■スポンサードリンク
死者が飲む水
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
死者が飲む水の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.12pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
島田荘司の初期作品を読んでみると、島田荘司はミタライ・吉敷以外に、牛越佐武郎というキャラクターを生み出しているのが分かってくる。そういえば、『北の夕鶴2/3の殺人』にも登場している。 で、3人を比較してみると面白い。 ・ミタライ → 天才型 ・吉敷 → 熱血漢 ・牛越佐武郎 → 通称『モーさん』。最も一般的なタイプの日本の刑事 この三者三様のキャラクタが島田荘司の定番の謎 ・まず、ありえないくらいの奇想がある ・その奇想をいくつかの別の奇想が加わり、より深い奇想になる ・それを最後には論理的に帰結させてしまう に、各々が挑むのだ。なかなか面白い。 読了して最初に浮かんだのは、こんなステキな作品を読み逃さなくてよかった、ということだった。 この作品は、島田荘司らしさに満ち満ちている。特に、島田荘司だけの『優しさ』に溢れている。それは、たとえば『御手洗潔のメロディ』の中の『SIVAD SELIM』などでも感じられるのだが、心の優しさそのものだ。その奥深い温かさは他のどの作家からも感じることができない島田荘司だけのものだと思う。 この作品の後半で、刑事が犯人に自首させるためにクビを覚悟で単身乗り込む。こういうことは実際は無いのだと思うのだが、それも島田ワールドなら当然と思えてしまう。 ストーリーの組み立ても実に丁寧で、言葉に一つも無駄がない、美しい。読み逃すことなど許されない傑作だと思う。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
読み応え充分な作品です。昔ながらの「刑事は足で稼ぐ」を信条とする牛越刑事が被害者の足跡を追い執念で解決へと導きます。 御手洗清のようにすぱっとした切れの良い解決というものではないけれど牛越刑事の活躍はなかなかのものでついつい引き込まれて読みました。 この事件自体はばらばら死体が詰められたトランクが被害者宅に送られてくるというところから始まるなんとも凄惨なものですし犯人が殺人まで犯す動機となった古い事件もまたなんともやりきれない痛ましいもの。読んだ後に残るのは救いようのない思いです。 とはいえ牛越刑事の人となり、また彼と他の登場人物とのやりとりなどにちょっとしたユーモアさえも感じられ暗い悲しいだけでない読物としての面白さも感じられます。 例えばモーさんこと牛越刑事が手がかりを求めて東京へ出向き、最後に被害者が訪ねるはずだった友人たちと会うシーンではとんでもなく衝撃的な人物が登場します。牛越刑事をして「この人物と会ったがために被害者は失踪することになったのでは・・・」と一瞬錯覚を起こさせるほどの人物です。こういった場面のやりとりや様々な場面での老刑事の心情などミステリーでありながらもただの謎解きに終わることなく小説を読む醍醐味を与えてくれる作者のさすがの筆力を感じます。 御手洗シリーズとはまた違った魅力のある作品だと思いました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
島田氏の3作目ですが、以前の2作が大がかりなトリックを駆使した本格路線の推理ものだったのに対して、当時の社会派推理に迎合した形で路線変更した地道な捜査で時刻表のアリバイを崩していく鉄道ミステリーとなっています。 が、そこは島田氏、猟奇性満点のバラバラ死体の謎などを散りばめ、最後までグイグイと読者を引きつけます。 その後の代名詞となる吉敷刑事の鉄道ものに繋がる作品として非常に重要な作品だと思われるので、必読と言える。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
推理小説の持つ様々な形式をごった煮したような不思議な構造物。島田荘司らしい様式美が冴える作品だ。リアリティを追求したが為に 往々にして感傷的な表層が目立つ従来の社会派を貫通して突き破り、深層に肉迫する精神的な社会派という側面。まさに数字の羅列を泳ぐ ように複雑な構成で演出されるトラベル・ミステリーの側面。大胆な着想にして、驚きのトリックは本格的だ。 ただ、やはりこの一作では、一部のカルト的ファン以外にはお世辞にも成功と言えなかった占星術や斜め屋敷の遊戯性から離れて、現実へ 歩み寄りをみせている側面が強い。だので一般的な観点からみれば意外性ある結末だが、本格ファンからしてみれば、あまりにみえすいた カラクリで退屈なのかもしれません。が、寧ろそんな転身さえも悪い方向に働かないところに初期島田の勢いを感じるのも事実。 本作で事件の謎に挑戦するのは牛越刑事。著者の作品ではたびたび脇役を務める彼がここでは主役。これが見事に嵌っています。 というのも、本事件の背景にもなる役人の天下りなんてのはあまりに現実的。そして犯人の目的はあまりに精神的。だのであまりに極端な 乖離をみせる両要素を結べるのは、牛越みたいな老練なポンコツ刑事が一番だったね。吉敷じゃ熱すぎるしね。御手洗じゃこの手の事件じゃ 味も素っ気もない。そもそも御手洗だったら一瞬で解決できるカラクリだしね。。囲炉裏火のようなほのかで暖かい眼差しを他人に 向けられる牛越だから良い。 それにしても本作は本質的に心が抉られます。誰かの保身的な計算が悲劇を生む。現実こそすべての精神の発露。どんな凶悪犯罪を起こす 犯人も、事件の2〜3日前にどっかの惑星からやってきたなんて訳ではないのです。どんなに奇妙奇天烈でも生じた精神はすべて現実を映す 鏡に過ぎない。いわばその《ありのまま》を、誇張も卑下もない《ありのまま》を強烈に伝えようとしているのが島田とも言える。時に暴走 しがちにもなるけどね。一貫してダイレクト。それは誰もが本能的に目を逸らす社会的な磔刑図なのです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
推理小説の持つ様々な形式をごった煮したような不思議な構造物。島田荘司らしい様式美が冴える作品だ。リアリティを追求したが為に 往々にして感傷的な表層が目立つ従来の社会派を貫通して突き破り、深層に肉迫する精神的な社会派という側面。まさに数字の羅列を泳ぐ ように複雑な構成で演出されるトラベル・ミステリーの側面。大胆な着想にして、驚きのトリックは本格的だ。 ただ、やはりこの一作では、一部のカルト的ファン以外にはお世辞にも成功と言えなかった占星術や斜め屋敷の遊戯性から離れて、現実へ 歩み寄りをみせている側面が強い。だので一般的な観点からみれば意外性ある結末だが、本格ファンからしてみれば、あまりにみえすいた カラクリで退屈なのかもしれません。が、寧ろそんな転身さえも悪い方向に働かないところに初期島田の勢いを感じるのも事実。 本作で事件の謎に挑戦するのは牛越刑事。著者の作品ではたびたび脇役を務める彼がここでは主役。これが見事に嵌っています。 というのも、本事件の背景にもなる役人の天下りなんてのはあまりに現実的。そして犯人の目的はあまりに精神的。だのであまりに極端な 乖離をみせる両要素を結べるのは、牛越みたいな老練なポンコツ刑事が一番だったね。吉敷じゃ熱すぎるしね。御手洗じゃこの手の事件じゃ 味も素っ気もない。そもそも御手洗だったら一瞬で解決できるカラクリだしね。。囲炉裏火のようなほのかで暖かい眼差しを他人に 向けられる牛越だから良い。 それにしても本作は本質的に心が抉られます。誰かの保身的な計算が悲劇を生む。現実こそすべての精神の発露。どんな凶悪犯罪を起こす 犯人も、事件の2〜3日前にどっかの惑星からやってきたなんて訳ではないのです。どんなに奇妙奇天烈でも生じた精神はすべて現実を映す 鏡に過ぎない。いわばその《ありのまま》を、誇張も卑下もない《ありのまま》を強烈に伝えようとしているのが島田とも言える。時に暴走 しがちにもなるけどね。一貫してダイレクト。それは誰もが本能的に目を逸らす社会的な磔刑図なのです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
島田荘司の長編第3段は、名探偵・御手洗潔のシリーズを一旦封印して書かれた社会派推理です。時刻表トリックという側面も持っており、死体がトランクに詰められて鉄道で発送されるという趣向から、クロフツの『樽』を思い出す人も多いことでしょう。探偵役は、前作『斜め屋敷の犯罪』で脇役として登場した牛越刑事。彼は札幌の刑事ですが、犯行現場が関東だと思われることから何度か関東に出張します。ところが、1983年に発表されたこの時点ではまだ青函トンネルはなく(作品の中でやっと貫通する)、青函連絡船で移動しなければならないというところが時代を感じさせます。 青函連絡船と言えば洞爺丸の沈没事故を思い出しますが、今作にもちょっとだけこの事件に対する言及があります。謎解きには少ししか関係のない言及ですが、心理的にはこの影響は大きいと感じました。この作品は『飢餓海峡』『虚無への供物』と共に洞爺丸に着想を得た3大推理小説に挙げていいのではないでしょうか。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
島田荘司の長編第3段は、名探偵・御手洗潔のシリーズを一旦封印して書かれた社会派推理です。時刻表トリックという側面も持っており、死体がトランクに詰められて鉄道で発送されるという趣向から、クロフツの『樽』を思い出す人も多いことでしょう。探偵役は、前作『斜め屋敷の犯罪』で脇役として登場した牛越刑事。彼は札幌の刑事ですが、犯行現場が関東だと思われることから何度か関東に出張します。ところが、1983年に発表されたこの時点ではまだ青函トンネルはなく(作品の中でやっと貫通する)、青函連絡船で移動しなければならないというところが時代を感じさせます。 青函連絡船と言えば洞爺丸の沈没事故を思い出しますが、今作にもちょっとだけこの事件に対する言及があります。謎解きには少ししか関係のない言及ですが、心理的にはこの影響は大きいと感じました。この作品は『飢餓海峡』『虚無への供物』と共に洞爺丸に着想を得た3大推理小説に挙げていいのではないでしょうか。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!