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幽霊男
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【この小説が収録されている参考書籍】
幽霊男の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.73pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全10件 1~10 1/1ページ
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昭和29年に、『迷路の花嫁』と同時進行で連載された長篇作。 それ以前の『女王蜂』や『悪魔が来りて笛を吹く』も、すでに通俗作品っぽくなっていたし、『迷路の花嫁』は、――なにせエマナチオンだからw――より通俗味が強くなった印象だったが、本作はそれをも超えるTHE 通俗といった作品。正直『本陣殺人事件』や『獄門島』などと並べることには、抵抗を感じる。 これは掲載誌が『講談倶楽部』だったから、そこからの注文でもあったのだと思う。 「先生、乱歩の『蜘蛛男』や『魔術師』みたいな奴をお願いしますよ」などと依頼されていたのではあるまいか。 著者が『講談倶楽部』に作品を載せたのは、金田一耕助が登場しない初期Ver.の「人面瘡」と「生ける死仮面」に続く三作目、長篇としては初であった。 著者としては、どの程度のノリで書いた作品なのかはわからないが、本作連載中に他誌に書いた「花園の悪魔」と類似のシチュエーションを本作ですぐに再使用しているくらいだから、割り切ったやっつけ仕事という気配がするw 大事な作品だったら、もう少し工夫したのではないか? 上には挙げなかったが、この二年ほどはジュブナイル作品の連載も多かったので、耕助の行動からも、彼に本来不似合いな外連味を排除しきれなかったのかもしれない。 さて、「(銀座の高級服飾店ミモザは)目玉のとびだすほど、高価なので有名だが、そのかわり、デザインが斬新で、仕事がていねいなのでしられており、銀座の流行は、この店からうまれるといわれるくらい」(P.251)とかの文章を読むと、他でも書いたような気がするが、昭和29年の時点で日本の復興はかなり進んでいたようだ。朝鮮戦争や赤狩りを越えて、つまりはアメリカの思惑が、「日本が二度と歯向かおうとしないように、羊にしたうえで貧乏な国として閉じ込めてしまえ」から「対共産主義の最前線として、自由主義陣営の橋頭保にする」ことに方針転換があった故の日本の復興だと言える。日本をイジメぬいて、先に刀を無理やり抜かせる前に気づけよと臍を噛みたくなるが、それだけ戦前戦中は、大統領をはじめとしたアメリカの中枢も共産主義シンパに浸透されていたということでもある……。 うーむ、THE 通俗の本書の感想で、そんな遠い目をすることはないww ただしこれは書いておかねばならないと思うが、仕込まれたトリックは乱歩の通俗探偵小説よりも上だと思う。等身大の人形を劇場に運び込んだ手法などは、なかなか鮮やかである。 それにしても、東京ものにおける女性キャラのストリッパー率は高過ぎないか? | ||||
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突出した出来ばえの作品はないが、それなりに読ませる内容を持った中編三作品。 「幽霊座」 歌舞伎の劇場を舞台にして、17年前に起こった人気俳優鶴之助の失踪事件。17年後、鶴之助の関係者らによって同じ演目を上演中に発生した殺人事件。鶴之助と旧知の仲であった金田一耕助は失踪事件、殺人事件の両方で、直接事件現場に立ち会うことになる。横溝正史らしい、表に現れていない裏の人間関係の謎が事件の真相の鍵となる事件。エラリ―・クイーンの某作品と同じ殺人方法が、歌舞伎という舞台で上手く使われている。犯人が予期せぬ出来事が起こり、計画に齟齬が生じることで、謎をより複雑にしている点が面白い。 「鴉」 蓮池家の邸内にある神殿から、「三年のあいだわれは帰らじ」という奇妙なメッセージを残して、失踪した蓮池貞之助。三年後に、貞之助がその神殿に入る姿を目撃されるが、「二度とふたたびわれはかえらじ」というメッセージを残して再び失踪し、泰輔との喧嘩が目撃された後に、泰輔の死体が発見される。複数の人物に隠したい秘密があって、事実を言わなかったり、嘘をついたりしているので、真相が見えにくい。事件の元となった理由が何とも悲しく、印象的。 「トランプ台上の首」 首が切断され、首の方が残され、胴体が持ち去られた死体。胴体が持ち去られた理由、アケミがガラス戸が開いた音に驚いた理由、素肌にガウンを羽織っていた理由、靴に付着していたガラスの粉の謎、オーヴァがボートの中に残されていた理由、謎の女の正体、稲川専蔵と事件との関わりなど、様々な謎が示され、一応合理的な説明がなされている。素肌にガウンを羽織っていた理由だけは、ちょっと苦しいと感じる。 | ||||
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通俗スリラーであって、本格探偵小説ではないし名作と言える作品でもない。 だが、本格探偵小説が備えるべき原則のうちの、ある一つを満たしている作品ではある。 その点が江戸川乱歩の『蜘蛛男』とは違うところだ。 それが何を意味するかはネタバレになってしまうので指摘しない。読んでのお楽しみだ。 | ||||
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自らの快楽のための殺人を追求する怪人というと乱歩の「蜘蛛男」が思い浮かびます。 金田一探偵シリーズは本格推理を標ぼうとしていますから、彼が対決する怪人は「殺人淫楽者」と見せかけて、実はしっかりした動機がある場合が多かったりします。 連続殺人事件の場合には犯人が殺人を重ねる意図こそが、犯人を手繰り寄せる重要な糸となるのですから、犯人はその動機を隠すために余分な殺人を行い馬脚を現したりするケースが多いものです。しかし本作では・・・・・・。動機探しミステリーとして読むと悪くない出来栄えですが、基本的にはパズラーではなくスリラーですので、あまり深く考えずに展開を楽しみましょう。 少年探偵団ではありがちの犯人の車のトランクに潜り込んで尾行するという現実感のない行動も出てきますが、「幽霊男」はゴジラと同い年なんですから、そこは大らかな読み進めましょう。見どころとしては特に花園に女性の足が生えているシーンが強烈な印象を残しますし、その周辺のトリックの妙味は一読する価値があると思います。 | ||||
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あっさり読めました。 これはこれでありかなと。登場人物も複雑では無く事件自体は猟奇的だけれどストーリーはなんとなく軽い。 孤島や旧村の横溝ワールドとはことなる全般に軽い感じのストーリー。 江戸川乱歩の少年探偵団シリーズが現代のライトノベルに近いとすれば、これはそんな感じ。 たまたまでしょうが小林少年もでてきますしね(笑) | ||||
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昭和29年に『講談倶楽部』誌に連載された猟奇的な通俗スリラーである。同年に映画 化もされている。ヌードモデルの派遣業・共栄美術倶楽部の事務所に不気味な異相の 人物「佐川幽霊男(ゆれお)」がモデル派遣の依頼に訪れる。彼は所属モデル・恵子を 指名するが、翌日に指定された場所を訪問したモデルは刺殺死体となって発見される。 その後も幽霊男は次々とモデルを殺害していき、東京は恐怖のどん底に落ちていく。 横溝作品には戦後の都会の退廃や倒錯的な性を描いたもの、そして田舎の因習や 血縁の因縁を軸とした本格推理の二つの系統がある。本作は典型的な前者にあたる。 横溝はこの二系統を掲載誌によって使い分けていたようだ。一般小説雑誌では論理 構成を重んじる本格推理は受けないとして、本作のような猟奇性、怪奇性、エログロ、 荒唐無稽さに富んだ作品を書いていた。ただ正統的横溝ファンからは受けは良くない。 本作はヌードモデルにストリッパー、猟奇クラブを主催する三人の蕩児、実物同様の 作品を制作できる人形師らが登場し、謎の怪人が残虐非道な殺人を繰り返すという、 乱歩風味にエロ要素を加えたような作品。漫画的ではあるが、それなりにおもしろく 読める。金田一は場面場面で登場するが、幽霊男に出し抜かれすぎではなかろうか。 | ||||
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金田一シリーズの中でもエログロが前面に押し出された作品で、文体からも時代を感じさせられます。 江戸川乱歩作品に近い雰囲気を感じました。 肝心のミステリの内容ですが、奇抜なトリックもなく犯人のおおよその見当がつきます。 しかし、犯人が確定したと思ってから二転三転するので、その部分は楽しめると思います。 金田一シリーズの中であえて選ぶほどの作品ではないと思いますが、はずれではないのでそれなりに楽しめるとは思います。 | ||||
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「幽霊座」「鴉」「トランプ台上の首」の3篇が収められている。 「幽霊座」は、歌舞伎の世界を扱った異色作。金田一が若い頃に歌舞伎界に入りびたっており、花形役者などとも親しく付き合っていたという設定が面白い。親しみの持てる1篇であった。 「鴉」は、どうかなあ。あらゆる意味で不満。 「トランプ台上の首」はトリックはちょっとアレだが、構成に工夫があり、読ませる1篇であった。 | ||||
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連続猟奇殺人事件なら何でもいいと言う方にはこの作品や『吸血蛾』はオススメです。ただ名作推理物特有の読後の爽快感は期待しない方がいいかも…。特に動機に関しては元々『動機に弱い』と言われる正史の中でも意味不明度満点。通俗スリラーとしてお楽しみ下さいませ。 | ||||
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かつて「本の雑誌」に「名探偵の防御率」という企画があった。探偵が事件に関わってから、どれだけ殺人が起きてしまうか。殺人が起こるほど防御率が低いという、お遊び企画だった。そして防御率の低い名探偵の代表格が、金田一耕介。この作品でも、防御率は低い。推理小説というより風俗小説としては、かなり面白い。 | ||||
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