死者が飲む水



※タグの編集はログイン後行えます

【この小説が収録されている参考書籍】
オスダメ平均点

7.00pt (10max) / 1件

6.83pt (10max) / 12件

Amazon平均点

4.13pt ( 5max) / 8件

楽天平均点

4.00pt ( 5max) / 3件

みんなの オススメpt
  自由に投票してください!!
1pt
サイト内ランク []B
ミステリ成分 []
  この作品はミステリ?
  自由に投票してください!!

0.00pt

52.00pt

43.00pt

0.00pt

←非ミステリ

ミステリ→

↑現実的

↓幻想的

初公開日(参考)1987年04月
分類

長編小説

閲覧回数3,162回
お気に入りにされた回数3
読書済みに登録された回数26

■このページのURL

■報告関係
※気になる点がありましたらお知らせください。

死者が飲む水

2008年03月31日 死者が飲む水

札幌の実業家系赤渡雄造のバラバラ死体が2つのトランクに詰められて、自宅に届けられた。鑑識の結果、死因は溺死、殺害場所は銚子と推定された。札幌署牛越刑事が執念の捜査で肉迫した容疑者には、鉄壁のアリバイがある。札幌、東京、銚子、水戸を結ぶ時刻表トリックで猟奇的殺人を解明する本格長編傑作。 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

死者が飲む水の総合評価:8.11/10点レビュー 9件。Bランク


■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

あのサブキャラも捨てたもんぢゃない

『斜め屋敷の犯罪』で御手洗に翻弄される道化役の刑事を演じた牛越刑事が主役を務めるスピンオフ作品。あの牛越刑事が粘り強い捜査で犯人を突き止める社会派推理小説だ。読んだのは『火刑都市』の方が先だが、刊行されたのは本作のほうが先だったらしい。

道警の、札幌署に勤務する牛越刑事がトランクに入れられたバラバラ死体となった一家の父親の犯人探しに、出稼ぎ先の関東(確か千葉の銚子あたりだったように思う)まで赴き、地道に足で捜査を重ねる。私は先に御手洗シリーズを読んで随分経ってから本書を読んだが、『斜め屋敷の犯罪』での無能ぶりに牛越刑事なんかが主人公で大丈夫かいな?と思っていた。が、不器用で決してスマートといえないその捜査過程は実に我々凡人に近しい存在であり、極端に云えば読者のお父さんが素人張りに奮闘して捜査しているような親近感を抱いた。思わず頑張れ!と口に出して応援してしまう、そんなキャラクターだ。
先に読んだ『火刑都市』は物語が内包する島田氏の都市論、日本人論が犯人を代弁者にして色々考えさせられる重厚感があったが、本作はそれとはまた違った重みがある。特に本作で描かれる房総半島の淋しげな風景は私の千葉に対するイメージを180°覆す物であった。九州の田舎から就職して四国の田舎に住んだ身にとって、千葉のイメージとはディズニーリゾートや成田空港など、大都会東京の延長線上にある発展した県という意識が強かったが、本書にはその姿はなく、昭和の雰囲気を漂わせる重く苦しい風景だ。八代亜紀の演歌が聞こえてきそうな荒涼感さえ漂う。特に銚子は学生の地理の授業で習った醤油の名産地、漁業の発達した街というイメージが強く、栄えているのだと思っていたが、あにはからずそんな明るいムードは全くなかった。

トランクに詰められた死体というとやはり鮎川哲也氏の『黒いトランク』が思い浮かぶだろう。実は私は鮎川作品を読んだことないのだが、多分に島田氏は意識して書いたに違いない。思えばデビュー以来島田氏は何かと過去の偉大なる先達にオマージュを捧げるような同趣向の作品を書いている傾向が強い。本作もどうもその一環だと云ってもいいだろう。
で、ミステリとしてはどうかというと名作の誉れ高い『黒いトランク』のようには巷間の口に上るほどのものでもないというのが率直な感想。しかし牛越刑事の愚直なまでに直進的な捜査は読み応えがあり、その過程を楽しむだけでも読む価値はある。島田氏の登場人物が織り成す彼の作品世界を補完する意味でも読んで損はない作品だ。

Tetchy
WHOKS60S
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.8:
(5pt)

島田荘司の第三の探偵、牛越佐武郎

島田荘司の初期作品を読んでみると、島田荘司はミタライ・吉敷以外に、牛越佐武郎というキャラクターを生み出しているのが分かってくる。そういえば、『北の夕鶴2/3の殺人』にも登場している。

で、3人を比較してみると面白い。

・ミタライ → 天才型
・吉敷 → 熱血漢
・牛越佐武郎 → 通称『モーさん』。最も一般的なタイプの日本の刑事

この三者三様のキャラクタが島田荘司の定番の謎

・まず、ありえないくらいの奇想がある
・その奇想をいくつかの別の奇想が加わり、より深い奇想になる
・それを最後には論理的に帰結させてしまう

に、各々が挑むのだ。なかなか面白い。

読了して最初に浮かんだのは、こんなステキな作品を読み逃さなくてよかった、ということだった。

この作品は、島田荘司らしさに満ち満ちている。特に、島田荘司だけの『優しさ』に溢れている。それは、たとえば『御手洗潔のメロディ』の中の『SIVAD SELIM』などでも感じられるのだが、心の優しさそのものだ。その奥深い温かさは他のどの作家からも感じることができない島田荘司だけのものだと思う。

この作品の後半で、刑事が犯人に自首させるためにクビを覚悟で単身乗り込む。こういうことは実際は無いのだと思うのだが、それも島田ワールドなら当然と思えてしまう。

ストーリーの組み立ても実に丁寧で、言葉に一つも無駄がない、美しい。読み逃すことなど許されない傑作だと思う。
死者が飲む水 (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:死者が飲む水 (講談社文庫)より
4061850849
No.7:
(4pt)

御手洗氏は登場しませんが

読み応え充分な作品です。昔ながらの「刑事は足で稼ぐ」を信条とする牛越刑事が被害者の足跡を追い執念で解決へと導きます。
御手洗清のようにすぱっとした切れの良い解決というものではないけれど牛越刑事の活躍はなかなかのものでついつい引き込まれて読みました。
この事件自体はばらばら死体が詰められたトランクが被害者宅に送られてくるというところから始まるなんとも凄惨なものですし犯人が殺人まで犯す動機となった古い事件もまたなんともやりきれない痛ましいもの。読んだ後に残るのは救いようのない思いです。
とはいえ牛越刑事の人となり、また彼と他の登場人物とのやりとりなどにちょっとしたユーモアさえも感じられ暗い悲しいだけでない読物としての面白さも感じられます。
例えばモーさんこと牛越刑事が手がかりを求めて東京へ出向き、最後に被害者が訪ねるはずだった友人たちと会うシーンではとんでもなく衝撃的な人物が登場します。牛越刑事をして「この人物と会ったがために被害者は失踪することになったのでは・・・」と一瞬錯覚を起こさせるほどの人物です。こういった場面のやりとりや様々な場面での老刑事の心情などミステリーでありながらもただの謎解きに終わることなく小説を読む醍醐味を与えてくれる作者のさすがの筆力を感じます。
御手洗シリーズとはまた違った魅力のある作品だと思いました。
死者が飲む水 (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:死者が飲む水 (講談社文庫)より
4061850849
No.6:
(5pt)

初の社会派鉄道推理もの

島田氏の3作目ですが、以前の2作が大がかりなトリックを駆使した本格路線の推理ものだったのに対して、当時の社会派推理に迎合した形で路線変更した地道な捜査で時刻表のアリバイを崩していく鉄道ミステリーとなっています。
が、そこは島田氏、猟奇性満点のバラバラ死体の謎などを散りばめ、最後までグイグイと読者を引きつけます。
その後の代名詞となる吉敷刑事の鉄道ものに繋がる作品として非常に重要な作品だと思われるので、必読と言える。
死者が飲む水 改訂完全版 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:死者が飲む水 改訂完全版 (講談社ノベルス)より
4061825887
No.5:
(4pt)

社会を磔刑する

 推理小説の持つ様々な形式をごった煮したような不思議な構造物。島田荘司らしい様式美が冴える作品だ。リアリティを追求したが為に
往々にして感傷的な表層が目立つ従来の社会派を貫通して突き破り、深層に肉迫する精神的な社会派という側面。まさに数字の羅列を泳ぐ
ように複雑な構成で演出されるトラベル・ミステリーの側面。大胆な着想にして、驚きのトリックは本格的だ。
ただ、やはりこの一作では、一部のカルト的ファン以外にはお世辞にも成功と言えなかった占星術や斜め屋敷の遊戯性から離れて、現実へ
歩み寄りをみせている側面が強い。だので一般的な観点からみれば意外性ある結末だが、本格ファンからしてみれば、あまりにみえすいた
カラクリで退屈なのかもしれません。が、寧ろそんな転身さえも悪い方向に働かないところに初期島田の勢いを感じるのも事実。
 本作で事件の謎に挑戦するのは牛越刑事。著者の作品ではたびたび脇役を務める彼がここでは主役。これが見事に嵌っています。
というのも、本事件の背景にもなる役人の天下りなんてのはあまりに現実的。そして犯人の目的はあまりに精神的。だのであまりに極端な
乖離をみせる両要素を結べるのは、牛越みたいな老練なポンコツ刑事が一番だったね。吉敷じゃ熱すぎるしね。御手洗じゃこの手の事件じゃ
味も素っ気もない。そもそも御手洗だったら一瞬で解決できるカラクリだしね。。囲炉裏火のようなほのかで暖かい眼差しを他人に
向けられる牛越だから良い。
 それにしても本作は本質的に心が抉られます。誰かの保身的な計算が悲劇を生む。現実こそすべての精神の発露。どんな凶悪犯罪を起こす
犯人も、事件の2〜3日前にどっかの惑星からやってきたなんて訳ではないのです。どんなに奇妙奇天烈でも生じた精神はすべて現実を映す
鏡に過ぎない。いわばその《ありのまま》を、誇張も卑下もない《ありのまま》を強烈に伝えようとしているのが島田とも言える。時に暴走
しがちにもなるけどね。一貫してダイレクト。それは誰もが本能的に目を逸らす社会的な磔刑図なのです。
死者が飲む水 改訂完全版 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:死者が飲む水 改訂完全版 (講談社ノベルス)より
4061825887
No.4:
(4pt)

社会を磔刑する

推理小説の持つ様々な形式をごった煮したような不思議な構造物。島田荘司らしい様式美が冴える作品だ。リアリティを追求したが為に
往々にして感傷的な表層が目立つ従来の社会派を貫通して突き破り、深層に肉迫する精神的な社会派という側面。まさに数字の羅列を泳ぐ
ように複雑な構成で演出されるトラベル・ミステリーの側面。大胆な着想にして、驚きのトリックは本格的だ。
ただ、やはりこの一作では、一部のカルト的ファン以外にはお世辞にも成功と言えなかった占星術や斜め屋敷の遊戯性から離れて、現実へ
歩み寄りをみせている側面が強い。だので一般的な観点からみれば意外性ある結末だが、本格ファンからしてみれば、あまりにみえすいた
カラクリで退屈なのかもしれません。が、寧ろそんな転身さえも悪い方向に働かないところに初期島田の勢いを感じるのも事実。
 本作で事件の謎に挑戦するのは牛越刑事。著者の作品ではたびたび脇役を務める彼がここでは主役。これが見事に嵌っています。
というのも、本事件の背景にもなる役人の天下りなんてのはあまりに現実的。そして犯人の目的はあまりに精神的。だのであまりに極端な
乖離をみせる両要素を結べるのは、牛越みたいな老練なポンコツ刑事が一番だったね。吉敷じゃ熱すぎるしね。御手洗じゃこの手の事件じゃ
味も素っ気もない。そもそも御手洗だったら一瞬で解決できるカラクリだしね。。囲炉裏火のようなほのかで暖かい眼差しを他人に
向けられる牛越だから良い。
 それにしても本作は本質的に心が抉られます。誰かの保身的な計算が悲劇を生む。現実こそすべての精神の発露。どんな凶悪犯罪を起こす
犯人も、事件の2〜3日前にどっかの惑星からやってきたなんて訳ではないのです。どんなに奇妙奇天烈でも生じた精神はすべて現実を映す
鏡に過ぎない。いわばその《ありのまま》を、誇張も卑下もない《ありのまま》を強烈に伝えようとしているのが島田とも言える。時に暴走
しがちにもなるけどね。一貫してダイレクト。それは誰もが本能的に目を逸らす社会的な磔刑図なのです。
死者が飲む水 改訂完全版 (講談社ノベルス)Amazon書評・レビュー:死者が飲む水 改訂完全版 (講談社ノベルス)より
4061825887



その他、Amazon書評・レビューが 8件あります。
Amazon書評・レビューを見る     


スポンサードリンク