斜影はるかな国
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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1990年から91年にかけて新聞連載された長編小説。文庫本で750ページというボリューム満点の冒険エンターテイメント作品である。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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1989年、東和通信社・特報部記者の龍門二郎は、スペイン内戦時代にフランコ反乱軍側について戦った日本人義勇兵がいたとの情報を得て強い興味を持つ。ギジェルモ・サトウと名乗った男のその後をたどるためにマドリードに入るが、そこで発生した不穏な殺人事件に巻き込まれていく……。 ------------- 『 クリヴィツキー症候群 』、『 十字路に立つ女 』と続いた岡坂神策シリーズの第3弾です。といっても、岡坂神策の名が登場するのは小説の中のほんの一瞬だけ。スペインで龍門とともに事件に翻弄される人物の中に明央大学助教授の花形理恵がいて、今はマドリード留学中の彼女がかつて関係のあった岡坂に電話する場面がわずかに描かれるのみです。 つまり、これは岡坂神策ユニバースにおけるスピンオフ的な作品で、しかもスペインの歴史の闇の中に現地で分け入っていく大長編ミステリーです。 朝日新聞の夕刊紙上で1990年から1991年にかけて一年間連載された小説ですから、この文春文庫版で700頁を超える一大巨編です。しかしなんら臆することはありません。とにもかくにも、逢坂先生の文章のリーダビリティの高さは抜群です。 また、共和国政府側に立って戦った日本人がいた話はよく知られていますが、敵対する反乱軍側にもそうした人物がいたとの逢坂先生が耳にした情報をもとにこれだけ遠大な歴史ミステリーを紡ぐ出す手腕は天下一品です。二転三転する物語には一度として倦むことがありません。 スペイン内戦における左派政権軍と右派反乱軍の戦いは、得てして開明的・民主的な前者と頑迷保守の後者の戦いと単純化して見てしまう向きもあるかもしれません。しかし、この小説がつきつけるのは、あの時代どちらに与するかは、スターリニズムとフランコニズムとの間のレッサー・イーブル(lesser evil)の選択であったという事実です。その意味で『斜影はるかな国』は、内戦の不都合な真実を冷徹に見つめた政治小説として秀逸だといえます。 そのほかにも、POUM(マルクス主義統一労働者党)の指導者アンドレウ・ニンの謎の死や、共和国政府のもつ金塊のソ連への搬出計画、ソ連の秘密工作員アレクサンドル・オルロフの亡命、など実際に起きた歴史的事件の欠落部分を、独自の想像力で補って緊張感あふれる展開へと仕上げていくところもお見事としかいえません。 このあと岡坂神策シリーズは『緑の家の女』で東京へ舞台を戻します。私は旧題の『 ハポン追跡 』を先に読んでいますが、それに続く『あでやかな落日』『カプグラの悪夢』と、このシリーズではしばらくスペインとは無関係な物語が続くようです。一足飛びに『牙をむく都会』へと読書の手を伸ばすことにしようかと思います。 . | ||||
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マタロンと風間、理恵の位置づけが中途半端。 作者自体がストーリーを続けているうちに収拾がつかなくなったのでは? で★一つマイナス。 | ||||
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逢坂剛のスペインを舞台にした作品のなかでも、完成度の極めて高い作品のひとつ。ただ、1930年代と現代(とはいっても80年代だが)が交錯し、さらに舞台もスペインと日本がしばしば入れ替わる。加えて、スペイン内戦を話の核に据えているので、スペインの現代史になじみのない読者にとっては、とっつきのいい作品とはお世辞にも言えない。しかし、そこを我慢する、あるいはネットでWikipediaなどを通じて、スペイン内戦についてごく簡単な知識を頭に入れると、この作品は俄然面白くなってくる。アクション、恋愛、サスペンスが渾然一体とし、そして筆者が得意な人探し→正体は実は○○だった、というどんでん返しも冴えわたっているので、読むのに労力は必要だが、読み終えた後の爽快感が大きい、骨太の小説である。 それにしても、パリやロンドン、ベルリンといった欧州の中心部から外れたスペインを舞台にし、しかもスペインの過去史が欠くことのできない構成部分となっている逢坂剛の作品に、どうしてこうも心惹かれるのかと思う。逢坂剛のこれら作品群の影響で、スペイン内戦を扱った専門書や堀田善衛の著作を、一時期ずいぶん読んだ。その結果痛感したのは、スペインという国は古今東西老若男女左右を問わず、とにかく情念の濃い国だということである。フラメンコに闘牛といった文化を見ただけでもそんなことは当たり前だろうと言われるだろうが、政治であれ恋愛であれ文化であれ、スペインの人たちはすべてに全力で取り組んでいる。だから、日本であれば過剰だと思われる言動も、スペインが舞台になると違和感がないのである。 思うに、自分が読みたい、見たいのは血沸き肉躍る冒険活劇、それもどちらかと言うと、少し古いタイプのモノなのだろう。男女とも熱いハートを持ち、男はより優しくそしてたくましく、女は強くしかしたおやかにという、現代の感覚では少々古臭い作品かもしれない。逢坂剛は往年の西部劇のファンだというのをどこかで聞いて、彼が描いている世界は、まさに私が読みたい世界なのだとすぐに分かった。しかし、日本人をアメリカの西部劇に登場させるのは、さすがに無理があるし、日本を舞台にするとウソ臭さが出てくる。一方、スペイン内戦には、日本人義勇兵が参加したことは記録として残っていることもあり、日本人がそこにいてもおかしくはない。日本人がかつての西部劇のような活躍ができる世界、それがスペインなのだろう。 | ||||
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昔、新聞連載で読みましたがあまり覚えていません。何10年振りに読み返し、本当に面白かった。 昨年スペインに旅行したので思い出して読んだわけですが、かの国の陽光と人達の長い影はまさしく題名のとおりで、2度旅行に行ったような感慨を覚えました。ありがとうございました。 | ||||
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大好きな逢坂剛さんのスペインもの長編をいつでも読める便利さはたまらない魅力である。 | ||||
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