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ニコラス刑事 さんのレビュー一覧
ニコラス刑事さんのページへレビュー数324件
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連作短編集となっている少し毛色の変わったミステリ。
語彙が豊富で語り口が面白いが、内容は人間の闇の部分が引き起こす残忍な事件を交番勤務のシド巡査が解き明かすミステリ仕立てという趣向。 9作が収められているがどれも読みごたえのある内容で引き込まれながら読んだ。 主人公のシド巡査のキャラクターづけも良いと思う。これまでにないキャラクターの創造じゃないかと思ったがどうだろう。 どれも捻りの効いた内容で書かれており軽さとかでスラスラ読めるようなそういったミステリではない。 けっこうこちらに訴える内容のものもあって引き込まれながら読んだというのはそういう意味だ。 明るい感じのコージーミステリのあとにこちらを読んだとしたら、ちょっと胃にもたれる感じがしないでもない。 そんな表現があいそうな毛色の変わったミステリということです。 この並みではないところがこの本の面白さという評価になります。 この作者面白い。( ´艸`) |
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ハードボイルド小説の先駆け的な作品。
物語を行動によってはじめ、行動によって語る作風である。 興味深いのはこの作品が発表されたのが1929年であること。この年にヴァン・ダインは第四作「僧正殺人事件」を発表し、エラリー・クイーンは 処女作の「ローマ帽子の謎」を発表している。 ずぶずぶの本格ミステリが世の中を席巻している時にこの作品が発表されたわけだが、ある意味当然というか 当時の評価はそれほどでもなかったようだ。著者は貧しい家庭に育ったため初等工業高校を14歳で中退しいろいろな職業を転々としたそうだ。 最後にアメリカ随一のピンカートン探偵社に入り私立探偵としておよそ8年ほど働いた経験があるとのことだ。途中第一次大戦に従軍したが結核に感染し除隊後も 再び探偵としての仕事に就いたが身体が仕事に耐えられずに辞めたあと実体験をもとにこの本を書き上げたという。つまり事実をもとに書き上げた小説だということ。 内容は黒澤明の「用心棒」を彷彿とさせる。ほとんどの人物が殺されていく荒っぽい話だけれど嫌味は無く、主人公の行動が次々起こる事件の展開に 流されつつ立ち向かうところが面白く読んでいける。この後にレイモンド・チャンドラーが登場することを思えばダシール・ハメットの役割も大きかったと言える。 |
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事故か他殺か判然としない人たちの死に関与を伺わせる声明文を記者に送ってよこすHOGと名乗る人物。
連続殺人なのか? しかし、犠牲者たちを結びつける材料は何もない。紆余曲折の捜査陣に対して名探偵と言われる教授が登場する。 金にはシビアな教授と言われる人物。魅力的とは言えないキャラクターだけれど弟子になる私立探偵の青年が推理を展開するという内容。 お話自体は面白いんだけれど、どうも文章が読んでいて楽しくない。個人的にはこういった文体のものは好きじゃない。 私立探偵の青年と心理学者の恋のお話は良いけれど、その他はどうかすると退屈になってしまう。伏線はキチンと貼られているが 読み終えて良く考えればかなり危ない話だと気付く。でも要は料理の仕方の話しでこれはこれで一品としての価値はあると思う。 著者はクイーンに心酔してミステリを書きだした人物と紹介されている。たぶん後世に残るであろうこの一冊を書いたことでクイーンへの思いは成就したのではないだろうか。 |
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1986年と2016年が交互に描かれる。2016年は大人になった主人公の視点で語られて、1986年はその主人公が12歳のころの出来事が語られる。小さな町に暮らす仲間たち。
何でも話し合い、時には感情のままにぶつかり合ったりする仲間たち。そんな彼らたちの毎日と冒険。トラブルと悲惨な事故。こういったところが情感豊かな筆致で 描かれていて否が応でもスタンドバイミーを思い出す。それぞれの家族とその生活。きれいごとだけではない生活の様子も丁寧に描かれていて物語に入りやすい。 大人になった主人公もそのまま育った町で教師の職に就いている。とはいっても明るく爽やかでしっかりとした人物とはなっていない。40歳を過ぎても独身で 古い家に一人暮らし。酒を飲み過ぎる時もあり決してカッコいい男ではない。それはやはり少年時代の事を引きずっているせいでもあると描かれている。 そんな彼のところに届いた一通の手紙。それがすべての始まりだった。そして一人の旧友が合いに現れあの時の真犯人を知っていると告げる。 その旧友もそのあと死体となって発見される。登場人物すべてが生き生きと描かれ物語世界を作り上げている。ちょっと掘り出し物と思わせるミステリだ。 最後のオチは罰の意味もあってそう書いたのだろうが物語を締めくくるエピソードとしては最良だろう。一気読みに近い感じで読み終えたので面白くなかったとは言えない。 |
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読んだ後で、ああ、あのミステリを思い出したとその本のタイトルを書くだけでネタバレになる内容です。(笑)
原田マハの「楽園のカンヴァス」などが楽しく読めたという美術好きな人にはこのミステリも楽しめるでしょう。 この人の本は未だこれだけしか読んでいませんが、この本を読む限り堅苦しくなくそれでいて洒脱な感じの文章でとても 読み進むのが楽しかったです。そして構成の妙で村を徘徊する老婆のモノローグがこの事件の興味をとても引き立てます。 直ぐにネタバレになる危ういトリックなので、レビューを書くにも十分に気を付けなければいけませんが、この手の物を書こうと思った時点で 個人的には拍手を送りたいと思います。本当にミステリが好きでなければこの手の物は手を付けないでしょう。 単に密室もののトリックを考える以上に神経を使うものですから。フェア、アンフェアの分岐点からは正直アンフェア寄りだとは思いますが モネの村で暮らす人たちの物語として読めば十分に楽しめる内容です。ちょっとこの作家クセになりそうなので「彼女のいない飛行機」を 探してみようと思いました。うん、面白いミステリは楽しい。( ´艸`) |
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冒頭、刑務所所長から検事総長あての書簡が見せられる。内容は深夜の田舎道を全裸でさまよっていた男について。
前科も未解決事件にかかわった様子も見られないが、名前もなにもかも否認するため四か月の懲役に処された男。 この男が房内で異常に潔癖な様子をみせるとの報告。自然に落ちる髪の毛や体毛をひとつ残らず拾い集め、食器や便器を使用のたびに 完璧に磨き上げる男。ただの潔癖症かと思われたが、その異常さに自身のDNA鑑定などの材料となるものを徹底的に排除しているのではないかとの 疑いを持ったとの報告だった。この謎の人物から一転、舞台は森の中で少女の腕が発見される現場に変わる。行方不明の少女は五人。 見つかった腕は六本。未知の行方不明者がいることになる。さて肝心なのは人を遠隔操作できるものなんだろうかということ。 そういえば、町で空き店舗を短期で借りて自然食品の店などと宣伝し、いろいろな日用品を100円で配ったりして年寄りを多く集め最終的には高額な商品を買わせる 業者がいる。あれも催眠商法と言われているから案外こちらが思うほど難しいことではないのかも知れない。 遺留品の分析や検死などについてもきちんと文献をあたり正確な表現で書かれているのでチャラいミステリのような雑さはない。 展開も上手く途中ダレルと言うことはない。ただ、個人的には失踪人捜索のエキスパートだという主人公のミーラ捜査官にはあまり思い入れが出来ない。 捜査チームも遊園地から子供が消えたらあらゆる仮説を立てるだろうに、簡単なことに気付かないなどちょっといただけないところがあり作者のご都合主義が みえてしまうところが残念だ。しかし、まあ読みごたえはある。最後まで引っ張る筆力はたいしたものであると思う。 |
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始めにこのシリーズを読んだときには「三津田信三」なんてパッとしない名前の作家なのでそう期待もせずに読んだ。
確か「首無の如き祟るもの」だったと思うけれど、すっかりやられてこれぞ探偵小説と思ったものです。 その後何冊か読んだあと、久々に刀城言耶シリーズの新刊と言うことで手に取った。 地方に伝わる怪異の話しは、やはり続くと裏が透けて見える様になってくるのはしょうがないと思う。 つまりパターンとしてこちらが学習しているから。 時代を経た四つの怪談話を読ませた後にその地に赴くところから本編のスタートだ。 結局、村の四人の人間が殺されるが事件は複雑な様子で密室だったりといろいろ手が込んでいる。 この辺は作者のサービス精神が旺盛ということでその努力に拍手を送りたい。 ただ、やはり長く続くと質を高めたまますべてが良く出来ているというのは難しくなると思う。 つまりミステリのコアの部分の強度のことです。 ちょっと私としては首をかしげるところです。 とはいえ、一冊の本。物語としては十分大人の読み物として楽しめます。 刀城言耶と祖父江偲のコンビのやり取りとか関係性などは個人的には可もなく不可もなくなんだけれど 物語の語り部としてはこのやり方は良いのでしょう。 |
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名探偵ポアロシリーズの初の公認続編の作家に選ばれた著者によるシリーズ第二弾となるもの。
前作「モノグラム殺人事件」の続編であるが物語としては独立しているのでどちらから読んでも構わない。 古式ゆかしいミステリの体裁そのままに書かれているのでじっくりと読書を楽しめる。 館にいる人物は手紙で招待されたポアロと相棒のスコットランドの刑事と使用人を含めて14人。 ひとりの人物が殺されるが各人の証言が錯綜する。さあ、ポアロと一緒に事件の解決をするのはあなたです。 手掛かりはすべてポアロと共有しているのですから。 最初から最後まで登場人物の喋ることを一言一句聞き逃してはいけません。 そこにほんの少し想像力を働かせれば良いのですから。( ´艸`) ちゃちな内容なら公認として出版されませんよ。そこはお墨付きです。 動機、方法、ミスリード、仕掛けは納得できます。 私は楽しめました。 |
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独特の雰囲気がある文章が好みです。プロローグだけ見るといかにもっていう出だし感満載のミステリ小説と思います。
森で消えた弟はいったいどうしたのか?一人帰って来た兄はどうしていたのか? これだけで最後まで引っ張ります。ガチガチの謎解きミステリじゃあないんですね。しかし、私はこういうのはアリだと思うので最後まで楽しめました。 途中退屈しないのは雰囲気たっぷりの文体です。その文章を楽しみながら読んだので退屈はありませんでした。 多彩な人物が登場します。そんな彼らの言動を追っていくのが面白いです。狭い地域での大人と子供。いろんな感情がごちゃ混ぜになっているのですが となり近所の人たちはある部分は推察しある部分は自分勝手な想像で色や形を作り周りを見ている。それが世間というものですね。 登場人物でとても面白いのが家政婦のハンナです。このキャラクターは良いなと思います。彼女を主人公にしてオーレンを脇にした方がより面白かったのではと思います。 多彩な人物が登場してそしてその人たちに決着がついていく。そんな物語ですから単純な事件解決への一直線の物語と思ってはつまらなかったとなるでしょう。 兄弟で森に行き弟は消え兄だけが帰って来た。そんな出来事があった家族とそこに住む人たちの生き方と暮らしがミステリを生むということですね。 |
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時効になった事件を警察を退いた男が個人的に調べ直す。このような設定は他にもいろいろあるでしょう。
それほど斬新な設定でもないのだけれど、これが読ませます。それだけ物語が面白いということです。登場人物もみんなキャラクターが立っており魅力的です。 だからこそ読み進められます。時効になって手が出せない事件にどう立ち向かうのかそこがキモでしょう。この解決の仕方は凡庸といえばそうですがしかし納得は出来ます。 事件に携わるきっかけとなる部分も上手く考えてあり、そこに意外な関係も用意してある周到さです。 些細な手掛かりから徐々に犯人に近づいていく過程はミステリとして大事なところですが甘さも都合のよさも感じられません。 当時とても大きな事件があり国民すべてがその事件に注目していたことで、この少女殺害事件の捜査が手薄になったという経緯が作用しているからです。 確かなツボを押さえた構成というところはベテラン作家の所以でしょう。主人公と周りに係わる人たちも許せない犯人という一点でまとまっており 主人公のキャリアに敬服しながら手足となって動くところは読んでいて気持ちの良さを感じます。 小児性愛者という異常者に断罪をもって挑むというのはある意味強引だとも思いますが(結局こういった人物は病気でしょう、それらを全部抹殺するという思想はどうかなと) 単純に罪のない少女の無念を晴らすという思いで調べを進める彼らの様子がミステリとして面白く読めるということです。 主人公ひとりではジグゾーパズルの一片をぴたりと収めることが出来ない、そういったところがこの物語の面白さです。 みんなとても気持ちのいい奴らです。読後感の良さはそういったところでしょう。 |
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映画を観たんです。面白かったですね。あれから何年経ったでしょうか?
最近食指の沸く本が無いのでこれを読んでみました。すべてが分かっているのに本を読むのってどうだろうと思ったりもしました。 でも楽しめました。映画は映画、本は本ですね。 仕掛けが上手いと思います。そして重いテーマもあって単なる茶番のお芝居ではないというところが著者らしいと言えます。 少し前にセバスチャン・フィツェックの「治療島」を読んでました。「治療島」のほうはラストが個人的にはいただけないと思いましたが このシャッターアイランドはラストにゾッとする思いです。いろいろな不可思議なことに答え合わせをする四日目の船乗りのなりそこないは もうミステリの醍醐味です。クリストファー・ノーランの「インセプション」はここからのインスピレーションでしょうか? そんなふうにも思ってしまいます。映画も知らない、この本も知らなかったという人にはおススメの一冊です。 |
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上手く書かれている。でもなんていうか文体に重さが無いせいか痛みや辛さがこちらに伝わらない。上っ面を撫でているだけって印象を持ってしまう。
ストーリィは込み入っていて登場人物も的確なポジションで良い動きをする。これは作者の計算が確かということで、その辺もどうかすると鼻に付く。 ミステリとかサスペンスというよりもエンターティメントな小説だと思う。舞台装置と芯にある問題。これらを使って上手く書き上げてあると言えるけれど 余りこちらには響かない。事件解決と見えたさらにそのあとの仕掛けはそう驚かなかった。結局ゲームを遊んだような感じなのでそう感じてしまうんだろう。 深みが無いとこういうことになるのかも知れない。ドイツではベストセラー作家だということだけれどどうも小手先の小説という感じで残念だ。 もっとも読む人によってはこれは面白い、と興奮しながら読む人もいるかも知れない。豪華客船という閉鎖空間での失踪事件を調べる話なのだから。 |
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物語に合った文体がとても良くさらに雰囲気を醸し出すという効果を担っている。ガツガツした語り口ではなくゆっくり読み進むことがこのミステリを楽しむもう一つの要素だ。
いろいろなピースが最後に一つになる上に最後のうっちゃりがあってミステリとして満足のいく出来だ。 たった一点の問題点はある人物を探し当てるところが偶然なのか必然なのかというところ。居所を時間をかけて調べたのであろうがサラリと書いてあるので 偶然出会ったかのような印象を持ってしまう。大事なポイントと思うのでもっとしっかりした書き方をして欲しかった。 だがすべてが一本の線に繋がっていく過程をゆっくりと二人の視点ともう一人の人物の視点で語られる物語は読みごたえがある。 過酷な自然の中で暮らす人たちの生活と探偵役の老人の人生とがオーバーラップする語り口も中々良いと思う。だれしも年老いて身体が 思うように動かなければ嘆きと怒りが心中を占める。老人は身体は不自由になってもまだまだ頭は使えると、いろいろ考えて一歩ずつ真相に近づいていく様子を 丹念に描いているのがこのミステリのすべてだ。理路整然と思考するのではなく、一つ一つの出来事や他の人の話しから仮説を組み立てていくところがこの探偵役の老人の良いところであり、 この本はそこを楽しむミステリと云える。このエーランド島を舞台にしたミステリは四部作として書かれているのであとの二冊も楽しみながら読みたいと思う。 |
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登場人物や物語の背景に深みがないとかその辺の批判めいたものはこの作家には当たりません。ほとんどの作品が推理ゲームに特化したものだからです。
ハウダニット、フーダニット、ホワイダニットを究極に突き詰めているお話ばかりです。ですから人間的な深みなどを描写することなど始めから捨てています。 結婚式の二次会出席のため数年ぶりに集まった大学の仲間。三次会の後、渋谷駅で別れた八人。それぞれが違う方向に別れ見事に散り散りになった八人。 住むところが違うため利用する鉄道が全員違ったせいです。乗り入れ路線の多い渋谷駅ならではの偶然でしょう。 大学時代に事件があり一人の女性が皆の前から消えました。社会人になれば今の人間関係を優先するため、いくら仲の良かった大学時代の友人たちとも疎遠になるのもごく普通の事です。 皆の前から消えた女性がその二次会に現れました。大学をやめ郷里に帰っていた女性が現れたのです。そして、久しぶりのためまた翌日に全員で会おうと約束をします。 だが待ち合わせ場所に彼女は現れません。三次会の後渋谷駅で彼女は渋谷のホテルに戻り他の八人は駅で散り散りに別れました。待ち合わせ場所で4人が残りあとの4人がホテルまで様子を見に行きます。 何故かケータイが繋がらないからです。ホテルの近くまで来た時、路上に置かれた段ボールの下に彼女の死体があるのを4人は発見します。 首にひもで絞められたあとがありました。八人のうちの一人が密かに彼女と連絡を取り二次会に呼んでいました。物取り等流しの犯行ではない模様です。 となると容疑者は八人なのか。全員が理系大学出身のためここから論理的な考察に入ります。推理ゲームの始まりです。 読者向けと探偵役向けに手掛かりを晒します。普通そんなことは言わないだろうという一言が語られます。それはあくまで読者と論理展開する探偵向けの言葉です。 それが無ければ推理は進まないでしょう。だからそこは目をつぶるところです。一般的に考えれば変です。言わなければ悟られないことを言うのですから。 そういったところがあるのがバカバカしいととる読者もいるでしょう。でも、あくまでもミステリのロジックを楽しむためのお話ですから重箱の隅を楊枝でほじくるのはよしておきましょう。( ´艸`) ただ、妙なタイトルで少し損をしているのではないかと心配します。軽いと言えば軽いです、しかし、妙な重たさがある海外ミステリを読んだ後はちょうど良い口直しとなります。 石持ファンであれば楽しめる一冊でしょう。 |
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最近盛んに出版される北欧ミステリですが、一般的な火付け役としては「ミレニアム」三部作でしょう。 それ以前に「笑う警官」やヘニング・マンケル、そして「湿地」「緑衣の女」などが最近の高評価作品となっています。
そしてこの本の著者も北欧ミステリを読むなら外せない作家と云われています。 スウェーデンのエーランド島という島を舞台にした物語で、不穏な雰囲気が覆う島の歴史と自然そのものの気候風土の島で起きる事件を描いています。 ただクライマックスまでは展開が緩やかなので中には途中で退屈して本を閉じてしまう人がいるかも知れません。警官も新人の女性警官が事件を追うという設定で、日本のハードな警察物を読み慣れていて事件捜査とは このようにして行うものとだと言った物差しで見ると警察の動きがのんびりしたものと感じてしまうでしょう。 しかし、国が違えばそういったことは当然です。この国の、この島の厳しい自然の中で暮らす人たちの生活を理解しなければいけません。 双子の灯台があるところから海に落ち妻のカトリンが亡くなったと知らせを受けたヨアキム。 事故か自殺か。ときおり挟まれるある女性の書いた物語。考えることが好きな老人の推理。すべてが繋がっていく物語。 スピリチュアルな出来事をどう捉えるかそれは読者の自由。しかし、すべてこの島の物語と云える。読後感の良い最後のエピソード。人はみな運命とともに生き思い出と幽霊になる。 中盤までの緩やかさとは打って変わって、クライマックスに向かうスリリングさは手に汗握る展開で予測がつきません。激しいブリザードという自然の猛威のなか吸い寄せられるかのように一か所に集まる主要な人物たち。 明らかになる意外な真相。隠された事実がじわじわと明らかになる過程。そこを楽しむのがこのミステリの正しい読み方でしょう。読ませる作家だと認識しました。 こちらが抱く愉快ではない想像を裏切って意外な犯人もちゃんと用意されていました。いろいろなエピソードのなかにも伏線はちゃんと張られていますしこういったスタイルのミステリも楽しいです。 |
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ニューヨークで古本屋を構えるが、実は泥棒稼業にも精を出すというバーニイ・ロ―デンバーを主人公にしたもの。
舞台が大都会で暮らす人たちなのでクセのある人物が登場する。友人のキャロリンやマーティンといった一癖も二癖もある人物たちがバーニイに絡む。 個性が際立っているが、その人なりの人生観や正義感でバーニイとあれこれ会話をするところがこういった都会派小説のひとつのお約束。 いろんな喩えや比喩でもって長々と会話のキャッチボールを繰り広げて都会に住む者たちの哀愁みたいにものを表現したりする。 映画で云えば「プラダを着た悪魔」みたいな、良く考えればどうってことのない問題を取り上げて右往左往する人たちを描いた内容が 都会派コメディなんですというようなもので、 こういったセンスが好きだという人には楽しめるだろう。 会話がメインでもミステリの内容が濃ければ私的にはOKなんですが、他のシリーズ作品は知りませんが今作はどうも今一つの感が拭えません。 なぜなら事件の顛末がちょっと上手く転がり過ぎるということです。AからB、BからCへとそう上手く繋がりますかと危惧します。 バーニイの泥棒としての矜持もキチンと話していますが、周りにいる人たちの彼という人物に対する捉え方はしょせん明るく楽しいドタバタ路線のノリです。 主人公のカッコよさだけを前面に出したための結果でしょう。 赤川次郎の夫は泥棒妻は刑事、みたいなもんです。 軽妙と取るか軽薄と取るか紙一重じゃないですかね。 いろんな分野のウンチクや深い話が散りばめられた会話を楽しみミステリに酔うというスタイルはアリでしょう。 個人的には全体の世界観がイマイチはまり込めませんでした。 |
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生まれも育ちも選べない。何があっても、どんなに世間を斜めに見ようとも、歳がいけばきっかけとなる出来事があれば人は再生するということでしょう
ソニーピクチャーズが映画化権を手に入れているとあったがもう映画化されたのかな? 日本で公開された? プライベートジェット機が離陸後18分して墜落した。 暗い海から行きずりの客だった主人公が奇跡的に生還する。乗客だったジェット機のオーナー一家の四歳の息子を助けて。 一躍ヒーローとなった彼。しかし、犠牲となったジェット機のオーナーはケーブルテレビのニュース専門チャンネルALCニュースの代表だった。 他に銀行家の夫妻が乗っており男の方は財務省外国資産管理局調査官から目を付けられていた。 事故かテロか国家運輸安全委員会とFBIが調査に乗り出す。 主要人物の人となりや生い立ちなどのエピソードを個人個人にページを割いて紹介している。 しかし、この人物像を描くところがちょっと長い。 そのせいもあり本の厚みもある。 こちらは我慢できずに読み飛ばしてしまった。 墜落原因が不明なことに世間の思惑をリードするマスコミ、ALCのメインキャスターは暴走を始める。 必死に暗い海を泳ぎ助かった四歳の男の子と主人公。 莫大な遺産を相続する四歳の息子と後見人となる妹夫婦。 生の人間模様が描かれるが読んでいて不快感は無い。 捜査の過程や暴走するキャスターの対比が上手く書かれているので先への興味が尽きない。 やがてボイスレコーダーが発見され修復されて事実が明らかになっていく。 ミステリとは違うしサスペンスというほどではないしスリラーとも違うがキメ細かく書かれているので面白く読める物語というのは当たっていると思う。 だた、ちょっと長い。もう少しまとめればサスペンス感も上がったと思うのですが。 |
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状況が状況だけにそりゃあ皆パニックになるよ。おまけに問題発言した当の本人が死亡すればなおさらだ。
無人島に取り残された男女十五人。 さあミステリ劇場の開幕です。( ´艸`) ところがバークリーです真っ正直なミステリというわけにはいきません。 群像劇かな? 人々の心理面の変化や自身の尊厳を保とうとする人達の言動を細かく綴りますが、この辺の人間観察といったところは見事です。 十五人の根底にあるのはガイ・ピジョンの死は事故か他殺かという問題です。しかも当の本人はこの中に殺人者がいると物騒なことを言っていました。 それぞれの個性が表面に浮き上がってきます。怒るもの、利己的になるもの、弱りふさぎ込むもの、様々な人間らしさを見せますが疑心暗鬼は変わりません。 犯人捜しは是か非か紛糾します。時間が過ぎるごとに集団ヒステリーは広がっていくのですがシュリンガムは皆をまとめるのに必死です。 この物語のオチはどうなっているんだろうと気にしつつも読み進みます。 バークリーの作品としては評価が真っ二つに分かれたとの解説がありますが、アンチ・ミステリと見れば これはこれで面白いと自分などは思います。 肩透かしじゃないかとケチを付けられる人もいるでしょうが、ラストのエピソードがこの物語を端的に表していることを考えれば 少なくとも失敗作とみることはありません。 バークリーの考察には読んでなければいけない一冊ではないでしょうか。 |
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どうしようもない時に人は神に祈る。ジョニーも母のキャサリンも祈った。しかし、何も変わらない。ジョニーの双子の妹アリッサが誘拐され、その後父が失踪する。
絶望のなか母は薬物と酒に溺れた。そして、実業家で町一番の金持ちケン・ホロウェイが母を頻繁に訪ねてくるようになった。 いくら神に祈ってもなにも変わらない。母を守るためホロウェイに反抗するジョニー。しかし大人の力には敵わない。身体中には痣だらけ。 だがそんなことは誰にも話さない。それも母を守ることだから。ジョニーは自分に言い聞かせた。絶対に強くなってやる。 独りで、時には親友のジャックとアリッサの行方を調べ続けるジョニーの行動がメインのストーリー。 ジョニーと刑事たちの行動をつぶさに追っていく展開が緊迫感を生みどうしようもないやるせなさが溢れる。 バラバラになった不幸な家族。 その再生の物語。 アリッサの行方は? 本当に父はジョニー達を捨てて何処かに行ってしまったのか? 十三歳のジョニーには過酷な運命。 しかし、ジョニーはそんな苦境にも負けない。もう決めたのだ神など信じないと。 「川は静かに流れ」同様にこの物語も家族をテーマにしたミステリで、少女が誘拐されて一年が経ったというところから始まる。 残された家族。主任刑事という責任ある立場で時間の経過に苦悩する刑事。 それぞれの立場が交差する中で事態が動き出す。スリリングに謎めいて動き出す。 登場人物すべてがこの物語に深い影を落とす。 ジョニーが胸の中で密かに願った三つの願いは神に通じるのか。 神はどう応えるのか最後のページまで目が離せない。 |
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トリックを成立させるために特異なシチュエーションを当てる。そのやり方はOKです。
ゾンビが街を徘徊する世界。どの生物もゾンビウィルスが体内に入り込んでいて、死ぬと発症してゾンビとなる世界。 そんな世界で、ある建物の中で起きる密室殺人。その事件を警察とは別に調べる私立探偵。 理屈を突き進めればそうなるだろうと云う世界観。その構築は納得です。 しかし、ほとんどセリフだけで物語が進行するのは如何なものかと思います。そういえば『アリス殺し』もそうでしたね。 「それが俺のスタイルだ」ということなんでしょうか。 パーシャルゾンビなんて発想は面白いですが、如何せん会話だけでは中身が薄くなるようですがどうなんでしょうか 編集者はどうしたのでしょうか気になります。 |
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