繋がれた明日
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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週刊誌の連載に加筆修正した長編小説。少年犯罪をテーマに、加害者と被害者の関係性、罪と罰、更生するとはどういうことかを追求したサスペンス作品である。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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主人公は人を殺したが、主人公にも言い分がある。相手は主人公の恋人に言い寄っており、それを止めさせることが目的であった。相手から先に手を出してきた。しかし、警察は主人公の主張をほとんど無視した。 主人公のような事情がある場合に、現実世界の世論は主人公に厳しくなるだろうか。住宅地でバーベキューをした人が殺された事件があったが、ネット世論は住宅街でのバーベキューは迷惑で煩いと、バーベキュー公害に苦しむ犯人に同情的であった。 一方で主人公は半グレ・ヤンキー的な生活をしていた。この点は、あまり同情しにくい。そこからの脱却は良いことである。 本書は被害者遺族の置かれた悲惨な状況が描かれる。焼け野原から経済大国にしてしまう前に進むことしかできない姿勢を美徳とするような風潮は苦しむ人を苦しめるだけである。日本は被害者の権利が認識されるようになったと言っても、被害者に道徳的に高次の振る舞いを要求する傾向はある。しかし、怒りや非難をぶつけるというプロセスが有益である。それがなければ本書が結末を迎えることはなかった。 | ||||
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神保裕一『繋がれた明日』(朝日新聞社、朝日文庫)は殺人を犯した者を主人公としたサスペンスである。主題が犯罪者の更生か、事実に反する証言が採用されるなど司法制度の矛盾を明らかにすることか、出所者を追い詰める正体を明らかにすることか、最後になるまで着地点が見えなかった。さいたま市立桜図書館の書籍を読んだ。 仮釈放後の主人公は様々な矛盾に直面する。謀略や憎しみが赤裸々に渦巻いている。やはり警察の人権侵害が最大の矛盾である。主人公が怒ることは多いが、怒りの優先順位をつけるならば警察権力とならないか。 「顔の前で怒鳴っていた警官はもう姿が見えなかった。大声で正義を振りかざしておきながら、立場が悪くなると姿を隠す」(209頁) 「法律では黙秘権が正当な権利として認められていながら、彼らは生意気なやつだと怒りをむき出しにして怒鳴った。金槌でたたき続ければ、固く口を閉ざした貝だろうとこじ開けられると信じるかのように」(229頁) | ||||
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若さゆえの暴走の果てに人を殺めてしまい、その罪と罰にもがき苦しむ様を赤裸々に綴った話。加害者目線だけでなく、被害者目線もしっかりと映し出した描写は秀逸。中盤の冗長さはやや展開の間延び感を出してしまったが、後半からラストに至る怒涛のスパートは読む者を唸らせた。最後は感動させられた。 罪と罰の重さを改めて考えさせられる作品。 | ||||
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若気の至りで人を殺めてしまった主人公が約6年の服役を終えて仮出所し、周囲の人々の助けを得ながら更生の途につきますが、主人公の過去を暴露する悪質なビラが配られたり、執拗な嫌がらせが主人公の家族に加えられたりといった事件が起きます。 この作品で読者に突きつけられる課題は、加害者の更生を考えるのか、永久に返ってこない被害者を悼む人達の気持ちを考えるのか、どこに正解があるのかといった重いテーマです。読者それぞれが色々と思うところがあると思いますが、結局絶対唯一の正解など存在しない問題でしょうし、読了後にも考えさせられるなぁという余韻が残ります。 読んでいる最中に余りにも悲劇的な結末が予想されて悲しい気持ちで読んでいましたが、割合後味の良い結末でほっとしました。 | ||||
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よかった。何がって主人公のジメジメ感が。 若者特有の鬱屈が、人を刺し殺すという部分で表出してしまったわけだけど、これは特別な人間の物語じゃなかった。 誰しも、若い自らを過信し行き過ぎた行動に出ることはある。 それが、重い十字架を背負うことは稀だが、まれにそうなってしまう事がある。 殺人という罪は、救いがない。未来がない。人を殺すことは、殺人者と被殺人者だけの問題ではないのだ。 むしろ、その周りにいる人間に与える波紋がすさまじい。 生きているそのことだけで罪を問われる人間になってしまう怖さ。 しかし、そんな身分に落とされた人間の再生に携わるあらゆる人間が私は美しいと思った。 また、到底持てない荷物を引きづりながら、一生歩いて行こうと決意する人間もその罪はとりあえず置いといて美しいと思う。 | ||||
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