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白と黒
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【この小説が収録されている参考書籍】
白と黒の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.73pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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「白と黒」は横溝正史の長編推理小説。昭和32年11月「週刊東京」で発表された「渦の中の女」という短篇を改稿・改題し、昭和35年11月から翌年12まで「日刊スポーツ」にて連載された作品である。名探偵・金田一耕助シリーズの1つだが、「獄門島」「八つ墓村」「犬神家の一族」など長編の代表作がいずれも地方を舞台にしているのと対照的に、この作品は東京都心にある団地を舞台にしている点がめずらしい。 ある日、金田一耕助は昔馴染みの須藤順子という女性と町中で偶然再会した。順子に懇願され、世田谷にある「日の出団地」を訪れた金田一は、彼女の部屋で怪文書を見せられる。その内容は、順子が結婚しているにもかかわらず、バーでホステスをしていた頃にパトロンだったクイーン製薬専務の日疋恭助とよりを戻したというものだった。夫の達雄はそれを信じ、家を出て行ったまま戻らないのだという。 また、最近「日の出団地」では根も葉もない男女関係を告発する怪文書があちこちにばら撒かれており、同じ団地に住む岡部京美に届いた時は、自殺未遂を引き起こすほど追いつめられたらしい。ついこの間できたばかりの新しい団地だけに、入居している人々が少し前まで見知らぬ相手だったことも、お互いに対する疑心暗鬼を生じる原因となっていた。 順子はその怪文書の主を洋裁店タンポポのマダム・片桐恒子ではないかと疑い、恒子の所へ直談判に訪れたが、彼女はそれを強く否定したという。そんな話を金田一にしていたところ、順子の部屋の真正面で死体が見つかったという騒ぎが起きた。建設途中である20号棟のダスト・シュートで見つかった女の死体は、上半身が真黒なタールで覆われ焼け爛れており、顔の判別もできなかった。屋上に設置された窯に何者かが穴を空け、熱いタールがしたたり落ちていたのである。 服装などから死体は片桐恒子と判断されたが、マダムの写真は一枚も見つからず、彼女の前身を知る者も一人として見つからなかった。コールタールで顔を焼かれた死体はいったい誰なのか、そして事件の日から行方不明の男性はどこへ行ったのか。謎が深まるなか、新たな殺人事件が発生してしまうのだった……。 ニュー・タウンとよばれる団地が次々と建てられていた1960年に連載が開始されていることから、横溝正史は存在感を増してきた団地という現代特有の舞台を利用し、複雑な人間関係や軋轢から生じる事件を書いてみたくなったのであろう。それにしても金田一耕助と団地というのは不思議な組み合わせだ。 「Ladies and Gentlemen」という書き出しで始まる、活字を切り貼りして作られた謎の手紙。この怪文書が巨大な団地に住まう人々の心を疑心暗鬼にし、誤解や偶然が複雑な事件を紡ぎ上げていく。 長い物語の最後、「白と黒」という言葉の意味とともに明らかになる犯人は完全に予想外のものだった。舞台が閉ざされた農村や旧家のお屋敷ではないので、やや情緒に欠けるきらいはあるが、こういう金田一ものもあってよいのではないだろうか。 <登場人物> 須藤順子 … 団地の住人。バーの元女給。金田一は昔馴染み。 須藤達雄 … 順子の夫。保険外交員。怪文書に憤慨し失踪した。 根津伍市 … 団地の管理人。元軍人。ジョーという烏を飼う。 根津由紀子 … 伍市の娘。水島に絵を、民子にお茶を習う。 辻村あき子 … 伍市の先妻。 水島浩三 … 団地の住人。画家。戦後落ち目になっている。 宮本寅吉 … 団地の住人。極楽キネマの支配人。 宮本加奈子 … 寅吉の妻。 宮本タマキ … 寅吉の娘。洋裁店タンポポの針子。 榎本民子 … 団地の住人。 榎本謙作 … 民子の息子。帝都映画に在籍する俳優見習い。 姫野三太 … 団地の住人。帝都映画に在籍する俳優見習い。 岡部泰蔵 … 団地の住人。高校教師。 岡部梅子 … 泰蔵の亡妻。中学校の校長をしていた。 戸田京美 … 泰蔵の義理の姪。洋裁店タンポポの針子。 戸田房子 … 京美の母。故人。 白井寿美子 … 泰蔵の婚約者。梅子が校長だった中学校の教師。 白井直也 … 寿美子の兄。中学教師。 佐々照久 … A紙の学芸部勤務。白井直也とは友人関係。 細田敏三 … 団地の住人。A紙の調査部。佐々が怪文書を相談。 細田アイ子 … 敏三の妻。水島画伯のところによく通っていた。 片桐恒子 … 洋裁店タンポポのマダム。死体はタールまみれ。 河村松江 … 洋裁店タンポポのお手伝い。 伊丹大輔 … 洋裁店タンポポの家主。 日疋恭助 … クイーン製薬専務。順子の不倫相手。 渡辺達人 … 帝都映画のプロデューサー。戦時中は伍市の部下。 立花隆治 … 東邦石油社長。泰蔵の中学時代の後輩。 一柳忠彦 … 民々党の代議士。代議士になる前は弁護士だった。 一柳洋子 … 忠彦の妻。三年前にヨット事故で行方不明。 一柳勝子 … 忠彦の娘。 宇津木慎策 … 毎朝新聞の文化部記者。金田一とは協力関係。 保科先生 … 検死医。 山川警部補 … 所轄S署の警部補。捜査主任。 志村刑事 … 所轄S署の刑事。 三浦刑事 … 所轄S署の刑事。 江馬刑事 … 所轄S署の刑事。 新井刑事 … 警視庁捜査一課所属の刑事。等々力警部の腹心。 等々力警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … 先刻お馴染み、もじゃもじゃ頭の探偵さん。 S・Y先生 … 金田一の親友で詩人。カピという柴犬を飼う。 | ||||
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角川文庫の〈金田一耕助ファイル〉シリーズ18が本作品、『白と黒』である。シリーズは20までなので、シリーズ全体を読み通すという視点からは、『白と黒』は終盤に位置する。いつも通り、期待しながらページをめくった。 これもいつも通り、期待は裏切られることなく、最後まで楽しめた。本作品については私自身の推理力は全く働かず、最後の最後まで真犯人が分からなかった。私自身の推理力が無いことは十分に認めた上でであるが、被害者の死体に“加工”がなされた理由は簡単に想起できたのであるが、加害者の殺人動機が全く分からなかった。ネタバレになることは書かないが、単純な動機かつ安易な手段での殺人を、複雑怪奇な人間関係が覆い隠してしまうことで、ありふれた事件を難事件にしてしまうこともあるんだなあ・・・というのが読後間もない感想である。 さっそくシリーズ19『悪霊島』を注文した。次作も楽しみである。 | ||||
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面白かったです!普段は、獄門島や、奥深い山間の寒村の名門旧家が舞台のイメージでしたし、その暗闇の中でこそ、金田一先生のもつ性格の明るさで救われるような作品が多い中、これは一気に近代化して、団地や洋食、英語の雑誌など、ずいぶん親しみやすい感じがしました。 始まりの部分はとても面白いのですが、途中から「白と黒」というキーワードにみんなが振り回されすぎて(読者も)最後で解決になるのですが、その道のりが少し長く感じました。 物語中、何よりよかったのは、最後の犯人への反撃者の存在です。(ぜひ読んでみてください♪) しかし! 私がいちばん気になったのは、事件解決後の5人目の被害者の安否です。すごい重要なのに、どこにもかかれていないところから、まぁ無事だったんだな、と推測するしかないのが残念でした。ほかの作品の様に、動機や真相解明の謎あかしにもう少しゆっくり書いてもらえたら「読んだ感」も満点でしたが、 終わり方はさっぱりしています。でも、この作品はこのほうが…良いのかもしれませんね。 | ||||
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横溝作品を初めて読んで見ました。 八墓ヶ村や、犬神家の一族など、片田舎が舞台のイメージ(映画等で)が強かった為、書店で裏表紙の簡単なあらすじを見て、おや?と思い購入してみました。 多分、映像化されていないと思いますが、その分、新鮮味があって、グイグイ読み進められました。 あまり大した事は書けませんが、横溝作品が、ロングセラーなのも解る気がします。 単純に、面白かったです。 | ||||
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これも良いですね。 どうしても金田一というと、旧村のおどろおどろしい話が思い浮かびますが、珍しい団地が舞台のミステリー。 戦後の復興期にあちこちに団地ができて、それまでにない、ある意味閉鎖された空間が形成された頃。旧村が良くも悪くも血縁、縁故で住民がつながっているとすると、それとは真逆で、縁もゆかりもない人たちが、一つの町を形成する。そこに目を付けたミステリーで、これはこれで新興の村を舞台としたミステリーとも考えることができます。 内容はなかなかハードです。現代の考え方すると多分に差別的なところもありますが、この時代を反映したものとして長く読まれて欲しい作品です。 これも、私が中学生の頃読んだはずなのですが、当時の私が理解できたとは思えない、、、大人の作品です。 | ||||
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金田一耕助シリーズの映像(映画、TVドラマ)は好んで観ますが、文庫を読むのは避けてきました。理由は、文庫本の表紙がおどろおどろしいこと、本編に入る前の前置き(スリーリーテラー的導入部)への違和感、地名などが「岡__村」やS市のように表記されてることの煩わしさ、などからです。 しかし最近、無性に推理小説を読みたくなり何を読もうかと物色した際、本作品は、上記のとっつき難さが無くこれはいいな、と思いました。横溝正史生誕百年記念で文庫の表紙がリニューアルしたのも好感です。 さて内容ですが、昭和35年10月11日、時あたかも日本シリーズの開幕から11月初旬の総選挙という時期に新興住宅団地で起きた事件の物語です。秋の夜長に読むにピッタリ。「Ladies and Gentlemen」で始まる謎の手紙。殺人事件。誤解と便乗。偶然の行動が招く殺人への動機。それらが絡み合い複雑な事件を紡ぎ上げています。残り数ページで分かる事件の全容。その時に得るカタルシスの大きさといったら! ぜひ堪能して下さい。こんなに複雑な作品を書き上げた作者に改めて脱帽しました。 | ||||
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金田一耕助シリーズの映像(映画、TVドラマ)は好んで観ますが、文庫を読むのは避けてきました。理由は、文庫本の表紙がおどろおどろしいこと、本編に入る前の前置き(スリーリーテラー的導入部)への違和感、地名などが「岡__村」やS市のように表記されてることの煩わしさ、などからです。 しかし最近、無性に推理小説を読みたくなり何を読もうかと物色した際、本作品は、上記のとっつき難さが無くこれはいいな、と思いました。横溝正史生誕百年記念で文庫の表紙がリニューアルしたのも好感です。 さて内容ですが、昭和35年10月11日、時あたかも日本シリーズの開幕から11月初旬の総選挙という時期に新興住宅団地で起きた事件の物語です。秋の夜長に読むにピッタリ。「Ladies and Gentlemen」で始まる謎の手紙。殺人事件。誤解と便乗。偶然の行動が招く殺人への動機。それらが絡み合い複雑な事件を紡ぎ上げています。残り数ページで分かる事件の全容。その時に得るカタルシスの大きさといったら! ぜひ堪能して下さい。こんなに複雑な作品を書き上げた作者に改めて脱帽しました。 | ||||
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