デスペレーション



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初公開日(参考)1998年02月
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長編小説

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デスペレーション〈上〉 (新潮文庫)

2000年10月31日 デスペレーション〈上〉 (新潮文庫)

ネヴァダ州の砂漠を突っきるハイウェイ50。一人の警官が、通りがかる人々を次々と拉致していた。彼らが幽閉されたのは、デスペレーションという名の寂れた鉱山町。しかも、町の住民はこの警官の手で皆殺しにされていた。妹を目前で殺された少年デヴィッドは、神への祈りを武器に、囚われの人々を救おうとするが…善と悪、生命と愛という荘厳なテーマに挑む、キング畢生の大作。(「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

デスペレーションの総合評価:8.43/10点レビュー 14件。Aランク


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全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(7pt)

鉱山会社に勤める身には響くものがあるのだが・・・。

今度のスティーヴン・キングが舞台にしたのはネヴァダ州の砂漠にある小さな鉱山町デスペレーション。チャイナ・ピットと呼ばれるアメリカ最大の露天掘りの銅鉱山の町だ。
そこにいる狂える警官によって狩られる旅行者たちの物語だ。

そう、本書はキングのもはや一ジャンルとなったサイキック・バッテリー物である。但し『シャイニング』や『ペット・セマタリー』のようなホテルや家ではなく、町そのものである。

物語はしかし最初は田舎の町を独裁する警察官の横暴の数々が描かれるため、悪徳警官小説だと思われた。

よく田舎の町ほど恐ろしいところはないという。なぜなら田舎には町を牛耳る権力者がいれば、その者こそがその町の秩序であり、法となり全てを思いのままに支配することが出来るからだ。つまりいわゆる世間一般の常識が通用しなくなる。

そしてこのデスペレーションでは警官コリー・エントラジアンこそが法である。彼は自分の好きなように旅行者に絡んで職務質問をしたかと思うと有罪となる証拠を見つけ―もしくはでっち上げ―ると痛めつけた後、自身が統治するデスペレーション警察に連れて行き、牢屋に監禁する。彼は決して彼ら彼女らを殺さず、じわじわと嬲って愉しむ。

しかし物語が進むにつれてこの巨漢の悪徳警官が次第にこの世ならざる者、即ち異形の者であることが判明していく。

その予兆はまずその警官が放つ意味不明な言葉から始まる。彼は旅行者を尋問する際に時折「タック!」という言葉を放つ。尋問された旅行者はその意味不明な言葉に戸惑い、被害者の1人マリンヴェルは思わず意味を問うが、コリーはそれは自分が云ったのではなく、貴方が云ったのだとまともな返答をしない。

やがてそれは「タック・オー・ラ!」や「タック・オー・ウォン!」、「ミ・ヒム」、「エン・タウ!」などの理解不能な言葉が出てくるにつれ、コヨーテやハゲタカ、隠者蜘蛛やガラガラ蛇、クーガーなどを使役する呪文の類だと思わされる。

物語の半ばで判明するのは鉱山町デスペレーションのある黒歴史だ。銅鉱だけでなく、金や銀も取れていた時代にさらに深く坑道を掘り進めるために緩い岩盤の中を掘っていくのを恐れた白人の鉱夫たちの代わりに雇った中国人労働者たちが落盤事故のために生き埋めになってしまったのだった。その数は白人の現場監督と工程主任を入れた57人。そして鉱山技術者とオーナーたちは救出のために落盤事故を誘発するのを恐れ、結局発破をかけて坑道を閉じてしまったのだった。そう、チャイナ・ピットの名は数多くの中国人の犠牲者が出たことに由来しているのだ。

その後2人の中国人たちが酒場に乱入して7人を撃ち殺すという事件が起きた。犠牲者の1人は坑道を塞ぐことを決めた鉱山技師だった。そしてその中国人たちは捕まった時に中国語で喚いていたが、なぜか周囲の人たちには生き埋めにされた中国人たちが復讐しに戻ってくると云っているのが判ったという。

しかしそれは後ほど捻じ曲げられた言い伝えであることが判明する。呪われた坑道から命からがら逃げ延びたチャンとシンのルーシャン兄弟がキャン・タによって狂ってお互いに殺し合う中国人たち―その中には兄弟の婚約者もいた!―を自身でツルハシを使って落盤を起こさせ、事故として報告したのだった。しかし結局彼らもキャン・タに取り憑かれてしまい、悲惨な末路を辿ることになる。

そしてこの得体のしれない悪と戦う囚われの旅行者たちの中で切り札となるのがデヴィッド・カーヴァーという少年だ。彼は家族旅行でラスヴェガスとタホー湖を訪れた道中でコリー・エントラジアンが仕掛けたハイウェイ・カーペットによって車のタイヤを全てパンクさせられてパトカーに乗せられてデスペレーションまで連れられたカーヴァー家の長男だ。

彼は前年の11月に親友が登校中に車に轢かれて重体に陥るという災禍に見舞われた。デヴィッドはその日たまたまウィルス性疾患に罹って休んでおり、友ブライアン・ロスのみが悲劇に見舞われたのだった。ブライアンは頭が変形するほどの重傷で意識不明の状態でもはや助かる可能性はゼロに近いと思われたが、デヴィッドは神に祈ることでブライアンが奇跡的に意識を取り戻して一命を取り留め、普通の生活を取り戻すまでになる。

それ以来彼はカトリックのマーティン師の許に通って信仰を深め、神に祈りを捧げることを日課とする。やがてそれは神との対話を実現することになる。そして彼が神と繋がった人物であることを示すように囚われの身となった仲間たちを救う導き手となる。

つまり本書は善なる神と邪悪な神との戦いへと変貌していくのだが、それはキング作品ではこれまで見られなかったほど、伝奇的色合いが濃くなっていく。鉱山という特殊な舞台ゆえか田舎町に残る言い伝えや呪いの類が本書の恐怖の根源となっている。恐らくは世界各地にある鉱山に纏わる逸話なども盛り込まれているのだろう。

昔の鉱業は死と隣り合わせの危険な仕事だった。いつ崩れるか判らない岩盤をツルハシやハンマーとノミなどで砕きながら掘進し、少しでも多くの鉱石を昼夜問わず、まとも立つこともできないような坑道の中で長時間、熱気と不自由な姿勢を強いられながら掘っていく鉱夫たち。やがて坑道の大きさが小さくなるにつれて体格の大きいアメリカ人たちにはもはや掘り進める作業には耐え切れず、呼び寄せた大量の中国人労働者が変わってどんどん休みなく掘り続ける。そして彼らは知らずに脆い岩盤の下に達し、落盤事故に遭ってある者は死に、またある者は生き埋め状態になってしまう。しかし経営者たちにとって当時は変わりはいくらでもおり、寧ろ救出しに行って二次災害とこの鉱山がもはや危険であるとの判断から救出せずに無駄死にすることを望む。

そんな忌まわしい歴史が今再び花開くことになったのは採掘再開をして忌まわしい石像たちが並んだ空洞を発見してしまったことだった。これこそが全ての元凶である。

この呪いの象徴として登場する小さな石像は様々な形状があり、奇妙にねじれた頭部と飛び出た目を持つ狼像や舌が蛇になっている狼像、その他蛇に片方の翼が欠けたハゲワシ、後ろ足で立ち上がったネズミなど、そんな醜悪な形をしている。そんな石像がチャイナ・ピットと呼ばれる露天掘りの坑道から出てきたことで人々は狂い始める。

そして今回の悲劇の発端が廃鉱になったと思われていたチャイナ・ピットの採鉱再開を計画し、そしてそれに見合う利益をもたらす鉱石を発見した鉱山会社に全てが集約されるだろう。

パンドラの箱を開けてしまった鉱山会社の愚行の産物。しかし同じ鉱山会社に勤める身としてはこの鉱山会社には同情を禁じ得ない。
世界各国の有望な鉱山がどんどん採掘権を取られ、寡占化している事に危機感を覚えるからだ。そして資金力のない鉱山会社にとって新たな鉱山開発は想定よりも鉱石が出なかった場合は、莫大な借金を抱えることになり、倒産の憂き目に遭ってしまう。私の勤める会社もそれまでは採算性の悪さから処分していた低品位の鉱石からメタルを取り出していることを考えると、他人事とは思えなくなってくる。

さて本書のテーマとして合言葉のように交わされるのは「神は残酷だ」のセリフ。
祈ることで奇跡を起こしたデイヴィッドは一方で神が全てを叶える訳ではないことを悟る。彼は神と繋がることで逆に神の意志を知り、神が誰かを助けるために犠牲を強いることを知る。全ての救いは等価交換であることを知るのだ。

彼は生き残りの仲間の最年少だが、神と繋がる能力のためにリーダーシップを発揮する。しかしその代償として最も犠牲を強いられた者でもある。

デイヴィッドはその都度神に問いかける。なぜそんなことを自分に強いるのかと。

そして小説家マリンヴェルは自身がデイヴィッドと同様に特別な存在であると悟りながらもその運命に逆らおうとする。それは自身にとってハッピーエンドにならないことが朧気に見えているからだ。

全ては神が仕組んだものだったのか。それは正直判らない。
ただ最後デスペレーションを去るデイヴィッドが手にした早退許可証の紙片は彼がオハイオの学校で去年の秋に木に打ち込んだ釘に突き刺したものだ。なぜそれがマリンヴェルの手に渡ったのかは判らない。
しかしそこにはマリンヴェルの、〈神は愛なり〉という聖書の言葉を信じて生きていけという激励のメッセージが添えられていた。
残酷な神の仕打ちによってその人生の幕を閉じた小説家がどうやってこの少年に紙片を渡したのかは判らないが、最後に彼が手向けたのは神を信じろという言葉だったのは深い。

実は鉱山業と神は縁が深い。
山には山の神がいると信じられ、今なお山の神に家族と事業の無事を祈る儀式が行われている。それは採掘作業が死と隣り合わせであり、一度崩れた岩盤から閉じ込められた人々を救い出すのが実に困難であるからだ。
そういう意味で云えばタックは邪な山の神なのではないか。鉱石という自然の物を山の身を削って掘り出そうとする人間たちに呪いをかける邪神、それがキャン・タックであったのではないだろうか。そんな不遜な人間から山を護るために彼はコヨーテやハゲタカ、隠者蜘蛛やガラガラ蛇、クーガーを操り、締め出そうと威嚇し、また時に殺戮を行ったのではないだろうか。つまり人間が踏み込んではいけなかった領域こそがキャン・タックの住処だったように思える。そこが〈絶望〉という名の町なのは皮肉というよりも必然であったように思える。

今思えば色んな暗喩に満ちた作品だったように思える。
環境破壊の元凶とも云われる鉱山業の人々に鉄槌を下すキャン・タックは山の神の怒りであるように思える。

しかし正直この最後の結末を含めて私は本書を十分理解できなかったように思える。さて次は本書の姉妹編であるリチャード・バックマン名義の『レギュレイターズ』を読んで本書で腑に落ちなかった部分を補完してみよう。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

デスペレーションの感想

『神は残酷だ』成る程・・・。壮大なスケールで映画でも観ているような緊迫感。ラストも素晴らしい。リチャード・バックマン著の『レギュレイターズ』を購入しようと思う。

デスペレーションとレギュレイターズがリンクして面白さ倍増。こんな小説読んだ事ない。
お互い少年がキーパーソンになるが、解説の通りデスペレーションはラストに盛り上がり、レギュレイターズは初っぱなからアクション満載。二冊共非常に面白かった。

HUNTER×2
A4G4U3I8
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No.12:
(5pt)

なかなか読み進められません・・・怖くて('ー`)

大好き!とは何故か言えず、スティーブン・キングかぁ〜と、ボヤキつつ映画はほとんど観ています。
あー面白かった!とも言うことも少なく、ちょっとどんよりした気持ちになったりしつつ、やっぱり次も観てしまいます。

キングの本を読むのはこれが初めてなのですが、やはりサクサクとは読み進めず、かといって読まずにもいられずという感じです。

理由は、「怖いし、読んでいてトホホな気分になる」「でも何とかなるんじゃないかという希望も感じられる」から。

そこがこの作者の魅力であり手腕なのでしょう。

まだまだ途中ですが、男の子(デヴィッド)が良くて、灯火のように先を照らしてくれているのが救いです。
私は荒木飛呂彦先生の「ジョジョの奇妙な冒険」が好きなのですが、そのストーン・オーシャンというシリーズのエンポリオ君とデヴィッドが重なります。

どーしようもない状況の中でも失われない希望、という点で両者は似ていて、そんなところが自分がキングに魅かれる理由かも、と読みながら思いました。
デスペレーションAmazon書評・レビュー:デスペレーションより
4105019031
No.11:
(4pt)

いや~~~怖かった!!!

ハイウエーを妹の車を移動させるために運転していた夫婦が、保安官に停止を命じられる。
後ろのバンパーがなくなっていたからなのだが・・
なんと、車の中から(おそらく妹のものである)袋に入った大麻が見つかった!!
パトカーの後部座席に乗せられた夫婦が向かった街、その名も「デスペレーション」で待ち受ける恐怖。。。。
スティーブン・キングの空想ミステリー!!!
一気に読んでしまいました。

デスペレーションの鉱山の秘密。。。
ちょっと「放射能汚染??」なんてことも
思ってしまいました。
デスペレーション〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:デスペレーション〈上〉 (新潮文庫)より
4102193235
No.10:
(5pt)

理不尽な目にあったときこそ、読んで欲しい。

皆さん書いていますが、テーマは「神は残酷か?」です。
私は、肉親を理不尽に亡くした直後にこの小説に出会いました。
あの子が死ななければならなかったのはなぜなの、あの子が何かしたの、私が何かしたの?
怒りしかなかった私がこの本とであったのも、David が友人の怪我をきっかけに変わったことと何か似ている気がします。

単純にバイオレンスホラーとしても楽しめますし、Davidの迷い、怒り、そして祈りを自分に重ねるにも良書です。
最後のオチは日本語で読んでいるとわからなかったのですが、TV版をみて目からうろこでした("John"という名前がヒントです)。

ぜひ、オチのからくりも見つけ出してみてください。

God is Love.
デスペレーションAmazon書評・レビュー:デスペレーションより
4105019031
No.9:
(4pt)

神は残酷なのか?

楽しい旅行に出かけたはずの一家4人が、警官に停車を命じられ、砂漠のなかの田舎町に連れて行かれます。そこから始まる恐怖の物語、表紙の人形(持ち主の幼い娘は真っ先に殺されてしまいます)で怖さを感じた人は、読むのを止めたほうがよいと思います。町の人たちは1人残らず殺されますし、コヨーテ、ガラガラヘビ、サソリ、毒グモなど、怖いものがてんこ盛りです。ネタばれは避けますが、小説が書けなくなって大型バイクで旅に出た中年作家は、キングの分身のような気がします。ただし、神が出てくる話は、無信心者が多い日本では少し理解しにくいかも知れません。、
デスペレーションAmazon書評・レビュー:デスペレーションより
4105019031
No.8:
(4pt)

アメリカの連綿と連なる暴力の歴史をホラー化したかのような力作

アメリカの地方都市を訪れていた夫婦が警官に捕まり、その警官がやがて・・・というお話。
ここでキングが描いているのはアメリカの特に南部によくあったという暴力の歴史、小説で言うとフラナリー・オコナーやジム・トンプスンが描いた暴力の歴史を自己の中で独自にホラーとして咀嚼して描いたのではないかと思いました。元々アメリカという国がネイティヴから土地を略奪して出来た国で暴力で勝ち取った歴史をみれば判る通り、現在でも学校等で銃撃戦が行われたりとその暴力の病理に迫る為に本書を書いたのではないか、と思いましたがどうでしょうか。
世の中は金かファックか暴力で動いていると思いますが、偏見かもしれませんが特にアメリカではその傾向が他の国や地域よりも強いイメージがあり、テレビ等の暴力描写の規制は強いのに戦争ばかりしているというアメリカという国の総体を捉えようとしたのが本書の試みではないかと感じました。姉妹編の「レギュレイターズ」と違いこちらはキング名義のせいか神や信仰の問題にも触れているし、いかにもキングらしい作品だと思いました。
この時点でもかなりの数のホラーを書いているのに未だにホラーにこだわりその領域を広げようとしている所は偉大だと思います。上記のような深読みは別にしても単なるホラーとしても面白く読めるので、機会があったらご一読えおお勧めしておきます。
デスペレーションAmazon書評・レビュー:デスペレーションより
4105019031



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