イベリアの雷鳴
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いわゆる「イベリアシリーズ」の第一作。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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1939年、スペインの内戦はフランコ率いる反乱軍の勝利に終わった。この勝利はナチスドイツが反乱軍に肩入れしたことも大いに影響している。そして今、ドイツに借りを返すためにもスペインは枢軸国側に立って英国との戦争に突入するべきかの判断を迫られる。イギリスは当然のことながら、スペインの参戦を阻止せんと諜報活動を密かに進めていた。 緊迫するイベリア半島に、一人の日系ペルー人宝石商・北都昭平の姿があった。彼もまた、日英独西が四つ巴で暗躍する事態の重要な鍵となる人物だった……。 ----------------------- 独ソ不可侵条約を結んだ後に、ヒトラーがポーランド侵攻へと突き進み、その結果、ドイツと英仏との間に戦端が開かれた後のヨーロッパ大陸で、スペインという国がどういう位置づけにあったかは多くの日本人読者には馴染みがないものでしょう。 しかし、スペイン近現代史にどっぷりのめりこんで政治スリラーを物してきた逢坂剛先生の面目躍如ともいえるこの一大長編(700頁教強!)を読めば、当時のイベリア半島を巡る地政学的駆け引きが実によくわかります。 ドイツのポーランド侵攻のきっかけも、ポーランド兵が国教を越えてドイツの小市にあるラジオ局に侵入し、ドイツを罵倒する挑発放送をおこなったことにあると記されます。しかしどうやらこの侵入ポーランド兵は、同国軍の制服を調達したドイツ兵による偽装工作だったのではないかとの説が披露されます。 またポーランド国内でドイツ系少数派が弾圧されていることを口実にドイツが侵攻したというのですから、今年(2022年)勃発したロシアによるウクライナ侵攻と重なる事態が80年以上も前に起こっていたことが想起され、歴史の繰り返しを思わずにいられません。 さらには、イギリスは不干渉協定を盾にスペイン共和国政府を見殺しにしていたことや、フランコ反乱軍政権をアメリカがいち早く承認して石油や農産物の輸出入でスペインを支援していたこと、ドイツのオランダ侵攻計画には最終的にイギリスへの攻撃発進基地を確保する狙いがあったこと、仏ペタン政権がスペインを仲介者としてドイツとの休戦にこぎつけたのはペタンがかつてスペイン駐在大使だった縁があること、などの史実が物語が進む中で説明されていき、歴史を知ることの妙を大いに味わえます。 そしてなんといっても物語の――そして史実としても――重要な鍵になるのは、ジブラルタルです。スペイン継承戦争によって1704年以来、200年以上もイギリス領となった半島の先端部分は地中海と太平洋とを結ぶ重要な拠点です。ここを抑えた国がヨーロッパの命運を握るといっても過言ではない戦時下で、ここを取られまいとするイギリスと、ここをスペインの許可と支援のもと攻め落としたいと考えるドイツとの間で、フランコ独裁スペインは大いに揺れていたのです。 ドイツがフランス国境からスペインを一気に南下して、ジブラルタルに向かうという軍事計画が論議されますが、実はフランスとスペインでは鉄道の軌道幅が異なるので、フランスからジブラルタルまで一気に通過するわけにはいかないという豆知識も披露されます。 そのドイツとスペインの綱引きの間に登場するのが日系ペルー人・北都昭平です。この鵺(ぬえ)のような男が、何を理由にマドリードに滞在しているのか。その実態も目的も霞がかかった奥に隠れていて、読者にはなかなか判然としません。彼に絡むのはスペイン貴族のロマニジョス伯爵夫人や、貧しい葉巻売りの少女ペネロペ、保守系ABC紙の記者ハイメなど個性豊かな登場人物たちです。 やがて物語はスペインとの国境沿いにあるフランスの町アンダイ(エンダヤ)における、フランコとヒトラーの首脳会談へとクライマックスを迎えます。エンダヤ首脳会談という重大な史実の影に、この小説が紡ぐ物語があった――かもしれないという虚実ないまぜの巨編に私は大いにうなり、堪能させられました。 ----------------------- *619頁:1940年、エンダヤ駅に列車で到着するフランコを迎える際、ドイツの軍楽隊が「スペイン国歌《リエゴ讃歌》を演奏し始め」たとの記述があります。しかし《リエゴ讃歌》は1939年に瓦解した共和国政府時代のスペインの国歌ですから、その共和国政府を倒したフランコに敬意を表するために演奏するのは理屈に合わないように思いますが、これは史実なのでしょうか。 . | ||||
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虚々実々。どこまでが本当で、どこからがフィクションかわからないくらい、すごい構成です。 逢坂さんのイベリアシリーズは一巡しましたが、もう一度読み返してみて、改めて、本作のすごさがわかりました。 登場人物がこの後どうなっていくのか、今日ではわかっているのですが、それでも作品に入り込んでいけますし、「いやいや、そっち行っちゃダメ!!」みたいな読み方もできます。 この時代がどういう時代だったのか。私は、40台ですが、私の学生時代の歴史の授業では、まだまだ触れられることが少なかったので、この時代の空気のようなものも感じることができる深い作品だと思います。(歴史科目の書物ではありませんので、その違いはあらかじめ。) 私は、シリーズ通して、これが逢坂さんの意気込みを一番感じる作品だと思っています。 | ||||
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1939年内戦が終わったスペインのフランコ総統の暗殺が企てられる。自称日系ペルー人の宝石商北都は、様々なことに巻き込まれていく…… なかなか面白い( ̄▽ ̄)=3 | ||||
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総統暗殺!?1940年。内戦の痛手いまだ癒えぬスペインでは、フランコ殺害を企む一派が活動を続けていた。ジブラルタルを巡り、日英独の諜報戦が熾烈を極めるマドリードに現れた日系ペルー人の宝石商・北都昭平は、やがて激動する歴史の渦へと巻き込まれていく。苛烈な闘いを緻密に描くエスピオナージ。 | ||||
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逢坂剛のイベリアシリーズが電子書籍化されて興奮しています。 イベリアの雷鳴を早速購入して読み始めました。 期待どうりの傑作です。 | ||||
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