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イベリアの雷鳴
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イベリアの雷鳴の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.29pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全11件 1~11 1/1ページ
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1939年、スペインの内戦はフランコ率いる反乱軍の勝利に終わった。この勝利はナチスドイツが反乱軍に肩入れしたことも大いに影響している。そして今、ドイツに借りを返すためにもスペインは枢軸国側に立って英国との戦争に突入するべきかの判断を迫られる。イギリスは当然のことながら、スペインの参戦を阻止せんと諜報活動を密かに進めていた。 緊迫するイベリア半島に、一人の日系ペルー人宝石商・北都昭平の姿があった。彼もまた、日英独西が四つ巴で暗躍する事態の重要な鍵となる人物だった……。 ----------------------- 独ソ不可侵条約を結んだ後に、ヒトラーがポーランド侵攻へと突き進み、その結果、ドイツと英仏との間に戦端が開かれた後のヨーロッパ大陸で、スペインという国がどういう位置づけにあったかは多くの日本人読者には馴染みがないものでしょう。 しかし、スペイン近現代史にどっぷりのめりこんで政治スリラーを物してきた逢坂剛先生の面目躍如ともいえるこの一大長編(700頁教強!)を読めば、当時のイベリア半島を巡る地政学的駆け引きが実によくわかります。 ドイツのポーランド侵攻のきっかけも、ポーランド兵が国教を越えてドイツの小市にあるラジオ局に侵入し、ドイツを罵倒する挑発放送をおこなったことにあると記されます。しかしどうやらこの侵入ポーランド兵は、同国軍の制服を調達したドイツ兵による偽装工作だったのではないかとの説が披露されます。 またポーランド国内でドイツ系少数派が弾圧されていることを口実にドイツが侵攻したというのですから、今年(2022年)勃発したロシアによるウクライナ侵攻と重なる事態が80年以上も前に起こっていたことが想起され、歴史の繰り返しを思わずにいられません。 さらには、イギリスは不干渉協定を盾にスペイン共和国政府を見殺しにしていたことや、フランコ反乱軍政権をアメリカがいち早く承認して石油や農産物の輸出入でスペインを支援していたこと、ドイツのオランダ侵攻計画には最終的にイギリスへの攻撃発進基地を確保する狙いがあったこと、仏ペタン政権がスペインを仲介者としてドイツとの休戦にこぎつけたのはペタンがかつてスペイン駐在大使だった縁があること、などの史実が物語が進む中で説明されていき、歴史を知ることの妙を大いに味わえます。 そしてなんといっても物語の――そして史実としても――重要な鍵になるのは、ジブラルタルです。スペイン継承戦争によって1704年以来、200年以上もイギリス領となった半島の先端部分は地中海と太平洋とを結ぶ重要な拠点です。ここを抑えた国がヨーロッパの命運を握るといっても過言ではない戦時下で、ここを取られまいとするイギリスと、ここをスペインの許可と支援のもと攻め落としたいと考えるドイツとの間で、フランコ独裁スペインは大いに揺れていたのです。 ドイツがフランス国境からスペインを一気に南下して、ジブラルタルに向かうという軍事計画が論議されますが、実はフランスとスペインでは鉄道の軌道幅が異なるので、フランスからジブラルタルまで一気に通過するわけにはいかないという豆知識も披露されます。 そのドイツとスペインの綱引きの間に登場するのが日系ペルー人・北都昭平です。この鵺(ぬえ)のような男が、何を理由にマドリードに滞在しているのか。その実態も目的も霞がかかった奥に隠れていて、読者にはなかなか判然としません。彼に絡むのはスペイン貴族のロマニジョス伯爵夫人や、貧しい葉巻売りの少女ペネロペ、保守系ABC紙の記者ハイメなど個性豊かな登場人物たちです。 やがて物語はスペインとの国境沿いにあるフランスの町アンダイ(エンダヤ)における、フランコとヒトラーの首脳会談へとクライマックスを迎えます。エンダヤ首脳会談という重大な史実の影に、この小説が紡ぐ物語があった――かもしれないという虚実ないまぜの巨編に私は大いにうなり、堪能させられました。 ----------------------- *619頁:1940年、エンダヤ駅に列車で到着するフランコを迎える際、ドイツの軍楽隊が「スペイン国歌《リエゴ讃歌》を演奏し始め」たとの記述があります。しかし《リエゴ讃歌》は1939年に瓦解した共和国政府時代のスペインの国歌ですから、その共和国政府を倒したフランコに敬意を表するために演奏するのは理屈に合わないように思いますが、これは史実なのでしょうか。 . | ||||
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虚々実々。どこまでが本当で、どこからがフィクションかわからないくらい、すごい構成です。 逢坂さんのイベリアシリーズは一巡しましたが、もう一度読み返してみて、改めて、本作のすごさがわかりました。 登場人物がこの後どうなっていくのか、今日ではわかっているのですが、それでも作品に入り込んでいけますし、「いやいや、そっち行っちゃダメ!!」みたいな読み方もできます。 この時代がどういう時代だったのか。私は、40台ですが、私の学生時代の歴史の授業では、まだまだ触れられることが少なかったので、この時代の空気のようなものも感じることができる深い作品だと思います。(歴史科目の書物ではありませんので、その違いはあらかじめ。) 私は、シリーズ通して、これが逢坂さんの意気込みを一番感じる作品だと思っています。 | ||||
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1939年内戦が終わったスペインのフランコ総統の暗殺が企てられる。自称日系ペルー人の宝石商北都は、様々なことに巻き込まれていく…… なかなか面白い( ̄▽ ̄)=3 | ||||
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逢坂剛のイベリアシリーズが電子書籍化されて興奮しています。 イベリアの雷鳴を早速購入して読み始めました。 期待どうりの傑作です。 | ||||
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新聞で著者のイベリアシリーズが完結したという記事を見て、興味を持って第1作である本書を手に取ったが、面白くて一気読みした。舞台は第二次大戦開始前後のスペイン。内戦で大きく傷ついたスペインの雰囲気がよく伝わってくる作品。物語はスペインを見方に引き入れようとするドイツとイギリスの対立の中で、主人公の日本人スパイである北都の活躍が描かれており、魅力的な女性も多数登場する。最後は少しドタバタして呆気ない終わり方ではあったが、今後どうなるか楽しみ。第2作も即読むつもり。 | ||||
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歴史の勉強とスペインのすばらしさを一緒に味わうことができます。 北斗とヴァジニアの行く末が気になります。 | ||||
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第二次世界大戦時のヨーロッパを舞台にした国際謀略小説。 この手の話だと大抵はドイツのベルリンが舞台になるのだが、 この作品の舞台はスペインである。 ドイツ国防軍情報部のカナリス提督、英国情報部MI6のヴァ ジニア・クレイトンなどが、主人公である北都昭平の正体を探 ろうとするのだが、まだ日米開戦前ということで北都自身に 大きな動きは無い。いまだ序盤戦といった所である。 代わりに活躍するのがスペインのフランコ殺害を企む一派で ある。北都に思いを寄せるペネロペも、やがて巻き込まれて いく。 終盤、フランコとヒトラーの会談場所に2時間ドラマの如く、 わざとらしくも関係者全員が集合する。ペネロペの件で因縁が 出来てしまった北都とヴァジニア・クレイトンの関係など、今後 の展開を期待させるに充分な内容となっている。 この作品の後、『遠ざかる祖国』、『燃える蜃気楼』、『暗い国境線』 と続く。読み応え充分な国際謀略小説である。 | ||||
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大東亜戦争でヨーロッパの日本軍の行動について書かれている小説を小生の拙さから余り知りません。この作品で史実を知ろうと思いました。大東亜戦争となると連合国、枢軸国と分けられた上に連合国は5カ国、枢軸国は3カ国と簡単に学校は教えますが実際は枢軸国だけでも、欧州7カ国、亜細亜9カ国の16カ国在りました。その事実を踏まえた上で再度勉強するきっかけをくれたシリーズとなりました。 | ||||
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スペインを舞台に、主人公の日本人スパイが、ドイツ、イギリス、反フランコ派などの、いろいろな陰謀に巻き込まれていく様子を描きます。何かの事件を追う!とか、何か大きな陰謀が一つあって、それを追っていく、いう展開ではなく、いろいろなグループが、いろいなことを企み、それが続いて行く、という感じです。話の構成もあり、この後何が起こるんだ?という興味で、話に引き込まれて、時間とボリュームを忘れる面白さでした。また、戦争の影を感じる街、いろいろな思惑をもった怪しい人々(スパイ、ジャーナリスト、革命家)、そこに生きる一般の人々など、戦争中の中立国の「魔都」ぶりが、見事に描かれてます。第二次世界大戦中の政治状況も、詳しく書かれていて歴史の勉強にもなりました。 | ||||
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作者、得意のスペイン物で、作者のラーフワークとなる、「中立国スペイン」における日・独・英のスパイ戦を描いた作品。本作品はシリーズの第一作に当たり、第二次世界大戦開戦直前のスペインを描いている。 対英戦のため、枢軸側でのスペインの参戦と英領ジブラタルの奪取をもくろむ独、逆にスペインの参戦を阻みたい英、にフランコの暗殺を画策する反フランコ組織の思惑が交錯する。「遠ざかる祖国」「燃える蜃気楼」と続く本シリーズの主人公は日本のスパイ北都昭平と英のスパイヴァジニア・クレイトンであるが、本作品では、北都に想いを寄せるペネロペの描写が鮮やかである。現時点で発表されているシリーズ三作品のなかでは、本作品がベストである。しかしながら、本作品を単体としてみると、同じ「スペインもの」としては、初期の「カディスの赤い星」近年の「燃える地の果てに」の方が上だと思う。(もちろんシリーズ全作が発表されれば、評価があがる可能性もあるが・・・。) 本作品は週刊誌に連載された作品のせいか、同じ説明、表現が何度も出てくる。これが作品のテンポを悪くしているとともに、作品を無駄に!!長くしている。この傾向は作者の他の連載→親書の作品にも見られる傾向であり、是非改善してほしいのだが・・・。 本作は、2000年度版このミスで23位にランキングされた。 | ||||
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第二次大戦下のスペインで繰り広げられるスパイ戦。主人公の日本人スパイが下宿している家の娘は彼に密かに想いを寄せはじめるが、ヒトラー暗殺計画にも巻き込まれていく。長編ながら話しの展開は綿密に組み立てられており、安心して読み進められる。逢坂氏のスペインものに登場する女性は主人公の恋人であれ脇役であれ精神的・肉体的にタフな人間が多いが、今回はめずらしく純情可憐な女性が主人公とかかわってくる。そのせいもあってか、この本の主人公は彼女と考えてもおかしくないのかもしれないと思う。読み終わった後、彼女のしぐさ、せりふがいつまでも頭に残った。 | ||||
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