■スポンサードリンク


繋がれた明日



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
繋がれた明日
繋がれた明日 (朝日文庫)
繋がれた明日 (新潮文庫)

繋がれた明日の評価: 3.60/5点 レビュー 40件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.60pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全25件 1~20 1/2ページ
12>>
No.25:
(4pt)

怒りや非難をぶつけるというプロセス

主人公は人を殺したが、主人公にも言い分がある。相手は主人公の恋人に言い寄っており、それを止めさせることが目的であった。相手から先に手を出してきた。しかし、警察は主人公の主張をほとんど無視した。

主人公のような事情がある場合に、現実世界の世論は主人公に厳しくなるだろうか。住宅地でバーベキューをした人が殺された事件があったが、ネット世論は住宅街でのバーベキューは迷惑で煩いと、バーベキュー公害に苦しむ犯人に同情的であった。

一方で主人公は半グレ・ヤンキー的な生活をしていた。この点は、あまり同情しにくい。そこからの脱却は良いことである。

本書は被害者遺族の置かれた悲惨な状況が描かれる。焼け野原から経済大国にしてしまう前に進むことしかできない姿勢を美徳とするような風潮は苦しむ人を苦しめるだけである。日本は被害者の権利が認識されるようになったと言っても、被害者に道徳的に高次の振る舞いを要求する傾向はある。しかし、怒りや非難をぶつけるというプロセスが有益である。それがなければ本書が結末を迎えることはなかった。
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.24:
(4pt)

司法制度の矛盾

神保裕一『繋がれた明日』(朝日新聞社、朝日文庫)は殺人を犯した者を主人公としたサスペンスである。主題が犯罪者の更生か、事実に反する証言が採用されるなど司法制度の矛盾を明らかにすることか、出所者を追い詰める正体を明らかにすることか、最後になるまで着地点が見えなかった。さいたま市立桜図書館の書籍を読んだ。

仮釈放後の主人公は様々な矛盾に直面する。謀略や憎しみが赤裸々に渦巻いている。やはり警察の人権侵害が最大の矛盾である。主人公が怒ることは多いが、怒りの優先順位をつけるならば警察権力とならないか。

「顔の前で怒鳴っていた警官はもう姿が見えなかった。大声で正義を振りかざしておきながら、立場が悪くなると姿を隠す」(209頁)
「法律では黙秘権が正当な権利として認められていながら、彼らは生意気なやつだと怒りをむき出しにして怒鳴った。金槌でたたき続ければ、固く口を閉ざした貝だろうとこじ開けられると信じるかのように」(229頁)
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.23:
(4pt)

罪と罰の重さを考えさせられる作品。

若さゆえの暴走の果てに人を殺めてしまい、その罪と罰にもがき苦しむ様を赤裸々に綴った話。加害者目線だけでなく、被害者目線もしっかりと映し出した描写は秀逸。中盤の冗長さはやや展開の間延び感を出してしまったが、後半からラストに至る怒涛のスパートは読む者を唸らせた。最後は感動させられた。
罪と罰の重さを改めて考えさせられる作品。
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.22:
(4pt)

重いテーマ

若気の至りで人を殺めてしまった主人公が約6年の服役を終えて仮出所し、周囲の人々の助けを得ながら更生の途につきますが、主人公の過去を暴露する悪質なビラが配られたり、執拗な嫌がらせが主人公の家族に加えられたりといった事件が起きます。

この作品で読者に突きつけられる課題は、加害者の更生を考えるのか、永久に返ってこない被害者を悼む人達の気持ちを考えるのか、どこに正解があるのかといった重いテーマです。読者それぞれが色々と思うところがあると思いますが、結局絶対唯一の正解など存在しない問題でしょうし、読了後にも考えさせられるなぁという余韻が残ります。

読んでいる最中に余りにも悲劇的な結末が予想されて悲しい気持ちで読んでいましたが、割合後味の良い結末でほっとしました。
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.21:
(4pt)

罪を背負った人間と支える人間、それぞれの美しさ

よかった。何がって主人公のジメジメ感が。
若者特有の鬱屈が、人を刺し殺すという部分で表出してしまったわけだけど、これは特別な人間の物語じゃなかった。

誰しも、若い自らを過信し行き過ぎた行動に出ることはある。
それが、重い十字架を背負うことは稀だが、まれにそうなってしまう事がある。
殺人という罪は、救いがない。未来がない。人を殺すことは、殺人者と被殺人者だけの問題ではないのだ。
むしろ、その周りにいる人間に与える波紋がすさまじい。
生きているそのことだけで罪を問われる人間になってしまう怖さ。
しかし、そんな身分に落とされた人間の再生に携わるあらゆる人間が私は美しいと思った。

また、到底持てない荷物を引きづりながら、一生歩いて行こうと決意する人間もその罪はとりあえず置いといて美しいと思う。
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.20:
(5pt)

スゴい、スゴい!

皆さんの評価って結構低いんですね。

私なんか、ラストは大号泣しちゃって、取るものもとりあえずこのレビューを
書いている次第です。

ストーリー的にも読者を飽きさせない展開になっているし、読後感の良さは
最近読んだ本のなかではピカイチですね。
(まぁ、あまりまともな本は読んでませんが…。)

ということで文句なしの万点です。

※「繋がれた明日」。新刊本の装丁から、手錠に繋がれたままの将来を想像
していたのですが、そうではなくて「明日に繋がる」ということだったんで
すね。
う〜ん、素晴らしい!
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.19:
(4pt)

犯罪における被害者の立場

ふとした弾みで人を殺めた少年が6年の刑期を追えて仮出所してくる。彼は未だに自分が一方的に罪に問われたことに
納得できていないし、間違った目撃者の証言も許せていない。だが、被害者の家族や親族の立場から言うと、彼らが
この殺人で失うものの方がはるかに大きいのだ。既に26歳の青年になったこの男はやがてこういった自分の罪の
大きさに気付いていく。だが、一方世間は冷たく、また殺人者をそう簡単には許してくれないのだ。個別の理由は
ともかく殺人者が5-6年の期間で又社会復帰するということは一般常識から言ってそぐわない感じは誰しもが持っている
のではないか。どうしても主人公に感情移入するため、被害者家族のエキセントリックな対応にはへきへきするかも知れない。
だが、一方作者の本当に言いたかったのはやはり、そういった被害者の立場であり、彼らの権利をどう守っていくかという
ことだったのではないだろうか。やがて皆によって受け入れられていく主人公だが、最後の場面でも被害者の母はその
感情の高ぶりを抑えきれないという締めくくりを作者は敢えて取っている。ここに作者のメッセージがあると思っている。
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.18:
(5pt)

繋がれた明日

個人読書履歴。一般文学通算416作品目の読書完。2012/08/14
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.17:
(4pt)

人としてすべきことがある

真保裕一さんの「繋がれた明日」読了。

精神的に重い話だったが、自分の知らない世界で闘っている人もいるのだと知ったことはとても貴重だった。

身の回りに殺人を犯した人はいない。
しかしいつ自分が間違って人を殺めたり、身内が殺されたりするかわからない。
車の運転中よそ見をしている間に飛び出してきた子供をひけば、その日からもう殺人者なのだ。

この小説では、諍いの末に人を殺してしまった青年が主人公。
6年の刑期の途中で仮釈放され、保護観察を受けながら社会に戻ろうとするが、生活は決して元には戻らない。
いつまでも人殺しと後ろ指を差され、中傷を受け、家族をも不幸にしてしまう。
心の痛む場面が多いが、そういう闘いをしながら生きている人が実際にいると考えれば、とても目をそらすことはできなかった。

一番衝撃を受けたのは、街中で人殺しと叫ばれた場面。
おれは何もしていないと訴え続けるが、かけつけた警察は主人公に前歴があるという理由から拘束し、留置する。
警察の対応が間違っているわけではないが、これでは罪を償い懸命に生きようとしている主人公が浮かばれない。

法律を守ればいいというものではない。
それ以前に、人としてすべきことがある。
社会が、私たちが、罪を償った者を受け入れなければならない。

私は本書を読んで、目の前に罪を犯した者がいても、その人が懸命に生きようとしているのなら、手を差し伸べたいと思った。
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.16:
(4pt)

自分にも襲いかかるかもしれない

犯罪を犯し、刑務所に入った本人と家族被害者などの葛藤を描いた作品では、映画にもなった(私が嫌いな)東野圭吾の「手紙」が有名だが、あれの数倍面白い。もう全然レベルが違います。
自分の彼女にちょっかいを出すチンピラにひと言注意をしに言ったとき、相手からいきなり不意打ちでボコボコにされ、たまたま護身用に持っていたナイフで刺し殺してしまった主人公。裁判で5-7年の実刑を喰らい少年刑務所へ。
実刑の理由が相手側の証人の偽証の証言。
このような状況では、刺し殺した事に関して反省はしているが、すべて自分が悪いのか、相手にも非があるのではないのか…と心から納得せずに罪に服している。
務所の中では普通におとなしく過ごしたため、1年を残して仮出所。
そこから、主人公の母親、妹、昔の友人、被害者の家族、被害者の元彼女、妹の婚約者、一緒の時期に仮出所してきた刑務所仲間、保護司夫婦、勤務先の社長と社員たち、偽証の証言をした男たちとのどろどろのやり取りが描かれている。
反省はしているが、相手にも悪いところはあると思っていたら、心からの謝罪は出来ない。しかし自分が引き起こした事件で、自分の家族が回りから白い目で見られ、近所に「この男は殺人犯です」というビラまでまかれ、何か事件が起こるとすぐに警察に疑われ連行されてしまう主人公。
加害者と被害者が常に入れ替わるようなストーリーは、読み始めたら途中で本を置くことができない。
罪を償ってもそれは法律上の償いであり、一生背負わなければならないとはわかりつつ、ここまで卑屈に生きなければならないのか?
しかし実際に自分がそのような立場にならないとは断言できない。何かの弾みで交通事故で人を殺してしまうというような可能性は、皆が持ち合わせているからだ。
殺そうという明確な殺意があったからではなく不注意で殺してしまった場合とか、ずっといじめられていたので、復讐で少し痛い目にあわせようとして殺してしまった場合、飲酒運転をしていたら相手が飛び出してきてひき殺してしまった場合とか「相手を殺した」という事実や結果は同じでも、やったほうは弁解したいが、残された遺族にとってはすべて殺人事件だ。
いつこんな事が自分に起こってもおかしくない世の中で、自分ならどうするだろうか…と常に煩悶しながら読むという本は苦痛だが読み終わったらそれなりに感じるところが大きかった。
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.15:
(5pt)

ニュースでは知ることのない服役後の生活

未成年で殺人を犯した者が、その後の人生をどう歩んでいくのか・・・
ニュースでは事件の報道は大々的に行われ、判決までは世に知らされますが、
罪を犯した者のその後が、世間に知らされることはまずありません。
この本では、殺人を犯した当人だけでなく、
加害者・被害者の家族・友人のその後の生活や心情、
犯罪者の社会復帰を支える人たちの仕事ぶりにまでスポットを当てており、
様々な角度から関係者の「その後」の生活を見ることができます。
相変わらず真保さんらしい緻密な取材あっての、といった感じの内容でした。
不覚にも何度か涙を流しつつ、さらに最後のページでひとしきり泣いた後に、
次の解説のページをめくった時に、泣きながらも心の中で「アタックチャンス!」と
呟いてしまったのは私だけでしょうかw
繋がれた明日 (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:繋がれた明日 (朝日文庫)より
4022643595
No.14:
(4pt)

社会で生きるとは。

これまでの真保作品のイメージとは違った。
私の中では、エンターテイメント性の高いものというイメージが強かったが、
今回は社会の中で生きることに真っ向からぶつかった作品。
殺人を犯した人が、刑務所から出てきてどういう生活をするのか、
想像以上のつらい現実と、その当事者の葛藤をうまく表現している。
真保作品らしく、かなりの取材からえただろう、現実がたっぷりつまった作品。
繋がれた明日 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:繋がれた明日 (新潮文庫)より
4101270260
No.13:
(4pt)

注目すべきは

心理描写!
登場人物の心理がこれでもかというほど丁寧に書かれていて、読み手を引き込む力がそんじょそこらの小説の比ではありません。本を読むのが遅い私でも、あっという間に最後まで読んでしまいました。
内容については、他に多くのレビューがあるのであえて記しません。もっとも、すでに挙げたように読ませる力がすごいので、思い切って手にとってみたほうが良いかもしれません。
繋がれた明日 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:繋がれた明日 (新潮文庫)より
4101270260
No.12:
(5pt)

保護司が印象的だった

加害者の立場で見れば、加害者だけが悪いわけではないにも関わらず懲役7年の判決がでたこと、罪を償って出所したあともちょっとした騒ぎですぐに警察に厄介になること、仕事先でも打ち解けられないこと等、同情する気持ちにもなる。ただ、被害者の立場で見ると、なぜ被害者が殺されねばならないのかという理不尽な気持ち、殺人犯がたった6年で仮釈放されたこと、すぐに謝罪にこないこと等、加害者を許せない気持ちになるのも分かる。結局のところ、第3者ではどちらが正しいとは決められず加害者、被害者それぞれの問題だというのが物語の結論なのだが、この小説では保護司の大室が印象的だった。被害者の恋人を諭す場面はどうやって説得するのか興味深かった。
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.11:
(4pt)

誰が何のために読むか

 作品のレベルそのものは悪くない。水準以上に達している。しかし、満足感を得られるかどうかというと、疑問を感じる。
 この作品の主人公は、「頭がいいのに、不良づきあいをして、あとで後悔しながら、いじいじとする」というタイプだ。
 こういう主人公に共感できる人がどれだけいるだろうか? 不良でなければ、不良には共感できない。不良ならば、読書をしない。だから本書の読者は、とうてい共感できないだろう。たいていは。
 最後のカタルシスはともかく、それ以前があまりにも重苦しい。主人公が根暗に過ぎる。これは作者が根暗だからだろう。作者はディックフランシスの主人公の明るさを真似た方がいい。前作の「ホワイトアウト」のように。いくら真似しても、作者の根暗はどうしようもないので、主人公はどうしても根暗さをいくらか帯びる。そこがホワイトアウトでは成功していた。(強いくせに陰のある男。)
 一方、本作のように、徹底的に根暗だと、読んでもちっとも楽しくない。何のために読まされるのか。読むのが苦痛である。金を払って読まされる身になってほしい。それでも、純文学のような濃密な味わいがあるならともかく、あくまで軽いタッチの文章にすぎない。エンターテインメントの文章なのに、重い主題と軽い文章とがミスマッチ。ホワイトアウトの方向に回帰することを期待する。
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.10:
(5pt)

真保氏、会心の一作

 デビュー作からいくつか読んだが、これは桐野夏生女史の「OUT」同様作家として脱皮というか、
一つ上のステージに上がった記念すべき作品。
 真保氏は卓越した能力は持っていたが、蛇足的なオチを付けや過剰などんでん返しの多用で
いまひとつ乗り切れなかったり、ゲップが出てしまうところがあった。
 しかしこの作品は取り上げたテーマの重厚さ(少年犯罪の更正)のためか、彼の悪い癖に良い
意味でブレーキがかかり、結果として非常に完成度の高いものになっている。
 強いて言えば保護司の爺さんのキャラが薄く謎めいているが、それとてこの作品の前では
重箱の隅をつつくような批判でしかない。 とにかくオススメ!!!
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386
No.9:
(4pt)

ハラハラします

ドラマを見逃してしまったので、
本を読んでみました。
主人公、その周りの人たちの気持ちやセリフが
とても現実的で、
どうやって取材したのかな・・・、さすが、と感心しました。
少年犯罪や被害者の救済や加害者の更生や保護司のことや懲役制度や、
なんとなく、当事者にならないと真剣に考えていなかった問題について、
思い知らせてくれる、
でも、興味を持って読み進んでいける内容になっています。
繋がれた明日 (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:繋がれた明日 (朝日文庫)より
4022643595
No.8:
(4pt)

重荷

NHKのドラマを見て、購入しました。
犯罪(殺人)を犯してしまった少年・中道隆太。自分の彼女に手を出したチンピラを持っていたナイフで刺した。相手が先に手を出したからだ。自分も悪いが相手も悪いと言う気持ち。でも実際、人一人殺してしまい、被害者の家族だけでなく自分の家族をも傷つけ一生の重荷を背負わせてしまったという事実。彼の心中では葛藤が渦巻いていた。
そして、仮釈放が決まり6年ぶりに世の中に出た彼を待ち受けたものは、“人殺し…”という写真入のビラ等の心無い仕打ちだった。殺人を犯したのだから当然だという気持ちもありました。こんなに家族を巻き込んで苦しむのなら、やっぱり自分の行動を良く考えてからするべきなんだろうな、取り返しが付かないことをして自分や周りの人の人生を狂わせたらいけないと強く思いました。
ただ、物語は、彼だけでなく彼を取り巻く人々もよく描かれていると思う。冷たい仕打ちだけでなく大きな目で彼を見てくれる大人たちの存在は彼の閉じられた心を次第に開いたことは救いです。少年犯罪の増える現代、犯罪を犯すまでだけでなく、犯してしまった彼らのその後が書かれた秀作です。
繋がれた明日 (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:繋がれた明日 (朝日文庫)より
4022643595
No.7:
(4pt)

スタートラインに立つまでの物語

真保裕一の著作には、『ホワイトアウト』に代表されるような、過去に何らかの負い目をもった男が自己復権をかけて闘うというタイプの作品がある。本書もおそらくそうだろうと思いつつ読み始めたが、少し違うようだ。隆太は喧嘩の相手を殺してしまい、5年から7年の懲役刑を言い渡された。先に手を出したのは被害者であったにもかかわらず、目撃者(被害者の友人)の嘘の証言、隆太がナイフを持っていたことがあだとなり、殺意があったと認定されての判決だった。その隆太に仮釈放の日が訪れる。いまだに隆太は思っている。自分一人が悪かったのか。自分だけが加害者なのか・・・・
殺人は大罪だ。しかし自分のみが一生罪を背負うことに理不尽さを感じ、被害者を恨む気持ちを抑えられない隆太をただ非難することができるだろうか。本書は、殺人者になってしまった人間のきれいごとだけではすまない心情に踏み込んでいる。
理不尽さを引きずった隆太の足取りは不安定だ。そこへ数々の障害が現れる。殺人を暴露する中傷ビラ。ビラは妹の恋をも打ち砕く。昔の悪友達や仮釈放仲間からの接触。隆太につきまとい糾弾する女性の出現。親身になってくれる保護司や理解ある雇用主にしても本当に隆太の味方なのか。何もかもが不安要因に思えてきてハラハラさせられる。そんな中で隆太は仮釈放の日々をどう生き抜くのか。
最後まで読んで思った。本書が『ホワイトアウト』等と異なるのは、煩悶の果てに自分の過去を受け止め、そこから第一歩を踏み出そうとする物語、言うなればスタートラインに立つまでの物語だからなのだと。物語が閉じられてから本当の闘いが始まるのだ。きっと様々な困難が待ち受けているに違いない。けれどスタートラインに至るまでの隆太の変化を振り返れば、未来の彼の姿が自ずと浮かび上がってくる。
繋がれた明日 (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:繋がれた明日 (朝日文庫)より
4022643595
No.6:
(4pt)

犯罪による悲劇

人の罪は、懲役刑に服したからといって簡単に許されるものではないのか?まじめに働こうとしても、罪を犯した過去は執拗にまとわりついてくる。被害者の家族も、そして加害者の家族も、言葉には言い表せないほどの苦しみを背負って生きていかなければならない。「殺される側にも非があった。」最初そう考えていた隆太だったが、「殺される」ということを身をもって知ったとき、初めて罪の重さに気づく。人はどんな場合でも、やってはいけないことがある。それを知った彼を、はたして周りは温かく迎え入れてくれるのだろうか?また、自分なら迎え入れることができるのか?読んだあと、様々な思いが胸の中に渦巻いていた。
繋がれた明日Amazon書評・レビュー:繋がれた明日より
4022578386

スポンサードリンク

  



12>>
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!