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ニコラス刑事 さんのレビュー一覧
ニコラス刑事さんのページへレビュー数12件
全12件 1~12 1/1ページ
※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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史実の青函連絡船海難事故や戦後の荒廃した世相と風俗をもとに事件を起こした男と函館、札幌、舞鶴の刑事たちが必死に男の追跡を行い真犯人に迫っていく過程が描かれた物語。
札幌、函館の刑事たちの追跡から消えた男が10年の歳月を置いて再び事件を起こす。そのきっかけとなったのは一人の女。大罪を犯した男が10年前に人間らしい行いをその女に施したばかりに 自身に疑惑の目が向けられる結果となる皮肉。実際にあった海難事故。台風により転覆した青函連絡船。wikipediaによると死者・行方不明者1155人となっている日本の海難史上最大の惨事である。 浜に打ち上げられた何百という死体。乗船名簿と遺体を引き取りに来た遺族の照合のあとに残った遺体が二つ。誰も引き取りに来ない遺体が二つ残った。頭に傷のある二つの死体。 ひとりの刑事が不審を覚える。しかし、大惨事の中で体に傷を負った死体はおかしくはない。それが大方の意見であった。出航間際に乗り込む人間もいてそんな場合は名簿に記載しないこともあったという事実。 大勢に押し切られる形で一人の刑事の思惑は消えていく。そして函館から130キロほど離れた町で火災が起きる。台風の風に煽られた炎は町の三分の二が焼失する大火事となった。 火元の質店では一家四人が殺害されていた。地道な聞き込みだけで調べを進める刑事たち。昭和22年という時代では今の科学捜査など夢物語だ。 丹念に世相を切り取りながらそれぞれの人生が描かれる物語。敗戦国の貧しさが生んだともいえる事件。単行本上下巻に収められたこの物語は読まずには死ねない。 |
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刑期の満了する前日に脱獄する、その意味は? 惹きつけますね。
刑務所内でどれほどの命の危険に晒されたことか。しかし、オーディは10年を生き延びた。 人生は短い。愛は果てしない。あすがないつもりで生きよ。 ベリータとの約束のために生き抜いた。 刑務所でたった一人オーディを守ってくれたモス。オーディの脱獄のあと突然の移送の途中、車から降ろされ麻袋を頭に被せらたモス。拳銃を突き付けられて言われた言葉はオーディを探せ。 刑務所では、しくじれば死ぬ。人を見誤れば死ぬ。食事の時にまちがったテーブルにつけば死ぬ。廊下や運動場のまちがった場所を歩いても、 食事中うるさくしすぎても死ぬ。 過酷な十年を生き抜いて自由の身になれる前の日に脱獄したオーディ。そのオーディを追うモス。 そしてFBI捜査官のデジレーと保安官のバルデスがオーディを追う。 四人が死んだ現金輸送車襲撃事件。消えた七百万ドル。頭に銃弾を受け生命維持装置の中で奇跡的に蘇生したオーディ。 徐々に当時の事が明らかになっていく過程。 オーディの切ない運命。 小出しにされる謎もすべて明らかになっていく後半の展開が読ませます。 久しぶりに、う~んと良い意味で唸った読後感。 |
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本というのも趣味嗜好品なので、ここで私がおススメの高評価をつけてもあなたには何の価値もないかも知れません。しかし、同じアンテナを持っている人であれば必ず楽しんで貰えるはずです。
最近読んだ中では間違いなく面白かったと言えます。物語が始まる空港のバーでの二人の会話からも面白さを予感します。女は本を閉じ、バッグのそばに表を上にして置いた。『殺意の迷宮』パトリシア・ハイスミス。 フフフ、と頬が緩みました。スリリングな展開が続くストーリーですが、それをきちんと書き表して読者を引っ張っていく文章力が魅力です。交互に一人の人物による視点で書かれて物語は進みますが、漠然とした予想は第一部までです。 第二部からは予想外の展開が続きます。この先どうなっていくのかまるで読めません。最後の第三部から始まる刑事の視点で進むところも良いですね。緊張がどんどん高まります。この構成の上手さがこの物語を面白くしている 一番の要因でしょう。それと重要なのは無理がないということです。書く側に沿った独りよがりな言葉を並べて物語を進めるのではなく、素直な気分で人物に感情移入出来るように書き込まれているのです。危ないぞ、気を付けろ、用心しろよと人物に入り込んでのハラハラ感が続く第二部などは堪りません。あと、小道具の使い方も中々どうして。サラっと読んだ駐車違反の切符のくだりも・・・・・・ね( ´艸`)。展開に繋がっていくひとつのキーになっているんですから侮れません。 著者の経歴など詳しいところは分かりませんが、これからも書き続けてくれるようなので他の作品も楽しみたいと思います。 うん、とにかく予想外の美味しさと量も大盛りだったのでお腹がいっぱいになり充分に満足しました、ということですね。 !(^^)! |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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ミステリの手法を使った青春小説。そう捉えた方が分かりやすい。しかし、文章が濃い。心身ともに疲れているときに読めばさらにぐったりするほどの拘った言い回しの言葉の数々。
いろんなセリフやさらりと流した情景が最後に説明され、みんな繋がっていく有様は爽快だ。不覚にも最後のページで目頭が熱くなった。著者が始めに断っているように「おとぎ話」だけれど 別に懐古趣味でなくても胸打つストーリーだ。「イニシエーション・ラブ」とこの「スロウハイツの神様」どっちが好み?と聞かれたら迷わずこの「スロウハイツの神様」。 「たっくん」よりも「コウちゃん」の方が人間的にも魅力的だから。 |
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陽子、あなたが生まれたのは1973年10月21日と、自身のことを第三者の視点で語るスタイルで物語が始まる。そして、それとは別に現在の時間軸で女刑事が110番通報によりマンションの一室で発見された死体を確認に赴くところから
女刑事の捜査の過程を追っていくスタイルで物語が展開していく。ふたつの時間軸が最後には交差するのだがラストは自分としては予想外だった。陽子が成長するその年代の社会背景などがキッチリ描かれていて、とても読み応えが あり、陽子が堕ちていくその生き様とかを納得させると共に共感さえ生む物語だ。マンションの一室で検めた死体は不審な点は見つからず今流行の孤独死かと思われた。この死体の検分のため所轄から出動した女刑事もバツイチで、人間的にも 欠陥のある人物として描かれ、ある意味では陽子と似通った部分を持っているような人物だ。つまり女刑事も主人公の陽子もその他登場する人物みんなが欠陥のあるような人間ばかりで、パーフェクトな人間は一人も登場しない内容だ。 重いと云えば重い。暗いと云えば暗い話だけれど、それ以前にリアルな時代背景を使った陽子の人生の軌跡がジーンと胸に響く。居場所を探す陽子と同じく女刑事も自分の居場所を探しているところがとても良い。 交互にストーリーは進むが、滅茶苦茶面白くいろんなエピソードが盛り込まれているが最後まで二人の行いというか行動に眼が離せない。内容と構成と物語の面白さにニクイと感じる作家で、初めて読んだ作家だがすっかりやられちまった。 読後に興奮して眠れなかったのは久しぶりだ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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消息を絶った一人の少女。通報を受け捜査を開始する地元警察のフォード署長は勤続三十三年の高卒。そして部下のキャメロンは大卒で十三年勤続の私服刑事。この二人の辛らつな言葉のやり取りと信頼で結ばれた様子を見せながら
捜査が始る。描かれているのは警察の地道な捜査の様子だけ。登場人物のサイドストーリーとかそういったものは一切無い。しかしノンフィクション的な要素を取り入れたフィクションという手法がとても面白い。読んでいる途中で退屈とか そういったことは有り得ない。こつこつと聞き込みをして100の情報を集めても何も得られなければまた歩き回り話を聞く。そういったフォードたちの捜査の様子がじっくり描かれているが、読んでいる方も少女が消えた理由が分からないので 気持ちはフォードたちと同じだ。証言を集めれば集めるほど、少女の人物像が浮き彫りになっていくほどフォードたちには少女が何故消えたか分からない。事故か事件かそれすらも分からない。そして物語が半分ほど進んだところで川から死体が見つかる。捜査を進める上で重要なアイテムの使い方がとても上手いと思う。そしてその秘められた謎を解き明かすヒントが少女の人間性であり性格でもあるという点が面白く、そこに着目するフォードの推理力もまた優れている。 地道な捜査の過程だけを描いた内容だけれどミステリとしても読み応えがあり、死体が見つかった後の後半部分は一気に読み終えた。ミステリ史に残る一冊というのも納得の面白さだった。 |
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渋谷を舞台にした青春ミステリ。不可思議な出来事と不思議な力のある少女が出てくるが、あくまでSFチックにしたままでハッキリと超能力的な書き方はしていない。そこが良いところだと思う。宮部みゆき氏の作品のようなSF全開の
ストーリーではない。出てくる人物はどれも魅力的で若い彼らの描き方はこの著者はとても上手いと思う。樋口真由シリーズもそうだけれどモノの本質が分かっている、そこがこの著者の文章に表れていて読んでいて心地よい気分に なる。著者のスキルに合った映像制作に取り組む学生達を主人公に据えたミステリだけれど、最後の意外さとかストーリーの面白さに加えたミステリの基本形はしっかり押さえた内容で楽しく読めた。 個人的にはこの著者とは相性バッチリなのでただ面白いとしか言いようが無い。警察の捜査の動きやミスリードの巧みさもキレの有る文章で描かれ若者達の姿や会話がとても楽しい。 ストーリーも無理が無く最後の余韻もグッドだ。個人的にはおススメしたい。 |
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どこであるとか、いつの時代であるとかハッキリとせず、昔話を語って聞かせるような文体で書かれているのがこの本の良さです。
『身内に不幸がありまして』 とてもブラックなオチが用意されている、笑いそうになるが笑えない怖いお話です。 『北の館の罪人』 イソップのような深い思惑が沈んでおり、探偵小説のスタイルを模して隠された意味が最後に強烈に胸に突き刺さる、そんな衝撃に見舞われるオチが読んでいてある意味爽快です。 『山荘秘聞』 そうだろうと、予想させておいて最後に違う手口で見せて結果は同じという離れ技が効いたシュールなお話。 『玉野五十鈴の誉れ』 個人的にはいちばん好きな物語。もの悲しく哀れさと怖さと不条理さがない交ぜになったお話で、やるせない想いが心に残るラストと心情の描写が秀逸。 『儚い羊たちの晩餐』 食は文化。その文化を逆手にとって不気味で怪しげな雰囲気の物語で最後に怖いオチを見せる作者のセンス。 「バベルの会」がキーワードになっている連作ミステリですが、最後の一行にこだわった内容で、このような短編集はとても貴重です。作者のセンスの良さがあって初めて書かれる小説と言えるでしょう。 |
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始めに、まだ上巻しか読んでいません。でもこの上巻もほぼ一日で読み終えました。久しぶりに興奮しながら本を読み進むという時間を堪能しました。文章が凄いなぁというのが素直な感想です。言葉がひとつひとつうごめき波となってこちらの意識の中に入ってきます。形容する言葉、表わす言葉、表現することを生業とする人が持つ資質が炸裂している文です。云っちゃあ悪いですが凡庸なミステリしか書けない作家には逆立ちしたって書けない文章でしよう。
高梨あゆみの目を通して描かれる高梨家の日常と家族の様子とその小宇宙。そしてケータイの求人サイトで繋がったトダヨシオとイノウエカツミ。ふたりの行き当たりばったりの行動。16号線を行きつ戻りつ郵便局のATMを襲い、コンビニを襲い 6、7万の金を奪ってクルマを代え16号線を流れて北区赤羽にやってくる。マンモス団地の先に一戸建ての並ぶなかにある歯医者の家に目をつける二人。ここまでの第一章だけでも読み応えがありページを捲る手が止まらなかった。 そして、第二章は一転して警察側からの描写になる。事件の発見から警察組織の人的内容とその動きが綿密に描かれている。縦社会の人事的な動き、実際の捜査のあり方の様子が緻密に書き込まれているかのようにリアルで目を見張る描写です。どれほどの資料を用意したのかと思うほど警察内部の動きがとてもリアルに描かれていて驚嘆します。カポーティの冷血と同じタイトルをもってきた作者の意気込みとかエネルギーとかがストレートに読んでいるこちらに伝わります。 ノンフィクション的な小説と云うのでしょうか。早く下巻も読まなければ、と思うのが正直な感想です。 |
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じっくりと彼、チャールズが犯行に至る動機や方法を模索する様子を描き、死体が発見されたあとも尚彼の視点で捜査を見守る彼の心の内の恐れや、あるいは楽観的な気分になる心情などきめ細かく描写してある。
ロンドン警視庁のフレンチ警部も登場するが、最後の最後に関係者が集まった席で彼に注目した理由や第二の事件が起きた背景、そして論理的にかれの犯行のすべてを暴き出していく過程を披露するに留まっている。 とにかく1934年の作品とは思えないきっちりとした内容で、法廷のシーンなども検事側と弁護側の論理的な傍証の検証を繰り広げる様は読み応えがある。思わず無罪を勝ち取り真犯人は別に居るのか?などと思ってしまった。犯人にとって捜査圏外に居ようとする思惑、行動が捜査側から見れば逆に注目する理由になるという皮肉な現象も確かにそのとうりで、このあたりもキッチリと書き込んでいるクロフツの筆の確かさに感動すら覚える。倒叙小説の古典的名作は今読んでも本当に読み応えのある一冊であった。 |
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コン・ゲーム小説の傑作と評価の高い本作。それはつまり、ただ単に相手を騙して金を巻き上げる内容に終始していないからでは無いだろうか。舞台も歴史あるホテルやウィンブルドンのテニス試合、モンテ・カルロのカジノ、アスコットにある競馬場でのクイーン・エリザベス・ステークスのレース、オクスフォード大学等を背景にした彼らのプランが遂行される。騙された四人が組んで百万ドルを取り返すわけだが、一ペニーも多くなく、一ペニーも少なくなくを合言葉にそれぞれが計画を持ちより実行する。ワンダウン残りは三つ、ツーダウン、残りは二つ、スリーダウン最後は・・・。この最後がとても愉快で洒落たオチと相まってこの本が愛されている理由が解かる。サクセス・ストーリーを絡めたポーランド人の移民の子に生まれたハーヴェイ・デーヴィッド・メトカーフ。彼のプロスペクタ・オイル社の株に関して巧妙な手口で人々を騙して結果四人を破滅の危機に陥らせる。大学教授、医者、画商、貴族らが専門を生かしたプランでメトカーフを騙す訳だが、汚い引っ掛けではなく相手が喜んで満足のうちに金を出すようなプランであるところがこのストーリーのミソでもある。だから読んでいても楽しく笑いも生まれる。カラスの親指も確かに面白い。だが、これを読まずしてコン・ゲーム小説は語れない。
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ヴァン・ダインの本作はファイロ・ヴァンスのシリーズ四作目として1929年の春脱稿された。この本についてはいろんな賞賛があるが、どれもがそのとうりと認められる。ミステリーとして計りしえない魅力をもった作品である。歴史的な一冊であることは間違いない。マザー・グースの童謡にならった連続殺人事件。その恐ろしくまた魅力的な犯人。犯行ごとの緻密な見取り図と関係者の動きを時間割にしたリストと綿密なシチュエーション。巧妙な伏線とミスディレクション。どれをとっても素晴らしい。
ペダントリー溢れる数々の引用と言葉。ヴァン・ダインの素顔が見れるその才能。 もし、この文を見ているミステリーに目覚めた若い人は肝に銘じて欲しい。金田一耕介も御手洗潔も亜愛一郎も古書堂の栞子までもすべての主人公がこの後に生み出されていることに。 未読の方は必ず読んでみるべきです。決して後悔はしないでしょう。 |
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