海は涸いていた



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    初公開日(参考)1995年12月
    分類

    長編小説

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    海は涸いていた (新潮文庫)

    1998年02月28日 海は涸いていた (新潮文庫)

    都内に高級クラブ等を所有する伊勢商事社長、36歳の伊勢孝昭は暴力団に会社の経営を任されていた。彼には殺人の過去があったが、事件は迷宮入りしていた。しかし、孤児院時代の親友が犯した新たな殺人が、その過去を呼びおこし、警視庁・佐古警部が捜査に当たる。そんな折、伊勢はヤクザ同士の抗争に巻き込まれて―。天才音楽家の妹と友人を同時に守るため、男は最後の賭に出た。 (「BOOK」データベースより)




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    海は涸いていたの総合評価:8.26/10点レビュー 19件。Aランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (9pt)

    “世界を知る”人が紡ぐ人間ドラマ

    処女作『流星たちの宴』は相場師の世界を扱った作品、云わば作者のフィールドを活かした実体験に基づく内容だった。
    本書は所謂ハードボイルド作品。また警察小説とも読める濃厚な人間ドラマだ。

    主人公は伊勢孝昭。暴力団佐々木組がバックに着く伊勢商事の社長。しかしその会社は表向きは都内で高級クラブやレストランを経営する会社で、伊勢自身も暴力団関係の仕事には携わっていない。そして彼には人を殺した過去があり、その時芳賀哲郎という名前も捨てていた。

    彼の生き別れの妹が若き天才ヴァイオリニストである馬渕薫。

    また伊勢の孤児院時代の友人が小料理屋を営む三宅慎二と銀座でホステスをしている藤城千佳子。千佳子は服飾デザイナーになるため上京したが夢破れホステス業に身をやつし、心身共に削れるような毎日を送っている。

    そして千佳子の恋人でフリー記者の岡堀。彼はたまたま銀座で千佳子が出会った伊勢のことが気になり、身辺を洗い出す。

    さらに伊勢の昔の恋人今日子はかつて伊勢が働いていた工場主の娘だった。

    今の伊勢の周りにいるのは焼津時代に同じ釜の飯を3年食った布田と彼らを拾い、東京に連れて行った佐々木組の組長佐々木邦弘。

    そして2つの殺害事件の捜査に携わり、徐々に伊勢、薫、慎二、千佳子たちの過去に迫る刑事佐古。

    これら物語を彩るキャラクターのなんと濃密なことか。どこかで読んだような、借りてきたような人物ではなく、生活から人生の道程までしっかりと顔の皺まで浮かびそうなくらい書き込まれている。
    処女作でも感じたがやはりこの人は“世界を知る人”なのだろう。この人でないと書けない雰囲気が行間から立ち上ってくる。

    夢破れその日その日を無意味に生きる者。

    運命に流され、それなりの生活を掴みながらも過去に縛られ過去を捨てようと努力する者。

    夢に向かって邁進し、それを適えた者。

    それぞれが今を生き、現状を保とうとつつましく毎日を営み、もしくは変えようともがいている。

    そんな危ういバランスは抱え込んだ暗い過去が生んだ怨念によって変わってしまう。

    作中主人公の伊勢が幾度か呟く。

    生にはこれから生きることがはじまる生と、これから死ぬことがはじまる生とがある

    この言葉が象徴するようにこれは死に様を探し続けた者が生き方を見つけようとした者を救うための物語なのだ。

    つつましく生きたいのになぜか人生の節目で裏切られ、真っ当な人生を進むことを否定される人々を書く物語は志水辰夫の作風をどこか思わせた。

    そしてさらに繰言のように呟かれるのは

    夢を見ることと祈ること、この二つを持ちつづけるかぎり、人間として生きていける。

    なんとも気障な云い回しだが、人生の敗北者としてどこか諦観を持っていき続けてきた伊勢の最後の拠り所が夢と祈り。彼の夢とはかつて継父が船医として行っていた彼の地ペルーに渡ること、そこで第2の人生を送ることだ。

    十年前に捨てた拳銃。つぎはぎだらけの地球儀。前者は運命を変えてしまう仇花であり、後者は死に様を見つけようとした男が唯一残した夢の名残。
    こういった小道具が物語に深みと味わいを持たせる。

    前作を読んだ時は作者独特のニヒリズムに惑わされ、その気障な云い回しと作者の理想像のような主人公梨田の造形に辟易したものだが、本書ではガラリと変わり、上に書いたように志水辰夫氏を思わせる叙情性と大人の小説という風格まで感じさせる。既に2作目にして化けてしまった感があるのだ。小説としてのコクを感じさせる。
    登場人物といい、結末まで向かう構成の上手さとその必然性を作る小道具の周到さ。

    特に上手いと思ったのは伊勢孝昭として他人の名を借りて生きてきた芳賀哲郎が本名に戻った後だ。それまでは伊勢孝昭としかイメージできなかった人物が、ある事件をきっかけに本名の芳賀哲郎としての空気を纏い、もうそれ以降は芳賀哲郎とでしか読めないのだ。同じ人物でありながら主人公が2人いるような感覚。
    それは前半が会社の経営者の伊勢の物語から、施設時代に弟・妹のように可愛がっていた慎二と千佳子を守る兄、そして友人の無念を晴らす戦士である哲郎の物語へとシフトするのにこの名前の変更は実に有効的に働いているのだ。これはなかなか考えられた実に上手い構成だ。

    そして最後に読んで立ち上る題名『海は涸いていた』の意味。

    作者白川氏には是非ともこの路線で行ってもらいたい。今後未読の作品がどんなものか解らぬが本書のような濃厚な人間ドラマを期待してもいいだろう。

    全く興味のない麻雀小説がなければもっとのめり込める作家だっただろうに。


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    No.18:
    (1pt)

    警察考証が出鱈目

    捜査一課長がキャリアになっている。ノンキャリアの牙城の捜査一課の、しかも課長がキャリアなど有り得ない。初歩中の初歩の大間違い。
    海は涸いていた (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海は涸いていた (新潮文庫)より
    4101422222
    No.17:
    (5pt)

    夢を見ることと祈ること。

    『天国への階段』『最も遠い銀河』以来、久しぶりに白川道さんの作品を読みました。ジャンルでいうとハードボイルドに該当するのだと思いますが、魅力的な人物ばかりで引き込まれました。主人公の伊勢はもちろん、おそらく二十以上年上でありながら部下として恭しく仕える茅野、追いつめながらも伊勢の気持ちに寄り添う刑事佐古、その他大勢いずれの立場に肩入れしても読後は何とも言えない余韻に浸れることでしょう。ラストの今日子とのやり取りは涙を流さずにはいられませんでした。
    海は涸いていた (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海は涸いていた (新潮文庫)より
    4101422222
    No.16:
    (1pt)

    既読だった。

    既読だが、面白く再読。
    海は涸いていた (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海は涸いていた (新潮文庫)より
    4101422222
    No.15:
    (5pt)

    男も惚れる主人公

    白川道は「天国への階段」からファンです。主人公の伊勢孝昭は裏社会の人間ですが、命をかけて天才音楽家の妹を守ります。男も惚れる立ち振る舞いです。また、主人公をとりまく登場人物もしぶい味を出しています。本作は一気に読めます。せつないラストは、「天国への階段」同様、まさに白川ワールドです。
    海は涸いていた (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海は涸いていた (新潮文庫)より
    4101422222
    No.14:
    (3pt)

    まあまあ

    都内に高級クラブ等を所有する伊勢商事社長、36歳の伊勢孝昭は暴力団に会社の経営を任されていた。彼には殺人の過去があったが、事件は迷宮入りしていた。しかし、孤児院時代の親友が犯した新たな殺人が、その過去を呼びおこし、警視庁・佐古警部が捜査に当たる。そんな折、伊勢はヤクザ同士の抗争に巻き込まれて―。天才音楽家の妹と友人を同時に守るため、男は最後の賭に出た。
    海は涸いていた (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:海は涸いていた (新潮文庫)より
    4101422222



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