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英雄
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英雄の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点2.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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1年前に射殺された大手企業の創業者の南郷英雄。まだ犯人は見つかっておらず警察が事件を調べる中で、植松英美は自分が南郷英雄の非嫡出子であることを初めて知らされ、父がどんな人間だったのかを調べていくという展開。 英美が過去を調べていく中で、英雄の生き方や昔の人間関係が明らかになっていくとともに、戦後、オイルショック、バブルの時代がどんな時代だったのか、その時代描写や意地でも生き抜いて成功するという力強い生き方は読み応えがあった。 ただ、ミステリとしては中途半端だった。英美がただ英雄の過去を追っていただけで、何かの証拠を掴んだわけでもなく、たまたま犯人が罪を自白したというだけの話だったのが物足りなく感じた。 遺産を巡る親族の争いや、会社の粉飾決算、義母の過去のいやがらせ、やくざとの因縁など、ネタはたくさんあったので、社員から見た以外の英雄の姿も描いてほしかった。 | ||||
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真保裕一の新作のレビューである。私は、歴史小説好きゆえ、昨年、偶々、同じ作者の「真・慶安太平記」(講談社、2021年)を手に取り、その人物造形や物語の進め方にすっかり驚嘆し、大変感銘を受けて、レビューを書いた。本作はサスペンス作品であり、私は余りミステリーを読まないのであるが、昨年の余韻もあり、この新作を手に取った。 ミステリーなので、筋については、ほんの触りだけを書く。主人公の植松英美は、(卸売業と私は推察する)会社に勤務していて、平凡な、残業の毎日である。ある晩、警察の訪問を受け、実の父親が射殺されたことを知る。英美は、亡くなった母から、実の父親が、育ての父親とは別にいることを知らされていたが、その実の父親については名前も知らず、警察の訪問により、初めて名前を知ったのだった。射殺された父親は、とある上場企業を創業し、一代で会社を大きくした実業家であり、英美には、その遺産の遺留分を受け取る権利が生じた。警察によれば、実の父親が誰に射殺されたか、全く糸口が掴めていない。警察は、英美に対して、遺産の遺留分を請求することで、実の父親の家族や会社に近づき、犯人の手がかりを掴んでほしいと依頼する。英美はこれを受け入れ、実の父親の家族や会社関係者に会い、実の父親がどのような人物で、どのように生きたかを探っていく。 さて、作者は、この実の父親が、戦争直後の混乱期から、いかに生きたかを活写する。生き残り、さらに頭角を現すためには、自らの全てを仕事に投げうち、不法なことに手を染め、競合相手を蹴落とし、結婚相手を打算で選ぶ代わりに沢山の愛人を作り、容赦なく不出来な部下を切り捨てていくしかなかった。誰からも恨みを買うだろう。犯人になりうる人物はいくらでもいて、犯人像は全く絞れない。ミステリーとしての仕掛けは、大変優れていると言えるのだろう。 しかし、それよりも、私は、作者が、そのような、綺麗事では語れない、戦後というガムシャラな時代を、読者に提示したかったのではないかという気がしている(これについては、大変成功している)。そして衰退する現下の日本で働く読者に対して、そのようなガムシャラさを思い起こさせようとしているのかもしれない。しかし、現代の日本人に、ガムシャラなだけの創業者は訴えるものがあるだろうか。愛や哲学のある稲盛和夫氏のような創業者を、私たちは敬慕する時代に生きている。だから、登場人物やストーリー展開に、私は共感できなかった。 私は、ミステリーとしての出来・不出来の評価はわからないが、作者の戦後の時代の描き方が優れていると思う反面、登場人物に共感できないという思いから、この作品を「標準点」としての☆3つと評価した。これは、私の書いた48番目のレビューである。2022年9月19日読了。 | ||||
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