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ニコラス刑事 さんのレビュー一覧

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レビュー数19

全19件 1~19 1/1ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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No.19:
(5pt)

仮面病棟の感想

お茶の間で見るいろんな年代層向けのテレビの2時間ドラマと言った程度。小説作法+ミステリの書き方といったテクニックのみで出来上がっている小説。中学生向けかな。
仮面病棟 (実業之日本社文庫)
知念実希人仮面病棟 についてのレビュー
No.18:
(5pt)

六億九、五八七万円を取り返せ同盟!!の感想

初めて読む作家です。著者経歴を見るとけっこうな学歴の持ち主でいらっしゃる。そんな経歴で何故物書きの道にと不思議に思ってしまった。大きなお世話ですが。さて、タイトルに興味を惹かれて手にしたわけですが、ちょっとクセのある文体で読んでいて余り楽しくない。結論から云うと飛ばし読みをしてしまった。最後のページに目を通して結局そのような話しかと、ありきたりの内容なんだと思った。著者独自のアイデアというか設定で近未来の社会を舞台にしているが、独特の比喩もあまりこっちの心をくすぐらないし、早い話がどうもこちらと肌が合わない感じだった。コンゲーム小説の面白さを味わえるかと期待していたのだが、どうも退屈だった。もっとアイデアを煮詰めた方が良かったのにと思う。ありきたりのラストに繋げる意味でもそこまでのドラマがあまり面白くない。残念でした。
池袋カジノ特区 UNOで七億取り返せ同盟 I: プチ・コン編 (新潮文庫nex)
No.17:
(5pt)

君の館で惨劇をの感想

知らない作家だがタイトルと帯に書かれた荒筋に惹かれて読んでみた。うーん、結論から云うと狙いと云うかお遊びの趣旨は解かるんだけれど物語そのものにやや無理があると感じた。そんなミステリに淫した物語は自分には
ちょっと受け入れられない。架空世界とはいえ「密室殺人ゲーム王手飛車取り」の方が遙かにとっつき易く受け入れやすい。そしてお遊びとして究極の世界感の中でのミステリゲームを楽しむというスタンスが面白かった。
これは乱歩や横溝のほか数多くのミステリの内容やトリックに関して登場人物から語られるというお遊びのほかに、館で起こる不可能殺人の謎を探偵が解き明かすというオーソドックスなストーリー展開の物語だけれど、内容に
見合わない軽い文体と薄っぺらな人物達の行動や思考にどうも付いていけない。動機も解明もとおりいっぺんと云った印象で共鳴も何もない。本当にミステリが好きで書いているのか?と感じるほどで分厚さの割りにさーっと読み終えて
さしたる感想も沸かないほどだった。 こういった内容の本はもういいだろう。
君の館で惨劇を (本格M.W.S.)
獅子宮敏彦君の館で惨劇を についてのレビュー
No.16:
(5pt)

人面屋敷の惨劇の感想

タイトルはオドロオドロしいが、内容はそれほどでもない。好きな作家なのだがこの作品はイマイチ楽しめなかった。それはつまり話しのとっかかりである、行方不明の子供たちの親等が週刊誌などに書かれた不審人物の館に乗り込む、といったシチュエーションがしっくりこないからです。そのために初めから物語の中に入りづらい感じがして、読み進むのが楽しいといったそんな気分になれませんでした。なぜ警察といった捜査機関を排除して自分達で怪しいといわれた人物の館に行くのか
?その辺が一応もっともらしい説明で彼らの行動を理解させようとしていますが、読んでいる自分には違和感が残ります。例えば「煽動者」は主人公があるテログループの一員で、対警察のセキュリティが完璧なアジトの中で起きた殺人をその時アジトにいた数名の証言を検証し各人の行動を考察して論理を重ねた結果殺人者の特定に至る、そんなストーリーです。対警察のために監視カメラなどでアジトへの出入りは完璧に監視されていた。部外者の侵入はありえない。こういったシチュエーションはパーフェクトですんなりこちらの頭に入ります。物語世界がスッキリと確かなものになっています。でもこの作品は違和感が付きまといます。もしこの物語の中に警察官が一人でも登場すればそこで話は終わります。つまり穴が大きいと云う事です。ストーリーがどうこうの前に物語世界をもっとしっかり構築するようでなければその世界に入っていけません。また保護者たち被害者の会のメンバー達をすんなりと館に入れる人物の意図も良く解かりません。1の殺人はともかく2の殺人はあいまいな動機で警察に通報しない理由が私には納得できません。それらしい主張をくどくど言ってますが無理があると思います。先に書いたようにここでも警官がひとり入り込めばもう話は終わってしまいます。そのための説明文なんでしょうがイマイチです。狂気に付かれた人物の行動もあいまいな感じで凄さ怖さが伝わってきません。残念ですが私にはイマイチといった感想しかない作品でした。
人面屋敷の惨劇 (講談社ノベルス)
石持浅海人面屋敷の惨劇 についてのレビュー
No.15:
(5pt)

完盗オンサイトの感想

乱歩賞で好きなものは「アルキメデスは手を汚さない」。「透明な季節」。「ぼくらの時代」。「焦茶色のパステル」。「浅草エノケン一座の嵐」。「顔に降りかかる雨」。そして「テロリストのパラソル」。
これは皇居に侵入して550年の歴史を持つ盆栽を盗み出す、そんな突飛なアイデアをもとにした作品だが。
文章は女性とは意識させないしっかりした書き方で、会話や場面の状況などを描写して読むものを引き込んでいく確かさはある。
でも、イマイチ話の持っていき方が強引と云うか、もと彼女の金銭面の窮状を救うといった心情などが書き込み不足気味で彼の行動心理などにあまり共感できない。子供のことなどにしてもそんな感じで何故そうするのかといったところが、こちらには上手く伝わっていない。人物造形は可もなく不可もなしと云ったところで魅力的な人物といえば医師の瀬尾貴弘ぐらいか。主人公にはどうにも感情移入しずらくて醒めた目で読み進んだ。単行本の値段が税別で1500円。商品として妥当な値段かどうか。ミステリー色も薄く乱歩賞と云う冠が無ければ読むのを敬遠していたことだろう。

完盗オンサイト (講談社文庫)
玖村まゆみ完盗オンサイト についてのレビュー
No.14: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

金雀枝荘の殺人の感想

このページにある「BOOK」データベースよりのあらすじを読むと、食指が動き手に取ってみようかと思わせる内容だが、読み終えた感じはどうもいまいちの感想になる。最初にこの作家と波長が合わない。物語に入り込めないし人物たちにも感情移入できない。浅い文章。警察も見放した謎って・・・。格好は本格ミステリーを気取っているが、そのトリックにしても陳腐。「館」ものとしては評価しているものを目にしたことがあるが自分としてはそれ程でも・・・。
数年前の作品と云う事を割り引いても低評価になる。
金雀枝荘の殺人 (中公文庫)
今邑彩金雀枝荘の殺人 についてのレビュー
No.13:
(5pt)

水底フェスタの感想

初、辻村深月としては選んだのが拙かったか平凡な作品だった。この人のはどれもタイトルが洒落ていて、そういったセンスからも好ましいのだけれど、この本はありきたりの内容に終始しただけで特別この作家らしい
オモシロさは無かった。地方の村とそこに住む少年。多感期特有のオトナへの不信と軽蔑。未来へのあやふやな憧れと意味のない恐れ。揺れ動く気持ちとはうらはらな怠惰な日常。やがて芸能界に身を置くひとりの女が出身の村に帰ってきた。母親は亡くなり親族は誰一人居ないと云うこの村に。フトしたきっかけで知り合うが彼女が帰ってきた理由は村への復讐のためと知る。そんなストーリーだけど、二人の関係と村の有力者たちが行ってきたひとつの便宜に対する少年の子供らしい怒りが波紋を広げていく展開になる話である。しかし、こういった内容の作品は他にも色々あり、狭い村社会に閉塞感を持つ少年の心の葛藤などが描かれたようなものはありきたりとしか云えない。ミステリー要素もさほど無くこの作家らしい色合いも無いとなると平凡な作品と思わざるを得ない。予備知識なしでタイトルで選んだがこちらの選択ミスだったのだろう。
水底フェスタ (文春文庫)
辻村深月水底フェスタ についてのレビュー
No.12: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

鍵のかかった部屋の感想

「硝子のハンマー」の二人、防犯コンサルタントと称する榎本 径と天然ボケの弁護士青砥純子が登場する、密室殺人を題材にした短・中篇四編が収められた本である。
「佇む男」は死体の口に蛆がいたことなどからトリックを暴いていく過程が描かれている。

「鍵のかかった部屋」は自殺をする理由がないという肉親の訴えから背景を調べ動機を確認して、その後思考を重ねトリックを見破るまでを描いている。

「歪んだ箱」は欠陥住宅を施工した業者の社長を殺害した犯人と現場で密室の謎をやり取りしながら犯行方法を暴いていく内容になっている。

それぞれ背景や舞台を工夫して密室トリックを構築しているが、読んでいて退屈になってきた。
何故だろう・・・。すごく手の込んだトリックを考えて犯行を成し遂げた犯人に対して、榎本の思考のプロセスがどうも良く分からない、その為じゃあ無いのだろうか。まるで始めから答えを知っていたような解答の出し方をするそんな違和感がある。

もっと物語が読みたい。綾辻行人や有栖川有栖を読んでいるとき北村 薫の「空飛ぶ馬」は新鮮だつた。

そんな「新鮮」にもっと触れたい。

四編目の「密室劇場」は読む気が起きず本を閉じた。
鍵のかかった部屋
貴志祐介鍵のかかった部屋 についてのレビュー
No.11:
(5pt)

完全なる首長竜の日の感想

「このミステリーがすごい!」第9回の大賞作品。 こういったバックボーンがあると読む人も大勢居ると思う。私自身もそのうちの一人だ。さて、読後の感想は面白かったか否か?単純な比較で前年の大賞作の「さよならドビュッシー」と比べると、100%私個人の好みと感想だが「さよならドビュッシー」の方がミステリーとして面白かったと思う。この「完全なる首長竜の日」は作者としてのセンスの良さは解かる。読み易い文章で読者を引き込む筆力は並ではないと感じる。植物人間のような意識のない人と会話が出来るインターフェースが開発され、自殺を図った弟と会話をしてその真相というか自殺の理由を探り出そうとする姉。プロローグでの島の出来事との関連とか、あやふやで謎めいた昔の話などがどう絡んでくるのかと思い読み進む。だが、「胡蝶の夢」の話しを主人公から語られるのはどんなものか。そのあたりから興味が半減する。何故それを口にするのか?ストーリーの核心を突く言葉は要らなかった。このためにミステリー要素が消えてしまった。犯人探しのミステリーでは無い以上もっと読者を謎めいた世界に彷徨い続けさせて欲しかった。日常や会話など筆力のある文章で期待させる人と思うが、この作品では今一歩と云った印象だった。

完全なる首長竜の日
乾緑郎完全なる首長竜の日 についてのレビュー
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(5pt)

マリアビートルの感想

『グラスホッパー』も読んでいるけど、その続編のような設定での話し。舞台は新幹線の中。東京から盛岡までの車中を舞台にドタバタ劇を繰り広げる殺し屋達の物語。まぁ、良くも悪くもタランティーノの映画みたいなお話で、鼻につく言葉やレモンだのミカンだのてんとう虫だのと如何にもといったキャラクターと、王子というあざとい少年まで出てくる。脇役と思われた人物が実は・・・。と云ったいつものパターンがあり他の作品と何ら変わらないスタイル。ラストのオチもどうってことなく、伊坂幸太郎ブランドを信じて手に取った読者としては、もう少し引き出しの広さを見せてもう一段上の質の高い作品を提供して欲しい。本を閉じて著者名を見て赤川次郎とあってもそれほど違和感はない。
マリアビートル (角川文庫)
伊坂幸太郎マリアビートル についてのレビュー
No.9:
(5pt)
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夏の名残りの薔薇の感想

この人の作品はわずか二、三冊しか読んでいないが、どれも話の境界がハッキリしなかったり、結末も曖昧なまま終えると云ったスタイルが多いようだ。この物語も、辺鄙な山奥に建つグランドホテルに毎年集まる人たちと、招待をする大きな力を持つ企業の創業者の娘三人。この三人姉妹がディナーの席で語る不思議な話を聞かされるのが通例だった。一人ひとりの人物の目線で物語が語られるが、少しずつ物語が変化していく。記憶の底に沈殿した過去の犯罪を掘り起こす物語だが、陰湿で最後の解決も曖昧模糊として不確かなままで終わる。こういった恩田ワールドが好きな人には良いだろうが一般的とは言い難い。でも雰囲気のあるなかなか読ませる作家ではある。

夏の名残りの薔薇 (文春文庫)
恩田陸夏の名残りの薔薇 についてのレビュー
No.8:
(5pt)
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騙し絵の館の感想

館に住む少女と執事。ミステリー作家。そして謎めいた女。勃発する連続少女誘拐殺人事件。だがそれは支線であり本線は別にある。最初から散りばめられた伏線。ひとつひとつが集まり一枚の絵になる時、隠されていた犯罪が明らかになる。一言一句ムダのない言葉で綴られるモノローグと行動が騙し絵となっている。

だけどこの文体と作風では読者を選ぶのではないだろうか。計算された一言一句の言葉で書かれているので多少無味乾燥なところはあるし、とっつきにくい印象で、平坦な言葉で書かれたミステリーなど読みなれた人には敬遠されるのじゃないかと思う。劇的な展開の物語ではないし、最後に明らかになる犯罪もピースを拾い集める段階で読めてしまう。多分に作家の自己満足的な形式を楽しんで作り上げたひとつの作品と云う色合いが強い。エンターティメントな作品ではない。そこをどう評価するかだろう。
騙し絵の館 (創元クライム・クラブ)
倉阪鬼一郎騙し絵の館 についてのレビュー
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(5pt)

首挽村の殺人の感想


▼以下、ネタバレ感想
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首挽村の殺人 (角川文庫)
大村友貴美首挽村の殺人 についてのレビュー
No.6:
(5pt)

パーフェクト・プランの感想

身代金ゼロ、せしめる金は5億円。誰も傷つけない誘拐ミステリー。 う~~ん。面白そう。しかし、問題は先に読まれた諸兄氏のレビュー。なぁ~に、読解力の問題だろう、と思ってたのも事実。だがしかし、読み終えて時間を置いて考えると、未完成さが目に付いた。特に人物の造形が浅い。単にプロフィールを記しただけの印象なのでその人の人間性が見えない。例えば「小田切 良江」。代理母を生業にしている中年女。若い頃は美人でどうのこうのと仲間が話していたが、どの様な人物なのかさっぱり掴めない。登場人物はみんなそんな感じなので共感出来ない。そして、不可思議なのはJoshuaと名乗るハッカーにしてクラッカーという人物。何故こんな人物が事件ではなく出来事、(誘拐事件とはならないようにしている計画のため。)の中に入り込んでくるのか?意味が不明。オーソドックスでありきたりでも、日本ジェノックの裏の顔の部分から危ない連中が彼らを追い詰め襲う、としたストーリーの方がベターだと思うが。Joshuaが絡んで物語に起伏が生まれると計算したのなら違うと思う。
何か焦点が無く拡散したような印象の物語だった。
パーフェクト・プラン (宝島社文庫)
柳原慧パーフェクト・プラン についてのレビュー
No.5: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

晩餐は「檻」のなかでの感想

密室物の変形だが、細かい点は問わずの姿勢を保つため架空の制度を設定している。この辺はアイデアの良さを感じる。つまり合法的な復讐である、あだ討ち制度が設けられている社会という設定だ。だが、これも売れない作家が担当者に言われてミステリーを書くために考え付いた作中作という体裁をとっている。メインは売れない作家の独白や、周りの人物が絡み合って思いがけない方向に展開する日常が描かれている。でも、出版業界の内幕や作家としての苦労などが妙にリアルに書かれていて面白い。作中作の事件と作家の現実とが交互に綴られ終盤に交差すると読者はフェイクに引っかかっていたことを知る。悪くはないが、そう驚きもしない。そんな程度のトリックだろう。軽い文体と軽妙な語り口の、例えは適切か分からないが赤川次郎の本を読んでいるような感覚がある。密室殺人もこの設定だから可能なものであるが、まぁ肩の凝らないミステリーとして読んで見るのもいいかも。メフィスト賞でデビューした人である。
晩餐は「檻」のなかで (ミステリー・リーグ)
関田涙晩餐は「檻」のなかで についてのレビュー
No.4:
(5pt)

リスの窒息の感想

新聞社に誘拐の身代金請求のメールが届く。何故新聞社に?理由は始めに読者に示してある。
この辺はいい。読み流す。だが、新聞社の対応が何かおかしい。理詰めでの各人の思惑で社の意思を決めて対応する事になっているが、ちょっと甘くないか?新聞社がひとり勝手に踊っている印象である。
ありきたりの常識的な対応をされてしまえば、そこでこの身代金請求も何もかも終わってしまう。
そうさせない為に新聞社を縛る仕掛けが施されているが、あくまでストーリーを成立させるためのご都合と見えてしまい、ストーリーに乗っていけない。好きな作家だがちょっと残念な結果の作品。
リスの窒息
石持浅海リスの窒息 についてのレビュー
No.3: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

巫女の館の密室の感想

密室ものは、あまり堅牢な密室を構築すると作家自身の首を絞めかねない。しかし隙間だらけの密室では読者から首を絞められる。つまりそれだけ最初からハードルの高いジャンルと云える。これは密室にする動機もトリックも残念ながら今一歩。タワンティンスーユ帝国の物語を読者に示しながら、それを側面にして現実の世界での事件の動きを読み進む構成になっているが、実はこのタワンティンスーユの物語が重要な意味を持っていることになる。タワンティンスーユ帝国、つまりインカ帝国のことだが十三世紀始め、アンデス地方に成立した帝国で、首都はクスコ。十五世紀後半には現在のエクアドルからペルー、チリに至る一帯に大統一国家を建設したが、一五三三年スペイン人の征服者ピサロによって滅ぼされた帝国。この帝国の不思議な歴史を舞台に語られる物語が密室殺人の謎を解くキーになっている趣向だが、このへんは大変面白いのだが、やはり肝心の事件の謎を構成する部分が脆弱で犯人も、その意図もいまひとつの感が強い。それと刑事に同伴して館を訪れるのが美少女探偵となっているが、このへんはいまどきの読者に迎合した作者の姿勢が見えてシラケる。美少女探偵って何?西之園 萌絵はそんな風に描かれていないがとても魅力的だ。
この辺もマイナス評価の一因でもある。ともあれインカ帝国の話は面白かったのに残念な結果だ。
やはり、密室物はもうネタ切れでトリックも出尽くしたのか・・・。
巫女の館の密室―美少女代理探偵の事件簿 (光文社文庫)
愛川晶巫女の館の密室 についてのレビュー
No.2:
(5pt)

流れ星と遊んだころの感想

芸能マネージャーが一人の男と一人の女と出会う。男二人と一人の女。子供の頃流れ星を見つけるのがうまかった彼はその男をスターにするため担当している俳優、花ジンを裏切り彼を野倉監督の新作に出演させるべくオーデションを受けさせる。この手でスターを作り上げたいと奮闘する男。しかし、渋谷の路地裏で一人の男が殺された事件があり、オーデションでも逆転がありズブのシロウトがスターと成っていく。一人称の視点が変わり迷宮に入るストーリー。大掛かりなトリックはないがミステリアスな話が最後まで続き真相も消える。
誰が誰なのか複雑な入り組んだ関係の物語を、渋谷での路地裏の殺人をキーワードに織り成す不思議なモノローグ・・・。
流れ星と遊んだころ<新装版> (双葉文庫)
連城三紀彦流れ星と遊んだころ についてのレビュー
No.1: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)
【ネタバレかも!?】 (2件の連絡あり)[]   ネタバレを表示する

女は怖いと云うお話。

これはミステリー?どうも評価が一人歩きしている感じで、楽しみにして読んだぶん、なぁ~んだ、と云う感想で記述トリックとしたら、例えば『葉桜の季節に君を想うということ』のほうが自分としては面白いと思う。あるいは『ハサミ男』のほうが秀逸だと感じるほどの内容だった。それに男女の濃密な描写のシーンがあるが、あんなものは必要なのか疑問に思う。恋愛に関して女はこの登場する男以上に上手だったというお話で構成は上手いが二度読み返すほどでもない。
イニシエーション・ラブ (文春文庫)
乾くるみイニシエーション・ラブ についてのレビュー