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ストロボ
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ストロボの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全22件 21~22 2/2ページ
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芸術家とは如何にあるべきかを、読者に構えさせずにさりげなく問う作品。遺影」「暗室」「ストロボ」「一瞬」「卒業写真」の五編からなる連作小説集。カメラマン喜多川の人生を22歳、31歳、37歳、42歳、50歳という年齢で区切り、各時期で流されていく人間の弱さ、そしてそれに棹差す人間の気高さを描いている。人の死を前にして、芸術家は単に芸術家に過ぎないのか、それ以上の人間としてあるのか。 ともかく、構成が上手く、メモを取ろうと目次をみて愕然。そうか、こういう仕組みかと納得。本を片手に何度も肯いてしまう。「慣れと計算と年期で仕事をした10年、代わりに失っていくもの」「昔と変わらぬ情熱」などという文字に、自分の仕事への姿勢を思い、省みざるを得なくなる。単に、人間の感情だけはなく、社会人としての仕事や芸術家としての誇りを描いたために、物理的なボリューム以上に重厚な作品になっている。 江戸川乱歩賞作「連鎖」など社会派の作家として出て来た時は、どちらかと言うと理知的な作風という印象だったが、「トライアル」で小説作りの腕をあげた。今回は、泣かせるだけでなく、さらに人間のあり方を深く考えさせる作家になってきた。「奇跡の人」や「ホワイトアウト」で評価を固めた人だが、僕はそれらを評価しない。人間の掘り下げが甘いし、本当の罪とはという問いかけの部分で安易な部分があるからだ。しかし今回の「ストロボ」には文句の付けようが無い。芸術だけではなく人生について考えるには絶好の一冊だ。 | ||||
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作者4冊目の短編集で、第123回直木賞(なかにし礼が受賞)にノミネートされた連作短編集である。主人公は、富と名声を得たカメラマン、喜多川光司である。彼の半生をフィルムを巻き戻すがごとく現在から過去へ遡り、主人公に訪れた人生の転機を鮮やかな写真とともに描き出す。栄光と挫折、苦悩。並べられた5つの短編は、収録順だけでなく「小説新潮」への発表年を見ると執筆順も年代を遡ってのようだ。50歳(現在)の「遺影」(1998年7月号)から始まり、42歳の「暗室」(1999年1月号)、37歳の「ストロボ」(1999年7月号)、31歳の「一瞬」(1999年10月号)、22歳の「卒業写真」(2000年2月号)である。 1998年といえば、作者にとってはそれぞれ10冊、11冊目の単行本『密告』『トライアル』と二冊上梓された年だ。1995年の『ホワイトアウト』で注目され、1996年の『奪取』で評価は確定的なものとなり、その後『ボーダーライン』で直木賞にまでノミネートされる。年齢は違うものの、この作品集の主人公、喜多川光司と似たような状況下にあったのでは、と容易に推測できる。そう考えると、ミステリとはかけ離れたこの内省的な作品集にも違った意味が見えてくる。邪推といえば邪推なんだけど、作者真保裕一自身を喜多川光司に重ね合わせているのは否定できないでしょう。そういった意味では、作者がもう一度原点に帰ろう、というか、表現者としてのストレートな気概というか意気込みが見えて、とても気持ちの良い作品集だった。 そんな邪推は置いておいても、実に見事な作品が並んでいる。一番出来が良いのは『一瞬』だろうか。一面しか見ていなかった先輩カメラマン、揺れる女心、これらに一大転機となった写真を撮るまでの、表現者としての気持ちが重なり合って見事なドラマを生んでいる。次いで『ストロボ』『遺影』あたりだろうか。表現者としての苦悩に、夫婦愛や友情を絡めて、作者以前に作品には見えなかった深みが備わったように思える。言い方を帰れば作家的な円熟期を迎えつつあるような印象。浪花節が露骨過ぎたり、相変わらず女性を描くのが下手だったりするのはご愛嬌としても、もしかしたら、作者はホントに大きな転機を迎えているのかもしれない。作品に対する姿勢というか取り組み方というか作風というか。 すでに2年ご無沙汰の長編はどうなったのだろう。アナウンスされて久しいあの長編は? きっと改稿に改稿を重ねているのでしょう。もし、ぼくの推測が当たっていれば、次回の長編は、『ホワイトアウト』や『奪取』とは趣向の異なる、真保裕一の最高傑作になるような気がするのだが。期待しちゃいますね。 | ||||
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