ローズ・マダー



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初公開日(参考)1996年04月
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長編小説

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ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)

1999年04月30日 ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)

このままでは、殺される―ある朝、シーツについた小さな血の染みをみつけて、ローズはそう口にしていた。優秀な刑事の夫ノーマンも、家ではサディストの暴君。結婚後の14年間暴行を受け続けたローズは心身ともにもう限界だった。逃げだそう。あの人の手の届かないところへ―。だが、家出をした妻をノーマンが許すはずがない。残忍な狂気と妄執をバネに夫の執拗な追跡が始まった。 (「BOOK」データベースより)




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ローズ・マダーの総合評価:8.14/10点レビュー 14件。Bランク


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(8pt)

まさに最凶の夫

本書は長年夫に虐待を受けていた女性がある日突如思い立ち、夫のキャッシュカードを手に逃亡するお話だ。もちろん夫はそれまで支配していた妻の反抗を許すわけがなく、妻の行方を追ってくる。

今まで数多書かれた不幸な女性が困難に立ち向かう話だが、キングが秀逸なのは虐待夫を刑事にしたことだ。つまり本来ならば自身が受けたDVを通報する相手である警察が敵の仲間なのである。

どこまで信じたらいいか解らないが、本書の主人公ローズ・ダニエルズ改めロージー・マクレンドンはそれまで夫が連れてきた同僚たちを見て、彼らが夫と同類であることを信じてやまない。警察官同士の仲間意識が強く、たとえ通報したとしてもまず夫の勤務する警察に照会され、それが原因で自分の逃亡先が夫に知られることを恐れるのだ。そしてそんな警察官たちは夫同様、自分のことを仲間を売った裏切りのユダであり、逆に夫に力を貸すだろうと怯えるのだ。

しかし主人公の夫ノーマンがまたひどい人物なのだ。
まず物語は彼が癇癪を起して妊娠中の妻を襲って流産させると云うショッキングな出来事から幕を開ける。赤ん坊のいるお腹を妻がロマンス小説を読んでいたというだけで怒り―彼はそんなものはリアルではなく、従ってそんなものを読むこと自体を嫌悪しているのだ―、腹に3発の強烈なパンチを見舞うのだ―なお彼女がその時読んでいたロマンス小説は『ミザリーの旅』。そう、あの『ミザリー』その小説のファン、アニー・ウィルクスに監禁されたポール・シェリダンの小説である―。

更にはライターの炎でロージーの指先を焙ったり、鉛筆の尖った芯でひたすらロージーの皮膚を無言で突く。血が出ない程度に延々とそれを続けるのだ。

もっとひどいのはロージーの肛門にテニスのラケットを突き刺して悦んでさえいたのだ。

とにかく過剰なまでの女性蔑視者であり、服従していた妻が自分のキャッシュカードを盗んで逃亡したと云う事実に屈辱を覚え、代償を払ってもらうために彼は彼女の行方を執拗に追うのだ。

そして最大の特徴は彼が噛みつくことだ。彼は人の皮膚を、肉を噛みたくて仕方がない衝動に駆られる。
ただこれまでは歯形が着く程度に噛みついていたのだが、妻のロージーが逃げてからはこれが顕著になり、相手の皮膚を突き破って口から血を滴らせるまでになる。さらには人を噛み殺すまでに至る。
最初の餌食はロージーを<娘たち&姉妹たち>に案内した旅行者救護所のピーター・スロウィク。彼の自宅に押し入り、地下室で拘束した後、拷問して殺すのだ。噛み過ぎて顎が痛むほどに。さらには彼の元妻で〈娘たち&姉妹たち〉の運営者アンナ・スティーヴンスを噛むだけで殺害する。

また少しでも気に食わないことがあればすぐにその人物を完膚なきまでに叩きのめしたり、銃で撃ち殺したいといった破壊衝動に駆られるのだ。

まさにパラノイアである。

一方で玄関のドアに3つも鍵を取り付け庭には侵入者探知センターを取り付け、自分の車には盗難防止アラームを取り付ける用心深さを持つ。

更には警察としても実績を挙げており、クラックの全市密売網の一斉検挙で最功労者となり、出世し、周囲から一目置かれている存在なのだ。

物語が進むごとに彼のパラノイア度は次第にエスカレートしていく。ピーター・スロウィクを拷問中の時に彼は狂気のスイッチが入ってしまったかのようにその後、しばしば記憶喪失に陥るのだ。
そして次第に別の人格が現れてくる。あることがきっかけで手に入れた雄牛のファーディナンドの覆面を手に入れた後、それを被った時にはファーディナンドに、その覆面を手に持って腹話術の人形のように話すときは相棒のファーディナンドとして会話を始めるのだ。

一方被害者のロージーだがどうも周囲から見下されるオーラを纏っているようだ。逃亡先の街に到着してバスを降りるなり、飲んだくれの男に卑猥な言葉を向けられる。優しく道案内してくれる老人と話せば、少し道筋が知ってることを示せばムッとされる。

彼女にきつく当たるのは男性だけかと思えば手押し車の太った女に虐待された女性たちのセーフハウス〈娘たち&姉妹たち〉への道のりを尋ねると痛烈な罵声を浴びせられ、更に若い妊婦にもきつい言葉を掛けられた挙句に突き飛ばされる。
永らく夫に虐待されていたことに由来する自信の無さゆえに負のオーラが滲み出ているのだ。

なんせ結婚してから14年間も虐待されてきたのに加え、ほとんど外出することもなかったのだから無理もない。しかも彼女の家族、両親と弟は結婚して3年後に交通事故で亡くなっており、彼女には駆け込み寺となる場所が、人がいなかったのである。

また彼女が流産したことを悲しむ反面、安堵を覚えるのはもし子供が生まれたら、夫が子供にどんな虐待をするのか想像するだに恐ろしいからだ。自分の流産を、しかも夫の暴力によってなってしまった不幸ごとをそのようにして安堵する彼女が何とも不憫でならない。

その彼女が助けを求める〈娘たち&姉妹たち〉にはロージー同様に虐待された女性たちが集まっている。

ロージーと共にホテルのメイドの仕事をして、最初の親友になるパム・ヘイヴァフォードは夫にドアからガラスを突き破って外に投げ出され、両腕に200針を超える傷を負った。それでも彼女は男を求めてしまうのだ。

またそこの運営者アンナ・スティーヴンスはバスターミナルの旅行者救護所の事務員ピーター・スロウィクの元妻で彼の両親の遺産を元手にこのセーフハウスを運営している。彼女は虐待を受けたことはないが、そういう女性たちが世の中にいっぱいいることを知っており、義侠心に駆られて虐待された女性たちの自立のための救済活動を行っている。聖人君子のような人だが、それを自分の名声に繋げる野心を持っている、ちょっと自尊心の高い女性でもある。
ちなみに彼女は『不眠症』でデリーでの集会で突っ込んできた飛行機の餌食となった女性解放運動家のスーザン・デイと会い、一緒に写真を撮ったことがあるようだ。

さて〈娘たち&姉妹たち〉という安寧の場所を得たロージーは人間らしい生活を取り戻すことで次第に人並みに笑い、そして振舞うことが出来るようになってくるが、彼女を決定的に変えるのが≪リバティ・シティ質&金融店≫での丘の上に立つ女性の後姿を描いた絵との出遭いである。

そこに描かれている凛とした立ち姿の女性に魅かれた彼女は絵をノーマンとの結婚指輪と交換して手に入れ、風貌も彼女と似せるようになる。そしてそれを転機にその質屋の店主の息子ビル・スタイナーと付き合うようになり、そこの常連客のロブ・レファーズから朗読テープの朗読者の職を紹介されるのだ。

しかし彼女が、夫の暴力がエスカレートしないように苦痛に悲鳴を挙げずに息を殺して耐えていたことが朗読者として類稀なる素質になるとは何とも皮肉な話である。

彼女は絵の中の女性を絵の裏に書かれていた文字から赤紫色を意味するローズ・マダーと名付け、事あるごとに彼女の心の支えになる。

さて今回の敵ノーマン・ダニエルズこの刑事という捜査技術と知識を備え、更に巨躯と怪力と人を殺すこと、傷つけることを厭わない、いや寧ろその衝動が抑えきれない最凶のサイコキラーだが、絶望的に強いわけではなく、ロージーが所属する〈娘たち&姉妹たち〉が開催したイベント会場では護身術と空手を身に付けた巨漢の黒人女性ガート・キンショウに撃退されるのだ。しかも馬乗りになった彼女に小便を引っ掛けられ、ほうほうの体で逃げ出す始末。

つまり誰も彼もが抵抗できないほどの悪党ではないのだ。ここがクーンツとの違いだろう。
クーンツの描く悪党は周到な準備をして、どんどん主人公を追い詰めていき、更にはどんな抵抗も効かないほどの圧倒的な力を誇り、どうやっても勝てないと思わせる絶望感をもたらすのに物語の終盤では大したことのない方法や手法で簡単に撃退され、ものすごく肩透かしを食らうのだ。

またこのノーマン・ダニエルズ自身も幼い頃に父親から虐待を受けて育った被害者でもあり、更に女性蔑視の精神も父親に叩きこまれていた。従って彼は女性に抵抗される、自分より弱い者に抵抗されるとすぐに動揺と恐慌を覚える精神の弱さも持つ。

虐待をする者は虐待を受けた過去がある。

キングは常々家庭内暴力、家庭の中で圧倒的な支配力を持つ夫や父親を描いてきた。本書はそれまで物語の背景やエピソードとして書かれてきた設定をそのままテーマにした物語である。

この令和の今でも社会問題になっている虐待。確かにその中に取り込まれた者たちには虐待をする者だけでなくされた者も人生において終わりなき代償が必要なのだとキングは云いたかったのかもしれない。

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Tetchy
WHOKS60S
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No.13:
(4pt)

これはこれでありだけど

ノーマンのキャラが生々しくて強烈で、それだけに現実に食い込みすぎてるファンタジーが逆に重石になっているかもしれない。
みんなで〇〇の中に入り込んじゃう……という展開まではいらなかったかも。それさえなければ、ミザリーのような人こわ系サスペンス映画化されてもっと有名になってたんじゃないかと思うので残念です。
ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)より
4102193219
No.12:
(5pt)

good‼️
ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)より
4102193219
No.11:
(4pt)

とくになし

とくになし
ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)より
4102193219
No.10:
(5pt)

星6つ

大変面白く、これまで生涯ベスト5に入る本と言えます。読後しばらく、妻ローズの躍動やDV夫ノーマンの狂気が頭から離れませんでした。
 キング作はデッドゾーン、デスペレーションと読み進め3作目となります。100円の古本を期待せず購入したのですが、すっかり夢中になりました。

 まず、妻ローズが大変魅力的で、夫から逃れて別の町で自立し、新しい恋人と愛を育む姿は恋愛小説のようです。一方、DV夫で警官のノーマンは、妻を探し出して関係を元の鞘に戻そうとするのですが、独善的で暴力的で破滅的です。ノーマンが思考する際はフォントが太ゴシックになるのですが、そのフォント始まるとこちらも固唾を飲んで読むことになりました。妻や周囲の人間に対する差別的で下品な言葉や、独りよがりで視野の狭い行動は残酷で、時には嘲笑に値するのですが、ふと我にかえると、自分のなかにも間違いなくノーマンの狂気があることを自覚し、笑えなくなります。
 後半の神話的追跡劇は賛否が別れるかもしれませんが、DV夫から逃げる妻の恐怖とDV夫の不可逆的狂気を象徴的に描き、大げさに言えばエンターテイメントから文学へと昇華させたと言えます。

 かつて私はキングを大衆向け大味ホラーと捉えて、手に取ることさえしませんでしたが、50前のおじさんが夢中になれるすばらしい作品でありました。
ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)より
4102193219
No.9:
(4pt)

キングの履歴ではどの辺に位置するかは判らないけど強烈なサイコ・サスペンス

14年間夫の警官から虐待されていた主人公の女性が遂に逃げ出すが・・・というお話。
兎に角冒頭から結末まで胸倉をつかまれて引きずり回される強烈なサイコ・サスペンス。そのサスペンスたるや超弩級で凡百の作家にはとても出来ない程で流石キングと唸ります。基本的には逃げる妻と追う夫の主筋だけで二段組み五〇〇ページを超えながら傍筋に様々な事象や人間関係を織り込みつつも主筋だけで殆ど押し通し、中だるみもなく、しかも全く逃げずに最後まで息切れさせず辿り着く構成力筆力に脱帽です。その辺は名作「ミザリー」を思わせますが、似たような設定ながらも全然違う物語を構築していて兜を脱ぎます。また、普段のキングらしく作中で過去の自分の作品で使った人物や地名を登場させファンには嬉しい作品に仕上がっております。個人的にはキングの趣味でロックの固有名詞が多くでてきて、本作でもインディゴ・ガールズやマイクル・マクダーモットの名前が出てきて楽しかったです(両名とも昔CDで持ってました)。
はっきり言ってこの人の著作歴の中ではどの辺に位置するかは判りませんが、読んでいる間はとても楽しかった(怖かった)です。機会があったら是非ご一読を。
ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)より
4102193219



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