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抵抗都市
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抵抗都市の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.05pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全15件 1~15 1/1ページ
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2022年、文庫版のレビュー。 日露戦争に負けた日本の帝都東京(大正5年)を舞台にしたif小説(オルタナートヒストリーというらしい)。あり得た歴史。部署の異なる2人の警察官。身元不明の変死体事件を探るうちに浮かび上がる謀略の存在。露統監府、日本高等警察、憲兵隊、陸軍の思惑と使命が交錯していく怒涛の600頁。数日間のタイムリミットサスペンスでありミステリである1級の娯楽読み物。まずバディ感溢れる新堂と多和田、主役2人の警官魂。ヒーローなどではなく政治に左右されない一現場警官の矜持と佇まい。著者がこだわったのはあり得た歴史の中で一公務員を描くという挑戦。 ではなぜ現実の太平洋戦争終結後でなく日露戦争を題材としたのか。本作の延長にあるのは(第一次)世界大戦である。初めての世界規模の戦争。その「世界が激動する直前、端緒」における「官」は「個人」として何ができるか。作家としては自由に想像の翼を広げたい。負け戦と次なる嵐の予感が迫る狭間という手垢のついていない舞台を用意したい、ということは理解できる。葛藤する組織の中の男の決断と行動を描くことにこだわり、挑戦とした。「今の日本への問題意識を示すために、この舞台を選んだ」という著者の問題意識とは、いまこの国は、世界は激動直前の不安のさ中にあるぞ、ということだろう。この中で、大勢の死者の中に埋もれそうな「個人」の死をあくまで突き詰める姿勢は価値を持つのかという問い。 著者の筆致はさすがベテランというべきで陳腐な描写や心情吐露は排除されていて、かつ地理的、時間的感覚をありありと的確に綴っている。著者の第二次大戦三部作の主役たちや日本のハードボイルドものの探偵に共通する真摯さ。スーパーヒーローではない生身の人間の貫き方に痺れる。 やや食い足りない点は、十分に魅力的で懐深げなコルネーエフ大尉、多和田の娘ユキなど準主役の踏み込み方だが、同じ架空歴史線上の第2作「偽装同盟」でそこは深堀されると期待する。 | ||||
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綺麗、すぐ届く、興味が続く。 | ||||
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昭和初期の話なので、難しかった | ||||
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外交権 軍事権をロシアに奪われた日本。まるで現在の日本ではないかと思う。相手はアメリカだけど。 出来はいい。でも・・文庫本は400ページが限界。寝転んで読むと手がつかれるから・・・。 | ||||
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もし、日露戦争で、日本が負けていたら、?物語のプロットもさることながら、久しぶり、警官の血、戦争三部作の、佐々木譲が帰って来た❕ | ||||
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ロシアも理解できた。 | ||||
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冒頭、1891年に起こったロシア皇太子ニコライ暗殺未遂の大津事件の精緻な描写から始まり、場面がストンと変わる。東京に駐屯するコサック騎兵、「御大変」「クロパトキン通り」などの言葉に戸惑うが、そこで起こった殺人事件の捜査を行っていく所轄と警視庁の警察官、そしてこの事件に注目するロシア憲兵大尉。読み進むうちに日露戦争敗戦後の日本ということが次第に明らかとなって驚かされる。軍事、外交をロシアに委ね、統監府が存在する属国日本。そう、歴史改変SFの手法を駆使した著者得意の警察小説なのだ。 ありゃ! こうした設定どこかで読んだ気が、光瀬龍著『征東都督府』(1975年)だ。戊辰戦争に勝利した奥羽列藩同盟と旧幕府主体の日本政府が日清戦争で清国に敗北、大清国征東都督府の統治下におかれている。その歴史状況を作り出した歴史転換者たちと、是正しようとするタイム・パトロール員の闘いを描いた歴史改変SFの傑作だった。 さて本書だが基本は警察小説なので、ネタバレは避け興味の引く点を挙げておく。オイラ50年前、神田の中央大学に在学、舞台となった地域に土地勘がある。ニコライ堂が復活大聖堂となり、小川町交差点付近がロシア人街、その先に万世橋駅がある。ロシア化された街路と日本の街路の混在する都市。その描写によって町並みが浮かび上がってくるようだ。時は1916年、欧州大戦の真っ最中、開戦当初から日本はロシアとの二国同盟により二個師団を派兵、敗色濃いロシアの要請で第二次派兵を行おうとしている。それに反対する宮城前集会を巡り、和平派、同盟解消派、主権回復派などが入り乱れ、集会を暴動に転化させようと、ロシア統監銃撃暗殺、爆弾闘争が計画される。それにロシアの敗北によって主権回復を狙うポーランド人が暗躍。爆弾に関わった中央大学生は計画露見途中で爆死。 後は読んでのお楽しみだが、著者は現在を踏まえて歴史改変を行っている。日露戦争敗戦は大東亜戦争敗戦、統監府はGHQ、二国同盟は日米同盟、欧州派兵は自衛隊海外派兵を意図していることは間違いない。そこで是非第二部も書いて欲しい。1917年ロシア革命勃発。オイラなら派兵された日本軍はトロツキー赤軍と合流、日本を拠点としたコルチャーク提督の白衛軍と闘い、日本を解放するため中央アジアとシベリアから日本へ攻め下る(笑)。 | ||||
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著者インタビューによると「今の日本社会のひずみを語るのであれば、歴史改変という形がいいだろうと思って」 本作を書いたとの事であるが、ロシアが日本を統治し、天皇制も大日本帝国憲法も維持されていても、 外交権も軍事権もロシア側が握っているにも関わらず、二帝同盟と呼んでいるというのは、 戦後の日本を連想させる設定になっている。 さらに物語の中で、欧州の戦場のロシア側に日本の陸軍がさら追加で送られるという事になっていて、 最近の集団的自衛権に関することを連想させる展開にもなっている。 主人公の刑事は、万年筆の外商をやっていた人物が殺害された事件を捜査するのだが、 その人物が色々な所の情報提供者だったことが解り、捜査を進めるうちに、 日本には伝えられていないが、欧州でロシアがかなり苦戦していてポーランドやバルト三国も 独立を伺っているという将校や、日本で抵抗運動が起きてもロシアはこちらへ陸軍を 派遣する余裕が無いので、とりあえず騒乱を起こし、日本国内を戦場にすれば ロシアの属国であることから自立する方向になるのではとして、いろいろと計画している 勢力も出てくる。 主人公は日露戦争からの帰還兵という設定で、実際に大量の死者が出た戦地を体験しているので、 それらのことが正しいのかどうかよりも、自分の国が戦場になることを避けるために 捜査を続けていく。 これまで戦争関連の小説の設定といえば、外国で戦闘に巻き込まれるとか、加わるというものが 多かった印象があるが、本作では主人公が戦地で従軍して帰ってきた人物で、その時のことを今でもありありと 思い出すという設定は、やはり米国のイラクやアフガンでの事の報道や、シリアなどに関する 報道の影響が大きいのだろう。 | ||||
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佐々木譲は基本的にミステリーの書き手ではなく、冒険小説作家だと思っている。スケールの大きい国際冒険小説、第二次大戦もの、幕末もの、どこをとっても骨のある男気の感じられる小説ばかりだ。とりわけ男性読者が多いのではないかと思われる。 最近は警察小説作家という印象が前面に出ているように思うが、それにしたって謎解きミステリーからは距離を置いて、現代、そして現実というところの素材を多く持ち出して、警官に血と体温を与えたような捜査の面を浮き彫りにしてゆくタイプの、いわば人間の生き様重視、それでいてスーパーではない庶民の、たった一つの生き様の重さを測っているようなところがある。 だから小説に血が通う。男女のロマンややわな描写をあまり得意とせず、どちらかと言えば無骨で真っ正直な庶民性のある主人公を持ってくるか、とことん英雄となるべき魂を持ってくるかのどちらかだろう。 本書は、その前者、無骨で真っ正直な帝都東京の巡査を主人公にして描いた、歴史改変捜査小説である。この作品世界では、なんと日本は日露戦争に負け、ロシアに統治権を委ねている。東京の通りの名前はロシアの有名人の名を冠され、天皇制は保たれているものの、警察権力にまで統治者であるロシアの監視を免れられない、これに逆らえば日本そのものが失われてしまうという極めて危うい亡国の状況の下に、たった一つの殺人事件が、国家を揺るがす陰謀の導火線に火を点けることになる。 新堂と多和田という二人の警察官が、大きなスケールの国際的謀略を、世界大戦の暗雲が押し寄せる時代の下で、日露戦争敗北後の帝都という舞台の上で活躍する物語なのである。こんな難路をなぜこの作家は歩むのだろう。著者自身が答えている。「今の日本への問題意識を示すために、この舞台を選んだ」と。 そう捉えると現代の日本が日露戦争ならぬ太平洋戦争という名の日米戦争に負けてアメリカの軍隊を受け入れ、準じているその姿をこの小説の背景に感じさせないわけではない。より過激なより古い時代に材を置きつつ、こうしたシミュレーション・ノヴェルのような状況下で血の通う刑事たちを生かす離れ業を、まずは考えてくれる作家、というだけで少し嬉しい。そして、その試みの意思を作品として結実させてくれることで、なお心強い。 前半は地道な捜査と時代状況の複雑さに圧倒されるが、刑事たちの有能さが国家的危機を救う鍵となり、彼ら自身も危険に身を曝す緊張状態の後半に入るにつれ、スリルとアクションとの連続、その中で読み解いてゆく真実への迷路、等々、古き時代の冒険小説を思い起こさせてくれそうだ。 現在のオートメーション感覚での面白さのサイドではなく、冒険小説の伝統を重んじた重厚かつリーズナブルな背景設定と、その暗さや重さにもめげぬ直球勝負の男たち、といった無骨で古臭いエンターテインメント。セピア色の懐かしさ。そして現代の冒険小説健在を感じさせてくれる作家の、この方向性こそがぼくには何より嬉しい一冊なのであった。 | ||||
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現実とは異なる歴史を歩んだ世界を描く小説というのは数多くありますが、日本においてはそのほとんどが 「大東亜戦争で日本が勝利したら」「日本がアメリカ以外の国(ほぼソ連)に占領されたら」という二つの パターンに分けられます。 そんな中でで本作のIFとは「日露戦争で日本が敗北したら」です。 ロシア帝国の統治下になった日本。正直最初は「そんな荒唐無稽な」と思っていたんですが、実際に読み進めると 驚くほどのリアルな世界の描写に驚かされました。神の視点というものが一切存在せず、主人公の目線で 物語が語られているおかげでもあるんでしょうね。 | ||||
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日露戦争で日本が負けたらという仮定の設定の大正時代。 東京で起きた殺人事件を追う刑事が、ロシア統治の下で捜査を続ける。 著者のこれまでの作品からしたらロシアを絡めてくるのはわかるのだが、あえて歴史を改変した世界での描写が作者の意図として伝わっているのかは疑問が残る。 これが第二次世界大戦後のアメリカ統治の舞台なら、歴史とは違っても理解しやすいと思われるが、ロシアが後ろ盾とした社会は読者も混乱してしまう。 著者らしい北海道が舞台でもないのも違和感。 ミステリーとしては先が気になり読ませるが、最終的な落ちつきのなさは読了後も残ってしまう。 | ||||
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日本がロシアの占領下にあるとの想定が斬新。反ロ派、親ロ派、日本軍、ロシア軍の間で、民族主義も織り交ぜた複雑な主導権争いが繰り広げられる。事件の展開地域が東京都心から文京区にかけてで、まるで映画を見ているように情景が目に浮かぶ。主役の刑事が、外連味なく、プロの仕事に徹しているのが小気味よい。 | ||||
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日露戦争に「負けた」後の大正5年の東京が舞台。ロシア統治下の東京という虚構の世界ですが、歴史的背景の作り込みや冒頭の地図などから、まるで虚実取り混ぜて語られるような感覚に陥ります。 物語は、男の変死体が発見され、警視庁の新堂と西神田署の多和田のコンビの捜査から始まります。地道な捜査は全編緊張感に満ち、ここは正に警察小説の王道です。一方、ロシア統括府の大尉や反体制を取り締まる高等警察も登場し、反露を巡る軍部や学生運動も書き込まれ、きっちりとこの物語の世界観が出来上がっています。 | ||||
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いうことなく面白い。 こうなったかもしれない世界、東京を舞台にしたミステリー | ||||
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"IF小説(オルタネート・ヒストリー)"と言えば、フィリップ・K・ディックの「高い城の男」、我が国では、矢作俊彦の「あ・じゃ・ぱん」を読み逃すわけにはいきません。 今回、「抵抗都市」(佐々木譲 集英社)を一気に読みました。佐々木譲を読むのは、2017/7月の「真夏の雷管」以来になります。 日露戦争に<負けた>日本。大正5年、ロシア統治下の東京で、身元不明の変死体が発見されます。警視庁刑事課の特務巡査・新堂は、西神田署の巡査部長・多和田と共に捜査を開始します。日本国内における反露活動の情報収集と摘発を任務とする二つの組織、警視総監直属の高等警察とロシア統監府保安課の介入を受けることになります。身元不明の変死体は誰?何故、殺害されたのか?そして、その死体は。。。一体何を「この国」にもたらそうとするのか? ミステリ的興味に加えて、作品は<首都・東京>の神田界隈を改変しています。調査と稀な想像力を駆使して、そのエリアを「再構築」しているのだと思います。物語は「滋賀県」で起きたある有名な「事件」に始まり、そして日比谷交差点から二つの橋までの直線道路がこの「歴史改変小説」の屋台骨を支えています。世界、謀略、裏切り、「この国」、政情不安。今回、その物語の詳細を語ることは控えたいと思います。 作者は、多くの傑作群を通してこれまでにも研ぎ澄まされてきたテーマ、「戦争に纏わる歴史」、「東京」、「警官の血」、「ロシア」について、この国の歴史を改変してまでも、より重層的に、より複合的に追求しようとしています。そういう意味では、作家の<集大成>と言っても過言ではないと思います。 また、特務巡査・新堂は、著者による幾多の警察官の直系でもあります。(時代を鑑みれば、新堂は「暴雪圏」の川久保、北海道道警・津久井、あるいは「警官のXX」で描かれた警官たちのオリジンと言った方がいいのかもしれません)「警官」としての任務を全うすることが、一人の人間として、そして警官としての揺るぎない「信念」、「矜恃」なのだということを静かに表出させます。それは特に、前半の終盤、新堂とロシア・コルネーエフ大尉との会話の中に伺い知ることができます。 唐突ですが、先頃、東京都美術館にてマネの「フォリー=ベルジェールのバー」という絵画を鑑賞しました。ミュージック・ホールのバー、バー・カウンターのバーメイドの大写し。バー・カウンターの鏡には、ショーの様子が映され、曲芸師の足が見え、ショーの観客たちがこの絵画の「鑑賞者」を見つめ、バーメイドは角度的にいるはずのない男を鏡の中で見つめています。絵画と言う「虚構」の中に存在するもう一つの「虚構」。それは、あったかもしれない「歴史」の中で描かれた「虚構」と似た構造を持っていますね。小説という名の「虚構」の中で描かれた「抵抗都市」。それは、反転して、今ここにある「真実」をあぶりだし、精いっぱいのリアリティを見せつけているのではないでしょうか?そんなことを思ったりもしました。 ロシアによる「二帝同盟」と第二次世界大戦後、敗戦後のこの国の在り様は勿論異なります。しかし、バー・カウンターの鏡に映るショーの喧騒は、実は同じものなのかもしれません。 傑作だと思います。 | ||||
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