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iisan さんのレビュー一覧

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書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.40pt

レビュー数1452

全1452件 1~20 1/73ページ

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No.1452: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

高級別荘地のドロドロの男女関係。古典的だが面白い。

2023年発売の刑事・加賀シリーズ第11作。高級別荘地で起きた大量殺人の真相を加賀刑事が暴いていく、謎解きミステリーである。
一晩に5人が殺害された事件。すぐに犯人は見つかったのだが、犯人は動機を明らかにせず、被害者たちとの関係は不明のままだった。そこで被害者の関係者が検証会を開くことになり、休職中だった加賀は、夫が被害に遭った鷲尾春那に依頼され同席する。関係者間の証言は矛盾、嘘が混じり、事件の構図は一向に判明しなかった。それでも加賀は関係者の動きを時系列で整理することで大まかな絵柄を作り上げた。そして、二度目に検証会が開かれ、加賀は集まった人々に驚くべき真相を語り出した・・・。
閉鎖的な別荘地、優雅な別荘人種のドロドロした人間関係、黙秘を続ける犯人という古典的なミステリー要素が上手に組み合わされ、古典的で陳腐な話が今風の読みやすいエンタメ作品に仕上がっている。
加賀シリーズのファンはもちろん、謎解きミステリーのファンにオススメする。

あなたが誰かを殺した
東野圭吾あなたが誰かを殺した についてのレビュー
No.1451:
(8pt)

嘘と野望と権謀術策がドロドロに。まさに政治の世界。

政治ハードボイルドが得意なロス・トーマスの80年代の傑作。
個性が強いというかクセがあり過ぎる主人公たちが、何が何だか分からないうちにどんどん話を広げていく。登場人物の人間関係、事件の背景が複雑で読みにくいが慣れれば面白くなる。オススメだ。
悪党たちのシチュー
ロス・トーマス悪党たちのシチュー についてのレビュー
No.1450: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

60年経っても古びない、衰えないシッド・ハレーの立ち姿

新競馬シリーズの第11作(邦訳は3作目)。競馬界を侵す不正を阻止するためにシッド・ハレーが危険を顧みず奮闘する、血湧き肉躍る競馬ミステリーである。
ハレーが同時期に騎手として競っていた調教師から「八百長を強要されている。助けてくれ」と電話があった。競馬協会の監視機関も見抜けない巧妙な手口で騎手や調教師を巻き込み、不正の罠を広げているという。競馬の公平さを何より大事にするシッドは見過ごすことができず、火中の栗を拾うことになる。同じ頃、ギクシャクし始めていた妻・マリーナはオランダに住む父の容態が悪いことを口実にオランダに帰り、しばらく距離を置きたいという。仕事でも家庭でも苦境に陥ったシッドだったが、それでも正義のために歯をくいしばって戦うのだった・・。
「大穴」で初登場したのが1965年。もう半世紀以上、60年ほどになるがシッド・ハレーの魅力は全く変わらない。とにかく読者を熱くさせる永遠不屈のヒーローである。
新競馬シリーズにまた一冊、名作が加わったことは間違いない。オススメだ。
勝機 (文春文庫 フ 37-3)
フェリックス・フランシス勝機 についてのレビュー
No.1449: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

満州事変から大東亜戦争への歴史を改変せよ!

1949年から1931年にタイムスリップし、日本が破滅への道を歩むのを阻止しようという壮大なスケールの歴史改変ミステリーである。
敗戦4年後の夏、労働争議で逮捕された元諜報員の直樹は釈放してくれた守屋教授から和久田教授に引き合わされ、「時間を遡ることができる洞穴がある。そこを通って昭和初期に行き、日本の壊滅に繋がる事態を引き起こした者たちを排除してくれ」という荒唐無稽な提案をされる。一旦は断ったのだが、GHQに追われるトラブルに遭遇した直樹は追及の手を逃れるためにタイムスリップを決意する。同行するのは元同僚の与志と満州からの引揚者の千秋だけ。綿密な計画は立てられず、きちんとした支援組織があるはずもなく、それでも3人は洞穴に入って行った・・・。
満州事変を引き起こそうとする関東軍の参謀たちを、たった3人で排除するというアクション・サスペンス。歴史的事実と奔放な想像力が絡み合うストーリーは魅力たっぷり。佐々木譲ならではの「壮大なほら話」が楽しい。オススメだ。
時を追う者
佐々木譲時を追う者 についてのレビュー
No.1448:
(7pt)

悩みが多過ぎるんじゃないか、ビルボード弁護士

米国ディープサウス発の法廷ミステリーの第一人者による「ビルボード弁護士」シリーズ第2作。保守的な町で保安官殺しという厄介な事件を引き受けさせられたビルボード弁護士が、次から次へと襲ってくる苦境に必死で立ち向かう、胸熱リーガル・ミステリーである。
ビルボード弁護士リッチの元に持ち込まれたのは、荒んだ生活を送る青年・トレイが高校時代の級友で保安官補のケリー殺害容疑で逮捕された事件の刑事弁護だった。保安官殺しという町中の反感を買う事件の弁護を、刑事裁判の経験が一件しか無いリッチが引き受けたのはドラッグ密売組織のボス・ケイドに「引き受けなければお前の周囲がみな滅ぶ」と脅迫されたからだった。被告のトレイは口をつぐみ、明らかになる証拠はトレイの有罪を示唆するものばかり。さらに被害者ケリーの違法行為を内部調査していたダニエルズ刑事が行方不明となり、リッチは調査の手掛かりを失ってしまう。八方塞がりの苦境を、リッチはどう乗り越えるのか?
ドラッグ密売組織の脅迫、保安官事務所の隠蔽工作、さらにはリッチ自身や姪や恋人の依存症など根深い問題が重なり合い、絡み合い、息詰まる状況に追い込まれたリッチが、不屈の闘志で立ち向かい、最後に勝利をおさめるという、いつものロバート・ベイリーの胸熱ドラマである。ただ本作は事件構成要素が複雑過ぎて、登場人物も多く、何度も人物紹介に立ち戻らないと読み進められなかったためスピード感は味わえなかった。
ロバート・ベイリーのファン、法廷ミステリーのファンにオススメする。

リッチ・ウォーターズ (小学館文庫 へ 2-8)
No.1447: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

京都ガイドと嫌味、当てこすりの教科書?

下村敦史だからと読み始めたら、ミステリーと言えば言えなくもないが、他の作品とは全く違う世界だったので肩透かしを喰らった感じ。
京都生まれの著者と祇園生まれの編集者が二人三脚で作ったと後書きにあるように、京都、祇園のあれこれのガイドは充実しているが、ミステリーとしては?マーク。嫌味や当て擦りをオブラートに包む方法は学べる(笑)
告白の余白 (幻冬舎文庫)
下村敦史告白の余白 についてのレビュー
No.1446: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

良くも悪くも60年代のニューヨーク・ハードボイルド

植草甚一氏が絶賛した幻の名作の本邦初訳。謎が多い富豪の名誉毀損訴訟を引き受けた若き弁護士が殺人、脅迫に巻き込まれる都会派のハードボイルドである。
表4の紹介や売り文句では、高層アパートから飛び降りようとする娘を助けるために、殺人の容疑をかけられている孤独な富豪が自身の過去を洗いざらいに語りかける心理サスペンスの印象だが、読後感としては未完成のハードボイルドと言える。殺人事件の謎解きはパターン化されたものだし、飛び降りを図る娘の動機、それを防ぐための周囲の働きかけもイマイチ説得力がない。歴史的価値以外に注目すべき点は無かった。
古き良きハードボイルドを味わいたいときにオススメする。
終止符には早すぎる
No.1445: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

これでエドガー賞??

2023年のエドガー賞最優秀ペイパーバック賞ということで読み始めたのだが、途中から飽きてきた。
認知症が進行する父のために田舎に戻ったミステリー作家・アンディは幼馴染みのレイチェルと不倫関係になった。それを脅迫するメモを受け取った数日後、レイチェルの夫が殺害され、レイチェルと幼い子供2人の姿が消えた。3人の命を救うために脅迫状を警察に提出すべきなのだが、容疑者にされることを恐れたアンディは独力で3人を探そうとする…。
レイチェルの夫の他にも何人かの死者が出て、自分の身にも危険が迫り・・・というメインストーリーに、アンディと父を中心にした家族関係、全員が顔馴染みの田舎町の人間関係が重なり、謎解きプラスヒューマン・ドラマに仕上がっている。しかし、主人公が探偵役にしては底が浅く、調査も同じ場所を行ったり来たりで、正直途中で飽きてくる。脅迫状の犯人の意外さだけが意表をついて印象的だった。
罪人に死を (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョー・ハート罪人に死を についてのレビュー
No.1444: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

長くてスローな話なので、切れ味が悪い

2025年のN.Y.タイムズのベストセラーリストで一位を獲得したノン・シリーズ作品。ジョージア州南部の小さな街で二人の少女が誘拐された事件を起点に、女性保安官補が町の奥深くに潜む闇を明らかにする警察ミステリーである。
保安官補のエミーは父のジェラルド保安官と共に15歳の少女二人が誘拐・殺害された事件で犯人・アダムを検挙し刑務所に送り込んだ。12年後、アダムが釈放され地元に帰ってきた直後に、14歳の少女が失踪した。またアダムがやったと激怒する地元民がアダムの家に押し掛け、それを制止しようとしたジェラルドは12年前の被害者の父親に銃殺される。父から自分の後継保安官になるように説得されていたエミーは父の遺志を継ぎ、必死で捜査に当たる。そこに捜査の助力を依頼したF.B.Iから送り込まれて来たのがジュード特別捜査官で、何かと口を出すジュードにイラつきながらもエミーは力を合わせて捜査を進めた…。
小さな町に潜む小児性愛者を炙り出す警察捜査がメインだが、それ以上に南部の町に根付く一族の歴史、エミーを中心にした家族間のドラマが大きな比重を占めている。従って、犯人探し、動機の解明というミステリーの本筋がややモタモタした展開で冗長。それでもいつも通りのスローターの世界で、被害に合う女性たちの怒りと哀しみが全編に溢れている。
ノン・シリーズ作品なのでスローターが初めてという方にも楽しめる警察ミステリーとしてオススメする。
無垢で清らかなあなたのために (ハーパーBOOKS)
No.1443:
(8pt)

色んな意味で盛り沢山! お腹いっぱいになる

グラスゴー市警の刑事「ハリー・マッコイ」シリーズの第3作。はみ出し刑事のハリーが少女誘拐、ロックスターの不審死、さらに家出少女の捜索など複数の事件に孤軍奮闘するモジュラー型警察ノワール・ミステリーである。
ウマが合わない上司の嫌がらせで、暑の全員が駆り出された少女誘拐事件から外されたハリーはロックスターが不審死した事件を担当させられた。麻薬過剰摂取に見えた事件は検視により殺人の疑いが出てきた。さらに敬愛するマレー警部から家出した姪を秘密裏に探し出して欲しいと依頼される。どれも一人では手に余る事件だったがハリーは独自の人脈を頼りに捜査を進め、やがて事件の背後に絡み合うものがあることに気が付いた…。
一つの事件捜査だけでも難航しているのに、そこに警察内部の人間関係、街の犯罪組織、さらにはIRAまで出てきてストーリーは波乱万丈、行き着く先が容易に見えない。また、ハリーの元妻・アンジェラをはじめとする強烈な個性の女性たちが登場し、幼馴染のギャング・クーパーとの友情物語も華を添える。不審死したロックスターのエピソードも見逃せない。これでもか、これでもかという盛りだくさんの読みどころに圧倒され、最後はお腹いっぱいになる。
エドガー賞最優秀ペイパーバック賞にふさわしい傑作エンターテイメントであり、ミステリーファン、ノワールファンに強力にオススメしたい。
悪魔が唾棄する街 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
アラン・パークス悪魔が唾棄する街 についてのレビュー

No.1442:

大迷走

大迷走

逢坂剛

No.1442:
(7pt)

迷走し過ぎてるかな

2009年から12年にかけて雑誌連載された御茶ノ水署シリーズの第5作。梢田、斉木の凸凹コンビに五本松、課長になった立花が加わり、地元での覚醒剤密売を摘発するユーモア・警察ミステリーである。
御茶ノ水署管内の大学で覚醒剤が密売されているとの情報で密かに内偵を始めた梢田、斉木だが、何故か空振り続き。情報をもたらした老人にからかわれているような気がするのだが、警視庁の管理官から直接指示され仕方なく調査を続けた。だんだん行き詰まってきた二人は、違法スレスレの強引な手段で強行突破しようとするのだが・・。
いつも通り、不真面目ながら最後に問題解決してしまう、ありえないコンビの言動が笑わせる。ただ、謎解き、捜査を無理にユーモラスにするための余計なエピソードが多過ぎてストーリーが大迷走した感を否めない。このシリーズは短編集の方が切れ味があって良かった。
シリーズ愛読者にはオススメする。
大迷走
逢坂剛大迷走 についてのレビュー
No.1441: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

モヤモヤしたまま終わった・・・

本作がデビュー2作目(本邦初訳)ながら2025年度エドガー賞最優秀長編賞を受賞した英国新人女性作家の長編ミステリー。テムズ川で発見された身元不明女性の溺死事件と15年前の女子学生失踪事件が繋がっていく、警察ミステリーである。
事故と思われた溺死事件だが、カイウス・ボーシャン警部は有力下院議員から「死亡した女性は、30年前の企業年金横領で姿を消したCEOと関係がある。再捜査しろ」と命じられる。さらに、観劇中のボーシャンはすぐ側の席で男性が死んでいた事件に遭遇する。身元を調べると、その男は素人探偵で15年前に起きた14歳の女子学生失踪事件を調査していたことが分かった。全く無関係に見えた2つの事件だが捜査を進めると周辺人物たちに思いがけない関係が隠れていることが判明した。
2つの事件の関係を探り、背後にある闇を暴くのがメインストーリー、それに重ねてボーシャンの捜査チームのメンバーの人となり、ラブロマンスがサブストーリーで、彩り豊かなエピソードが展開される。そこには英国ならではの階級格差、人種差別、性差別がユーモラスに盛り込まれており、物語全体にモワッとした風俗小説のテイストもある。エドガー賞最優秀長編賞にしては軽く、小粒だが、それが現代性とも言えるのだろう。
英国では3作目まで出ているボーシャン警部シリーズの2作目であり、第1作の流れを受けたエピソードが散見されるので、2作目が初訳というのは違和感がある。
本格派の謎解きというより、現代風俗ミステリーとして楽しむことをオススメする。
果てしない残響 (ハヤカワ・ミステリ)
No.1440: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ガウディとサグラダ・ファミリアのガイドブックのような・・・

2023年刊の書き下ろし長編。バルセロナで暮らす日本人の石工とその娘が殺人事件に巻き込まれ、サグラダ・ファミリアにまつわる陰謀を見つける現代史ミステリーである。
1991年のある夜、サグラダ・ファミリア建造に携わる石工の父と一緒にバルセロナで生活する志穂は、仕事に出たまま帰宅しない父を探していてサグラダ・ファミリアの尖塔に吊り下げられている死体を発見した。遺体は父の親しい同僚で、父の失踪もこの事件に関係していると考えた志穂は建造関係者を訪ね歩く。すると、ファミリア建造を進めたい勢力と反対する勢力が激しく対立する歴史に直面し、志穂も否応なく巻き込まれていった…。
殺人の裏に歴史をひっくり返す陰謀が・・・というミステリーだが、物語の比重はガウディ、サグラダ・ファミリア、石工の働きのガイドに置かれている。犯人や動機は最後にひと捻り、ふた捻りあるものの殺人の謎解きは単純。ミステリーとしてのコクがない。
ガウディ、サグラダ・ファミリア、バルセロナに関心がある方にオススメする。
ガウディの遺言
下村敦史ガウディの遺言 についてのレビュー
No.1439: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

埋もれていた傑作に出会えた幸せ

日本ではほとんど知られていなかった英国本格ミステリーの本邦初訳。1930年代のイギリスらしさにあふれた犯人探し、謎解きミステリーである。
風光明媚で落ち着いた海岸沿いの町・イーストレップスで、静かに暮らしていた老婦人が友人を訪ねた帰り道で殺害された。凶悪事件など起こったことがない田舎町の住民は動揺したのだが、何も手掛かりがないうちに同様の手口による第二、第三の殺人事件が発生し、謎の連続殺人鬼「イーストレップスの悪魔」が恐怖を呼び起こした。警察はスコットランド・ヤードの協力を仰ぎ、有力な容疑者を逮捕したのだが、さらに第四の殺人が起きた…。
全体の三分の一ほどで最初の容疑者が逮捕されるのだが、そこからの展開が素晴らしい。巧妙な伏線があり、読者をミスリードする仕掛けがあり、裁判劇があり、最後の犯人判明まで緩みなく謎解きサスペンスが続く。時代は30年代だが、謎解きミステリーとしては現代でも十分に通用するレベルの高さである。
英国本格ミステリー、謎解きミステリーのファンに自信を持ってオススメする。
イーストレップス連続殺人 (海外文庫)
No.1438:
(7pt)

名作ではあるが、いかんせん古過ぎる

本邦初訳のネロ・ウルフ・シリーズ第15作。1952年刊の古典で、P.I.ものの王道を行く犯人探しミステリーである。
ストーリー展開は動きがスピーディーで謎解きの構成も破綻がないのだが、いかんせん時代状況が古過ぎて、現代のP.I.ものに慣れた読者には物足りない。
古典的名作の資料価値を重んじる方にオススメする。
人盗り合戦 (論創海外ミステリ)
レックス・スタウト人盗り合戦 についてのレビュー
No.1437: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

最後のどんでん返しが意表を突くけど。

2018年刊の書き下ろし長編。両親の放火による無理心中でひとり生き残ったヒロインが17年後、過去と決別するために復讐心をかき立てるサスペンス・ミステリーである。
悪徳金融業者に追い詰められた両親が実家に火を放ち、両親と幼い弟妹を亡くした幸子は17年後、婚活パーティーで出会った隆哉と交際するのだが、自分の生い立ちを告げることができなかった。そんな過去と決別するために両親と弟妹が眠る墓に参った幸子は、子供たちを乗せた車で海に飛び込み、自分だけが生き残ったというシングルマザーの雪絵に出会う。あなたはなぜ生き残ったままでいられるのか、雪絵に自分の母の姿が重なって見えた幸子は被害者として加害者に復讐しなければと思い込む。さらに両親を追い詰めた男・郷田がまた借金返済に困った人を自死に追い込んだことを知り、郷田を破滅に追い込もうとする…。
最後は意外な真相が明らかになり綺麗な話にまとめられるのだが、そこまでのプロセスは怖すぎる。被害者と加害者の立場、力関係のあれこれがちょっとくどい。もう少し全体が整理されてると良かった。
下村敦史に期待するレベルではないものの、それなりの問題提起があり、読んで損はない。
悲願花 (小学館文庫 し 23-1)
下村敦史悲願花 についてのレビュー
No.1436:
(7pt)

女性たちのエゴに振り回される、悲しいジョー。

「猟区管理官ジョー・ピケット」シリーズの第18作。高級リゾート牧場から姿を消した英国人女性の捜索を命じられたジョーが失踪の真相を解明する、人探しアクション・サスペンスである。
世の注目を集める英国人女性セレブ社長ケイトが夏の休暇で訪れたワイオミング州の高級リゾート牧場から姿を消してから半年、新州知事のアレンから呼び出されたジョーは、ケイトの捜索を命じられた。州の法執行機関や犯罪捜査部が失敗続きのため、ジョーに白羽の矢が立ったという。捜査のプロが見つけられないものをなぜ、猟区管理官に任せるのか? 疑問を持ちながらジョーは現地に赴いた。そのリゾート牧場では長女・シェリダンが働いており、彼女の助けを受けることができそうだった。さらに盟友・ネイトが鷹狩り関連での問題解決に協力するのと引き換えに助力を申し出てくれた。しかし、調べを進めるほどに、何者かが卑劣な圧力を掛けてきた…。
今回は行方不明人探しというP.I.ハードボイルドみたいなストーリーだし、舞台もいつもの大自然が相手ではないこともあり、これまでの作品とは異なる雰囲気がある。だが、熱さと正義感で突っ走るジョーの行動は変わらず、シリーズの醍醐味は十分に味わえる。ただし、事件の背景になるのが女性のエゴ?で、それに振り回されるジョーの悲しさが切ない。
シリーズ愛読者には文句なし、初めての方でも十分に楽しめるアクション・サスペンスとしてオススメする。
暴風雪 (創元推理文庫)
C・J・ボックス暴風雪 についてのレビュー
No.1435:
(8pt)

新人キャリア警部補・立花が加わって、ますますドタバタ!

軽妙洒脱な警察小説として人気の「御茶ノ水警察署」シリーズ第4弾。新メンバーを迎えた保安二係の騒動をコミカルに描いた短編4作品である。
箸にも棒にもかからない斉木、梢田コンビと爪を隠した鷹である五本松のチームに配属されて来たのはイケメン・キャリアの立花警部補。見た目はおぼっちゃまで頼りなさそうなのだが実は・・・。
いつも通りに街中でありふれた軽犯罪を、何だかんだ言いながら処理してしまうのはお約束。それぞれのテーマに変わりゆく街の雰囲気が反映され、しかも展開に一捻りがあるのでどれも新鮮。日頃のストレス解消の読書に最適だ。
ユーモラスで楽しい小説を読みたい時にオススメ。
おれたちの街 (集英社文庫)
逢坂剛おれたちの街 についてのレビュー
No.1434:
(7pt)

謎解きより人間関係を楽しむ、コージー・ミステリー

オーストラリア発の人気シリーズ第3弾。野外上映会で起きた殺人事件捜査に、おせっかいなメンバーたちが絡んでいくおなじみの謎解きミステリーである。
クリスティ原作「地中海殺人事件」の野外上映会に参加したマーダー・ミステリ・ブッククラブ会員の目の前で、若い女性の絞殺死体が発見された。こんな大事件を直接目にしては、黙って見過ごすことができないメンバーたちは、警察の捜査に満足できず、警察に嫌がられながらもどんどん調査を進め…。
素人探偵集団が警察の鼻をあかす、いつものパターン。犯行の動機、手段、謎解きにひと工夫があり、退屈しない。だが、本格謎解きというよりは登場人物たちの人間ドラマを楽しむ方に重点が置かれている。挿入されるエピソードや会話もコメディ色が強く、サスペンス・ミステリーではない。オーストラリアの夏の風物詩という野外上映会の雰囲気は面白かった。
シリーズ愛読者の期待を裏切らない仕上がりで、コージー・ミステリーのファンにもオススメできる。
野外上映会の殺人: マーダー・ミステリ・ブッククラブ (創元推理文庫)
No.1433: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

「難解」の一言

現代アメリカ文学の巨匠の1985年の作品。本国では20世紀後半のアメリカ文学屈指の傑作と呼ばれるピカレスク小説であり、骨太のロードノベルである。
19世紀半ばのテキサス、メキシコを舞台に、14歳で家出した少年が放浪の末に、インディアンを虐殺し頭皮を剥いで金を稼ぐ荒くれ者たちの私設軍に加わり非道な日々を送るのがメイン・ストーリー。繰り返されるエピソードは正視に耐えない、残虐なもので、それを思想化する登場人物たちの思考、言動は常軌を逸したものとしか言いようがない。
ページ数は430ページほどだが隠喩や思考の飛躍が複雑で、ちゃんと付いていけてるのか自信がなくなり、読み通すのがハードだった。
自分の読書力では評価できず、従ってどなたにオススメできるのか分からない。
ブラッド・メリディアン