栄えとはまったく無関係だが、「魔術はささやく」、「龍は眠る」、「蒲生邸事件」などのSF的ミステリーの方は、もう読む必要がないかなと思っている。 さて、作品は「占有屋」という奇妙な存在を核に、現代社会が抱えてしまった危機、血縁や絆など家族のあり方の問題、人間の欲望や感情など、さまざまな要素が絡み合って、きわめて重層的で重厚な作品世界を作り上げて行く。読み進むにつれて、なぞ解きの面白さが深まるとともに、それ以上に、現代の家族が抱える問題の複雑さに引き込まれ、まさに社会派ミステリーの傑作だ。 最近の宮部みゆきはファンタジーや時代小説が中心で、社会派的な作品が見られないのが、本当に残念だ。社会派への再挑戦を期待したい。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
女刑事・音道貴子シリーズの短編集第二弾。
表題作の「未練」は男同士の絆が壊れる様を描いているが、こういう話は作者は苦手なのか? いつもの切れ味の鋭さが無く、凡庸な印象。むしろ、サイドストーリーの音道の友人に紹介された男との付き合いの話の方が、音道らしさにあふれていて面白かった。 いつまでたっても大人になりきらず、不器用でまっすぐな音道の生き方は、読者をハラハラさせると同時に、こんなにぶれない人もいるんだという爽快感を与えてくれるが、本短編集では、それがいっそう強調されているように感じられた。 全体を通して、音道のファンには彼女の性格をより深く知って行く面白さがあるだろうが、初めての読者にはややストーリーの深みの無さが物足りなく感じるのではないだろうか。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
ある書評では「サーフ・ノワール」と分類されたそうだが、サーフとノワールという、どちらかと言えば正反対の言葉をつないで表現されているところに、この小説の本質がよくあらわされている。
南カリフォルニア・サンディエゴを舞台にした、サーファーのPI小説とくれば、明るくノー天気な主人公かと思うが、ところがどっこい、ドン・ウィンズロウにかかると明るいだけでは終わらない。確かに、いつも軽口をたたき、仕事よりサーフィンが生きがいで独身という主人公は、一見、典型的な肉体派に見えて、実は知性的で深い洞察力を秘めている。彼を取り巻くサーフィン仲間たちも、軽薄な外見とは裏腹にそれぞれに悩みやトラウマや葛藤を抱えている。 片方には、これまでにない大きな波への挑戦というサーフィンの王道の話があり、もう一方では少女売春組織との戦いという人間の暗部をえぐるような話が展開される。しかも、場面展開が早いので、読む側の気分は上昇と下降を繰り返すジェットコースターに乗せられたようになる。 ただ、両方の要素が並び立ち過ぎているせいか、いまいち、話に深みが足りない気がした。 これが新シリーズの第一作ということなので、今後、どう展開していくのか期待したい。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
女刑事・音道貴子シリーズの短編集、第3弾。
表題作の「嗤う闇」は犯人と被害者の関係、音道の恋人が犯人と間違えられる設定にちょっと違和感があり、いまひとつ満足できなかったが、シリーズの精神はしっかり受け継がれているし、音道のキャラも全開で、ファンには楽しめるだろう。 それよりも、よき相棒?滝沢が登場する「木綿の部屋」が、ストーリーも人物描写も上出来。滝沢のキャラクターに深みを加えて、秀逸。これまた、音道シリーズの愛読者には必読の一作と言えるだろう。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
質量ともに、超大作。評価を9にしたのは、あまりに長編過ぎて読む人を選ぶだろうから、というのは冗談だが、文庫本で5巻、約2500ページのボリュームに圧倒された。さらに、読み始めればぐいぐい引き込まれてゆく、まさに英語版ペーパーバックの惹句の常套句“page-turner”そのままの圧倒的な筆力にも感服した。
ストーリーは連続女性誘拐殺人事件だが、描かれているのは単なる犯人探しでもなく、サイコパスの恐怖でもなく、「劇場型犯罪」とは何か、「劇場型犯罪」が生まれる社会とは何かを追求した社会派ミステリーと言える。主要な登場人物だけを取り上げても、犯人、被害者の遺族、警察、ジャーナリスト、犯人の友人とその家族、遺体の発見者など多岐に渡り、それぞれの背景や視点からの言動がぶつかり合って巨大な群像劇が展開される。さらに、周辺的な登場人物もしっかりとキャラクター設定されており、なるほどと思わせるエピソードが繰り広げられるため、ストーリー構成はきわめて重層的で複雑に絡み合ってくる。しかし、キャラクター設定が確立しており、また筆者の構成力が素晴らしいため、読み難さは一切感じなかった。 あえて難癖を付けるとすれば、登場人物同士の出会い方に相当なご都合主義があると思うし、クライマックスに向けて重要だと思われるエピソードが中ぶらりのままにされているのが気になるが、これだけの数の登場人物の壮大なお話しをまとめあげるには仕方ないことだろう。 傑作エンターテイメントとして、どなたにもお奨めできる。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
上下2巻、800ページを読み終えての感想は、一言でいえば、重くて複雑な小説だった。
ケネディ暗殺からベトナム戦争終結までの時代のアメリカの暗部でうごめいた、有名、無名の人物たちが織りなす、きわめて重層的で精緻に構成された政治的ノワールの世界。つまり、エルロイ・ワールド全開の物語だ。 物語の第一印象として、いわゆる「善人」が登場しない。もちろん、そんなことはないのだが、続々登場する悪人たちの存在感が強すぎて、善人は吹っ飛んでしまっている。それだけキャラクターの立った人物が続々登場し、複雑に絡み合ってストーリーが展開するため、読者側が強いられる緊張感も半端ではない。エルロイ・ワールドを楽しむことは、知的興奮はあるものの倫理的、情緒的に非常に疲れることは間違いない。 反則技かもしれないが、巻末の「訳者あとがき」を先に読んでから本文を読めば良かった気がしている。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
日本推理作家協会賞を受賞している作品であり、一般的には高い評価を得ているが、個人的には合わないタイプの作品。日本SF大賞を受賞した「蒲生邸事件」と同じ読後感だった。
物語のキーポイントにサイキック、霊視能力者が登場し、霊能力で物語を展開させていくというところで、興味を持てなくなってしまった。それでも最後まで読み通せたのは、作者のストーリーテリングのうまさだと思う。 |
||||
|
||||
|