遥かな夏に
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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映画が好きで ぴあを読み毎週どこかに映画を見に行ってたことを | ||||
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2023年〜24年の文芸誌連載の加筆、改題作品。幻の作品と思われた映画のフィルムが発見されたのきっかけに、定年退職した老人が自分も関わった50年前のベルリン映画祭での出来事を回顧し、人探しをするノスタルジックな人探しドラマである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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ストックホルムの密使、ベルリン飛行指令、エトロフ発緊急電の三部作とは違う作者のメッセージが伝わる。現在、70歳以上の方は読むべきです。本書は、この年代が生きてきた日本社会がどういうものであって、我々は何をしてきたか自省を促す。在日朝鮮人と韓国人、成田空港反対運動の中での農民と行政、日安全保障条約と沖縄、学生運動と権力の衝突。我々世代はこの時代の中をどこに身を置くかは別にして平等に生きてきた。今の時代にはない葛藤、生きるための少ない選択、決して望まない結果がゴロゴロしていた。本書は心に刺さる。ある意味ノンフィクションとして読み終えた。73歳の人生を振り返ることができました。「そうだったなあ」「いろいろあったなあ」「皆どうしてる?」と思う人も少なからず居ると思います。 | ||||
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佐々木譲の著作を読むのは、「秋葉断層 特命捜査対策室」(2024/11月)以来になります。 「あなたは、わたしの祖父ですか?」 主人公、本庄裕也は初対面の女性、大宮真紀から祖母の存在と或る映画について教えてほしいと問われます。真紀の祖母、安西早智子はシンガー・ソング・ライターでありその映画の主題歌を歌っていました。その映画「逃げた祝祭」は(本庄はその映画の関係者でしたが)ベルリン映画祭で上映され、或る事情から手続き上のミスがあったとして正式の記録からは削除された映画でした。 そこから1976年、夏に始まる物語が現在へと繋がり、本庄はまるで<西海岸私立探偵小説>の探偵のように己が過去を回想しつつその当時、その映画に携わった監督、主演俳優等を尋ね歩きます。一人の女性の祖父探しのスリラー。祖父は生存しているのか?誰なのか?正式の記録から削除された映画が作られた時代は、いかなる時代だったのか? 私はスリラーの読み手ですので、それらの謎解きへと向かう道筋を語ることはできません。また、或る真相が明らかになる<きっかけ>については偶然性に支配されているように感じられてあまり納得のいくものではありませんでした。 しかし、この一人の女性の祖父探しの物語に重ね合わせるように主人公のアドレッセンスとその終わりが語られることによって、作者自身の(同じ1970年代を過ごしたであろう時代の)「映画」への静かな情熱と想いが語られていることに深く心を打たれました。 私にとっても「映画」は魔物であり、常に憧れの対象でした。この物語は、その映画を語りつつ1970年代という激動の(不思議な?)時代について或る側面から光を照射してくれています。ヌーヴェル・ヴァーグ以降、学生運動、ロベール・アンリコ、「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」、そして或る国家の歴史の流れ。 私は、或る女性が或る人に或る贈り物をするシーンに涙を禁じ得ませんでした。常に傍に寄り添う人は、寄り添われた人が何を欲しているのかが理解できるのでしょうね。それをこの世界ではなんと呼ぶのでしょうか? 1976年。私はまだ月2回「キネマ旬報」を購読しつつ、せっせと映画を見ては、極くたまにですが「読者の映画評」に投稿するような映画ファンでした。よって、この時代の「愛のコリーダ」事件、先頭を走っていた一人、ベルナルド・ベルトリッチによる映画群、日活ロマンポルノが引き起こした論争など、よく覚えています。この小説の登場人物たちがその時代の映画について「ベスト・スリー」を挙げよと問われますが、浅薄な知識しか持たない未熟な私がもし問われたとしたらその場の状況に応じて知識人好みの<ヨーロッパ映画>を挙げつつもアメリカン・ニュー・シネマ以降のコッポラ、フリードキン、ピーター・ボグダノヴィッチ映画に走るような気がします(笑)。娯楽性の高い映画の中に確かに在る<霊性>に触れることが好きだからかもしれません。 その点、佐々木譲は構築する幾多の物語を通して秀れた「映画」を撮り続けています。拝礼。 □「遥かな夏に」(佐々木譲 佐々木譲) 2025/1/18。 | ||||
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