ハートシェイプト・ボックス



    ※タグの編集はログイン後行えます

    ※以下のグループに登録されています。


    【この小説が収録されている参考書籍】
    オスダメ平均点

    7.00pt (10max) / 1件

    7.00pt (10max) / 1件

    Amazon平均点

    4.60pt ( 5max) / 5件

    みんなの オススメpt
      自由に投票してください!!
    0pt
    サイト内ランク []C総合:1304位
    ミステリ成分 []
      この作品はミステリ?
      自由に投票してください!!

    0.00pt

    45.00pt

    0.00pt

    62.00pt

    ←非ミステリ

    ミステリ→

    ↑現実的

    ↓幻想的

    初公開日(参考)2007年12月
    分類

    長編小説

    閲覧回数1,401回
    お気に入りにされた回数0
    読書済みに登録された回数1

    ■このページのURL

    ■報告関係
    ※気になる点がありましたらお知らせください。

    ハートシェイプト・ボックス (小学館文庫)

    2007年12月04日 ハートシェイプト・ボックス (小学館文庫)

    ロック界のかつての大スター、ジュード・コインには異様なるものの蒐集癖があった。ある日ネット・オークションで落とした「幽霊の取り憑いたスーツ」が届くと、怪事が起き始めた。現れた老人の幽霊は、かつてジュードが捨てた女の義父だという。復讐に燃える怨霊から逃れるジュードと愛人の逃避行が始まる…。むかしの女がいた街へひた走る恐怖に満ちた旅は、これまで生きた人生に対峙する旅路でもある。デビュー作で、ブラム・ストーカー賞、英国幻想文学大賞ほかを受賞した、アメリカン・モダンホラーの新たな才能が、小学館文庫で刊行開始。(「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

    ハートシェイプト・ボックスの総合評価:8.83/10点レビュー 6件。Cランク


    ■スポンサードリンク


    サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

    新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (7pt)

    饒舌さは父よりもクーンツ似?

    絶賛を持って迎えられた短編集『20世紀の幽霊たち』の作者ジョー・ヒルの初の長編は幽霊の復讐譚を扱ったホラーだ。

    主人公は54歳のロックスター、ジュード・コイン。彼は厳格なる父親からの反発からロックスターになり、そして成功を収めて、今では半隠居状態だ。それはバンドメンバー3人のうち、2人を事故と病気で亡くしたことが彼から音楽活動の火を絶やしてしまったようだ。そして娘ほど歳の離れたゴスロリ系のファンを捕まえては同棲生活を送るという生活を送っている。
    そしてジュードが今付き合っている女性がジョージアことメアリベス・キンブル。ストリッパーの身からジュードに拾われ、同棲している。この2人に降りかかる災厄が、過去ジュードの付き合った女フロリダことアンナの姉から送られてきた霊能力者だった義父の幽霊が取り憑いたスーツから始まる。

    家族を間接的に失った遺族の復讐が動機と思われた怪異はしかし意外なバック・ストーリーが後半明かされる。
    ジュードとジョージアの幽霊との闘いという図式で展開する物語はその実、別れた元彼女フロリダことアンナ・マクダーモットの物語でもあることに気付かされる。

    またもう1つ、この小説が内包しているのはロックスターという特異な職業を持ち、人とは違った半ば自堕落な生活を送った男の回想だ。
    父親に反発する事で家を飛び出し、ロックスターとして名を馳せ、生活に困らない金を既に稼ぎ、4年も新曲を発表していないのに未だにコンサートやTV出演の依頼が来る、人間として成功したという現状に翳を指すのは、自分の前を去っていった、あるいは自分から去っていった人々に対する喪失感だ。
    自分のコレクションの1つ、スナッフ・フィルムを観たことで離婚した元妻が持っていた、自分勝手な行動に不平不満を云うことなく常に許してくれていたその包容力。
    アメリカ全土のほか、世界をライヴツアーで一緒に駆け巡った今は亡き元バンド仲間。
    とっかえひっかえベッドに誘ったグルーピーたち。
    その中で数ヶ月間一緒に生活を共にした過去の女たち。
    ずっと質問ばかりし、別れた後、浴槽の中で手首を切って死んだフロリダ。
    恐らくこれらはロックスターには付き物のゴシップの数々だろう。人の数倍もの早いスピードで文字通り人生を駆け抜けるが如く、生きるスター達の心情とはいかなるものか。
    来る者拒まず、去る者追わず。
    ジュードは今まで護るということを求められるとその結果を考えず、なんでも受け入れすぎてきたのではないかと述懐する。一般人には想像できないスターの心境に対するこの心理描写は1つの解答例のようだ。

    『20世紀の幽霊たち』の感想にも書いたが、読んでいる間、クーンツ作品を読んでいる既視感を感じた。主人公の心情と信条をくどいまでに細かく叙述する語り口、登場人物が幼少の頃に親から受けた迫害というトラウマ、そして何よりも物語のキーを握る存在が犬という共通性。
    父キングの作品は読んだ事が無いので一概に比べられないが、クーンツの影響がそこここに見られた。

    特に幼児虐待、家庭内暴力、近親相姦、親の死に立ち会わない子供ら・・・。
    本書に挙げられる現代社会が抱える家族問題の問題はクーンツが最近よく取り上げる題材だ。そしてどの登場人物に関係するのは父親という存在に対する畏怖。これもクーンツが昔からトラウマの如く語り続けてきたテーマだ。
    特にヒルの父親がキングである事実から類推するとこの登場人物たちが抱く父親への思いに注目していたが、意外にもジュードが幼い頃に抱いた父という障壁を乗越える手段はなんとも直接的であり、肉体的であった。二度と帰らないと決めた実家に戻って対峙した父親という精神的な壁の克服という側面をあえて避けたのか、それとも物語の都合上、ああいう形になってしまったのか解らないが、期待していただけにあの決着のつけ方は残念だった。

    そして主人公に脅威をもたらす幽霊クラドックはクーンツが生み出す、主人公に絶望的なまでの無力感を感じさせる悪魔のような怪物ほど怖くは無い。共通するのは異常なまでの執着心と蛇が蛙をいたぶるが如き醜悪さ。それでも悪役の造型にはやはりクーンツに一日の長がある。
    まあ、デビュー仕立ての作家をホラーの大御所クーンツと比べる事自体が過大な要求なのだろうけれど。

    また本書の献辞は父親に捧げられている。アメリカ現代文学を代表する作家となった父キングを『20世紀の幽霊たち』を著す事でその呪縛から逃れ、改めて父親に向き合い、初の長編作品を世に、父に届ける事が出来たという自負が窺える。
    とはいえ、私の感想としてはいささか饒舌すぎ、あと一滴のエモーションが欲しかったところだ。

    本書は娘の自殺の逆恨みから生じた幽霊の復讐譚と、ホラーとしてはオーソドックスな題材だったが、『20世紀の幽霊たち』で見せたようにこの作家の持ち味は物語のヴァリエーションが非常に豊かなところだ。

    その最たる特徴を活かして今後この作家でしか書けない長編ホラーが現れることを強く期待したい。


    ▼以下、ネタバレ感想

    ※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[]ログインはこちら

    Tetchy
    WHOKS60S
    新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

    ※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
    未読の方はご注意ください

    No.5:
    (4pt)

    書店ではもう入手できない、佳作。特にキングのファンに。

    「義父の幽霊を買ってくれる人を探しています」というネットオークションの書き込みを見て買ってしまったことで、ミュージシャンの男性が巻き込まれる奇妙な出来事。やがてその背景にあるものが明らかになっていく…という物語。

    出だしは、語り口がなんだかぎこちない。でも、徐々に物語が動きはじめ、引き込む力を増していく。荒削りな料理でも、美味しければ、食べきると、良い満足感が残るが、それに近い読後感。ホラーといわれればホラーだが、旅の物語でもあり、サスペンスの要素も十分にある。

    残念なのはこの本が、今や書店では見当たらず、中古をネットで入手するしかないことだ。一つ種明かしをすれば、作者の父親はスティーブン・キング。キングの作品をあれこれ読むうちにこの本の存在を知り、気になって入手して読んだ。特にキングのファンなら、読む価値は充分にあると思った。
    ハートシェイプト・ボックス (小学館文庫)Amazon書評・レビュー:ハートシェイプト・ボックス (小学館文庫)より
    4094081305
    No.4:
    (5pt)

    圧倒的疾走感を持って迫るモダンホラーの快作。

    恐ろしい才能があったものだ。
     もちろん、父親がスティーヴン・キングであるというのは彼の評価を色眼鏡で見てしまう読者を増やすことになる。
     ニルヴァーナのサードアルバム『IN UTERO』のM3をタイトルに、かつてのロックスターが恐怖に見舞われる。迷い込んでしまった恐怖世界から彼は抜け出すことができるのか。
     いちいち90年代ロックの小ネタが挟まれていくところがニクイ。オルナタ/グランジ。ノイズロック。ホラーはホラーだが、熱くロックしまくっているホラー小説など滅多にない(映画では『ファントム・オブ・パラダイス』があった)。
     恐怖との対峙の中で主人公が次第に人間らしさを取り戻していく、というドラマも魅力的である。こういった展開は父親からの影響も見て取れる。『ミザリー』や『ペット・セメタリー』を執筆していた頃のキングに似ている。荒削りだが勢いがあり、有無を言わさぬ説得力で読者を引き込んでいた、あの頃に。
     日常にそっと差し込まれる恐怖描写と、爆発するように発生する怪異。静と動の対比が見事だ。
    ハートシェイプト・ボックス (小学館文庫)Amazon書評・レビュー:ハートシェイプト・ボックス (小学館文庫)より
    4094081305
    No.3:
    (5pt)

    若き日のキング

    荒削りなキング。 若いころのキングの作品を彷彿とさせますね。 今後の作品が楽しみです。
    ハートシェイプト・ボックス (小学館文庫)Amazon書評・レビュー:ハートシェイプト・ボックス (小学館文庫)より
    4094081305
    No.2:
    (5pt)

    怖すぎる!

    カヴァーが変わって、超コワい(魅力的でもある)絵がカヴァーになりました。 で、二冊目を買いました。 って、個人的な話は置いといて、本題です。 モダン・ホラーって怖くない印象があるじゃないですか。 そんなノリで本書を読んだんですよ。 しかし、主人公が手を切るあたりから怖くなってきて…… 今まで読んだ本の中で突出して優れた文章力をもっており、恐怖や戦慄を詩的に表していて、最高の小説でした。 エンディングも素晴らしい! 短編集も有名になったことですし、第二長篇をじっくり待ちましょう。
    ハートシェイプト・ボックス (小学館文庫)Amazon書評・レビュー:ハートシェイプト・ボックス (小学館文庫)より
    4094081305
    No.1:
    (4pt)

    ロック・スピリット&ゴースト・ストーリーの絶妙のコラボレーション。

    2010年に映画化が決定しているアメリカ・モダンホラー界の新鋭ヒルの長編第一作です。彼の父はホラーの巨匠スティーヴン・キングなのですが、その事実は隠されていて、現在の成功は親の七光りではなく純粋に実力の結果だという事です。本書は著者が幼少の頃から愛好しているロック・ミュージックに触発されて書かれた物語です。主人公ジュード・コインはロック界の往年の大スターという設定で、彼の2頭の飼い犬アンガスとボンは、ロックバンドAC/DCのメンバーの名前から取られています。そして本書の題名ハートシェイプト・ボックスは、ロックバンド・ニルヴァーナの書いた曲名で、暗く陰鬱な死を歌った楽曲とあって著者の選択は的を射ているといえましょう。物語は非常に現代的で、インターネット・オークションで落札した‘幽霊に憑かれたスーツ’が災厄を運んできます。怪しい老人クラドックの幽霊が出没し、彼はジュードが昔捨てた後に自殺した女アンナの義父で、娘の復讐を果たそうとしているらしい。ジュードは今一緒に暮らしている女‘ジョージア’を連れて、スーツの出品者でアンナの姉の家フロリダ州へ向けて旅立った。
    ロックヒーロー・ジュードの愛情生活や幼い頃の父との確執が丹念に情感を込めて書かれている所為でしょうか、文庫本で600頁を超える大作となっていますが、私の考えではもう少し刈り込んで書いてくれれば良かったと思いました。邪悪なクラドックの幽霊は恐ろしい存在感十分ですが、動機の部分で若干疑問が残りました。クライマックス・シーンはグロテスク一歩手前で踏みとどまり、幻想的な印象で映像化に期待が持てます。最後は愛情に目覚めるジュードの姿が感動的で、読後感を爽やかにしてくれます。続いて刊行予定の高い評価を受けた著者のデビュー短編集も楽しみに待ちたいと思います。
    ハートシェイプト・ボックス (小学館文庫)Amazon書評・レビュー:ハートシェイプト・ボックス (小学館文庫)より
    4094081305



    その他、Amazon書評・レビューが 5件あります。
    Amazon書評・レビューを見る     


    スポンサードリンク