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iisan さんのレビュー一覧
iisanさんのページへレビュー数650件
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2023年発売の刑事・加賀シリーズ第11作。高級別荘地で起きた大量殺人の真相を加賀刑事が暴いていく、謎解きミステリーである。
一晩に5人が殺害された事件。すぐに犯人は見つかったのだが、犯人は動機を明らかにせず、被害者たちとの関係は不明のままだった。そこで被害者の関係者が検証会を開くことになり、休職中だった加賀は、夫が被害に遭った鷲尾春那に依頼され同席する。関係者間の証言は矛盾、嘘が混じり、事件の構図は一向に判明しなかった。それでも加賀は関係者の動きを時系列で整理することで大まかな絵柄を作り上げた。そして、二度目に検証会が開かれ、加賀は集まった人々に驚くべき真相を語り出した・・・。 閉鎖的な別荘地、優雅な別荘人種のドロドロした人間関係、黙秘を続ける犯人という古典的なミステリー要素が上手に組み合わされ、古典的で陳腐な話が今風の読みやすいエンタメ作品に仕上がっている。 加賀シリーズのファンはもちろん、謎解きミステリーのファンにオススメする。 |
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米国ディープサウス発の法廷ミステリーの第一人者による「ビルボード弁護士」シリーズ第2作。保守的な町で保安官殺しという厄介な事件を引き受けさせられたビルボード弁護士が、次から次へと襲ってくる苦境に必死で立ち向かう、胸熱リーガル・ミステリーである。
ビルボード弁護士リッチの元に持ち込まれたのは、荒んだ生活を送る青年・トレイが高校時代の級友で保安官補のケリー殺害容疑で逮捕された事件の刑事弁護だった。保安官殺しという町中の反感を買う事件の弁護を、刑事裁判の経験が一件しか無いリッチが引き受けたのはドラッグ密売組織のボス・ケイドに「引き受けなければお前の周囲がみな滅ぶ」と脅迫されたからだった。被告のトレイは口をつぐみ、明らかになる証拠はトレイの有罪を示唆するものばかり。さらに被害者ケリーの違法行為を内部調査していたダニエルズ刑事が行方不明となり、リッチは調査の手掛かりを失ってしまう。八方塞がりの苦境を、リッチはどう乗り越えるのか? ドラッグ密売組織の脅迫、保安官事務所の隠蔽工作、さらにはリッチ自身や姪や恋人の依存症など根深い問題が重なり合い、絡み合い、息詰まる状況に追い込まれたリッチが、不屈の闘志で立ち向かい、最後に勝利をおさめるという、いつものロバート・ベイリーの胸熱ドラマである。ただ本作は事件構成要素が複雑過ぎて、登場人物も多く、何度も人物紹介に立ち戻らないと読み進められなかったためスピード感は味わえなかった。 ロバート・ベイリーのファン、法廷ミステリーのファンにオススメする。 |
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植草甚一氏が絶賛した幻の名作の本邦初訳。謎が多い富豪の名誉毀損訴訟を引き受けた若き弁護士が殺人、脅迫に巻き込まれる都会派のハードボイルドである。
表4の紹介や売り文句では、高層アパートから飛び降りようとする娘を助けるために、殺人の容疑をかけられている孤独な富豪が自身の過去を洗いざらいに語りかける心理サスペンスの印象だが、読後感としては未完成のハードボイルドと言える。殺人事件の謎解きはパターン化されたものだし、飛び降りを図る娘の動機、それを防ぐための周囲の働きかけもイマイチ説得力がない。歴史的価値以外に注目すべき点は無かった。 古き良きハードボイルドを味わいたいときにオススメする。 |
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2025年のN.Y.タイムズのベストセラーリストで一位を獲得したノン・シリーズ作品。ジョージア州南部の小さな街で二人の少女が誘拐された事件を起点に、女性保安官補が町の奥深くに潜む闇を明らかにする警察ミステリーである。
保安官補のエミーは父のジェラルド保安官と共に15歳の少女二人が誘拐・殺害された事件で犯人・アダムを検挙し刑務所に送り込んだ。12年後、アダムが釈放され地元に帰ってきた直後に、14歳の少女が失踪した。またアダムがやったと激怒する地元民がアダムの家に押し掛け、それを制止しようとしたジェラルドは12年前の被害者の父親に銃殺される。父から自分の後継保安官になるように説得されていたエミーは父の遺志を継ぎ、必死で捜査に当たる。そこに捜査の助力を依頼したF.B.Iから送り込まれて来たのがジュード特別捜査官で、何かと口を出すジュードにイラつきながらもエミーは力を合わせて捜査を進めた…。 小さな町に潜む小児性愛者を炙り出す警察捜査がメインだが、それ以上に南部の町に根付く一族の歴史、エミーを中心にした家族間のドラマが大きな比重を占めている。従って、犯人探し、動機の解明というミステリーの本筋がややモタモタした展開で冗長。それでもいつも通りのスローターの世界で、被害に合う女性たちの怒りと哀しみが全編に溢れている。 ノン・シリーズ作品なのでスローターが初めてという方にも楽しめる警察ミステリーとしてオススメする。 |
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2009年から12年にかけて雑誌連載された御茶ノ水署シリーズの第5作。梢田、斉木の凸凹コンビに五本松、課長になった立花が加わり、地元での覚醒剤密売を摘発するユーモア・警察ミステリーである。
御茶ノ水署管内の大学で覚醒剤が密売されているとの情報で密かに内偵を始めた梢田、斉木だが、何故か空振り続き。情報をもたらした老人にからかわれているような気がするのだが、警視庁の管理官から直接指示され仕方なく調査を続けた。だんだん行き詰まってきた二人は、違法スレスレの強引な手段で強行突破しようとするのだが・・。 いつも通り、不真面目ながら最後に問題解決してしまう、ありえないコンビの言動が笑わせる。ただ、謎解き、捜査を無理にユーモラスにするための余計なエピソードが多過ぎてストーリーが大迷走した感を否めない。このシリーズは短編集の方が切れ味があって良かった。 シリーズ愛読者にはオススメする。 |
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本作がデビュー2作目(本邦初訳)ながら2025年度エドガー賞最優秀長編賞を受賞した英国新人女性作家の長編ミステリー。テムズ川で発見された身元不明女性の溺死事件と15年前の女子学生失踪事件が繋がっていく、警察ミステリーである。
事故と思われた溺死事件だが、カイウス・ボーシャン警部は有力下院議員から「死亡した女性は、30年前の企業年金横領で姿を消したCEOと関係がある。再捜査しろ」と命じられる。さらに、観劇中のボーシャンはすぐ側の席で男性が死んでいた事件に遭遇する。身元を調べると、その男は素人探偵で15年前に起きた14歳の女子学生失踪事件を調査していたことが分かった。全く無関係に見えた2つの事件だが捜査を進めると周辺人物たちに思いがけない関係が隠れていることが判明した。 2つの事件の関係を探り、背後にある闇を暴くのがメインストーリー、それに重ねてボーシャンの捜査チームのメンバーの人となり、ラブロマンスがサブストーリーで、彩り豊かなエピソードが展開される。そこには英国ならではの階級格差、人種差別、性差別がユーモラスに盛り込まれており、物語全体にモワッとした風俗小説のテイストもある。エドガー賞最優秀長編賞にしては軽く、小粒だが、それが現代性とも言えるのだろう。 英国では3作目まで出ているボーシャン警部シリーズの2作目であり、第1作の流れを受けたエピソードが散見されるので、2作目が初訳というのは違和感がある。 本格派の謎解きというより、現代風俗ミステリーとして楽しむことをオススメする。 |
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2023年刊の書き下ろし長編。バルセロナで暮らす日本人の石工とその娘が殺人事件に巻き込まれ、サグラダ・ファミリアにまつわる陰謀を見つける現代史ミステリーである。
1991年のある夜、サグラダ・ファミリア建造に携わる石工の父と一緒にバルセロナで生活する志穂は、仕事に出たまま帰宅しない父を探していてサグラダ・ファミリアの尖塔に吊り下げられている死体を発見した。遺体は父の親しい同僚で、父の失踪もこの事件に関係していると考えた志穂は建造関係者を訪ね歩く。すると、ファミリア建造を進めたい勢力と反対する勢力が激しく対立する歴史に直面し、志穂も否応なく巻き込まれていった…。 殺人の裏に歴史をひっくり返す陰謀が・・・というミステリーだが、物語の比重はガウディ、サグラダ・ファミリア、石工の働きのガイドに置かれている。犯人や動機は最後にひと捻り、ふた捻りあるものの殺人の謎解きは単純。ミステリーとしてのコクがない。 ガウディ、サグラダ・ファミリア、バルセロナに関心がある方にオススメする。 |
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本邦初訳のネロ・ウルフ・シリーズ第15作。1952年刊の古典で、P.I.ものの王道を行く犯人探しミステリーである。
ストーリー展開は動きがスピーディーで謎解きの構成も破綻がないのだが、いかんせん時代状況が古過ぎて、現代のP.I.ものに慣れた読者には物足りない。 古典的名作の資料価値を重んじる方にオススメする。 |
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2018年刊の書き下ろし長編。両親の放火による無理心中でひとり生き残ったヒロインが17年後、過去と決別するために復讐心をかき立てるサスペンス・ミステリーである。
悪徳金融業者に追い詰められた両親が実家に火を放ち、両親と幼い弟妹を亡くした幸子は17年後、婚活パーティーで出会った隆哉と交際するのだが、自分の生い立ちを告げることができなかった。そんな過去と決別するために両親と弟妹が眠る墓に参った幸子は、子供たちを乗せた車で海に飛び込み、自分だけが生き残ったというシングルマザーの雪絵に出会う。あなたはなぜ生き残ったままでいられるのか、雪絵に自分の母の姿が重なって見えた幸子は被害者として加害者に復讐しなければと思い込む。さらに両親を追い詰めた男・郷田がまた借金返済に困った人を自死に追い込んだことを知り、郷田を破滅に追い込もうとする…。 最後は意外な真相が明らかになり綺麗な話にまとめられるのだが、そこまでのプロセスは怖すぎる。被害者と加害者の立場、力関係のあれこれがちょっとくどい。もう少し全体が整理されてると良かった。 下村敦史に期待するレベルではないものの、それなりの問題提起があり、読んで損はない。 |
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「猟区管理官ジョー・ピケット」シリーズの第18作。高級リゾート牧場から姿を消した英国人女性の捜索を命じられたジョーが失踪の真相を解明する、人探しアクション・サスペンスである。
世の注目を集める英国人女性セレブ社長ケイトが夏の休暇で訪れたワイオミング州の高級リゾート牧場から姿を消してから半年、新州知事のアレンから呼び出されたジョーは、ケイトの捜索を命じられた。州の法執行機関や犯罪捜査部が失敗続きのため、ジョーに白羽の矢が立ったという。捜査のプロが見つけられないものをなぜ、猟区管理官に任せるのか? 疑問を持ちながらジョーは現地に赴いた。そのリゾート牧場では長女・シェリダンが働いており、彼女の助けを受けることができそうだった。さらに盟友・ネイトが鷹狩り関連での問題解決に協力するのと引き換えに助力を申し出てくれた。しかし、調べを進めるほどに、何者かが卑劣な圧力を掛けてきた…。 今回は行方不明人探しというP.I.ハードボイルドみたいなストーリーだし、舞台もいつもの大自然が相手ではないこともあり、これまでの作品とは異なる雰囲気がある。だが、熱さと正義感で突っ走るジョーの行動は変わらず、シリーズの醍醐味は十分に味わえる。ただし、事件の背景になるのが女性のエゴ?で、それに振り回されるジョーの悲しさが切ない。 シリーズ愛読者には文句なし、初めての方でも十分に楽しめるアクション・サスペンスとしてオススメする。 |
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オーストラリア発の人気シリーズ第3弾。野外上映会で起きた殺人事件捜査に、おせっかいなメンバーたちが絡んでいくおなじみの謎解きミステリーである。
クリスティ原作「地中海殺人事件」の野外上映会に参加したマーダー・ミステリ・ブッククラブ会員の目の前で、若い女性の絞殺死体が発見された。こんな大事件を直接目にしては、黙って見過ごすことができないメンバーたちは、警察の捜査に満足できず、警察に嫌がられながらもどんどん調査を進め…。 素人探偵集団が警察の鼻をあかす、いつものパターン。犯行の動機、手段、謎解きにひと工夫があり、退屈しない。だが、本格謎解きというよりは登場人物たちの人間ドラマを楽しむ方に重点が置かれている。挿入されるエピソードや会話もコメディ色が強く、サスペンス・ミステリーではない。オーストラリアの夏の風物詩という野外上映会の雰囲気は面白かった。 シリーズ愛読者の期待を裏切らない仕上がりで、コージー・ミステリーのファンにもオススメできる。 |
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現代アメリカ文学の巨匠の1985年の作品。本国では20世紀後半のアメリカ文学屈指の傑作と呼ばれるピカレスク小説であり、骨太のロードノベルである。
19世紀半ばのテキサス、メキシコを舞台に、14歳で家出した少年が放浪の末に、インディアンを虐殺し頭皮を剥いで金を稼ぐ荒くれ者たちの私設軍に加わり非道な日々を送るのがメイン・ストーリー。繰り返されるエピソードは正視に耐えない、残虐なもので、それを思想化する登場人物たちの思考、言動は常軌を逸したものとしか言いようがない。 ページ数は430ページほどだが隠喩や思考の飛躍が複雑で、ちゃんと付いていけてるのか自信がなくなり、読み通すのがハードだった。 自分の読書力では評価できず、従ってどなたにオススメできるのか分からない。 |
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「被害者支援課」を受けた新シリーズ「総合支援課」の第1作。若い女性刑事が新たな業務に戸惑いながらも奮闘する警察小説である。
加害者家族をも支援するために従来の「支援課」から改組された「総合支援課」に配属された柿谷晶。最初の任務となったのが名門高校生同士の殺人事件で、加害者の父親と弟をケアするために所轄署を訪れると案の定、迷惑がられた。そんなことにはめげない熱血漢の柿谷はぐいぐい捜査に介入し、事件の真相を明らかにしていく…。 加害者家族の支援という、警察というより弁護士的な業務の難しさが読みどころ。さらに被害者、加害者、捜査陣の板挟みになりながら指揮命令系統を無視して突っ走るヒロインの熱さがセールスポイントか。言ってみれば池井戸潤のビジネス小説の警察版である。しかし、このヒロイン、同僚だったらかなりウザい(笑) 池井戸潤のファン、堂場瞬一のファンにオススメする。 |
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2024年のエドガー賞ノミネート作品。日本初登場だが、アメリカではすでに3作が刊行されている人気シリーズの第1作である。
2022年、ミネソタ州の森の中で、1980年に起きた3人の少女失踪事件の当事者のひとりが生き埋めで殺された。42年も前の事件の被害者が、なぜ今になって殺されたのか? 被害者が42年前の事件の少女が身に付けていたネックレスを持っていたため、未解決事件捜査課が担当することになり、女性刑事・ヴァンがリーダーとなった。思い込みが激しく、ややもすると空回りしがちなヴァンをサポートするのが沈着冷静で辣腕の科学捜査官・ハリーで、二人は危ういバランスを保ちながら徐々に真相に迫っていく…。 何十年も前の事件と現在の事件が絡み合い、元気過ぎる若い女性刑事と冷静なベテラン男性刑事がコンビで活躍するという、既視感たっぷりの物語。ヒロインがイジメに合って警察を辞めたというのが目新しい。しかし、複雑な過去を持つヴァンが現実を写した悪夢を見て、それが解決に直結するというのがなんとも気恥ずかしい。サイコ・ミステリーかと思ったら、ホラー・ファンタジーな物語だった。 時間の無駄とは言わないが、「ジェフリー・ディーヴァー絶賛」には気を付けた方がいい。 |
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スウェーデンの人気ミステリー作家が有名コメディアンと組んだシリーズ作品の第1作。風光明媚な田舎町で起きた殺人事件をストックホルムのエリート捜査官と地元の新人女性警官が解決するバディもの警察ミステリーである。
国家殺人班の敏腕捜査官・ヴィンストンが病気療養を兼ねて、離婚した元妻と暮らす娘の誕生日に招待されスウェーデン南部の田舎町を訪れる。体調不良を回復させるため仕事から離れるように厳命されていたのだが、不動産ブローカーの女性が死体で発見された現場に出会し、捜査に協力することになった。事件を担当するのは地元の駆け出しの女性刑事・トーヴェで、意欲はあるのだが実力が伴わない。必然的にヴィンストンがリードすることになり、トーヴェは面白くない。あれやこれやと衝突しながらも多少は理解し合い、事件の解決に向けて力を合わせていく…。 都会のエリート男と田舎の元気娘という、ありがちなバディ物語。ストーリー展開も分かりやすく、スウェーデンの田舎町の風俗も面白く、サスペンスはないが退屈しないで読める。 バディもの、北欧警察ミステリーのファンなら楽しめること間違いなし。 |
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新競馬シリーズの邦訳第2作(英語版では第8作)。競馬の聖地・ニューマーケットで起きた厩舎火災の調査に派遣された危機管理コンサルタントが、高名な調教師一家の秘密を暴く犯人探しミステリーである。
弁護士で危機管理会社スタッフのハリイはダービーの本命視されていた馬を含む7頭が焼死した火事の原因を調査するために、火事が起きた厩舎に派遣された。厩舎を管理する名調教師と名高いオリヴァー一族に接触すると、家族間に深刻な諍いがあるようだった。程なく、焼け跡から人間の死体も発見され事態は殺人事件へと変わっていった。犠牲になったのは一家の末娘で少女の頃から問題児だったゾーイのものと判明。薬をやっていたゾーイが火を放って自殺したのではとの見方も出てきたが、ハリイは事件の背後に複雑な人間関係があると推察した…。 舞台は競馬の聖地、登場人物は競馬関係者だが物語の骨格は犯人探しミステリーである。主人公の調査の進め方、犯行動機の論理性などは英国ミステリーの伝統を受け継ぎ、安定感がある。ただ、物語の深み、読書の楽しみの面では前作「覚悟」に及ばない。というか、前作が傑作すぎたのかもしれない。 新旧の競馬シリーズの愛読者には絶対のオススメ、本作から手に取る人も従分に楽しめる謎解きミステリーとしてオススメする。 |
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本邦初訳となるイギリス人作家の警察ミステリー。英国ではすでに6作が出ている人気シリーズ「アレックス・キューピディ」シリーズの第5作である。
捜査活動が原因のPTSDと診断され、海辺の観光地・ダンジェネスで休職中の刑事・アレックスは居合わせた同性婚女性の結婚披露パーティーで、花嫁に「人殺し!」と叫びながらを襲おうとした中年女性を阻止した。その女性は花嫁・ティナの元夫の母親で、7年前に行方不明になった息子はティナに殺されたのだと主張していた。同じ日、町では引退した実業家夫婦の惨殺死体が発見された。警察上層部からは「カウンセリングを受け、治療に専念するように」と厳命されていたアレックスだが二つの事件に興味を惹かれ、迷惑がられながら捜査に口出しし始める…。 7年前の失踪と現在の二つの死体の間に、何があるのか? 聞き込みと推理で謎を解く警察(休職中だが)ミステリーの基本に忠実なストーリー、個性的な登場人物、風光明媚な海辺の町が読者を飽きさせない。しかし、ヒロインと周辺人物の人間関係にかなりの重点が置かれている作風なのに、前4作の内容が分からないため、読んでいてもどかしい。アレックスの猪突猛進も共感しにくい。 いかにもな英国警察ミステリーであり、読んで損はないと消極的にオススメする。 |
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よくもまあ、これだけ書き続けられるものだと感心する「イブ&ローク」シリーズの第56作。殺人の謎、人身売買組織の摘発をメインに据えたロマンス・ミステリーである。
N.Y.の寂れた街角で13歳の美少女の死体が発見された。一見、強盗のように見えたのだが、イブはそれを偽装と見破る。清純な仕立ての制服、それとは真逆のセクシーな下着、いずれもきわめて高価な特注品のようだった。わずかな手がかりを追うイブの捜査チームと、陰に陽にそれを助けるロークは執念の捜査で未成年の少女たちを飼育する「アカデミー」の存在を発見する。 巧妙に姿を隠す巨大な社会悪を暴く警察という謎解きミステリーの骨格を保ちつつ、窮地に陥ったヒロインが必ず大富豪の王子に助けられるロマンスの王道の展開。これを受容できるか否かで評価は真っ二つになるだろう。 シリーズ愛読者にオススメする。 |
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妻が夫を金槌で殴殺するという、いかにもミステリーな始まりだが、終わってみればいつもの伊坂幸太郎魔術に惑わされた感じ。
伊坂ファンにならオススメ。 |
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2011年に発覚した尼崎連続殺人事件に想を得たクライム・フィクション。事件を起こした者、巻き込まれた者、捜査した者という複数視点から全貌を解明する構成だが、時系列が入り乱れるので最初はやや分かりにくい。
事件の細部の描写は丁寧で巻き込まれた者たちの理性が壊れる様やリンチの場面は読んでいて胸苦しくなる。しかしノン・フィクションではないのだから、もっと心理的な追究があれば良かった。これまでの著者の作品に比べるとワクワク、ドキドキが無いまま終わってしまった。 ミステリー、サスペンスとして読むには物足りない。 |
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