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(短編集)

夢の丘



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夢の丘の評価: 4.50/5点 レビュー 8件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.50pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全8件 1~8 1/1ページ
No.8:
(4pt)

痛ましき芸術家の肖像

一読忘れ難い『パンの大神』の作家なので又々凄まじい怪奇幻想の世界を期待したのですが全く違いました。意外、マッケン自身の内的道行を得意の幻想味を醸し出しつつ荒涼たる世界として描き切っています。風景描写が長々続く少し冗長な箇所もあってしんどく感じることもありますが、読み終わっての何とも言えない寂寥感は、目指す芸術がどのような分野であろうとそうした人々ならば彼の内的世界と自身のそれとを重ね合わすことが十分に可能と感ずるところから来るのだと思います。解説者が、いわゆる言う所の教養小説ではないと書いていますが読者が感じるままに別にどちらでもいいことだろうと思います。『芸術家の肖像』は世界中にあまたありますが不遇に終わったマッケンの一風変わった『肖像』御賞味あれ。
夢の丘 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:夢の丘 (創元推理文庫)より
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No.7:
(5pt)

夢の丘(The Hill od Dreams) とはどんな意味が

自分の夢の中に住んでいる”ルシアン”はいったい誰でなのか。その夢を追いかけ、陶然となり、そして長い時間を共に過ごしてきた。ルシアンを見ているのは、現実世界に翻弄される自分ではあっても、自分もルシアンの目で夢の世界にかたく結びついている。そのことの喜びを、マッケンは語っている。久しぶりに、小説らしい本を読んだ気がした。ヘンリミラーが魅かれるのも納得する。読書論はもう何度も読んだが、夢の丘は気が付かなかったので、もう一度読み返してみようと思う。話に筋がなく、事件があるわけでもなく、読みづらい小説である。でも、結局、小説を書くとは自分を語ることだと思う。
夢の丘 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:夢の丘 (創元推理文庫)より
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No.6:
(5pt)

出品者さん、アリガトウ!

てっきり新訳本かと思ったところが、まぁ驚き。
初発本、しかもキズひとつない商品でビックリしました。
よく残っていたものです。
本を大切にされておられる出品者さんの優しさが伝わり、感激です。
真心はお金持ちで売り買いできませんね。
有り難うございました。
本書は大切に保存します。
内容も素晴らしい!
嬉しいです。
夢の丘 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:夢の丘 (創元推理文庫)より
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No.5:
(3pt)

夢をみること

青年が、家庭の事情で学業をやめなければならなかったり、小説を書いてみてもうまくいかなかったりしながら、社会とのバランスをとっていくお話。

大きな夢を見るがゆえに社会とバランスをとっていくのはがっかりとした感情をいだくものなのだけれど、バランスをとるということは社会に潰されす生きぬくことだからそれは「進化」したということなのではないか?

生きていくために海で暮らさなければならなくなったり、手や足がなくなったり、羽が生えたり、進化した生き物たちはみな失意を感じていたのだろうか?
夢の丘 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:夢の丘 (創元推理文庫)より
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No.4:
(5pt)

自叙伝的な鬱々とした暗い幻想小説。

主人公ルシアンが現実よりも理想を優先させようとして折角の風光明媚な田舎からスモッグ漂う都会に出て來て挫折して行く物語。若くして都会に出、挫折する物語としては「フランダースの犬」に通じるものが有る。現実に囲まれた都市で美しい幻の風景を見続けていた偏屈で狷介なルシアンは、見方に依っては一種の狂人で、常識的な者からすれば取っつき難い事この上ない。
夢の丘―アーサー・マッケン作品集成〈4〉Amazon書評・レビュー:夢の丘―アーサー・マッケン作品集成〈4〉より
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No.3:
(4pt)

無職の青年

家々の窓の明かり。それは「だんらん」(一種のアルカディア)の象徴なのだ。
主人公ルシアンは、窓の明かりと自分の間に「大きな淵ができている」と感じる。自分はだんらんとは無縁な人間だ、という感覚。

この孤独感は現代社会に蔓延している。
無職の青年の事件報道に接するたびに、彼らは孤独なんだという気がする。

強迫観念に駆られたかのように、脇目も振らずスマホを操作しながら歩く人。よその人とぶつかりそうになっても、目を上げようとさえしない。
手にしている機器が“コミュニケーション”ツールとは、悪い冗談としか思えない。

精神の崩壊を防ぐために妄想が発生するのだと説明されることがあるが、コミュニケーションツール依存症は孤独に対する防衛機制に違いないと思えるほどだ。

ルシアンの魂の彷徨が幻想的に表現されている。訳文のキレが今一つな感じで読みやすくはないけれど、孤独に負けていく主人公の造形がみごと。

そして締めくくりの4行がいい。
映画「マルサの女2」で撃たれて倒れ、アルカディアを目に刻むチビ政の切なさを連想する。
同時に、知覚論としても衝撃的。
夢の丘 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:夢の丘 (創元推理文庫)より
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No.2:
(5pt)

思い出深い本

四十年近くも前になるが、まだ中学生のころ、、私の住む田舎町の小さな書店の一番上の棚に、牧神舎なる出版社から出た「アーサーマッケン作品集成」が並んでいた。函にあるおどろおどろしい惹起文句に私の胸は高鳴ったが、中学生のこづかいでは買いそろえる決心はつかなかった。唯一、この巻だけを買ったのは、江戸川乱歩がこれを激賞しているのを知っていたからである。
 成人して全冊躊躇なく買えるような金銭的余裕ができた時には出版社は消え、幻の本となっていた。それ以来、このシリーズは私の生涯の憧れであった。このような形で復刻してくれたことを本当に感謝したい。
 思い入れが強すぎるから、全巻を正しく評価することはできない。しかし、この一冊に限っては、手放しでほめても大丈夫だろう。これを、小説家志望の青年の挫折を、幼少期の思い出を幻想的に点綴させながらまとめた話、と言うと日本の湿っぽい私小説を思わせるが、マッケンははるかに知性的だし、思い出の部分もその感傷性までも客観的に写しえている。従って美しい。また、小説に限らず、何かに志し、自分の才能に絶望した経験のある人には、これは他人ごとではない感慨を与えてくれるものと思う(いや、私がまさにそうなんだよ)。
 これを読むと、彼の初期や晩年の(世間的な基準でいえば)くだらない怪奇小説にも、彼の執念みたいなものが感じられ、奥行きが増すことと思う。
夢の丘―アーサー・マッケン作品集成〈4〉Amazon書評・レビュー:夢の丘―アーサー・マッケン作品集成〈4〉より
480606680X
No.1:
(5pt)

世紀末、生成の森(高山宏)

マッケンの作品に拒否反応を示す面々も、この一作だけは傑作だと云って激賞するらしい。作者自身の分身とも読める若き文士ルシアンの遍歴を、心霊的ヴィジョンと俗悪な世間の様子とのコントラストの中に描いた半自伝的小説で、マッケンがスティヴンスン等の亜流から脱して、真に独彼自の文学的スタイルを築き上げたとも言われる作品である。かなり幻想的な雰囲気が強く、読後も「溶鉱炉の様な夕日」が頭に焼き付いて離れない、そんな感じの印象深い名作であるが、青春の文学として正に第一級である。幻視の傾向の強い文学青年達には是非読んで頂きたい。
 平井訳はこうした昔の都会人の目から見た夢幻の風景とよく似合う。巻末の解説もこの訳者ならでは。尚このレビューのタイトルは各巻ボックスの背表紙から。本書は創元推理文庫でも一度出たことがある。
夢の丘―アーサー・マッケン作品集成〈4〉Amazon書評・レビュー:夢の丘―アーサー・マッケン作品集成〈4〉より
480606680X

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