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ニコラス刑事 さんのレビュー一覧
ニコラス刑事さんのページへレビュー数324件
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古い本で、翻訳ものでもあり内容はともかく本として読むのは退屈するのじゃないかと危惧したが、全然そんなことも無く普通に楽しめた。そんなに読みづらい翻訳文じゃなかったのが幸いだった。
内容はほとんどの人が知っている話で、ミステリが好きですと公言する人はこの本を知らないとは云えないほどの古典である。 西澤保彦の「聯愁殺」はこれが下地にして書かれているし、歌野晶午の「密室殺人ゲーム王手飛車取り」もこれのアレンジだ。一貫してひとつの事件に対しての推理を披露するという流れだけでここまで綿密に書けるのは 凄いと単純に驚く。アンチミステリとしていても最後にはミステリのお約束をしっかり守ったオチが用意されているところも笑えるし、この着想の見事さが気の置けない友人などとミステリ談義の中でフト浮かび上がったのじゃないかと 想像したりして頬が緩む。 Aに送られた毒入りチョコレート。たまたまそばにいたBに譲ると、Bの妻Cが数を多く食べたせいで死亡する。犯人Xは誰か・・・。シンプルな設問でいろいろな推理が披露されるこの本。 今読んでも充分読み応えのあるミステリで、楽しみながら読み終えた。バークリー貴方は凄い。そしてミステリ界に残したその足跡は偉大だ。 |
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ジェフリー・ディーヴァーとくればリンカーン・ライムシリーズが思い起こされるが、これはそれより前の94年に出たものだ。サイコ・サスペンスと紹介されているがそれほど深くは無い。
ただ、読ませる筆力はこの本でもすでに確立されているようで、一ページ上下に組まれた文章が432ページもあるボリュームで、そう簡単に読み終えることはない。 普通これぐらいあると気を抜いて飛ばし読みをしたりするものだけれど、この本に限ってそうはしなかった。ストーリーを追いながらじっくり読んで楽しい時間を過ごした。飛ばし読みをしようと考えなかったし、そうはさせない作者の 上手さがあった。迫りくる嵐、分裂症の殺人犯が西へ向かう、それを追う訳ありの三人。各人をメインに据えた各章の動きと展開。証言した事件の秘密と姉妹の葛藤。 お約束の意外なラストの真相。 リンカーン・ライムシリーズは云ってみれば大向こうを唸らせる派手な演出のストーリーが身上だけれど、これはどちらかと云えば地味な内容とも云えるしストーリー展開も派手さはない。 派手な演出は迫り来る嵐といったところだけで、肝心なのは各人の心の動きでありそれらがキッチリ描かれていることが効果的に緊迫感を醸し出す結果になっていると思う。 追跡者の裏をかき西へ向かうルーべック。彼の後をじっくり読み進む時、読書の至福の時間を味わえることでしょう。 |
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内容は石持浅海らしい作品でストーリーを追うのも、登場人物たちの会話を楽しむのもいつもどうりのことで飽きずに読める。この人の書く作品は視点の面白さだと云える様に感じる。倒叙形式のミステリとしても幾分変わった様子で描かれている。
意思は通じ会っている様に見える殺人を考えている男と殺されることを望んでいる男。この対比がまず不思議だし、そこに不穏な空気を感じてさりげなく邪魔をする碓氷優佳という存在。変わった面白いこの構図で物語りは進むわけだがさりげなく殺人の餌を撒く殺されたい男の内なる思いと、各人の会話からひとつの仮説を立てズバリと読み解く碓氷優佳の存在がこの物語の終焉がどのようになるのかと非常に興味が持たれる。結局事件は起こるのだが碓氷優佳が何をしたのかがこの物語のある意味芯の部分であり、解決としてのバックグランドはそのエピソードが用意されているので消化不良の感じはしない。著者の言葉にあるように事件が起こるまでを丹念に描いた内容なのですが、たったひとつ云えるのは言葉のキャッチボールから仮説を立てる碓氷優佳が「僕の身体にも『うだうだ言う前に相手のところに飛んでいけ』というDNAが受け継がれていましてね・・・。」と云う梶間の言葉をスルーしている点だ。この重大なセリフを何故碓氷優佳は聞き逃したのかが疑問だ。小説的ご都合主義といえばそれまでだが、この著者にそれは無いはずだと思うが。他の言葉にはすべて反応して仮説を組み立てる材料にしている彼女がこの言葉だけ無視しているのは不自然である。どうなんです石持浅海さん?それはまあともかく事件は起きているのでこの後碓氷優佳はいったいどのようにするのか、そこを考えると決して後味の良い物語とは云えない。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ホラー的な要素が感じられ、どうしても貴志祐介の「黒い家」が頭に浮かんでしまう。単なる悪女ものだったらつまらないしと思っていたが、なかなかどうしてけっこう面白かった。打算だけの女、その女が医者であった夫の死後三人の子供たちと暮らしてきたその凄まじさが関係者へのインタビューといった形で明らかになってくる。各人の視点で語られる女の異常さ。確かに上手く描かれ読ませるところはあるけれど、このままだったら良くある内容で新鮮味も何もない。そう危惧していたらこちらの予想を見事にひっくり返してくれた。しかも、周到な伏線も用意されていて後半はミステリ度がぐんと上がる内容だった。
▼以下、ネタバレ感想 |
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初めて読む作家です。著者経歴を見るとけっこうな学歴の持ち主でいらっしゃる。そんな経歴で何故物書きの道にと不思議に思ってしまった。大きなお世話ですが。さて、タイトルに興味を惹かれて手にしたわけですが、ちょっとクセのある文体で読んでいて余り楽しくない。結論から云うと飛ばし読みをしてしまった。最後のページに目を通して結局そのような話しかと、ありきたりの内容なんだと思った。著者独自のアイデアというか設定で近未来の社会を舞台にしているが、独特の比喩もあまりこっちの心をくすぐらないし、早い話がどうもこちらと肌が合わない感じだった。コンゲーム小説の面白さを味わえるかと期待していたのだが、どうも退屈だった。もっとアイデアを煮詰めた方が良かったのにと思う。ありきたりのラストに繋げる意味でもそこまでのドラマがあまり面白くない。残念でした。
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最後に意外性を用意したりとミステリのテイストを楽しめる面白い読み物といった印象でした。美術にはとりわけ知識も豊富ではなく美術館に足を運んだことも正直一度もありませんが、そんな自分にも楽しく読める内容で著者の絵画に対する
思いなどが素直に伝わってきます。はるか昔に生き生涯を終えた人のことに関してあれこれと知識として知るというのは個人的には好ましく楽しいと感じます。芸術に命を捧げた人たちが居た、そんな人生を選択し送った人たちの声が間近に聞こえるようなそんな気がしました。天才だったのか日曜画家だったのか評価が定まらないルソーを主人公にした謎解きミステリとした感じもこの本の良いところだと思います。真贋を競う二人の人物にも縁がありそれらが物語の幅を広げることになっていてそれぞれの人物描写が緊迫感を生みだすストーリーは読み応えがあります。ハッピーエンドとしたのもこの本には当然で次を読んでみたいと思いました。次は真絵を主人公にした新しい冒険の旅を読ませて欲しいと思いました。 初めて読んだ作家であり本でしたがこの本に限っては自分の好みの範囲でした。 |
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人間消失と密室殺人とあるが、これで興味を惹かれ本を手にした人はまんまと騙されることになる。そんな仕掛けが隠されたストーリーである。登場人物14名でこの中から殺害される人物が2名。わりとシンプルな構成とストーリー。
だが事件の目撃者であり語り手として読者をこの物語に誘う人物には少し問題がある。それはマドンナの存在で彼はこのマドンナにひと目惚れしてしまう。このため結果として彼の眼は少し曇った状態で廻りを、事件を見るようになる。 当然読者も彼の目線になって物語を追うわけだから同様に少し目が曇る。作者の緻密な計算の上での書き方で伏線もさりげなく見せられるため中々気付かない。物語の舞台となる土地や時代背景など興味深い史実など用いながら女性らしい精細な筆致で情景や雰囲気を表わしていてとても読み易い。ことの真相には意外性は充分で二人の人物の態度やもの言いもそれはそのとうりで無理なく筋が通っていて、結果として真相に近づくヒントでもありまた逆の作用にもなっている点が興味深い。心理のアヤなどをうまく使い読者の目くらましになっているところが作者の技を感じる。本国刊行年が1945年であるが今読んでも色あせず楽しめるミステリと思う。語り手のダンバー大尉は精神科医で関係者の格好、顔つき、仕種、経歴、会話の内容などからあれこれ分析するのだがその彼に依ってミスリードされる読者という構図がこの本のすべてだといえる。こう書いたからといってこのミステリの面白さを阻害するとは思えないので興味のある方は一読をおススメ。 |
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【ネタバレかも!?】
(3件の連絡あり)[?]
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五つの短編が収められた本書。影の主役に花を据えて書かれたミステリです。特筆なのは、その情感たっぷりの文章です。これは最近の自分の読書傾向からすると、とても新鮮でした。美しい古典文学のような話し言葉や周りの
情景を映し出す言葉の数々。悲哀に満ちた時代を写す物語。そして意外な裏側の本当の形。今読んでも色あせないむしろ新鮮な気持ちで読める五つの物語。表題作の戻り川心中がある意味怖い話でその近松の世界のような雰囲気が 崩れる有様はとても異様で驚きます。どの話も花が絡んでいますが、花の命をモチーフに人の心と心情をうまく絡めたストーリーです。こういったミステリも楽しむことはとても有意義であると思います。 |
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ビジネスエリートの物語。でもミステリじゃあない。けっこうシビアな話で読後感はあまりよろしくない。各人の視点でストーリーが進み、ある秘密が明らかになってくるが最後は水戸黄門とか大岡越前とかの感じで終息する。これって
著者は少しの必要悪も世の中には有るべきではない、そう云いたいのかなと感じてしまう。多少世間の荒波にもまれた身としては世の中「だったら良いのにね。」と思ってしまう。清廉潔白な成功者ってそうはいないだろう。程度の差こそあれ ダークサイドに足を踏み入れなければ企業のトップには上り詰めないだろうと思うがどうだろう。激烈な競争社会で勝ち残るのは何かを犠牲にしなければ出来ないはずだ。悪魔に魂を売るのも選択肢の一つだと思う。今、現実社会でも ある会社の問題が話題になっている。文字どうり会社の存亡に係わる問題だ。なぜこうなったのか、誰の責任なのか。ノホホンとサラリーマンは気楽な稼業と考えている学生がいたらこの本で目が覚めるだろう。説得力のある物語を読ませてくれる 作家だ。 |
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先に「アルバトロスは羽ばたかない」を読んでいた。そのためパターンが解かっていたのだけれど、それでもなお楽しめたのは筆者の力量が並ではない証拠だと思う。児童擁護施設「七海学園」を舞台にした連作ミステリの
形になっていて、それぞれのエピソードで謎の解決は付くのだけれど、最後の章でこれまでの話がすべて繋がり大きな謎が隠されていたことに読者は気付く、そんな仕掛けのあるストーリーとなっている。パターンが解かっていたと 書いたのはこのことです。コージーミステリ+社会派といった格好だけれど、その舞台に選んだ養護施設の子供たちの生活と抱える問題をサラリと見せるので、読んでいて心が重くなることも無くしかし考えさせることになるので、この辺は 作者のアプローチの仕方の上手さだと感じる。登場人物もみんな生き生きと描かれ、読んでいてその様子の画が自然に頭の中に映し出された。文章を読んで頭の中に情景が映し出されるのはその文章とこちらの感情というか気分がその文章と シンクロしているからだと思う。これは面白いなと感じながら読んでいる時に多くあることなのでこの本も自分にとって面白い本と云える。ミステリをかたどる謎は他愛も無いといえばそうかも知れない、だが登場人物にそれぞれの役割が キチンと与えられており、まず読み物として面白いそんな感想を持てる内容です。ななかわかなん、何の意味を隠したペンネームなのか少し気になる。 |
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知らない作家だがタイトルと帯に書かれた荒筋に惹かれて読んでみた。うーん、結論から云うと狙いと云うかお遊びの趣旨は解かるんだけれど物語そのものにやや無理があると感じた。そんなミステリに淫した物語は自分には
ちょっと受け入れられない。架空世界とはいえ「密室殺人ゲーム王手飛車取り」の方が遙かにとっつき易く受け入れやすい。そしてお遊びとして究極の世界感の中でのミステリゲームを楽しむというスタンスが面白かった。 これは乱歩や横溝のほか数多くのミステリの内容やトリックに関して登場人物から語られるというお遊びのほかに、館で起こる不可能殺人の謎を探偵が解き明かすというオーソドックスなストーリー展開の物語だけれど、内容に 見合わない軽い文体と薄っぺらな人物達の行動や思考にどうも付いていけない。動機も解明もとおりいっぺんと云った印象で共鳴も何もない。本当にミステリが好きで書いているのか?と感じるほどで分厚さの割りにさーっと読み終えて さしたる感想も沸かないほどだった。 こういった内容の本はもういいだろう。 |
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贅沢な内容のミステリです。三津田信三のようなミステリらしいミステリです。不思議な死体のありようとか二重の密室状態や関係者すべてにアリバイがあり唯一アリバイの無いものは植物人間として入院しているといった展開などミステリファンの心を掴んで離しません。誰もが怪しむ人物からどんでん返しの真犯人までへの謎解きの楽しさが満載の物語です。ミステリマニアへのツボを心得た謎の提出やミスリード、謎解きの論拠となるアイテムなど作者のミステリファンへのサービス精神が遺憾なく発揮された作品です。願わくばこのまま息切れすることなくこのスタイルで書き続けてもらいたいものです。三津田信三氏とかこの小島正樹氏のようなミステリ作家は大事にしなければいけません。他の作品はどうなのだろう?
とても興味が惹かれる作家です。タイトルも作者の狙いを表わしたものでそこからスタートしているこのストーリーはきっとあなたを満足させることでしょう。 |
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タイトルはオドロオドロしいが、内容はそれほどでもない。好きな作家なのだがこの作品はイマイチ楽しめなかった。それはつまり話しのとっかかりである、行方不明の子供たちの親等が週刊誌などに書かれた不審人物の館に乗り込む、といったシチュエーションがしっくりこないからです。そのために初めから物語の中に入りづらい感じがして、読み進むのが楽しいといったそんな気分になれませんでした。なぜ警察といった捜査機関を排除して自分達で怪しいといわれた人物の館に行くのか
?その辺が一応もっともらしい説明で彼らの行動を理解させようとしていますが、読んでいる自分には違和感が残ります。例えば「煽動者」は主人公があるテログループの一員で、対警察のセキュリティが完璧なアジトの中で起きた殺人をその時アジトにいた数名の証言を検証し各人の行動を考察して論理を重ねた結果殺人者の特定に至る、そんなストーリーです。対警察のために監視カメラなどでアジトへの出入りは完璧に監視されていた。部外者の侵入はありえない。こういったシチュエーションはパーフェクトですんなりこちらの頭に入ります。物語世界がスッキリと確かなものになっています。でもこの作品は違和感が付きまといます。もしこの物語の中に警察官が一人でも登場すればそこで話は終わります。つまり穴が大きいと云う事です。ストーリーがどうこうの前に物語世界をもっとしっかり構築するようでなければその世界に入っていけません。また保護者たち被害者の会のメンバー達をすんなりと館に入れる人物の意図も良く解かりません。1の殺人はともかく2の殺人はあいまいな動機で警察に通報しない理由が私には納得できません。それらしい主張をくどくど言ってますが無理があると思います。先に書いたようにここでも警官がひとり入り込めばもう話は終わってしまいます。そのための説明文なんでしょうがイマイチです。狂気に付かれた人物の行動もあいまいな感じで凄さ怖さが伝わってきません。残念ですが私にはイマイチといった感想しかない作品でした。 |
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この本のキーワードは、過去のトラウマ、新薬開発、名前、親子の確執、誘拐犯、そんなところ。云ってみれば、あの本とこの本を上手くミックスさせたような内容だ。具体的な本のタイトルを書くとそれでネタバレに繋がる
ので書けないけれど、要するに斬新なアイデアのもとに書かれた誘拐ミステリではないけれど、とてもミスリードが上手くドンデン返しが効いているストーリーだということ。実際に地の文ではキチンと正直に書かれているのだが、読んでいる コチラはまったく気付かなくてすっかり騙されてしまった。まぁ。その辺のテクニックは中々のものと評価できる。文章も読みやすく人物の書き分けもしっかりしているのでスラスラ読める。ただ、伏線は周到に張ってあり読後にその辺の 上手さに感心するのも事実。良く出来たミステリと評価できる。その意味ではもう少し話題に上っても良い作品ではないかと思った。この著者のファン以外に読まれないとしたらもったいない作品だと思う。 |
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ホラー大賞受賞作だけれどありきたりのホラーの内容ではなく、ミステリの味付けもした内容でとても面白かった。語り口の岡山弁の表現も効果的で雰囲気にピッタリ合い子供のころ大人から聞かされた昔話のような感じがした。
怖いのは物の怪でも怪異でもなく人の心と貧しい社会だという、そのリアリティが断然読む物に迫ってくる。応募作の「ぼっけえ、きょうてえ」の他に書き下ろしの三編が収められているがこの三編もすごい内容で、この人の筆力に 圧倒される。すべての物語が読み応えがありなんともいえない読後感を持つ。京極夏彦とはまた違う世界の話しだけれどこういった物語は好きだ。単にホラー小説と思って手に取らない人にはおススメしたい。人それぞれ違うだけれど ある種の感銘は受ける物語と思う。 |
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筒井康隆に「富豪刑事」があるので「貴族探偵」とくれば二番煎じの感は免れないと思うけれど、設定はともかく五編すべてが麻耶雄嵩らしいトリッキーなスタイルの物語で読み応えがある。相変わらずミステリにおける約束事
とかタブーなどを逆手にとったような一癖も二癖もある内容で、たったひとつの事柄が完璧とおもわれた形を破壊する様など上手いなあと感心する。そう、ファン心理が行う行為が致命傷になる「こうもり」などね。 この人の短編はあまり読んだことがないけれど、この本に収められている五編はみんなレベルの高い作品でロジックで解決を図るという遊びがとても楽しい。「ウィーンの森の物語」など単純な話だけれど実はロジックだけで この絡まった紐を解いていくのはかなりの高等テクニックだと思う。限定された人数を白か黒かロジックで証明する執事がすごい。文章も摩耶雄嵩ってこんな書き方をするんだったかと感じたほど物語を読ませる部分は読み易い。 ミステリらしいミステリが収められたこの本はミステリファンなら読まないことがミステリだ。 |
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ジャンルでいえば倒叙ミステリになる内容で、犯行を隠そうと必死に策略を巡らす妻と愛人二人の様子が描かれている。しかし、最後には明らかになってしまうというお決まりのパターンだけれど、その過程がどれほど読み応えがあるかが
この形式の勝負どころだ。結論からいうとかなり良く出来ている。二転三転する調べる側と隠そうとする側の攻防がとても上手く書かれている。単なる失踪の状況であれば警察は介入してこないので世間の目は誤魔化せると考えていた 妻と愛人だったが、継母と義兄が雇った探偵が色々と調べ始めて不審の目を妻に向ける。この探偵を遠ざけるために苦肉の策で警察が公開している身元不明者の情報を探り死んだ夫に会う死体を探し出して失踪した夫だとすることにした。 しかし、しつこい探偵のせいで事態は悪くなる一方。その他にも妻にとっては思いがけないことが次々と明らかになって追いつめられていく。最後の裏切りにもちょっと驚かされるが伏線はちゃんとあった。迷走する妻と愛人だが二人の駆け引きが このミステリの醍醐味で倒叙ものは最近あまり見ないのでけっこう楽しめて読んだ。事態があれこれ動く要素も考えられていて探偵の個性も強くできばえは中々と思う。 |
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クックとくれば「緋色の記憶」なんだろうけれど、この「沼地の記憶」も似たようなスタイルの物語だった。年老いた元教師が過去を回想するという手法で物語が始まる。何かで読んだけれどクックという人は展開の激しいスピーディな物語のミステリは自分では好きでないので、このような時間をゆっくり辿っていくようなものを書いているといっていた。これもフラッシュバックのように過去の出来事を回想し徐々に全体像を見せていくというスタイルである。ときおり現在の生活の
様子が描写されているが、それが伏線とはまったく油断も隙もない。ただ、誰もが予想する展開を裏切りそっち?と面食らわせてドキドキさせておいて肩透かしの末に何となく想像した結果をひっくり返したりとミステリのツボを得た ストーリーの上手さは今回も楽しめる。品の有る上質な文章も健在でバタバタした展開のミステリに疲れたらこの人の本がおススメです。 |
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