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ビリー・サマーズ
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ビリー・サマーズの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.35pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全19件 1~19 1/1ページ
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. 狙撃の腕はピカ一の殺し屋ビリー・サマーズ。依頼どおり凶悪犯を首尾よく射殺するが、依頼主の裏切りを事前に察知してただちに姿をくらます。隠れ家としていた地下住宅の前に、暴力の被害を受けて捨てられていた若い娘アリスを助けたがため、中年の殺し屋と女子大生の奇妙な逃避行が始まる……。 ------------------ 上下2段組300頁超の上巻を終えて、同じく上下2段組300頁超の下巻へと足を踏み入れることに何の躊躇も感じさせない圧巻の展開を見せます。 上巻が〈暗殺へ向けた精緻な準備〉を縦軸に、〈はからずも切り結んでいく近隣住民との絆〉を横軸にした人間ドラマだとしたら、下巻は〈借りを返してもらうための旅路〉を縦軸に、〈旅の道連れ同士の間に徐々に積み上がっていく人の絆〉を横軸にしたロードムービーの味わいを見せます。 アリスは無惨このうえない犯罪の犠牲者であり、ビリーとの旅を通して自己を回復するための道を歩みます。アリスの道行きは時間と手間を要します。二歩進んでは一歩後退するかのような遅々とした歩みをもつアリスの様子が、無理なく読者である私の胃の腑にすとんと落ちる形で綴られます。 ビリーもまた、自分の納得の行く結着を今回の仕事にきちんとつけようと、先を急ぎます。人生に入り込んできた夾雑物であるアリスに、人としての当たり前の感情を育んでいくビリーの姿には、実に引き込まれます。 終盤、ビリーからアリスへとバトンが渡されます。それは〈人を殺める〉というバトンではなく、〈書く〉というバトン。上巻からビリーは、世を忍ぶ仮の姿にすぎなかった作家業に本格的に手を染めていました。自らの悲しい生い立ち、海外の戦場での苛烈な体験、そして目下の課題である暗殺の後始末の顛末がビリーの筆によって綴られていきます。それは暗殺業のために常に自分を他者に変化(へんげ)させざるをえない生を歩んできたビリーが、自らは一体誰なのかを自身に納得させるための所業なのか。 アリスは受け取ったバトンについて思いを馳せ、そして谷の対岸、かつて歴史あるホテル――『シャイニング』の「景観荘(The Overlook Hotel)」――が建っていた平坦な土地に目を向けて思うのです。「自分には世界をつくることもできる」(314頁) ここに作者キングが考える「書くこと」についての真髄が見えます。 キングはかつて、『書くことについて』(小学館文庫)で次のように綴っています。 「ものを書くのは、金を稼ぐためでも、有名になるためでも、もてるためでも、セックスの相手を見つけるためでも、友人をつくるためでもない。一言でいうなら、読む者の人生を豊かにし、同時に書く者の人生も豊かにするためだ。立ち上がり、力をつけ、乗り越えるためだ。幸せになるためだ。」(同書358頁) ビリーも、そしてアリスも、書くことによって「立ち上がり、力をつけ、乗り越え、幸せになる」ことができると強く信じてキーボードを叩くのです。 実に爽やかな読後感を与えてくれる物語でした。 ちょうど読んでいる最中、一昨日(12月6日)に『このミステリーがすごい! 2025年版』(宝島社)が発売され、この『ビリー・サマーズ』が海外編第2位に選出されたと知りました。そのことが何ら不思議だとは思わせない長編小説です。 --------------- *80頁上段 校正・校閲漏れがありました。文庫化のおりにぜひ訂正していただければ幸いです。 ●英語の原文 “He’s writing a paper on the Australian and Hungarian War.” Billy thinks of telling this idiot that Australia had nothing to do with the Hungarian revolution of 1848. ●校正・校閲漏れの訳文 「今はオーストリア・ハンガリー戦争についての論文を書いてる」 ビリーは目の前の無知野郎に、一八四八年のハンガリー革命にはオーストリアは関係ないと教えてやろうかと思った」 ●正しくは 「今はオーストラリア・ハンガリー戦争についての論文を書いてる」 ビリーは目の前の無知野郎に、一八四八年のハンガリー革命にはオーストラリアは関係ないと教えてやろうかと思った」 つまり目の前の無知野郎は「オーストリア・ハンガリー戦争」を「オーストラリア・ハンガリー戦争」と言い間違えていて、ビリーがそれを正してやろかと思ったという話です。 1848年のハンガリー革命は、オーストリアとロシアの連合軍によって鎮圧されたので、隣接するオーストリアは「関係ある」のです。南半球のオーストラリアはさすがに関係ないのです。校正・校閲担当者は19世紀のヨーロッパ史に疎かったようです。 . | ||||
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. 狙撃の腕はピカ一という殺し屋ビリー・サマーズ。今回は昔なじみのニック・メイジャリアンからの依頼を受ける。標的は、人殺しの極悪犯で、既に別件で西海岸に収監されている。この男が裁判を受けるために東部へ移送されてきた瞬間に、狙撃せよというのだ。 狙撃後の逃走まで視野に入れ、ビリーは長期にわたって綿密な準備を進める。身元を偽り、狙撃地点の近くにわざわざ家と事務所を借り、近隣住民との交流に努めながら街に溶け込んでいく。だが、ビリーは依頼人にも黙っていた件があった。それは、狙撃後にはニックの手下の誘導を振り切って、単独で逃走して身をくらませるという独自の計画だった……。 --------------- モダン・ホラーの帝王スティーブン・キングの「作家デビュー50周年に放つ、至高のクライム・ノヴェル」だそうです。 わたし、スティーブン・キング、どちらかというと苦手です。かなり以前、『The Dark Half』、『Bag of Bones』、『The Green Mile』と読んでみましたが、大長編なうえ、途中でどこへ向かうのかと思うほど話が横道にそれるかに見えることが常で、いつしか手にしなくなっていました。 そんなところに、以前の勤務先の後輩が、「『ビリー・サマーズ』は凄い!」と興奮ぎみに語るものですから、そこまで言うのであればと思い切って手をつけることにしました。 上巻だけで2段組300頁超もある巨編です。それでも臆せず頁を繰り始めたのは、近年、キング作品の中ではさほど長くない一巻本の『トム・ゴードンに恋した少女』(新潮文庫)を読んで、感銘を受けたのも理由のひとつです。 さて、物語は2019年あたりが舞台のようです。アメリカの大統領はトランプが務めていて「トランプが自分なら経済を立て直せるといったときはみんな笑ったものだ。でも、あの政策は成功してるんだよ、そう、成功してるんだ」とか「このぶんだと二〇二〇年はもっと景気が上向きそうだ」(ともに24頁)という言葉が並んでいます。 やはり相変わらずキングの小説は、どこへ向かうのかと思うくらいゆっくりと進みます。 ビリーは人殺し決行のその瞬間まで、街に溶け込む作業をじっくり地道に進めていきます。隣人に夕食に招かれ、その家の子どもたちとモノポリーに興じていきます。 また、銃を構えるために事務所として借りた建物へは小説家と称して“通勤”し、近隣オフィスの勤め人たちとのランチをともにする始末。悠揚であることこのうえない、といった毎日が描かれます。 ですがわたしも歳を取ったのかもしれません。人を殺すという緊張を強いられる生活を送ってきたビリーが、そうした人的交流を通じて人間味を見せる姿に――偽りの暮らしとはいえ――公私の領域を行き来する勤労者の姿を見てしまったのです。 そしてなんといっても味わい深いのが、狙撃のあと、本格的な逃走生活に入る前にビリーがなんと本当に作家としての執筆活動を始める展開です。この流れを目にした私は当初、暗殺者の所業としては理屈に合わないのではないかと訝しんだのですが、その思いも長くは続きませんでした。ビリーの書く物語が、当初の小説から回顧録へと舵を切った途端、わたしには見えた気がしました。偽りの人生を生きて来ざるをえなかったビリーが、ウィリアム・サマーズという一個の人間としての確かな生を、パソコンのキーボードで着実に取り返していく姿です。亡霊のような存在である己自身を、書くことでなんとかこの地に留めていられるはずと、祈るようなビリーの気持ちが垣間見えます。 さて、上巻もあと少しで果てるところで、物語は予期せぬ大きな展開を見せました。その展開もビリーらしさが招いた厄災といえます。新たな危難をビリーがどう乗り越えるのか。 下巻へと進むのが楽しみです。 ----------------- 以下、いくつか思ったことです。 *131頁下段 翻訳が漏れています。 ●英語の原文 Nick sent him, Billy thinks. The message? You got off on the wrong foot with Billy and he’s our man on the spot, so get right with him. ‘Just one thing,’ Billy says. ‘You’ll make sure the merch is there when I need it, right?’ に対して、 ●翻訳文は 「ニックがこいつを送ってよこしたんだ、とビリーは思う。『俺が必要とした時に物が確実にここにあるようにしてくれ、いいな?』」 となっています。 ですから翻訳が一部漏れています。訳が漏れているところを補ってみます。 ●拙訳 「ニックがこいつを送ってよこしたんだ、とビリーは思う。その意図するところは?『お前は初顔合わせでビリーにいい印象を与えられなかったが、やつは現場で頼りにできる男だ。だからやつとはうまくやれ』。『俺が必要とした時に物が確実にここにあるようにしてくれ、いいな?』」 【】内の文章は、“俺のところへ来る前にホフはおそらくニックから釘をさされていたんだろうな”、とビリーが推測している心の内を描いています。 だからこのあと132頁の上段でホフは仲良くしようとビリーを飲みに誘うのです。(ビリーはやんわりと断りますが。) *白石朗氏の翻訳は実に読みやすいものです。そして途中で気づいたのですが、原文にあるheやsheを一度として「彼」「彼女」といった人称代名詞で和訳していないのです。(一度、「彼ら」という表現が出てきたのには気づきましたが) 登場人物が多くて錯綜する場面も少なくないだけに、「彼」「彼女」というバタ臭い代名詞を使わずとも人物特定が確実にできるよう工夫を施した見事な和文だと感じ入りました。 *293頁下段 :ビリーの見ている「アクション映画」は「愛犬を殺された男が犯人に復讐しようとする話」だと書かれているものの、題名が記されることはありません。これってキアヌ・リーブス主演の映画『ジョン・ウィック』(2014年)ではないでしょうか? 引退していた殺し屋ジョン・ウィックが、亡妻からの贈り物だった愛犬を殺されたのをきっかけに、復讐に立ち上がる物語です。 . | ||||
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上巻の主人公が地域に溶け込んでいく状況も面白いけど、下巻になってから最重要人物アリスとのロードムービー的要素はなお面白かった。 ラストもいいと思います。 ある種の爽快感が残るラストでした。 | ||||
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いやーアメリカンライフがよーくわかる小説である。ご近所さんとの付き合い方。アメリカでの車での旅の仕方。はたまたドラッグの買い方。トランプはでてくるわ、ウォルマートはでてくるわ、アメリカンライフ満載な小説である。犯罪社会がよーく描かれているB級ハリウッド犯罪映画な感じである。特筆なのはラストシィーン。そしてスティーブンキングの小説を書くことがなぜ楽しいかの告白。上巻は退屈だが、下巻はスピード感がすごい。上巻で退屈だからもういいやと読むのあきらめないで!下巻はB級クライムストーリー映画のようなスピード感が待っている。そして感動のラストシーン。読んでよかったと思う犯罪小説である。 | ||||
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私は、クライムノベルズは苦手だと思っていたのですが、この作品を読んで、意見が変わりました。最も、キングの筆のなせる技だと思っています。 特に、最後では、「物語を書くということ」に対する、キングの正直な気持ちが表れていると思いました。 私も、実際に起こったことだけでは無く、縦横無尽に物語を書いてみたいという気持ちにさせられました。 | ||||
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もう76歳だそうだけど、全く衰えを感じさせません。 とにかく凄いの一言。 第一級のエンタテイメントでした。 特にアリスのキャラクターが良かった。 主人公に助けてもらうだけのヒロインではなく、知性と行動力を兼ね備えた自らの意思で動く女性で、主人公のやり残した仕事を継ぐ存在として描かれています。 新しい考えを取り入れつつも、決して自分の信念を曲げず、超がつくほどの面白い小説を発表し続けるスティーブンキングにただただ脱帽です。 | ||||
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前半は、”暗殺”を実行するまでにiいかに地域社会に溶け込むかという展開だったので話が静かで、人物描写・ドラマが中心だったが、後半話が一転する。 連れ合いが出来、依頼の謎と生存をかけた逃避行となりロードムービータッチの物語展開となる。 話の動きに加速度がつき、余韻のあるラストまで一気に読める。 ストーリー展開もさることながら、キャラつくりの巧さ、ひいては文章の見事さは当代作家の中でもトップクラスだろう。 このキャラたちにまた会いたいが、無理かな。 | ||||
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上巻は、依頼を受けた殺し屋が、周到に計画をたてていく過程を描く。 2段組で300ページ以上あるが、ストーリー的には進みは遅い。 しかし多彩な登場人物との濃厚なコミュニケーション、そして主人公の過去が小説中の小説というメタ構造になっていて引き込まれていく。 文章が緻密で比喩も上手いし、小説や映画からの引用も多くキングの知識の広さを堪能できる。 ここらがキング作品の好みの別れるところだろうが、完成度が高くて十分に楽しめるし、ラスト近くで急に話が動き出すので下巻が楽しみ。 | ||||
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スティーブン・キングの小説を読むのは初めてである。 映画はこれまで、『シャイニング』『ミザリー』『キャリー』『イット』『続イット』『ミスト』『スタンドバイミー』などを観てきた。 が、ホラーが苦手なぼくとしては、『スタンドバイミー』は傑作と思うものの、他の映画にはあまり良い印象を抱いていない。 そんな中で、本書を読もうと思ったのは日経新聞の書評の故である。 ただし、書評に何が書かれていたのかは、忘れてしまった。 ともかく、読んでみようという気にさせてくれたのである。 で、本書である。 ビリー・サマーズとは海兵隊スナイパーとしてイラク戦争を経験し、退役した後に殺し屋としてのプロのスナイパーになった男のことである。 彼はそろそろ引退を考えているが、最後の仕事として150万ドル(2億円強)の殺人の仕事が舞い込む。 すでに殺人犯として拘留中の男が、ある町に移送されてくる。 その男が裁判所に入る瞬間に、何百メートルも離れたビルの一室から狙撃するというのがミッションである。 そして、この任務のために、エージェントはビルの一室と住居用の戸建て住宅を用意する。 いつ、対象となる男が移送されてくるか不明であり、その一瞬のチャンスを逃さないためには何カ月も、待機している必要があるからだ。 それにしても、何か月もの間、ビルの一室で昼間は待機し、住宅で独り暮らしをするには名目が必要になる。 その名目こそ、ビリーが処女小説を書くことなのである。 エージェントが出版社に企画を売り込み、それが承認されたということになっている。 そして、本書では、実際のストーリーの展開と並行して、ビリーが書く小説が進行していく。劇中劇というか、メタストーリーといった構成である。 ビリーは狙撃に成功するが、エージェントが彼自身を始末したがっていることを疑い、身を隠す。 そして、彼自身を始末しようとした奴らに復讐を挑んでいく。 そのパートナーとして、レイプされ殺されそうになったところを助けた女性が絡む。 最後までページを繰らせる息もつかせぬ展開は見事だ。 そして、劇中劇で描かれるビリーの少年期のエピソード、待機中の住宅での子供を含めた近所づきあいが、この小説に鮮やかな彩を与えている。 読み終えて、なぜか『ザリガニの鳴くところ』を連想した。 シチュエーションも展開も全く違うのに。 しかもザリガニの作者は、この小説が処女作であり、スティーブン・キングはデビュー50周年の作品。共通点は、アメリカ人の作家という点ぐらいしか無いのである。 なぜだろうと考えていたのだが、暫定的に「これかも」と思いついたことがある。 それは、作中の主人公が人生や世界に抱く絶望感と、その中で決して手放さない一筋の芯、一筋の希望のようなものが、両作は似ている。 だから、両作から同じような読後感を得たのだと思うのである。 | ||||
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スティーブン・キングの小説を読むのは初めてである。 映画はこれまで、『シャイニング』『ミザリー』『キャリー』『イット』『続イット』『ミスト』『スタンドバイミー』などを観てきた。 が、ホラーが苦手なぼくとしては、『スタンドバイミー』は傑作と思うものの、他の映画にはあまり良い印象を抱いていない。 そんな中で、本書を読もうと思ったのは日経新聞の書評の故である。 ただし、書評に何が書かれていたのかは、忘れてしまった。 ともかく、読んでみようという気にさせてくれたのである。 で、本書である。 ビリー・サマーズとは海兵隊スナイパーとしてイラク戦争を経験し、退役した後に殺し屋としてのプロのスナイパーになった男のことである。 彼はそろそろ引退を考えているが、最後の仕事として150万ドル(2億円強)の殺人の仕事が舞い込む。 すでに殺人犯として拘留中の男が、ある町に移送されてくる。 その男が裁判所に入る瞬間に、何百メートルも離れたビルの一室から狙撃するというのがミッションである。 そして、この任務のために、エージェントはビルの一室と住居用の戸建て住宅を用意する。 いつ、対象となる男が移送されてくるか不明であり、その一瞬のチャンスを逃さないためには何カ月も、待機している必要があるからだ。 それにしても、何か月もの間、ビルの一室で昼間は待機し、住宅で独り暮らしをするには名目が必要になる。 その名目こそ、ビリーが処女小説を書くことなのである。 エージェントが出版社に企画を売り込み、それが承認されたということになっている。 そして、本書では、実際のストーリーの展開と並行して、ビリーが書く小説が進行していく。劇中劇というか、メタストーリーといった構成である。 ビリーは狙撃に成功するが、エージェントが彼自身を始末したがっていることを疑い、身を隠す。 そして、彼自身を始末しようとした奴らに復讐を挑んでいく。 そのパートナーとして、レイプされ殺されそうになったところを助けた女性が絡む。 最後までページを繰らせる息もつかせぬ展開は見事だ。 そして、劇中劇で描かれるビリーの少年期のエピソード、待機中の住宅での子供を含めた近所づきあいが、この小説に鮮やかな彩を与えている。 読み終えて、なぜか『ザリガニの鳴くところ』を連想した。 シチュエーションも展開も全く違うのに。 しかもザリガニの作者は、この小説が処女作であり、スティーブン・キングはデビュー50周年の作品。共通点は、アメリカ人の作家という点ぐらいしか無いのである。 なぜだろうと考えていたのだが、暫定的に「これかも」と思いついたことがある。 それは、作中の主人公が人生や世界に抱く絶望感と、その中で決して手放さない一筋の芯、一筋の希望のようなものが、両作は似ている。 だから、両作から同じような読後感を得たのだと思うのである。 | ||||
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50年コンスタントに書き続けても、まだこんな素晴らしいものが書けるキング、恐るべし! 何も起こらないように見える上巻も、そこここにキングの人となりが垣間見えて面白いし、下巻ではキングファンならニヤッとするようなあれが登場して終始飽きさせません。 下巻のあの章には騙され、なんともせつなく美しいエンディングに。 この静謐で美しいラストは『11/22/63』を彷彿とさせ、読み終わってしばらくはボーっとしてしまいました。 衰え知らずのキング、これからもどんどん書いてくださいね! | ||||
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最初は退屈な小説だと思った。読めば読んだなりに楽しめるのだが、次に読むのは三日後・・・と言えばわかってもらえるだろうか? 「異能期間」も「アウトサイダー」も三日で読んでしまった。つまりそういうことだ。 それが一気に変わるのは下巻に入ってからだ。少女アリスが登場して物語の様相は一変する。こんなパートナーシップが今までのキング作品にあっただろうか。 「ミザリー」や「スタンド・バイ・ミー」に作中作が登場すると言っても、それは所詮埋め草に過ぎない。「骨の袋」に至ってはその存在が「縦読み」するためだけの無意味な存在だ。 しかし、「ビリー・サマーズ」においては作中作が生きている。作中作と本文ではフォントが違うのだが、最後、読者はそのことをほとんど意識しないままキングに騙される。これがやりたくてこの長編を一冊書いたのだとしたら本当に恐ろしい男だ。恐ろしい才能だ。 舞台として「シャイニング」のオーバールックホテル焼失の跡地が登場するが、「ビリー・サマーズ」のラストの静謐さは「シャイニング」と同じである。この「ビリー・サマーズ」こそ(「ドクター・スリープ」ではなく)「シャイニング」の真の後継作といって過言ではないと思う。 | ||||
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純然たる犯罪小説かと思って楽しく読み進めてたら シャイニングがらみの怪異譚をぶち込んでくる さすがキング、こうでなくちゃ 死者は嘘をつかないも面白かったし これからの続刊も期待大 | ||||
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最初は主人公の殺し屋に少し感情移入できないと感じたが、彼の人となりが描かれてからはもう読むのを止められなくなる。素晴らしい作品。 ところで、日経新聞と中日新聞の書評では超常現象は一切起きないと書かれていたが、キングのファンでない人だと気づかずに読み飛ばしてしまう超常現象が描かれています。 | ||||
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楽しませてくれます | ||||
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一気読みするのがもったいなくて一日少しずつ読んで、ようやく読了! 一回別の関連作品挟んでから再読します! | ||||
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昔からのファンです最近のキングの作品は買ったものの途中で挫折してしまうものも多く今回もどうかなーと期待していなかったのですが久しぶりにすいすいと楽しく物語に没頭しました。悪霊島以来主自公に愛着がわきました。 | ||||
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本作はイラクで射撃手として活躍した経験を持つ凄腕暗殺者ビリー・サマーズを主人公とする犯罪小説でありながら、物語が展開していく中で、ビリーが自身の人生を振り返り書いている自伝的小説が挿入されていくという、ひねりをきかせた構成で、単なる犯罪小説に終わらない読み応えある作品です。 非ホラー小説ながら下巻では『シャイニング』の舞台オーバールックホテルの跡地や「動物の形に刈り込まれた生垣を描いた絵」が物語のすじと関係なくチラリと挿入させるあたり、長年のキング読者を喜ばせるキングならではの遊び心も見せてくれます。 また、本書は上巻と下巻で物語の主眼・目的が大きく変わり、本作一作に、アメリカのテレビドラマで言うならシーズン1とシーズン2といった、ふたつのシーズンが含まれている感があります。 そのため、上巻と下巻では、それぞれ違った面白さがあり、例えば上巻では、本来の目的を達成するまでの間、住み着いた地域の住民らとの近所づきあいを行うのですが、この単なる日常のやり取りの描き方の巧さはキングの十八番とも言えるもので、過去の作品で言えば、ケネディ暗殺阻止という目的達成のため過去世界の住民の間に溶け込む主人公を描く『11/22/63』を彷彿させます。 これが下巻になると一変し、レイプ被害にあった女性をたまたま助けたがため、この女性が物語において非常に大きな存在となり、その後は彼女と行動をともにするロードムービー的物語としての面白さがあります。 ビリーによって書かれる自伝小説も少年時代から始まり、その後イラクに派兵された時代の物語になると、このパートが戦争小説としても面白く読むことができます。いわば一粒で2度3度美味しい。 キングによる小説内小説といえば『ミザリー』を思い出しますが、本作においても、挿入される小説が効果的に使われています。 ここ数年のキング作品はいずれも読みごたえのある作品ばかりで新作がでるたびにワクワクしてきます。 | ||||
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