■スポンサードリンク


ニコラス刑事 さんのレビュー一覧

ニコラス刑事さんのページへ

レビュー数324

全324件 281~300 15/17ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
 閲覧する時は、『このレビューを表示する場合はここをクリック』を押してください。
No.44: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ウォッチメイカーの感想

リンカーン・ライムとは、四肢麻痺の鑑識の天才。こういったキャラクターだと「鬼警部アイアンサイド」を
思い出すが、ちょっと古過ぎるか・・・。本を手にとって最初のページの登場人物紹介のところに、
ジェラルド・ダンカン・・・ウォッチメイカーとある。何故犯人の名前が?と不思議に感じたが、読み進めてその訳が解かった。始めからきめ細かい描写の文章で状況を読者に示す書き方をしている。海外作家は得てしてこういった文章を書くのは承知していたが、この本に限って云えば計算なのか?自然に作家の意図する方に
眼を向けた読み方をしていく。二重、三重の意外性があり最後まで読者を引っ張っていく力は並みの作家ではない証拠だ。ホンの小さな証言、些細な出来事などを神のごとく閃きと名推理で言い当てる、といったアホらしい設定ではなく、周りにいる仲間や協力者たちの感想とか思いつきなどをヒントに思考を進める捜査官という人物設定が良い。そして事件には真っ向から挑むため微細証拠の収集や周辺の聞き込みなど基本的な作業をきめ細かく指揮し、その役割を充分認識した仲間たちの活躍で謎の犯行を重ねる犯人に肉薄していく。
色々な伏線を回収していく終盤の動きとストーリーの多様さでリンカーン・ライムのファンも初めて読んだ人も楽しめるミステリーと云える。
ウォッチメイカー
No.43: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

トラップ・ハウスの感想

始めに記しておかなければいけないのは、やはり「扉は閉ざされたまま」のようなキレが足りない
と云う事。他の二番煎じ、三番煎じのような印象を持ってしまう事。シチュエーションから導き出される
内容はこれまでの他の作品とダブってしまうのは避けられない。そこを打破するには斬新な眼で常識破りの
プロットを工夫しなければいけない。こういった観点からみればスタートの出来事が弱い。閉じ込めて当事の状況を吐き出させようとする(犯人)の意図もあまり共感を呼ばない。しかし、相手がAと間違えてBに何故あの時あんな事をしたんだと詰め寄ってもBには何のことかさっぱり分からない。そんな状況下でBに該当する男女9人が仕掛けられた罠に隠されたメッセージを読み、論理的に思考を重ねてジワジワと(犯人)の狙いとこういった行為の動機を探り出していく過程は読ませる部分だった。トレーラー・ハウスの中で男女9人が会話のみで白紙の状態から過去の出来事と今の状況、そして当事居た影の第三者まで特定していく推理の積み重ねはミステリーとしては及第点だと思う。しかし、この手のシチュエーションで書くならもっとこれまでにないあっと驚く仕掛けと斬新な手法が欲しい。もっと読者をうーんと唸らせることが出来る作家だと期待しているのだから。
s

トラップ・ハウス (光文社文庫)
石持浅海トラップ・ハウス についてのレビュー
No.42: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ジョーカー・ゲームの感想

巷に溢れる殺人事件物、探偵役は刑事でも、便利屋でも、大学のセンセイでも無いモノ、そう云ったセンから
スパイものと云うジャンルに眼をつけたとしたら作者の勝利。
でも、こういったジャンルで短編を書くならば、もっと読み手の思い込みとか想像を見事にうっちゃる捻り手が必要なんじゃないだろうか?情報戦、頭脳戦を制する一流の頭脳明晰な人物を主人公にするなら、その分ハードルも高くなるはずで、それこそ最後の一行ですべてがひっくり返るストーリーを見せてくれないと物足りない。他のレビューにもあるように人物造形が浅いのも影響して物語に厚みがない。
取って付けたような設定とお話ではその世界に入り込めない。
といってもこういったスタイルの長編を書くには相当の力量がないと難しいだろう。志水辰夫や他のベテラン作家の作品を読んでみれば解かる。だが、片鱗は見れる。今後の作品次第と云うところか。でも、このような物語とくれば「陸軍中野学校」を思い出すが・・・。
ジョーカー・ゲーム (角川文庫)
柳広司ジョーカー・ゲーム についてのレビュー
No.41: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

警官の血の感想

親子三代に渡る警察官としての人生の軌跡を描いた物語だが、個人的には第三部の和也がいちばん面白い。
現実の歴史的な事件や出来事にフィクションを絡ませて描かれたストーリーはドキュメンタリーのようで、それぞれの時代を写しながら警察官として一人の人間として生きていく様が生々しく書き込まれている。
和也から見て祖父にあたる清二の身の回りで起きたふたつの殺人事件。そして、清二の不審な死。
この事件を背景にしてそれぞれの時代の事件、出会う人々との交流などを絡ませて最後の第三部和也では清二の死の真相が明かされる構成だが、このへんの謎といった部分よりも各人の警察官としての日々の活躍と生き方を描いたところの方がこの物語の大事な部分なんだろうと思う。会話や人物設定など確かな筆力で書かれた男の世界の物語で世相を切り取るセンスも確かだ。読んで損のない一冊と思う。
警官の血〈上〉 (新潮文庫)
佐々木譲警官の血 についてのレビュー
No.40: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

木曜組曲の感想

この人の作品は「中庭の出来事」と「夏の名残りの薔薇」に次いで三作目。前二作は曖昧な話で終始したが、この作品は事実関係が明らかになるストーリーでスッキリとした結末を迎える。
四年前に死んだ高名な女流作家の家に毎年その日に集まる五人の女。警察の調べは自殺で決着が着いている。しかし、それぞれの胸に収めていた小さな違和感を口に出していくうちに、あの日何があったか少しずつ見えてくる。その日だけそこから消えていた小さな額縁。少し動かされた鏡。肩を痛め手を上げられなかったはずなのに、あの日二階の窓から手を上げていた女。そして、五人が集まった日に差出人不明の花束が届く。不穏なメッセージカードと共に。
大人の女の知的で品のある無駄のない会話。飲み食べて本音を吐き出していくうちにあの日の本当の死の様子が浮き上がる。
舞台劇を観るような五人の女のディスカッションで進行する推理劇。
肩の凝らないミステリーとしてなかなか楽しめた。
木曜組曲: 〈新装版〉 (徳間文庫)
恩田陸木曜組曲 についてのレビュー
No.39: 11人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

開かせていただき光栄ですの感想

これまでに読んだことのない未知の作家さんだが、この作品には拍手を送りたい。意識して書かれているのだろうが翻訳本を読んでいるような文章で、18世紀のロンドンを舞台にしたミステリーとして雰囲気を作り出すことにとても効果のある書き方だ。当事の世相や社会環境と政治面のことなども物語りに上手く取り入れてストーリーに厚みを持たせている。と云うかむしろ当時の社会の仕組みそのものがこの事件の下地となっている。盲目の治安判事ジョン・フィールディング。彼の眼となり相手の表情、動作、周りの様子などを的確に伝える姪であり助手であるアン=シャーリー・モア。そして手足となって動き回り判事の助けとなるデニス・アボット。魅力的な人物たちと解剖学教室で見つかったふたつの遺体。金で正義は売らない盲目の治安判事ジョン・フィールディング。さて謎めいた事件を彼はどのようにして解決に導くのか。彼の調べていく様子と重要な役割の少年の行動を時間軸をずらして示し物語は進む。
始のころに何気なく描写された状況がラストになって重要な伏線であることに気付かず、ドンデン返しをまともに食らって後ろにひっくり返ってしまった。二転三転する真相。このままではちょっと辛いなと思いながら読み進めていたが、この鮮やかな逆転劇には正直ホッとした。ツボを得た演出と多くの伏線を回収していく巧みさ。薄暗いロンドンの街並みが眼に浮かぶ上質のミステリー。何時間か読み終えるまで世の中の煩わしさを忘れることができた。偉大な先人たちが書き記された古典的名作のエッセンスが散りばめられたこの作品。ぜひ一読を。
開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU― (ハヤカワ文庫 JA ミ 6-4)
皆川博子開かせていただき光栄です についてのレビュー
No.38: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

迷宮百年の睡魔の感想

久しぶりの森 博嗣氏の本。これは異質のSF作品だった。個人的にはSF物は好みじゃない。有名な「星を継ぐもの」なんてのも未だに未読。しかし、森 博嗣は森 博嗣で相変わらずの会話の面白さが楽しくて、500ページ程あるがほとんど一気に読み終えた。未来の世界は森 博嗣の心の内の世界なんだろうが、私も共感できる世界だ。閉ざされた迷宮の島イル・サン・ジャック。宮殿モン・ロゼの内部のレポートは100年間一切存在しない。サエバ・ミチルは相棒ロイディと招待されたこの島にやって来た。しかし、僧呂長クラウド・ライツの死体が発見され切断された首が現場には見当たらない。そして老人オスカも殺され首がない死体で見つかる。ふたつの事件とサエバ・ミチルの運命。メグツシュカ女王と島の秘密。一夜にして森が海になった伝説の島。ミチルとロイディとの会話の楽しさ。犀川助教授と西之園 萌絵や瀬在丸 紅子と保呂草などのシリーズでお馴染みの理系的な思考と言葉のやり取りがとても面白くて楽しい。ミステリー度は低いけれどひとつの物語として充分な面白さで森ファンにはおススメの一冊。でも森ファンじゃない人からすればこの本のどこが面白い?と云われるのも考えられる。ロイディなら「不確定だ」ときっと云うだろう。
迷宮百年の睡魔 LABYRINTH IN ARM OF MORPHEUS (講談社文庫)
森博嗣迷宮百年の睡魔 についてのレビュー

No.37:

噂 (新潮文庫)

荻原浩

No.37: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

噂の感想

どんでん返しのあるミステリーとして知られているが、それがなくても普通に面白い作品と思う。サイコ・ミステリーとして充分に面白く良く出来た物語と評価できる。ただ、意外な犯人の心の内がもう少し描写されていればより一層事件の異常さや不気味さが増して良かったのではないかと感じた。広告業界の戦略。誘発された殺人事件。刑事コンビの捜査の道筋。特異な視点から始まった事件だが、最後に真犯人にたどり着くまで興味深く読み進めることができた。この作家は「コールド・ゲーム」とこの「噂」の二冊しか読んでいないが、「コールド・ゲーム」はともかく、これは面白かったと云う感想である。
噂 (新潮文庫)
荻原浩 についてのレビュー
No.36:
(6pt)

名探偵はもういないの感想

この人の『開かずの扉研究会』シリーズ四作を読んでいる。これは、そのスピンオフと云える作品。
孤立した雪の山荘、怪しげな客達、そして起きる謎めいた事件。解決するのはアノ人だった。最後の探偵の謎解きの前に「読者への挑戦状」がある、もうミステリーの王道を貫いた体裁のこの作品。たまには作者に挑戦とデータを整理して暫し一考。結果、池で発見された死体の意味は正解だったが、ひとつ大事なファクターを忘れていて一連の流れにはならず正鵠を射たとは云えないためにこちらの負け。いろいろな手がかりをキチンと見せ、そのうえで物語を作り上げなければならないので、こういった趣向のモノは書き上げるのには骨が折れることだろう。ともすれば技巧にばかり神経が行き物語りがおざなりになるが、これは多様な登場人物がいてその辺のところは回避されていると思う。こういったゲームが好きな人には楽しめる一冊。
名探偵はもういない (講談社文庫)
霧舎巧名探偵はもういない についてのレビュー
No.35: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

謎解きはディナーのあとでの感想

有名な本?なのでミーハー気分で読んでみた。簡単に云うと俗に言うライトユーザー向けの本で、中高生などにはウケル内容の短編集だ。推理ありきの事件で物語の深みも無ければ、言葉使いも古く、ただ単にテクニックだけで書かれた謎々遊びのような本である。

短編集なら他にもっと面白いものが沢山ある。
謎解きはディナーのあとで (小学館文庫)
東川篤哉謎解きはディナーのあとで についてのレビュー
No.34: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

マリアビートルの感想

『グラスホッパー』も読んでいるけど、その続編のような設定での話し。舞台は新幹線の中。東京から盛岡までの車中を舞台にドタバタ劇を繰り広げる殺し屋達の物語。まぁ、良くも悪くもタランティーノの映画みたいなお話で、鼻につく言葉やレモンだのミカンだのてんとう虫だのと如何にもといったキャラクターと、王子というあざとい少年まで出てくる。脇役と思われた人物が実は・・・。と云ったいつものパターンがあり他の作品と何ら変わらないスタイル。ラストのオチもどうってことなく、伊坂幸太郎ブランドを信じて手に取った読者としては、もう少し引き出しの広さを見せてもう一段上の質の高い作品を提供して欲しい。本を閉じて著者名を見て赤川次郎とあってもそれほど違和感はない。
マリアビートル (角川文庫)
伊坂幸太郎マリアビートル についてのレビュー
No.33:
(5pt)
【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[]   ネタバレを表示する

夏の名残りの薔薇の感想

この人の作品はわずか二、三冊しか読んでいないが、どれも話の境界がハッキリしなかったり、結末も曖昧なまま終えると云ったスタイルが多いようだ。この物語も、辺鄙な山奥に建つグランドホテルに毎年集まる人たちと、招待をする大きな力を持つ企業の創業者の娘三人。この三人姉妹がディナーの席で語る不思議な話を聞かされるのが通例だった。一人ひとりの人物の目線で物語が語られるが、少しずつ物語が変化していく。記憶の底に沈殿した過去の犯罪を掘り起こす物語だが、陰湿で最後の解決も曖昧模糊として不確かなままで終わる。こういった恩田ワールドが好きな人には良いだろうが一般的とは言い難い。でも雰囲気のあるなかなか読ませる作家ではある。

夏の名残りの薔薇 (文春文庫)
恩田陸夏の名残りの薔薇 についてのレビュー
No.32:
(6pt)

わたしを離さないでの感想

ヘールシャム出身のキャシーの回想で物語は始まるが、テーマと云うか内容の割には少し長いと思う。
へールシャムでの生活と出来事を淡々と綴り、少しづつキャシーやその仲間たちとの勉強と生活を見守る保護官との会話で裏側にあるものが見えてくる。彼女たちの存在意義が浮かび上がってくる書き方だが、初めに出てくる提供者という言葉に違和感を覚えるがこれは無かったほうが良いと思う。ほとんどすべてが明らかになっても、キャシーと仲間たちはその運命を受け入れ提供者と看護人として全うする様子が描かれていて、最後のページのキャシーのモノローグには胸打つものがある。個人的にはもう少し切り口を変えてまとめれば面白かったのにと思うところで、さて、これはミステリーなのかと問われると少し違うと云わざるを得ない。
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
カズオ・イシグロわたしを離さないで についてのレビュー
No.31: 10人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

首無の如き祟るものの感想

これは一言で云うと面白い。ミステリーでいうトリックが幾重にもあり、最後の最後までドンデン返しのある仕掛けで書かれている。全体の話としては横溝 正史の世界のようで名作「八つ墓村」を彷彿とさせるものだが、密室殺人、首なし死体、その土地に代々伝わる祟りと亡霊の物語などクラシックと云えばそのとうりだが、良くできたプロットと入念に練られた物語の構成などで一気に読ませる。因習の村、繁栄のための男児の誕生、首なし様の伝説、密室の山、探偵小説、一言のセリフが伏線として存在するなど手が込んでいる。目の肥えた人もそうでない人も楽しめるミステリー小説としておススメの一冊です。
首無の如き祟るもの (講談社文庫)
三津田信三首無の如き祟るもの についてのレビュー
No.30: 6人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

暗いところで待ち合わせの感想

最初にこの作者の本を読んだのは『GOTHリストカット事件』で、そのダークな世界に絶句したまま読み進めたことだった。今までにない異質な世界の物語で、全く違った面からミステリーを書くその感覚に圧倒されたものだった。この『暗いところで待ち合わせ』も評判は良かったので直ぐに探して読んでみた。良くあるラブロマンスの設定みたいだが、結局筆力があることに依ってその世界をうまく作り上げ、読者をその夢の世界に取り込んで、目覚めさせることなく遊ばせることに成功している。職場に嫌な先輩がいる。逃げることしか考えないいじめられっこのような男。下手をすればこんな男は読者から嫌われる。だがそうならないように書き込まれている。むしろ共感さえ覚えるように。目の悪い少女。彼女の心の内も有り得ない状況なのに説得力のある描写で読み手を納得させる。こうなるとページを捲る手は止まらない。最後まで一気に読み終えた。ずるいよねこんな話は。
暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)
乙一暗いところで待ち合わせ についてのレビュー
No.29: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

Nのためにの感想

始めに、ミステリー度は低い。でもこういった物語は好きだ。メインは杉下希美だろう。野バラ荘に住む三人。台風で床上浸水をきっかけに言葉を交わすようになる。例えば今街を歩いていてすれ違った人、年のころ40~50代の人がこれまでどのような人生を送ってきたか、そんなことは誰にも分からない。どんな過去がありどんな思いを溜め込んでこれまで生きてきたか・・・。それぞれ人には事情がある。タワーマンションの一室で起きた若い夫婦の死亡事件。それぞれのモノローグと回想で少しずつ事件の全容が見えてくるストーリー。

Nのために・・・。みんなが少しずつウソをつき隠したこと。 『告白』は好みじゃなかったけれど、これは自分の好みに入る物語だった。倒叙形式のような過去の回想と事件への関わりへの事情がそれぞれの視点から語られる物語。最後のページまでその世界に入り込み楽しめた。
Nのために (双葉文庫)
湊かなえNのために についてのレビュー
No.28:
(5pt)
【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[]   ネタバレを表示する

騙し絵の館の感想

館に住む少女と執事。ミステリー作家。そして謎めいた女。勃発する連続少女誘拐殺人事件。だがそれは支線であり本線は別にある。最初から散りばめられた伏線。ひとつひとつが集まり一枚の絵になる時、隠されていた犯罪が明らかになる。一言一句ムダのない言葉で綴られるモノローグと行動が騙し絵となっている。

だけどこの文体と作風では読者を選ぶのではないだろうか。計算された一言一句の言葉で書かれているので多少無味乾燥なところはあるし、とっつきにくい印象で、平坦な言葉で書かれたミステリーなど読みなれた人には敬遠されるのじゃないかと思う。劇的な展開の物語ではないし、最後に明らかになる犯罪もピースを拾い集める段階で読めてしまう。多分に作家の自己満足的な形式を楽しんで作り上げたひとつの作品と云う色合いが強い。エンターティメントな作品ではない。そこをどう評価するかだろう。
騙し絵の館 (創元クライム・クラブ)
倉阪鬼一郎騙し絵の館 についてのレビュー
No.27: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

さよならドビュッシーの感想

クラシック音楽の世界。ピアニストを目指す少女。レッスンやコンサートの臨場感を表わし伝える文章力はたいしたもの。ミステリーとしてのトリックは古いものだが、うまく使って音楽物ミステリーとして楽しめる作品に仕上げている。モノローグ・台詞・状況の描写などムダな言葉を排し流れるような文章で読み易い。ただ一点、個人的に納得出来ないのは火事の原因。物語のうえで火事は必然でも、あの家族にとっては火事は偶然の出来事。祖父は理路整然と話し頭の良さをみせ、人を見る目は確かで深い洞察力で人となりを判断する人物。そんな人が趣味のために揮発性の塗料などが沢山置かれている部屋の中でストーブを焚くだろうか?
普通、暖をとるならエアコンだろう。そんな思慮浅い人物とは紹介されていない。火事がなければ物語りは始まらない、その都合だけでおざなりに書かれた印象だ。私ならもっと別の原因で火事が起きるように書く。重箱の隅を突っつくような事と思われるかも知れないが、人物像と行為が合っていないので違和感が拭えない。その他は問題なく楽しめたので7ポイントの評価とした。他の作品も読んでみたい作家だ。
さよならドビュッシー (宝島社文庫)
中山七里さよならドビュッシー についてのレビュー
No.26: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

首挽村の殺人の感想


▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
首挽村の殺人 (角川文庫)
大村友貴美首挽村の殺人 についてのレビュー
No.25:
(8pt)

硝子の葦の感想

このミステリーがすごい2011年の16位作品。評価は低いが完成度は高い。でも、好みが別れる作風だろうね。特筆は文章の素晴らしさ。ボキャブラリーの乏しい不思議な言語を操るいまどきの高校生ギャルに読ませたい。もっとも、こういったイメージもテレビからのもので、ただ、単に世間を知らないのは私のほうかも知れない。プロローグの出来事から時間を遡り物語が始まる。通俗小説のような、母の愛人だった男と結婚した一人の女の身の回りの様子や生活。関わりのある人物などが静かに語られていく。歳の離れた男は生活面では苦労はさせない、時間もあげるから何をしようと自由だ。愛だの恋だの言わずにプロポーズされ受けた節子。その夫が交通事故で意識不明になる。ホンの脇役と感じた人物からの一枚のメモと共に子供を預けられた時から日常が少しずつ壊れていく。感情的でなく芯の強い女。しかし、そうなるにはそれなりの過去があり、それらは徐々に明らかになっていく。ラストの切ない気持ちは主人公の節子に思いいれたっぷりに読み進めた結果だろう。北海道のある小さな町を舞台にしたそこに生きる一人の女の生き方と一人の刑事。ため息のでる読後だった。
硝子の葦 (新潮文庫)
桜木紫乃硝子の葦 についてのレビュー