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ニコラス刑事 さんのレビュー一覧
ニコラス刑事さんのページへレビュー数56件
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話題になっている本ではあるけれど、ネットのレビューとか一切見ないで予備知識なしで読みました。
文庫本上・下の二冊になっていて、読み始めると上巻は面白かったんです。階段の上から掃除機のコードを足に絡ませて 転落したように見える家政婦の死体。館に入るには窓を割って入るしかない状態。その家政婦は詮索好きでいろいろと人の秘密を知っていた様子。 出てくる人物は誰もが思わせぶりなモノローグで怪しさに満ちている。そして館の主の殺人事件が起きる。雰囲気といいバラエティに富んだ登場人物たちといい 読みながらのワクワク感はどんどん膨らんでいく。しかし、下巻になるとそのカササギ殺人事件を書いた作者が死亡する。自殺か事故かそれとも・・・・・・。 といった展開で作者の死と作品の中の犯人捜しの双方を読者は追っていくことになるという趣向。 ミステリのネタはいろいろとバラ撒かれており手が込んでいる。しかし、ネタそのものが本国ならともかく日本の読者ではちょっと付いていけないと思う。 人名のことやらなんやら英語に詳しくないこっちにはそんなことはピンと来なかった。ミステリとしてのお遊びが言語の違うこちらにはダイレクトに響かないのがもどかしいとなるんですよね。 作者の人となりも周りの人物が云うように好人物とはいいがたい人間のように作られているのもどうなのかと思う。 そんな人物では自殺なのか事件なのか熱を持って調べるのもおっくうになる感じで、下巻では一言一句目を凝らして読み進むということがしんどくなってきた。 つまりは上巻のまま物語が進みミステリとしての醍醐味を味わいたかった。 仕掛けそのものはミステリファンには受ける趣向だろうけれど、個人的にはちょっと違っていて残念な感じが大きい。 |
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上手く書かれている。でもなんていうか文体に重さが無いせいか痛みや辛さがこちらに伝わらない。上っ面を撫でているだけって印象を持ってしまう。
ストーリィは込み入っていて登場人物も的確なポジションで良い動きをする。これは作者の計算が確かということで、その辺もどうかすると鼻に付く。 ミステリとかサスペンスというよりもエンターティメントな小説だと思う。舞台装置と芯にある問題。これらを使って上手く書き上げてあると言えるけれど 余りこちらには響かない。事件解決と見えたさらにそのあとの仕掛けはそう驚かなかった。結局ゲームを遊んだような感じなのでそう感じてしまうんだろう。 深みが無いとこういうことになるのかも知れない。ドイツではベストセラー作家だということだけれどどうも小手先の小説という感じで残念だ。 もっとも読む人によってはこれは面白い、と興奮しながら読む人もいるかも知れない。豪華客船という閉鎖空間での失踪事件を調べる話なのだから。 |
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登場人物や物語の背景に深みがないとかその辺の批判めいたものはこの作家には当たりません。ほとんどの作品が推理ゲームに特化したものだからです。
ハウダニット、フーダニット、ホワイダニットを究極に突き詰めているお話ばかりです。ですから人間的な深みなどを描写することなど始めから捨てています。 結婚式の二次会出席のため数年ぶりに集まった大学の仲間。三次会の後、渋谷駅で別れた八人。それぞれが違う方向に別れ見事に散り散りになった八人。 住むところが違うため利用する鉄道が全員違ったせいです。乗り入れ路線の多い渋谷駅ならではの偶然でしょう。 大学時代に事件があり一人の女性が皆の前から消えました。社会人になれば今の人間関係を優先するため、いくら仲の良かった大学時代の友人たちとも疎遠になるのもごく普通の事です。 皆の前から消えた女性がその二次会に現れました。大学をやめ郷里に帰っていた女性が現れたのです。そして、久しぶりのためまた翌日に全員で会おうと約束をします。 だが待ち合わせ場所に彼女は現れません。三次会の後渋谷駅で彼女は渋谷のホテルに戻り他の八人は駅で散り散りに別れました。待ち合わせ場所で4人が残りあとの4人がホテルまで様子を見に行きます。 何故かケータイが繋がらないからです。ホテルの近くまで来た時、路上に置かれた段ボールの下に彼女の死体があるのを4人は発見します。 首にひもで絞められたあとがありました。八人のうちの一人が密かに彼女と連絡を取り二次会に呼んでいました。物取り等流しの犯行ではない模様です。 となると容疑者は八人なのか。全員が理系大学出身のためここから論理的な考察に入ります。推理ゲームの始まりです。 読者向けと探偵役向けに手掛かりを晒します。普通そんなことは言わないだろうという一言が語られます。それはあくまで読者と論理展開する探偵向けの言葉です。 それが無ければ推理は進まないでしょう。だからそこは目をつぶるところです。一般的に考えれば変です。言わなければ悟られないことを言うのですから。 そういったところがあるのがバカバカしいととる読者もいるでしょう。でも、あくまでもミステリのロジックを楽しむためのお話ですから重箱の隅を楊枝でほじくるのはよしておきましょう。( ´艸`) ただ、妙なタイトルで少し損をしているのではないかと心配します。軽いと言えば軽いです、しかし、妙な重たさがある海外ミステリを読んだ後はちょうど良い口直しとなります。 石持ファンであれば楽しめる一冊でしょう。 |
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ニューヨークで古本屋を構えるが、実は泥棒稼業にも精を出すというバーニイ・ロ―デンバーを主人公にしたもの。
舞台が大都会で暮らす人たちなのでクセのある人物が登場する。友人のキャロリンやマーティンといった一癖も二癖もある人物たちがバーニイに絡む。 個性が際立っているが、その人なりの人生観や正義感でバーニイとあれこれ会話をするところがこういった都会派小説のひとつのお約束。 いろんな喩えや比喩でもって長々と会話のキャッチボールを繰り広げて都会に住む者たちの哀愁みたいにものを表現したりする。 映画で云えば「プラダを着た悪魔」みたいな、良く考えればどうってことのない問題を取り上げて右往左往する人たちを描いた内容が 都会派コメディなんですというようなもので、 こういったセンスが好きだという人には楽しめるだろう。 会話がメインでもミステリの内容が濃ければ私的にはOKなんですが、他のシリーズ作品は知りませんが今作はどうも今一つの感が拭えません。 なぜなら事件の顛末がちょっと上手く転がり過ぎるということです。AからB、BからCへとそう上手く繋がりますかと危惧します。 バーニイの泥棒としての矜持もキチンと話していますが、周りにいる人たちの彼という人物に対する捉え方はしょせん明るく楽しいドタバタ路線のノリです。 主人公のカッコよさだけを前面に出したための結果でしょう。 赤川次郎の夫は泥棒妻は刑事、みたいなもんです。 軽妙と取るか軽薄と取るか紙一重じゃないですかね。 いろんな分野のウンチクや深い話が散りばめられた会話を楽しみミステリに酔うというスタイルはアリでしょう。 個人的には全体の世界観がイマイチはまり込めませんでした。 |
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生まれも育ちも選べない。何があっても、どんなに世間を斜めに見ようとも、歳がいけばきっかけとなる出来事があれば人は再生するということでしょう
ソニーピクチャーズが映画化権を手に入れているとあったがもう映画化されたのかな? 日本で公開された? プライベートジェット機が離陸後18分して墜落した。 暗い海から行きずりの客だった主人公が奇跡的に生還する。乗客だったジェット機のオーナー一家の四歳の息子を助けて。 一躍ヒーローとなった彼。しかし、犠牲となったジェット機のオーナーはケーブルテレビのニュース専門チャンネルALCニュースの代表だった。 他に銀行家の夫妻が乗っており男の方は財務省外国資産管理局調査官から目を付けられていた。 事故かテロか国家運輸安全委員会とFBIが調査に乗り出す。 主要人物の人となりや生い立ちなどのエピソードを個人個人にページを割いて紹介している。 しかし、この人物像を描くところがちょっと長い。 そのせいもあり本の厚みもある。 こちらは我慢できずに読み飛ばしてしまった。 墜落原因が不明なことに世間の思惑をリードするマスコミ、ALCのメインキャスターは暴走を始める。 必死に暗い海を泳ぎ助かった四歳の男の子と主人公。 莫大な遺産を相続する四歳の息子と後見人となる妹夫婦。 生の人間模様が描かれるが読んでいて不快感は無い。 捜査の過程や暴走するキャスターの対比が上手く書かれているので先への興味が尽きない。 やがてボイスレコーダーが発見され修復されて事実が明らかになっていく。 ミステリとは違うしサスペンスというほどではないしスリラーとも違うがキメ細かく書かれているので面白く読める物語というのは当たっていると思う。 だた、ちょっと長い。もう少しまとめればサスペンス感も上がったと思うのですが。 |
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海外ミステリの一つのお約束のように、本書の女性ライターという主人公も辛い不幸な過去をもっているという設定。良くあるパターンなんだけれどこれはどうしてなんだろう。不幸を背負っている人物の方が読者に受け入れられ易いと考えるのか、
書く側にとってのひとつのステレオタイプなんでしょうか。それはともかく親友でもあるエージェントから、出版元はあなたを見限ろうとしている、すぐにでも書く案を示しなさいと言われる。そして話題になった事件の主に会って彼女を主人公にした 小説を書くようにと勧められる。気乗りがしないまま収容されている刑務所に面会に行くことになる主人公。妹と母親を殺害しバラバラにしていた女。身体が大きく太っており威圧感のある女。内心の恐れを隠しインタビューする主人公。 事件そのものは現場にいた彼女がその後すぐに犯行を自白して逮捕され、たいした捜査もせずに起訴、有罪となり事件は終わっていた。風貌と体つきなどの理由により彼女は嫌われていた。反対に妹は愛らしく皆から愛されていた。 近所の者、学校の関係者、皆が納得して何の疑問も持つことなく裁判は終わっていた事件。主人公は一つだけ疑問に思う。猟奇的な事件なのに彼女を鑑定した結果は正常。しかも知能は高い。彼女も面会の時、事件については喋らないが他の事には 主人公に心を開いたかのようにいろいろと話す。調べ始める主人公。別に目新しさも感じない内容と言える。結局クロかシロかということになるが、この物語の怖さは人の心にあるということ。評判は悪く嫌われ者。しかし、それは隠された意図があることを 誰も気付かずにいたからだとしたらどうか。怖がられるのは良い、だけど笑われるのは嫌と彼女は言う。事件の真相は? 大方の予想通りになっていくが彼女が浮かべる笑みは何を意味するのか。そして主人公の理解者であり彼女の恩師であるシスターの言葉「あなたは選ばれたのよ」。本音を隠し世間体を取りつくる人々。本当のところやはり彼女の犯行ではと揺れ動く主人公。最後まで読ませる筆力とプロットの良さは認めます。 |
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『羊たちの沈黙』をディズニー映画にしてしまった、との過激なキャプションがつけられた本書。要するにこの本に比べればあちらはお子様向けの物語ですよといっているんですね。
ツッコミどころはあるんですが、全般的には良く出来ているとは思います。1993年の作品ですからしょうがないんですが、今ではこういったモノは多々あるので少し影が薄くなっているところは否めません。 サイコパスによる連続殺人、弁護士、検事、迷走する法廷。主人公は夫と別居中の女弁護士とウケる要素をしっかり詰め込んだサスペンスミステリです。テンポ良く進むので読みやすくはあります。こういったものは 徹夜本と言われて読みだしたら止められない類のものであるそうで、確かに猟奇殺人の捜査に明け暮れる刑事たちを描きつつ多彩な人物が動き回る展開は中々読ませます。 最後の数ページになっても容疑者となりうるのは二名いるので、さてどっちが真犯人なのかとギリギリまで解らなくしています。登場人物もそれぞれ立っており物語に深みを与えています。 ある地方で猟奇的な連続殺人の事件があり、その10年後違う地方で同じく猟奇的な殺人が起きるのは何故か? 公表していない事実、現場には黒い薔薇とある言葉が書かれた紙が一枚。 共通するこの事実は犯人は同一人物だということか? こういった謎を芯に展開するストーリーです。こう書くとよくあるパターンのミステリだとトリックなどあれこれ想像しますが、この本のパターンはこれまで読んだ中には 無かったものでその意味でも面白いと思いました。本職も弁護士とのこの著者。法廷でのシーンの巧みさは経験からのモノなんですね。 |
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著者らしい仕掛けを施した青春ミステリです。犬をつれて散歩中の少年が事故にあい亡くなります。舗道から突然犬が車道に走り出し、リードを持っていた少年は引っ張られてしまいトラックに轢かれたのです。その事故現場にはメインの登場人物大学生四人がいました。一人は主人公でロードレーサーを使った荷物の配達のアルバイト中の秋内静という青年です。そして向かい側にあるファミレスから出てきたのが友人である友江京也と彼女である巻坂ひろ子。そして主人公の静が思いを寄せる羽住智佳。この四人のキャラクターが上手く書かれており物語を動かすための装置としては十分に成功していると思います。つまり端的に
云えば舗道にいた少年と散歩中の犬。その犬が何故急に車道に飛び出したのか?このミステリの謎はこの一点です。しかし、主人公の友人である友江京也には不可解な一面があります。そこに主人公はこの事故とのなにか繋がりがあるのだろうかと苦悶します。何故事故は起きたのか?そう考える主人公の行動や友人たちとの会話でもって物語は進みます。その中で張られていく伏線。いくつもの伏線が最後には明らかになるのですが、犬の習性ということで私自身は「そこだけ」を使ったトリックというか扱い方は少し強引な印象を持ちます。ですがこの犬の行動の謎解きだけがこの物語の全てではありません。もうひとつ大きな 仕掛けを施しています。それが著者らしい仕掛けを施した青春ミステリと紹介した所以です。主人公もお約束の奥手で初心な男という設定です。この方が読む者の共感を得て彼が思いを寄せる相手とこの先がどのようになっていくのかとヤキモキとホンワカとした気持ちになり青春物らしい味が加味されます。二人の行く末と事故の謎。それを語り合う喫茶店での四人。ただ単純に騙されるのが心地よい読後になるのです。 |
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五年前に不意に姿を消した女性と偶然再会した主人公。しかし、翌日には事件の被害者として殺害されたことを知る。弁護士の主人公には、父の自殺という出来事がありそれも自分のせいではないかと云う
心の負担が彼を悩ませていた。事件そのものは痴情のもつれといった形で終止符が打たれそうな感じだったが、犯人が暴力団関係者であり夜遅く彼女のマンションの部屋にどうして入れたのかといつた疑問から 主人公は彼女がなぜ黙って自分の前から消えたのかも知りたくて事件を調べ始める。しかし、調べを進めると名乗っていた人間とは別人である可能性が浮上する。彼女はどこの誰だったのか、事件の起きる前日に留守電に入っていた頼みたい事とはどのような事だったのか。あのウイリアム・アイリッシュと同じタイトルをして同様に序盤から読者を物語の中に引きずり込む展開はこの先を期待させてくれます。 でも、全体の構図としては産廃業者、市の役人との癒着、陰にうごめく暴力団、といったありきたりのパターンで書かれていてその分興醒めになるところがあります。もう少し違ったプロットで書かれていたらと 残念に思います。それは、この著者を初めて読んだのですが思いの外筆の立つ人で、主人公の屈折した心情もとにかく理屈っぽく多角的に説明していたりと予想外の筆の確かさに驚いたからです。全体においても各人物のセリフや生き方とそのポリシーもしっかりと書き表し、ぶれない人物像の人達が話の展開にもその役割として上手く作用しています。浮ついた描写や軽い雰囲気になることなく、むしろハードボイルドタッチで事件の背後と殺された女の実際の素性を探る主人公の姿が描かれています。やくざに手ひどくやられ満身創痍の身体でも調べを止めない主人公に先の展開が気になって読み進むことになります。 主人公の過去とその影響を受けた生き方。それらを描きながら女の謎を追う展開のミステリとしては上出来でしょう。ただ、残念なのは背景のありきたりさとだと云えます。 |
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古典です。沢山のミステリを読んできて、豊富な読書量を持って今このミステリに挑んだとしたら、作者には失礼ですが肩透かしを食うでしょう。それほどトリックが古典過ぎるということです。
これは作者の責任ではありません。時代の所為です。これと同じ手を使ったミステリはいっぱい有りますし、いっぱい読みました。その本のタイトルを書くだけでこのミステリのネタバレになります。 時は残酷です。当時のミステリファンはこのトリックにどれほど驚かされたことでしょう。二重殺人という言葉が使われていますが、今では普通の殺人事件で被害者が二人いる、そういうことですね。 探偵小説らしい言葉ですが当時はそのように使ったのでしょう。一室で男女二名が殺害されていた。これは二重殺人だと、そう呼んでいたんですね。時効寸前に現れた恐喝者。被害者の遺族と犯人に同時に証拠の品を買い取れと競りにかけるくだりは面白いです。両者が金策に走るところはブラックユーモアですね。この辺はフランスミステリらしい味わいです。そして、最後の真犯人の顔が分かるところは、う~ん何度も書きますが 当時は衝撃だったでしょう。ただ、今読んでもこの作品の評価を下げることは有りません。キッチリと計算された書き方で最後の衝撃に至ります。これは見事です。 併録されている「連鎖反応」も面白いです。ま、ダルマさんが転んだって意味合いのミステリですが、笑いながらもギクッとするオチが用意されていて楽しめます。一人称で語る人物のテクニックに騙されたって ことですね。(笑) 読んでおくべき古典の一冊に間違いはありません。 |
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以前読んだ「黒龍荘の惨劇」が楽しめたので本書を手にしました。伊藤博文公の書生をしていた二人が、一方は探偵となり片方は役所に勤める身分となったが、親友であるがゆえに
二人して事件に巻き込まれるというスタイルで書かれているミステリです。生涯の友の月輪龍太郎が探偵となり事件の記録者の杉山潤之助がワトソン役で彼に付いて回ることになっています。 この二人の設定は悪くなく微笑ましくもある二人ですが、今回の事件は手口が大胆で、その割には成功と云えるかどうか微妙な感じがするのも否めないと思うのです。 しかし、上海に向かう船内が舞台で催しとして仮面舞踏会があったり(ああ、入れ替わりトリックね、と想像するとそのままだった。)(笑)など一応趣向が凝らしてあるけれど、やはりメイントリックに 大胆過ぎるが手口が使われているので、少し引いてしまうというか、ちょっと気に入らなかったのは隠せません。明治のころを舞台にしているので文章も当時を思わせる言葉使いで書かれていて、 この辺は別に読みづらいとかいうことは無くて、逆に雰囲気を出すためには不可欠なところであると思います。事件そのものは動機が分かれば犯人も指摘できるという単純なものですが、その動機に当たる エピソードが最後の方で関係者から語られるというのも、ま、物語の性格上仕方がないといえますが、こういった点からも全般的に平均点の内容と云わざるを得ない内容のミステリでした。 |
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ゴシックロマンスと嵐の孤島での連続殺人ミステリ。エキゾチックな島。生きているかのような気配の古い家。性的抑圧。禁断の恋。三角関係。浮気。裏切り。
愛憎相半ばの関係。不意打ちのキス。女同士の争い。嵐によるパニック。そして大胆な伏線。 ~訳者あとがき~ より。 大胆な伏線、はホントに凄いです。まさかと思います。今じゃこのようには書けないでしょう。もし書いたら十中八九作者の負けでしょうね。それほどの大胆さです。 二人の秘密をいつ打ち明けるのか、ハラハラドキドキで読み進めます。アメリカのミステリ作家、メアリー・ロバーツ・ラインハートが先鞭をつけたといわれる、「もし知ってさえいたら・・・・・・。」と 主人公に語らせることで読者に迫りくる恐怖を予感させる手法は、後に「H・I・B・(Had-I-But-Known)」と呼ばれるサスペンス小説の一つの型として多くの作家に影響を与えました。 この著者もこの手法を得意としていてこの「嵐の館」もそのスタイルで書かれています。 孤島が舞台ですから登場人物も当然限られてきます。この中に犯人がいる、と分かってはいても始めからアッサリと分かるようではお話になりません。 しかし、何度も言うようですが伏線は大胆です。(笑) 諭より証拠一読してみてください。楽しめるのは間違いありません。ノーニとジムに乾杯。 |
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古書の鑑定家で保存修復家のハンナ・ヒースが、1996年サラエボでサラエボ・ハガダーと呼ばれる有名な希少本に出合うところから物語が始まります。
500年の歳月を生き延びた一冊の本。中世のスペインで作られた、ヘブライ語で書かれたその本はそれまでの通説を覆し美術史の教科書が書き換えられたほどだった。 その理由は、出エジプト記にある戒律 “汝、いかなる偶像も造るなかれ” によって、中世のユダヤ教徒は宗教的な美術品を一切作らなかったと考えられていたからです。 しかし、このサラエボ・ハガダーは全ページに細密画が描かれいてたのです。物語の進行によってこのような紹介がありますがこの辺は多分事実なんでしょう。1992年サラエボが包囲され 博物館や図書館が戦闘の標的になってから、その後はその古書が行方不明になったとのことで、こういった事実にフィクションを絡ませて書かれた物語です。 ハンナの鑑定によって、小さな染み、ワインのような茶褐色の染みと塩化ナトリウム、一般的な塩のようなものと半透明の翅脈のある昆虫の羽が見つかります。 この見つかった三つのものに関して時間が遡り当時の時代を背景にしたエピソードが展開されるという内容です。 しかし、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教などの関連した歴史的な部分は大陸で生まれ育った民族ならばともかく、島国の排他的な農耕民族である日本人には肌で感じるような点は無いのではないかと 思います。この辺はただ、ストーリーを読むという感じで、その割にはドラマチックさにやや欠けるようなエピソードのような気がしました。もっとドラマチックで波乱に満ちたストーリーが良かったと 思うのは私だけでしょうか。充分過酷な目に合う主人公が描かれてはいますが個人的には多少物足りなさがあるんです。その反面、現代を舞台にしたハンナの行動を追う展開の部分は中々面白く、母との確執や謎だった父のことが分かって来る後半は楽しみながら読み進みました。 たかが一冊の本。しかし、科学的に分析すれば使われている顔料ひとつをとっても非常に興味深い話が聞けるこの本は やはり、読んでみる価値はあったと思いました。 |
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読んでいて、ピカレスクロマンの物語なんだなと思った。各章の人物目線で語られる話は面白く、ある人物が陰に居るのがはっきりとしているので、ボチボチと警察関係者のアンテナに彼女の存在が
知られていく件も当然その予感を抱かせる。ダークヒーローものはけっこう個人的には好きで、過去には面白いものを読んだ記憶がある。このスタイルものは着地をどうするかに成否がかかっていると いっても過言ではないだろう。緻密な構成と大胆な仕掛けで警察に尻尾を掴ませない主人公の行動がある意味爽快となり読者の共感を得るのがピカレスクロマンの面白さであると思う。もちろん結末の様子が どうであるかも重要だけれど、いろいろな出来事をどう読ませるかにもかかっている。その点この本は工夫が凝らしてあると認めても良いだろう。始めに出てくる人物も最後には重要なファクターになるし、各章のエピソードも面白い。その手口は実際使えるのかというツッコミはなしにして、何故という行動にもきちんと心理面が綴られているので納得してしまうのは作者の上手さでしょう。 一点どうなのかな、と感じるところは主人公の内面というか、何故そのような人間なのかという部分が描かれていず彼女の行動原理が不明であるところが残念であると思う。幼少のころの父親との関係がそうさせたと推察されるけれど、彼女自身の口からはっきりと語られていないのであくまで推察でこの部分は不明だ。もっとも作者はこのところは逆にハッキリさせない方が、この人物のカリスマ性みたいなものが増すと 計算したのかも知れない。それ以外ははじめから最後まで楽しめたので良しとしましょう。 |
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ミステリの手法を使った内容の物語と捉えた方が良いと思います。本格物のミステリではありません。子供のころの経験や記憶でネガティブな精神状態にある主人公の物語は割と多くあるように見受けられますが、結果として主人公の胸の内を語るモノローグは暗い重いトーンで書かれることなどが多くて、読んでいて
気分の良いものではなくどちらかと云うと敬遠したいものです。過去の記憶と現在に起こった出来事をきっかけに確かめておきたいことを調べるために過去に住んでいた村に帰った主人公の物語ですが、いろいろなピースがすべて繋がるなどミステリの要素がキチンとはめ込まれていますが、物語自体が読んでいて面白い話 ではないのでごく普通の印象です。きめ細かくいろんな事象やエピソードを散りばめてそれらが収束されていく様は見事ですが、いかんせんストーリー自体に魅力がなければ読み終えた後の感想も尻つぼみになります。まだ、荒唐無稽の内容でもああ面白かったと言えるものの方が良いように思います。 もっともこれは私個人の感想なので他の人が読めば面白いと感じるかも知れません。何度も書きますがいろいろな出来事がすべて収束する様子は手慣れた作業と感じさせる筆者の力量ですが、もう少し物語自体に魅力を感じるものを書いて欲しいと思います。 |
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タイトルどうりの内容なので隠された真意を、どうドラマチックに見せるかが重要になるストーリーだと考える。その意味ではミステリとしてプロローグから中盤の展開、そしてクライマックスへと流れる話の持っていき方は
良く書かれている。伏線の張り方、登場人物の心情、裁判を起こしどう訴えるかなど丁寧に書かれていてわかりやすい。しかし、トータルで言えば後味の悪い話といえる。その問題をこういった切り口でみせ更に驚きの事実を白日の 元に曝すという手法は良いけれど主人公にとっても重い話だと思う。一件落着してもその事実は消えない、そのあとに引きずる重さは普通ではないだろう。良く考えれば主人公の行動も歪んでいるように見える。 他に解決の方法があるだろうと思ってしまう。読後に感じるそれらの事が自分としては残念といえる。 |
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洗練された文章で綴られた救いの無い話。意図は何だろう。暗い話と暗い人物。誰が救われたのか?理不尽な結末。医者の推測がそのとうりだとしても、それで主人公は救われたと云えるのか?
どうしたんだろう歌野晶午、愛読者を置いて何処に行くんだろうか。こんな話はちっとも面白くない。 |
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同時受賞の「密室の鎮魂歌」はプロットは面白いけど肝心のトリック部分が拍子抜けするぐらいのもので、読み終わった後はすぐに忘れ去る内容だった。この本も著者が19歳という若さでの受賞なので一抹の不安はあったが
内容的に興味があったので読んでみた。孤島、独特の風習、そして密室とそそる材料は揃っている。料理の腕はどうかと期待しながら読み進む。探偵が披露した推理が真犯人を欺くためのものであり、本当の真相はそのあと 明かされるという筋書きは目新しくはないけれど、密室のトリックを打ち破るためにはその方法が有効であるとする探偵のやり方は理解できる。時代背景に合った硬い文章で書かれているが著者の年齢からすると苦労した 事と思う。その硬い文章も物語の雰囲気作りに役立っており、登場人物たちの描写や会話などもしっかり描かれていて物語世界を構築している。肝心の犯行動機がイマイチ良く分からない点が致命的と思うが全体的に年齢を 越えた力量を見せてくれた作品だと思う。さて、二作目三作目と書き続けられるのだろうか、職業作家として書く気があるのか不明だけれどこの一冊だけでも世に残せたことは彼にとっては有意義なことでしょう。 |
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かなりコジツケ気味の殺し屋の犯行だけれど、都市伝説的な殺し屋を本気で追う売れないライターの主人公の設定が面白い。都合よくとんとん拍子に話が進み過ぎと思うが、いろいろな登場人物が交差して集約する構成は
中々上手い。と云うよりも文章がこなれていて新人らしからぬ筆致でスラスラ読ませるのはたいした者だ。笑い話しのような仕掛けで仕事をする殺し屋と深読みし過ぎの追うライターと友人達の行動が何となく納得させられるのも その文章の上手さだと思う。作中にも出てくる某映画のアイデアの一部を拝借したような展開があるが、おバカな話のようでいて最後まで読ませるパワーはある。しかし、登場人物で光っていたのはヤクザの松重ぐらいであとはイマイチな感じ なのが残念だ。安定した文章力でもっと登場人物に磨きをかけて、ちょっと破天荒な視点から生み出すストーリーに期待ができそうだ。 |
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要点は閉鎖的な環境の村にある温泉宿から脱出する話で二人の視点でストーリーが進む構成。そして部屋にあったケータイからの男の話を半信半疑で聞きながら、男の誘導に乗って村の外に逃げる過程が描かれている。
つまり、誰の話が信用できるのか?という事と村からの脱出は成功するかという緊迫感を読むものに見せる物語だ。生き神様にされるという村の因習を話すケータイの謎の男。急に村に現れた元カレの男。不可抗力でケガを させた温泉宿の番頭のこともあり、また祭りの夜と云う事もあって大勢の村人が主人公を探して村中を徘徊する状況で、いったい誰を信用することができるのか。そんなスリリングな展開の中主人公を助けるものが唯一部屋にあった持ち主不明のケ ータイでそのケータイもバッテリーが残り半分という設定になっている。さて、ここまで見ると話の骨子は面白そうと感じる。でも二人の視点で進む物語構成のバランスが悪いように思う。愛子のアクションシーンにページを割きすぎだし しよりのキャラクターにも魅力が無い。シチュエーションは面白いのだからもう少しストーリーを煮詰めれば良かったのにと思ってしまう。ラストも取ってつけたような印象で感じ悪い。 著者には悪いがブックオフで100円で買って読んだ。 |
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