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繋がれた明日



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【この小説が収録されている参考書籍】
繋がれた明日
繋がれた明日 (朝日文庫)
繋がれた明日 (新潮文庫)

繋がれた明日の評価: 3.60/5点 レビュー 40件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.60pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全40件 1~20 1/2ページ
12>>
No.40:
(4pt)

怒りや非難をぶつけるというプロセス

主人公は人を殺したが、主人公にも言い分がある。相手は主人公の恋人に言い寄っており、それを止めさせることが目的であった。相手から先に手を出してきた。しかし、警察は主人公の主張をほとんど無視した。

主人公のような事情がある場合に、現実世界の世論は主人公に厳しくなるだろうか。住宅地でバーベキューをした人が殺された事件があったが、ネット世論は住宅街でのバーベキューは迷惑で煩いと、バーベキュー公害に苦しむ犯人に同情的であった。

一方で主人公は半グレ・ヤンキー的な生活をしていた。この点は、あまり同情しにくい。そこからの脱却は良いことである。

本書は被害者遺族の置かれた悲惨な状況が描かれる。焼け野原から経済大国にしてしまう前に進むことしかできない姿勢を美徳とするような風潮は苦しむ人を苦しめるだけである。日本は被害者の権利が認識されるようになったと言っても、被害者に道徳的に高次の振る舞いを要求する傾向はある。しかし、怒りや非難をぶつけるというプロセスが有益である。それがなければ本書が結末を迎えることはなかった。
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4022578386
No.39:
(4pt)

司法制度の矛盾

神保裕一『繋がれた明日』(朝日新聞社、朝日文庫)は殺人を犯した者を主人公としたサスペンスである。主題が犯罪者の更生か、事実に反する証言が採用されるなど司法制度の矛盾を明らかにすることか、出所者を追い詰める正体を明らかにすることか、最後になるまで着地点が見えなかった。さいたま市立桜図書館の書籍を読んだ。

仮釈放後の主人公は様々な矛盾に直面する。謀略や憎しみが赤裸々に渦巻いている。やはり警察の人権侵害が最大の矛盾である。主人公が怒ることは多いが、怒りの優先順位をつけるならば警察権力とならないか。

「顔の前で怒鳴っていた警官はもう姿が見えなかった。大声で正義を振りかざしておきながら、立場が悪くなると姿を隠す」(209頁)
「法律では黙秘権が正当な権利として認められていながら、彼らは生意気なやつだと怒りをむき出しにして怒鳴った。金槌でたたき続ければ、固く口を閉ざした貝だろうとこじ開けられると信じるかのように」(229頁)
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4022578386
No.38:
(4pt)

罪と罰の重さを考えさせられる作品。

若さゆえの暴走の果てに人を殺めてしまい、その罪と罰にもがき苦しむ様を赤裸々に綴った話。加害者目線だけでなく、被害者目線もしっかりと映し出した描写は秀逸。中盤の冗長さはやや展開の間延び感を出してしまったが、後半からラストに至る怒涛のスパートは読む者を唸らせた。最後は感動させられた。
罪と罰の重さを改めて考えさせられる作品。
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4022578386
No.37:
(4pt)

重いテーマ

若気の至りで人を殺めてしまった主人公が約6年の服役を終えて仮出所し、周囲の人々の助けを得ながら更生の途につきますが、主人公の過去を暴露する悪質なビラが配られたり、執拗な嫌がらせが主人公の家族に加えられたりといった事件が起きます。

この作品で読者に突きつけられる課題は、加害者の更生を考えるのか、永久に返ってこない被害者を悼む人達の気持ちを考えるのか、どこに正解があるのかといった重いテーマです。読者それぞれが色々と思うところがあると思いますが、結局絶対唯一の正解など存在しない問題でしょうし、読了後にも考えさせられるなぁという余韻が残ります。

読んでいる最中に余りにも悲劇的な結末が予想されて悲しい気持ちで読んでいましたが、割合後味の良い結末でほっとしました。
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4022578386
No.36:
(4pt)

罪を背負った人間と支える人間、それぞれの美しさ

よかった。何がって主人公のジメジメ感が。
若者特有の鬱屈が、人を刺し殺すという部分で表出してしまったわけだけど、これは特別な人間の物語じゃなかった。

誰しも、若い自らを過信し行き過ぎた行動に出ることはある。
それが、重い十字架を背負うことは稀だが、まれにそうなってしまう事がある。
殺人という罪は、救いがない。未来がない。人を殺すことは、殺人者と被殺人者だけの問題ではないのだ。
むしろ、その周りにいる人間に与える波紋がすさまじい。
生きているそのことだけで罪を問われる人間になってしまう怖さ。
しかし、そんな身分に落とされた人間の再生に携わるあらゆる人間が私は美しいと思った。

また、到底持てない荷物を引きづりながら、一生歩いて行こうと決意する人間もその罪はとりあえず置いといて美しいと思う。
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4022578386
No.35:
(3pt)

さすが、と言わざるを得ない筆力でした。

少年法、加害者側が主人公の小説は読んだことがあり新鮮さはありませんでしたが、さすがの筆力でぐいぐい読ませます。
1時間位で一気に読めました。それだけ読ませる力がやはり著者にはあります。
よく比較されている「手紙」よりこちらの方が加害者当人の葛藤、甘えがリアルに描かれていました。
給料が低い現場作業でがんばっていく姿勢に好感を持ちましたし、これからまさに「明日に繋がる」という感じで終わり方もすっきりしていました。

つまらない理由で殺人を犯してしまった、その代償をいかにして払うのか、被害者に対してどういう感情を抱いているのかよく取材をされているようで、自分ならどうかと考えさせられました。
嫌がらせをされるシーンなどは貫井徳郎先生の「空白の叫び」で読んだことがあるのでまあそういうこともあるわな、程度にしか感じず。
「空白の叫び」は同じく少年法・殺人加害者視点で書かれており非常にインパクトの強い作品だったので、先に読んでしまっていたため、こちらの作品はマイナス評価に思えてしまいました。
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No.34:
(5pt)

スゴい、スゴい!

皆さんの評価って結構低いんですね。

私なんか、ラストは大号泣しちゃって、取るものもとりあえずこのレビューを
書いている次第です。

ストーリー的にも読者を飽きさせない展開になっているし、読後感の良さは
最近読んだ本のなかではピカイチですね。
(まぁ、あまりまともな本は読んでませんが…。)

ということで文句なしの万点です。

※「繋がれた明日」。新刊本の装丁から、手錠に繋がれたままの将来を想像
していたのですが、そうではなくて「明日に繋がる」ということだったんで
すね。
う〜ん、素晴らしい!
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4022578386
No.33:
(4pt)

犯罪における被害者の立場

ふとした弾みで人を殺めた少年が6年の刑期を追えて仮出所してくる。彼は未だに自分が一方的に罪に問われたことに
納得できていないし、間違った目撃者の証言も許せていない。だが、被害者の家族や親族の立場から言うと、彼らが
この殺人で失うものの方がはるかに大きいのだ。既に26歳の青年になったこの男はやがてこういった自分の罪の
大きさに気付いていく。だが、一方世間は冷たく、また殺人者をそう簡単には許してくれないのだ。個別の理由は
ともかく殺人者が5-6年の期間で又社会復帰するということは一般常識から言ってそぐわない感じは誰しもが持っている
のではないか。どうしても主人公に感情移入するため、被害者家族のエキセントリックな対応にはへきへきするかも知れない。
だが、一方作者の本当に言いたかったのはやはり、そういった被害者の立場であり、彼らの権利をどう守っていくかという
ことだったのではないだろうか。やがて皆によって受け入れられていく主人公だが、最後の場面でも被害者の母はその
感情の高ぶりを抑えきれないという締めくくりを作者は敢えて取っている。ここに作者のメッセージがあると思っている。
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No.32:
(5pt)

繋がれた明日

個人読書履歴。一般文学通算416作品目の読書完。2012/08/14
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4022578386
No.31:
(2pt)

題材は深いものの、今一歩。

罪を犯した人間の社会的制裁をめぐるストーリー。
加害者・被害者問題、罪と罰の重さ、更生と社会復帰、とりまく家族や社会環境など、
題材としては重い内容がつまっていて、ところどころ胸を打つセリフはあるものの、
物語としては今一歩な感あり。全体的に物語の焦点がぶれているのではないか。

更生の物語にしては、主人公は最後まで感情や衝動に流されてひとりよがりな行動をしてばかりだし、
勝手に行動してはトラブルを呼び、何をするにも他人にお願いしてばかり。
心理描写は『自分ばかりが悪いのか』『仕方がない、社会ではそう見てくれない』と疑問と諦めの堂々巡りだし、
ラストにおいては、はたして自分に不利になる嘘を証言(自己犠牲)することで罪と罰の輪が切れるのであろうか。
更生(成長)の物語にしては軸が弱い。

では他のライン(社会的制裁の絡み、被害者・加害者での価値観の多様性、またはサスペンス、ミステリーのライン)で魅せてくれる作品かというと、それも中途半端。
保護司の存在はこの小説独特の魅力を放ち、読者に新しい視点を与える代弁者として機能していたが、後半に失速。クライマックスにいたっては存在感もない。
もしこの保護司がラストに被害者となった主人公の言動(判断)に、さらにもうひとつ上の(読者よりも一枚上の)啓発的視点を与えられたら物語がぐっとしまったのではないか。

全体的に問いかけの繰り返しばかりで食傷ぎみになるが、もしかしたら著者がこの題材について完全に消化しきれてなかったからではないか。
そうでなければラストにもう一歩読者を新しいステージに連れて行けたはずだ。

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4022578386
No.30:
(4pt)

人としてすべきことがある

真保裕一さんの「繋がれた明日」読了。

精神的に重い話だったが、自分の知らない世界で闘っている人もいるのだと知ったことはとても貴重だった。

身の回りに殺人を犯した人はいない。
しかしいつ自分が間違って人を殺めたり、身内が殺されたりするかわからない。
車の運転中よそ見をしている間に飛び出してきた子供をひけば、その日からもう殺人者なのだ。

この小説では、諍いの末に人を殺してしまった青年が主人公。
6年の刑期の途中で仮釈放され、保護観察を受けながら社会に戻ろうとするが、生活は決して元には戻らない。
いつまでも人殺しと後ろ指を差され、中傷を受け、家族をも不幸にしてしまう。
心の痛む場面が多いが、そういう闘いをしながら生きている人が実際にいると考えれば、とても目をそらすことはできなかった。

一番衝撃を受けたのは、街中で人殺しと叫ばれた場面。
おれは何もしていないと訴え続けるが、かけつけた警察は主人公に前歴があるという理由から拘束し、留置する。
警察の対応が間違っているわけではないが、これでは罪を償い懸命に生きようとしている主人公が浮かばれない。

法律を守ればいいというものではない。
それ以前に、人としてすべきことがある。
社会が、私たちが、罪を償った者を受け入れなければならない。

私は本書を読んで、目の前に罪を犯した者がいても、その人が懸命に生きようとしているのなら、手を差し伸べたいと思った。
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4022578386
No.29:
(3pt)

優れた心理描写かもしれないが、共感は難しい

激情に駆られて犯罪を犯した主人公が刑期を終えて仮出所する。しかし彼を待っていたのは厳しい現実であった。
このような事実を想像することは容易だろう。しかし、その立場になった人がどのような思いを持って生きていくかは想像を超えている。この小説によって自分をその中に置いて追体験することは貴重なことかもしれない。
ストーリーをリアルにするためかもしれないが、主人公はあまりに多くの欠点に満ちていて、感情に流されるし、悪いと分かっていても自分を止めることが難しい。
主人公に共感できる人は良いが、そうでないと精密な心理描写はしんどい。主人公に向かって、そんなことはやめろよとか、もういい加減にしろと思いながら読まないといけない。
多くの人に共感されるような主人公は、欠点があっても、愛すべき面がそれを補うような人だろうが、本書の主人公はそうではない。
同情の余地はいっぱいあるけど、たぶん多くの人にとっては共感できない。
共感することができた少ない読者にとっては良い作品だろうが、私にはしんどい読書であった。
同じテーマで、同じ主人公であってももう少し良い面を強調することでずいぶん違ってくるだろうと思う。
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4022578386
No.28:
(4pt)

自分にも襲いかかるかもしれない

犯罪を犯し、刑務所に入った本人と家族被害者などの葛藤を描いた作品では、映画にもなった(私が嫌いな)東野圭吾の「手紙」が有名だが、あれの数倍面白い。もう全然レベルが違います。
自分の彼女にちょっかいを出すチンピラにひと言注意をしに言ったとき、相手からいきなり不意打ちでボコボコにされ、たまたま護身用に持っていたナイフで刺し殺してしまった主人公。裁判で5-7年の実刑を喰らい少年刑務所へ。
実刑の理由が相手側の証人の偽証の証言。
このような状況では、刺し殺した事に関して反省はしているが、すべて自分が悪いのか、相手にも非があるのではないのか…と心から納得せずに罪に服している。
務所の中では普通におとなしく過ごしたため、1年を残して仮出所。
そこから、主人公の母親、妹、昔の友人、被害者の家族、被害者の元彼女、妹の婚約者、一緒の時期に仮出所してきた刑務所仲間、保護司夫婦、勤務先の社長と社員たち、偽証の証言をした男たちとのどろどろのやり取りが描かれている。
反省はしているが、相手にも悪いところはあると思っていたら、心からの謝罪は出来ない。しかし自分が引き起こした事件で、自分の家族が回りから白い目で見られ、近所に「この男は殺人犯です」というビラまでまかれ、何か事件が起こるとすぐに警察に疑われ連行されてしまう主人公。
加害者と被害者が常に入れ替わるようなストーリーは、読み始めたら途中で本を置くことができない。
罪を償ってもそれは法律上の償いであり、一生背負わなければならないとはわかりつつ、ここまで卑屈に生きなければならないのか?
しかし実際に自分がそのような立場にならないとは断言できない。何かの弾みで交通事故で人を殺してしまうというような可能性は、皆が持ち合わせているからだ。
殺そうという明確な殺意があったからではなく不注意で殺してしまった場合とか、ずっといじめられていたので、復讐で少し痛い目にあわせようとして殺してしまった場合、飲酒運転をしていたら相手が飛び出してきてひき殺してしまった場合とか「相手を殺した」という事実や結果は同じでも、やったほうは弁解したいが、残された遺族にとってはすべて殺人事件だ。
いつこんな事が自分に起こってもおかしくない世の中で、自分ならどうするだろうか…と常に煩悶しながら読むという本は苦痛だが読み終わったらそれなりに感じるところが大きかった。
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4022578386
No.27:
(3pt)

心情はわかりますが・・・。

殺人罪で服役した人々の心情描写は、そういう経験のない者にとっては「そうなのかもなあ」と納得する部分はあります。
殺したのは悪いことだ。確かに自分が最も悪いんだけれど、「あいつが彼女にちょっかいを出さなければ」「あいつが殴ってこなければ」「あいつがウソの証言をしなければ」「じいさんが飛び出してこなければ」と被害者側を恨む気持ち。
道徳的にはいけないことだけれど、だからこそ人間的という気もする。
ただ、展開として「どうして証言者に会いに行かなければならなかったのか」がわからない。ナイフを使ったという「明らかな非」がある主人公隆太を真に”更正”するに至らせるために強引に持っていった感がある。
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4022578386
No.26:
(1pt)

期待はずれ

犯罪を犯しながら『自分ばかりが悪いのか』そればっかり・・・
後半の展開を期待したが平凡そのものでひどくがっかりした。
この本が初めて読む真保さんの本だったらもう二度と
真保さんの本は読まないだろうと思ったくらいガッカリ・・・
真保さんの作品が好きなだけに期待し過ぎました
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.25:
(5pt)

ニュースでは知ることのない服役後の生活

未成年で殺人を犯した者が、その後の人生をどう歩んでいくのか・・・
ニュースでは事件の報道は大々的に行われ、判決までは世に知らされますが、
罪を犯した者のその後が、世間に知らされることはまずありません。
この本では、殺人を犯した当人だけでなく、
加害者・被害者の家族・友人のその後の生活や心情、
犯罪者の社会復帰を支える人たちの仕事ぶりにまでスポットを当てており、
様々な角度から関係者の「その後」の生活を見ることができます。
相変わらず真保さんらしい緻密な取材あっての、といった感じの内容でした。
不覚にも何度か涙を流しつつ、さらに最後のページでひとしきり泣いた後に、
次の解説のページをめくった時に、泣きながらも心の中で「アタックチャンス!」と
呟いてしまったのは私だけでしょうかw
繋がれた明日 (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:繋がれた明日 (朝日文庫)より
4022643595
No.24:
(4pt)

社会で生きるとは。

これまでの真保作品のイメージとは違った。
私の中では、エンターテイメント性の高いものというイメージが強かったが、
今回は社会の中で生きることに真っ向からぶつかった作品。
殺人を犯した人が、刑務所から出てきてどういう生活をするのか、
想像以上のつらい現実と、その当事者の葛藤をうまく表現している。
真保作品らしく、かなりの取材からえただろう、現実がたっぷりつまった作品。
繋がれた明日 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:繋がれた明日 (新潮文庫)より
4101270260
No.23:
(4pt)

注目すべきは

心理描写!
登場人物の心理がこれでもかというほど丁寧に書かれていて、読み手を引き込む力がそんじょそこらの小説の比ではありません。本を読むのが遅い私でも、あっという間に最後まで読んでしまいました。
内容については、他に多くのレビューがあるのであえて記しません。もっとも、すでに挙げたように読ませる力がすごいので、思い切って手にとってみたほうが良いかもしれません。
繋がれた明日 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:繋がれた明日 (新潮文庫)より
4101270260
No.22:
(5pt)

保護司が印象的だった

加害者の立場で見れば、加害者だけが悪いわけではないにも関わらず懲役7年の判決がでたこと、罪を償って出所したあともちょっとした騒ぎですぐに警察に厄介になること、仕事先でも打ち解けられないこと等、同情する気持ちにもなる。ただ、被害者の立場で見ると、なぜ被害者が殺されねばならないのかという理不尽な気持ち、殺人犯がたった6年で仮釈放されたこと、すぐに謝罪にこないこと等、加害者を許せない気持ちになるのも分かる。結局のところ、第3者ではどちらが正しいとは決められず加害者、被害者それぞれの問題だというのが物語の結論なのだが、この小説では保護司の大室が印象的だった。被害者の恋人を諭す場面はどうやって説得するのか興味深かった。
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.21:
(4pt)

誰が何のために読むか

 作品のレベルそのものは悪くない。水準以上に達している。しかし、満足感を得られるかどうかというと、疑問を感じる。
 この作品の主人公は、「頭がいいのに、不良づきあいをして、あとで後悔しながら、いじいじとする」というタイプだ。
 こういう主人公に共感できる人がどれだけいるだろうか? 不良でなければ、不良には共感できない。不良ならば、読書をしない。だから本書の読者は、とうてい共感できないだろう。たいていは。
 最後のカタルシスはともかく、それ以前があまりにも重苦しい。主人公が根暗に過ぎる。これは作者が根暗だからだろう。作者はディックフランシスの主人公の明るさを真似た方がいい。前作の「ホワイトアウト」のように。いくら真似しても、作者の根暗はどうしようもないので、主人公はどうしても根暗さをいくらか帯びる。そこがホワイトアウトでは成功していた。(強いくせに陰のある男。)
 一方、本作のように、徹底的に根暗だと、読んでもちっとも楽しくない。何のために読まされるのか。読むのが苦痛である。金を払って読まされる身になってほしい。それでも、純文学のような濃密な味わいがあるならともかく、あくまで軽いタッチの文章にすぎない。エンターテインメントの文章なのに、重い主題と軽い文章とがミスマッチ。ホワイトアウトの方向に回帰することを期待する。
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386

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