ドロレス・クレイボーン



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初公開日(参考)1995年08月
分類

長編小説

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ドロレス・クレイボーン (文春文庫)

1998年11月30日 ドロレス・クレイボーン (文春文庫)

そう、たしかにあたしは亭主を殺したさ…30年前に夫を殺したと噂される老女ドロレスに、再び殺人の容疑が。彼女の口から明かされる二つの死の真相―皆既日食の悪夢のような風景のなかに甦る忌まわしい秘密。罪が生み出す魂の闇。キングの緻密な筆がアメリカの女性の悲劇を余すところなく描き出す、慟哭の心理ミステリー。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.50pt

ドロレス・クレイボーンの総合評価:9.13/10点レビュー 15件。Aランク


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全2件 1~2 1/1ページ
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

介護問題の今こそ読まれる作品

本書は前作の『ジェラルドのゲーム』と同じく皆既日食の時に起きた事件の話だ。
アメリカの東西で皆既日食の時に起きた事件を語る趣向のこの2作はしかし厳密な意味ではあまり関連性がない。

本書は章立てもなく、ひたすらドロレス・クレイボーンという女性の一人語りで展開する。

通常こういう一人称叙述の一人語りは短編もしくは中編でやるべき趣向だが、なんとキングはこれを340ページ強の長編でやり遂げたのだ。
まあ、もともとキングは冗長と云えるほどに語り口は長いので、キングなら実行してもおかしくはないのだが。

さて全くの章立てなしで最初から最後まで通して語られる物語はドロレス・クレイボーンという女性が犯した殺人の告白であり、彼女の半生記でもあり、またセント・ジョージ家の家族史でもあるのだ。
そしてふてぶてしい老女の一人語りはなぜ彼女がふてぶてしくなったのかが次第に判ってくる。彼女は理不尽な日々を耐えるうちにふてぶてしさの鎧を身につけていったことに。

前半はドロレスが長年家政婦として仕えていたヴェラ・ドノヴァンとのやり取りが語られる。

ヴェラ・ドノヴァンにはいわゆる彼女なりの流儀があり、それをきちんとこなさないと家政婦の職を首にされてしまう。2度同じミスをすれば給金が削られ、3度目のミスで首になる。その流儀は以下の通り。

シーツを干すときは洗濯バサミは4つではなく6つ使わなくてはならないこと。

焼き立てのパンを出したら置く棚の場所も決められている。

自分のことはミセス・ドノヴァンと呼ぶこと。

浴槽はスピック・アンド・スパンを使って磨くこと。

ワイシャツやブラウスのアイロン掛けの際、襟に糊をスプレーするときはガーゼをかぶせてから行うこと。

揚げ物するときは台所の換気扇を回すこと。

ゴミ缶はゴミが回収されたら近くにいる者が元の所へ戻すこと。その際ガレージの東側の壁に沿って2個ずつきちんと並べ、蓋は逆さまにして載せること。

ドアマットは週に一度ほこりが舞い上げるぐらい叩くこと。そして元に戻すときは必ず“WELCOME”の文字を外から来た人が読める方向に敷くこと、などなど。

特に凄絶なのは彼女の下の世話だ。キングはこの下の世話の戦いだけで20ページも費やす。
3時間ごとにおまるを持っていけばその都度、小を足し、お昼の排泄の時は大も一緒に足すが、なぜか木曜日だけは不規則でヴェラとの頭脳戦だったと延々と語られる。シーツを汚されるのが先か、見事おまるを用意するのが先か。もよおしていない時にあらかじめおまるをするのはヴェラにとっては言語道断。

そんなドロレスの“糞”闘ぶりが延々と描かれるのである。そして最悪なのはまんまと相手に出し抜かれ、痴呆老人の如くシーツのみならず、ベッドからヴェラ自身、そしてカーテンまでが糞まみれになった時もあった、なんてことまでドロレスは告白するのだ。

このヴェラの世話の一部始終を読んで立ち上るのは介護の問題だ。ドロレスが長年やっていたのは裕福な老女の世話でそこには介護の苦しみが描かれている。
そういう意味では介護問題が社会的問題になっている今こそ読まれるべき作品であろう。

しかしドロレスは見事それをやり遂げる。そして22歳で家政婦になってからこれまでずっと彼女に仕えるのだ。
そこには単なる主従の関係を越えた、お互いの秘密を共有した鉄の絆めいたもので結ばれるのだ。

また彼女にはジョー・セント・ジョージと云う夫がいるが、これがキング作品に登場する家族の例にもれず、問題のある亭主である。

暴力亭主であり、定職を持たず、さらには自分の娘にも性的虐待を行うろくでなしである。

彼女はそんな夫との16年の結婚生活の間に3人の子を儲けた。長女のセリーナ、長男のジョー・ジュニア、次男のピート。これらの子供たちもまた父親に対して抱く気持ちは三者三様だ。

まず長男のジョー・ジュニアは暴力を振るい、怒鳴り散らす父親を恐れている。
逆に次男で末っ子のピートはジョーのお気に入りでジョーのように悪びれてそれを痛く気に入られて褒めてくれる父親を慕っている。

一方、娘のセリーナは少し複雑だ。

夫ジョーは家族に日常的に暴力を振るい、それはドロレスも例外ではなく、しばらくは耐えていたが、ある日抵抗してからジョーはドロレスに手出しをしなくなった。

それをたまたま見ていたのがセリーナで彼女はその時に母に脅され、血を流す父を見て可哀想に思うのだ。そして逆にそんなひどいことをする母親を憎み、彼女の代わりに父親に優しくしようと誓う。そして事あるごとにセリーナは父親の傍にいるようになるのだが、彼女が成長するにつれて父親は娘に“女”を感じるようになり、性的悪戯を仕掛けるようになる。
またセリーナは父親からいかに母親がひどい人かを刷り込まれていたので、そのことを母親にも相談できずに次第に家族の中で孤立していくのだ。

ヴェラ・ドノヴァンは次第にドロレスに心を許すようになる。そして時々、日曜か夜中に彼女は妄想に陥る。綿ぼこり坊主が襲ってくるという幻覚に囚われ、ドロレスに助けを乞うことが多くなるのだ。

最初ドロレスはそれが彼女の幻覚でそんな綿ぼこりはないにも関らず、追い払うふりをしてヴェラを安心させる。しかし彼女もまたその幻覚を見るようになる。
綿ぼこり坊主とは綿ぼこりのような生首で、目が両方ともでんぐり返り、口がポッカリ開いて、ギザギザの長いほこりの歯がびっしり生えている化け物だ。このイメージはまさにキングらしい。

そして弱みを見せられるのは相手を信頼をしているからこそだ。ヴェラが弱みを見せた時、ドロレスは彼女にとってなくてはならない存在となった。それはドロレスもまた同じだ。

皆既日食の日を共通項に2つの異なる密室劇を描いたキング。片や脳内会議が横溢した決死の脱出劇、片や1人の女性の記憶で語られる半生記。
その両者の軍配はどちらも地味ならばやはり余韻が深い本書に挙げる。

さてキング作品は数多く映像化されているが、本書もまたキャシー・ベイツ主演で映画化されている。この65歳の老女の一人語りという実に地味なお話がどのように映像化されたのか実に興味深い。なぜなら上に書いたように結構生々しいシーンばかりがあるからだ。

しかしなかなかテレビ放映がないのは現代の放送コードをクリアできないからだろうか。BSあたりで是非とも放送してほしいものだ。

▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

ドロレス・クレイボーンの感想

ドロレス・クレイボーンの語り口調が良い。言葉が汚いがとても読みやすかった。かいつまんで言うと親の心子知らず。とても強い女性だが、情に厚く心優しい何処にでもいそうなお母さん像。

HUNTER×2
A4G4U3I8
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No.13:
(5pt)

幸せとは言い難く不幸とも言い切れない何か

これだけ口汚く罵っても聡明さを感じられる。まるで音楽のように小気味よい文章。ちびっこピートのフレーズに和む。翻訳も良いのだろうな。そして主人公の生きた軌跡がちょっとだけ眩しかった。
ドロレス・クレイボーンAmazon書評・レビュー:ドロレス・クレイボーンより
4163158103
No.12:
(4pt)

概ね満足

読書には何ら差し支えのない状態で、概ね満足です。
販売時の説明文コピーが同封されていて、それを読みながら現物を確認できたのが良かったです。
ドロレス・クレイボーンAmazon書評・レビュー:ドロレス・クレイボーンより
4163158103
No.11:
(5pt)

何度繰り返し読んだか

覚えてない位に読み倒してる。
で、飽きる事がない。その時の自分の歳や状況によって思う所は違うけど、何より切ないのがドロレスがいうトコロの「女の仕事」部分。シーツを干すシーンなんか、「洗濯なんかやった事が無いって男全員読め!」と叫びたくなるwここまで過酷ではないけど、冬場なんか多かれ少なかれ、毎日当たり前の様に「お母さん」達はいまだにやってますから…。乾燥機?ありますよ。でも日常的には「電気代勿体なくて」使えません。ま、これは本筋には関係ないですが、この手の綿密な描写がドロレスの言葉に説得力を持たせます。で、ドロレスの選択は正しかったんだとすんなり思ってしまうんです。
彼女の言葉は洗練されていない。いないが故に、鮮明にそのシーンが目に見える様に浮かんでくるんだと思います。
ちなみに脳内映画化完了作品だったんで映画化された「黙秘」を観た時には心底がっかりしました。何で素直に作らんかったんだ!と。
ドロレス・クレイボーンAmazon書評・レビュー:ドロレス・クレイボーンより
4163158103
No.10:
(5pt)

しょうもない駆け引きと思ったら…?

キングの作品はこれを含めたら
まだ2作品しか読んでいませんが、
それでもこの作品の巧妙さには驚かされる
ばかりでした。

まず、一見すると介護する人と介護される人の
駆け引きの様に序盤は見えますが、
だんだんと過去へとさかのぼっていくと、
それぞれの人間の心の闇が見えてくること。

特にドロレスと娘のセリーナの闇は
本当にドス黒いものです。
特に娘の方。

そしてドロレスは大事なものを守るために、
鬼となります。
それを完全な悪とはいえないと思います。

最後に出てくる嘲笑。
でも、いつ自分に降りかかるかは分からないものです。

フィクションのホラーではなくて、
ありそうな感じのホラーというところが
恐さを増幅させます。
好きな作品です。
ドロレス・クレイボーンAmazon書評・レビュー:ドロレス・クレイボーンより
4163158103
No.9:
(5pt)

ホラーではないキング

キングのマスターピースの一冊である。

 この本はホラーではない。一人の女性が 人生の困難に立ち向かい 子供を守っていく感動的な話である。彼女が夫を殺害する場面だけが 一種のサスペンスだが それ以外は 老女が淡々と語る自分の人生だ。

 キングはホラー作家であるわけだが その小説は時として 非常に感動的である。本書を含めて 幾つかの作品は読んでいて泣いてしまうこともある。その高い文学性こそが キングを読む魅力だ。キングは ホラーという舞台装置を借りながら 実際に語っているのは「人間」である。その意味で ホラーではない本作も 正しくキングの本流の一冊だ。
ドロレス・クレイボーンAmazon書評・レビュー:ドロレス・クレイボーンより
4163158103



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