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騎士団長殺し



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騎士団長殺しの評価: 3.46/5点 レビュー 721件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.46pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全407件 341~360 18/21ページ
No.67:
(4pt)

遷ろうデタッチメントとコミットメント

長編の村上春樹作品はすべて読んだことがある者によるレビュー。村上作品を語る上で重要なキーワードとして「デタッチメント(関わりのなさ)」と「コミットメント(関わり)」がしばしば挙げられるが、このレビューも例に漏れずそれらの枠組みの中で村上作品の変遷をたどっていく。
 デタッチメントを背景としていた時期(つまりデビュー作『風の歌を聴け』から『ねじまき鳥クロニクル』まで)の村上作品の人の心を惹きつける力は素晴らしかったように思う。皮肉にも逆説的ではあるが、村上氏はデタッチメントというスタイルによってまさに人々にコミットしていたのである。
 ところが1997年、地下鉄サリン事件を題材としたノンフィクション作品『アンダーグラウンド』、1999年その続編『約束された場所で』を村上氏は執筆し、その2作品を境に村上作品のバックグランドはデタッチメントからコミットメントへと移行していく。
 その流れの最先端、つまりコミットメントを全面に押し出して執筆した作品が2009年の『1Q84』であったように思う。しかしそれはお世辞にも良質な作品とは言い難いものだった。エンターテイメント性という観点からすれば、あれはただただ長大で終始盛り上がりに欠ける物語だったように感じた。
 そして村上氏も何か感じるところはあったのだろうか。コミットメントからデタッチメントへの揺り戻しとして本作品『騎士団長殺し』を執筆したように思う。それを象徴するかのように、文体は三人称現在形から一人称過去形へと回帰している。そして人の心を惹きつけ、ぐいぐいと読まさせる力も部分的にではあるが(特に物語終盤)取り戻しているように感じた。
 人々が日々変化していくように、村上氏も、村上氏の作品に対するスタンスも刻々と変化していく。彼はデタッチメントとコミットメントの狭間にどのような着地点を見出すのか。また今後人々の心を惹きつける力をさらに取り戻していけるのか。その予兆は本作品から十分に感じ取ることができたように思う。コミットメント以後「喪失と回復」は村上作品の一つのテーマであるように思うが、今それを彼自身が創作活動を通じて体験しているのかもしれない。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.66:
(4pt)

Amazonは右翼思想の書き込みが目につく

Amazonもそろそろレビューではない思想による書き込みに対処したほうがよいと思います。
作家の創作の成熟のシフトと言いますか、「多崎つくる」、「女のいない〜」を含めたまたひとつ移行した時期の作品だと思いました。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.65:
(5pt)

人は分かり合える人としか分かり合えない

なので、つまらなく感じ人はそれでいいと思います。「テレビ見ないよ自慢」みたいな、「俺、村上春樹つまらないよ」自慢というか、村上春樹嫌いっていう「俺、かっこいい」的な人にはつまらない作品だと思います。だって、つまらないって目的でよんでいるのだから。

20年以上彼の作品を読んできましたが、とても面白く読みました。彼はまだ現役なので、彼の作品を年代別に並べて、初期とか中期とか後期というのにはまだ早いと思いますが、後期村上春樹作品の中では代表作になるのではないでしょうか?とても壮大で、かつごく個人的な物語です。楽しめる人は、十分すぎるくらい楽しめると思います。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.64:
(5pt)

ひとつの楽しみ方として

村上春樹は長編と長編の間に短編を書きます。そして、その短編は次の長編へとつながっています。それがいわゆるメタファーになっていたりします。今回の直前の短編は"女のいない男たち"で、騎士団長殺しも女のいない男たちの話だと言ってもよいと思います。その流れで、この本を読むとこの結末と彼のイデアというものの感じがより感じられると思います。

読書はパーソナルな体験なので、好きな順で好きなものだけを読んで楽しむのもいいですが、彼の作品順に読んでその流れを楽しむのを一つの楽しみ方だと思います。

村上春樹は長編だけでなく、短編を含めて執筆順に読むことに意味がある作家な気がしています。
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.63:
(4pt)

おそらくは長大なる前日譚

作品の評価は諸氏の通り。
過去作に通じる雰囲気があってファンは楽しめるが、薄味でマンネリともいえる。

ただしこれたぶん前日譚ですよ。
本編は1巻冒頭の顔のない男との再会から始まる進行形の物語では?
村上春樹の長編って回想の物語はノルウェイくらいで、大抵は進行形の話でしょ。
そして上下巻ではなく1部、2部という表記。
そう考えると2部の最後の最後にとってつけたように3.11に触れているのも納得。
ここから村上春樹の3.11以降の物語が語られるのかもしれません。
そうなると3部どころか4部5部もありえる。

全部憶測ですが。
それにしても70近くで1000ページを書き上げる村上氏の衰えることない創作意欲には頭が下がる。
僕の生きている間に彼を超える日本人文豪は出ないだろうから、亡くなる前にできるだけ多くの作品を読みたいですね。
これが遺作になる可能性だってあるんだから。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.62:
(5pt)

急激に1マス進む

3マス目から物語が始まり、4マス戻って1マスずつ進む。何マス進んだか分からないほど、停滞した歩みから一転して、急激に1マス進む。そんな印象でした。
気づいた頃には自分がどこにいるのかよく分からなくなって、振り返ってみると、その停滞した歩みこそが村上文学のすごさなんだなと思っています。丁寧すぎる描写がくどくない。不思議と物語の中枢になっている。
時間軸が二つにわかれず、一つの場で物語が進行していくこともまた、そう感じさせているのかもしれません。
多分、国語の読み取りのように文章を要約して箇条書きにしたら事件らしい事件は10もない。それだけを取り出して章立てすると、おそろしく退屈そうな物語になる。要所要所で何が起こっているかは明確なのに、停滞した(あるいは一つの箇所をぐるぐると回るような)歩みが、それを霧でつつみ、価値付け、引き立たせている。
今までの村上作品ではあまり感じなかったことですが、特に個人的に不思議な体験だったのが停滞した歩みの中で、漫画の集中線のようにぎゅうっと惹き付けられる単語なり言い回しがあったことです。井戸や青山あたりの道路など今までの作品に登場したものだけではなく、なぜか一部分に惹き付けられた体験をしました。今までにはなかったことです。

きっと羊男もまたイデアなんだろうなあ。イデアとは抽象的な観念というくらいの意味だと思いますが、騎士団長がイデアたる、その主体は誰なんだろう。羊男はぼくだった。
それとも空中に漂う無限の意識みたいな意味なんだろうか。

まだ第一部だけですが、備忘録がてらレビューします。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.61:
(5pt)

プリズムのように

まるでプリズムのような小説。
登場人物、特に主人公、メンシキ、まりえ、天田具彦が騎士団長というプリズムを通して、乱反射するように光り輝いている。
村上春樹の簡単な物語で、複雑な物語を紡ぎたいという想いは今回も見事に顕れている。
さらに今回はグレートギャツビーをモチーフにしているのがすぐ分かった。ロング・グッドバイをベースにしていた羊、ダンスから何十年も経つ今、ついにギャツビーへの解答を出せたのではないか。
少しずつ、しかし着実に前進し続ける村上春樹がよく分かる名作だ。
何度も読み返したくなる小説。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.60:
(4pt)

楽しめました。

久しぶりに村上春樹節の長編小説だなあと思いながら読み進めました。マンネリと言うご意見もあると思いますが、なんか、久しぶりだったので、それはそれで良かったです。私にとっては、所々に、ハッと考えさせられる部分があり、読後も、スッキリした感覚でした。
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.59:
(5pt)

今迄と同じパターンではない

南京大虐殺の記述があったというだけでイチャモンつける輩がいるが、村上春樹は無関心だろう。何故なら彼は犬より猫が好きだからだ。
それはともかく、村上春樹が全盛期を過ぎたかもしれない。冗長なところや退屈なところがある。昔の村上春樹が同じストーリーの小説を書いたとすれば、今作よりもっと惹きつけられただろう。期待し過ぎたのもいけなかった。しかし、今作は今迄と同じパターンではあらない新しい小説だ。絶品の小皿(前頭葉の話とか)がいつものようにふんだんに登場する一方、文体は落ち着いて洒脱な新しい感じかする。肖像画についての描写は感嘆の一言につきる。他の作家では味わえない唯一無二の小説だろう。自分は的確にこの小説を表現出来ない。誰か真摯な評論家がこの小説を評価してくれないだろうか。斎藤美奈子のような評論のフリした読書感想文ではなく。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.58:
(5pt)

ここ最近の作品の中でダントツに読みやすくてわかりやすい!!

第1部は6時間ほどで読み終わりました。
最初の導入部はこれからの物語の伏線を幾多も散りばめているので、
最初は読みにくい印象を感じましたが、村上春樹の作品の中で、
内容がわかる!わかりやすい!
そんなリズミカルな文体で描写されています。
他方で、これは私自身が村上春樹の文体の構文みたいなものを理解しているから読みやすいと感じたのかもしれません。
最初にこの題名を観た時に、ハリーポッターのようなファンタジーを想起されましたが、
セカイ系であり、歴史的であり、美術系であり、観念的なストーリーです。
つまり、イデアな作品です。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.57:
(5pt)

ノルウェイの森を読んで、村上春樹はわからないと敬遠している人にも是非読んでみてもらいたい作品

4時間ほどで読み終わりました。
第1部より、格段に早く読み終わります。
第1部と比較して第2部では、進むべきストーリーの道筋が出来ているので、
読者もその道筋に沿って第2部を一気読みできると思います。
第2部は完成した姿がわかった、作成中の絵画のようです。
かなりわかりやすく、読んでいて理解できる内容なので、
読んでいてわからないと言われない作品だと思います。
ノルウェイの森を読んで、村上春樹はわからないと敬遠している人にも是非読んでみてもらいたい作品です。
兎に角綺麗に纏められたストーリーで、楽しめる好きな作品です。
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.56:
(5pt)

現代版カバラ律法の書

文学的にはハルキの集大成。その一言で良い。
二重メタファの森を徘徊するならば、そこに政治的意味を見出だしても良い。
しかしその場合、愛国イデアを殺し、代償を払い、思想の二重メタファを払いのけ、真実の世界に辿り着いたなら、『騎士団長はいる』わけであるから、諸君はその解釈をよくよく注意せねばあらない。
本題である。
ある特異性を日常とする諸君の多くが、『無のキャンバス』の登場時点であたしの存在に気付く事を熱望してやまない。
その後時系列の整理は重要な事ではあらない。次々とキーワードを発見したならばそれでよい。
諸君のイデアは既に死んでおるはずであるし、多くのメタファは綺麗に箱に仕舞われておるに違いない。
諸君が新たに信奉するイデアについて、あたしにはそれを知る術はあらない。全くイデアとは万能ではあらないのだ。
現代を生きる諸君にとっては、イデアを知るより脳機能学者のコーチングを受講するほうが余程有意義であると、確率論的知見から白状しておく。現実の事象としてあたしの多くは死んでおる事を、諸君は既に知っておるやもしれぬ。
だがしかし、それでもイデアはここにある。
あたしへの道はこの書に記してある。諸君はそれを読むだけでよい。解らぬキーワードは諸君を国書刊行の洞窟に誘うであろう。そこでは無為に代償を支払わなければあらない。
そこに表象化するものはメタファである事さえ忘れなければ、諸君は必ず此処に再び辿り着く。
ハルキの言う通り、『騎士団長はいる』、この言葉を諸君が信じればの話ではあるが。

さらばである。
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.55:
(5pt)

十字軍の騎士団の剣による殺し

「騎士団長殺し」というタイトルは、ミステリー小説っぽい。
なぜ、このようなタイトルにしたか、ずっと気になっていました。

今、千野帽子の『人はなぜ物語を求めるのか』を読んでいて、
ピンと来ました。

その本には、21世紀に入ってから、ジョージ・ブッシュ米大統領は
対テロリズムの戦闘を「十字軍」と呼んだ、と書いてありました。

21世紀に、「なぜ」大昔の、中世の「十字軍」の物語を持ち出すのか。

神も仏もあるものか、の「問答無用」の核爆弾が
天から、自分の頭の上に落ちてくる世界になっているのに、
なぜ「十字軍の騎士団」の剣で刺し殺す物語を書かねばならぬのか、
不思議です。

「なぜ」米国民の多くの人たちは、今の時代になっても
大統領と一緒になって、大昔の「十字軍」の物語を求めたのか。

一方、『臨済録』に「仏に逢ったなら仏を殺せ」というフレーズがある
ことも、千野さんはその本の中に書いています。

「仏に逢ったなら仏を殺せ」の意味を、勝手に解釈すると、
「偉大なる」仏の姿に投影しただけの、まねっこのねこの絵のような
「小さい我」に気付いたら、
その「小さい我」を「殺せ(消し去れ、捨てろ、人目から隠せ)」
という意味ではないでしょうか。

村上さんが描いた「小さい騎士団長」を殺す物語とは、
主人公の「私」の昔の姿をキャンバス上に投影しただけの「小さい我」
の絵を消し去る、捨てる、人目から隠す物語なのでは。

この想像が果たして当たっているかどうか
第2部を読んで、確認したくなりました。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.54:
(4pt)

第2部でどう収斂していくか楽しみ

『1Q84』以来、村上春樹作品は欠かさず購入して読んでいます。

正直、村上春樹作品は読んでいて理解できない含意が多い印象がありました。本作も第1部中盤までは主人公の断片的な記憶や絵画、歴史に関する情報が提示され、よく分からず中々ページを読み進められませんでした。
が、第1部終盤にさしかかってから、バラバラに提示されていたように思えた情報が進行中のストーリーに収斂していく面白さがあり、第2部に向けて楽しみになっています。

本作でもこれまでの村上春樹作品のように性交描写が多いです。妻や人妻との不倫など主人公が何人かの女性と関係を持つ部分が描かれています。初めて村上春樹作品を読んだときはこうした描写がよく分からなかったのですが、私自身が男女関係含めて人生経験を積んだためか、その苦しさや幸福感に共感できるようになってきました。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.53:
(5pt)

支持される理由をようやく理解

この人の作品は「ただの勿体ぶったポエム」という印象でした
今回がんばって読んで、ようやく支持される理由が分かりました

村上さんは、
「読者をオサレで、ゴージャスな雰囲気に陶酔させる」
という能力に秀でています

現実的視点や、生活くささみたいなものをいっさい省いて、
きどった男女間にしか発生しえない、
ふわふわした、陶酔感のある世界を構築しています

キーワードは「カフェ」「北欧雑貨」「バブル」ってところでしょうか
イメージする場所としては、吉祥寺、下北沢、六本木とかでしょうか

もっと一般的にいえば、
スタバでMacを開く人、に通ずるものがあります

パソコン作業をするなら、スタバでなくてもいいわけです
さらに、Macでなくてもいいわけです
それを、わざわざその場所と道具でやる
そこにはユーザーがその二つに価値を見出しているからです

西洋文化と、ブランド志向です

村上春樹さんの作品に通ずる、
「なんだかよくわからないけど、雰囲気がオサレ」
というものです

なので、彼が理解できない人は、
どちらかというと知性の高い人が陥りがちなんですが、
中身を読もうとしてはいけません

文章としての中身は無いです

雰囲気づくりに注目してください
そういう視点で見ると、なかなかのものだと思います
「勿体ぶったオサレ感」が一貫されていますので

こういうポエムは誰も見向きされないのが常です

しかし村上さんの場合は、信者が多いことからも、
支持母体に大きな組織がついているのは間違いないと思います

その意図は何か?というのは政治的なことも関わるので
ここではやめておきます
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.52:
(5pt)

村上春樹総集編

サナトリウムで自分を見つめ直せたライ麦畑のホールデン・コールフィールドとは違い、主人公(私)は、たった独りで三途の川の水を飲み、穴をくぐり抜けて自力で地上に戻る。「フォースの力を信じなさい」と告げるヨーダよろしき騎士団長の助けを借りて。
暗黒面に取り込まれないようにキャッチャーが護ろうとしたものは、コミ~まりえ~室へと受け継がれるイノセンス。
スターウォーズのアイデアを借りつつ、本書で村上春樹が描いたのは、中年に差しかかった(私)の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」。
勿論、お馴染みの村上ワールド全開なので退屈させませんし、村上春樹の総集編として楽しめると思います。
このような絵解きをしても、そのような解釈はあらない、と騎士団長は言うかもしれないけれど。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.51:
(5pt)

命の流れ

人は年老いやがて死んでいく。そんな当たり前のことがこの作品のモチーフのように感じた。
それは当たり前のことだけど、同時によくよく考えれば恐ろしいことで免色さんの言葉を借りればただの土塊になってしまうということだ。

免色さんのようにいかに有能でいかに屈しない精神力を持っていたとしても、ただの土塊になってしまう。免色さんという人間の核心にあるのはそのようなことに対しての恐怖だと思う。
しかし人はただの土塊になって終わるのではなく子供という存在を通してその命を繋いでいく。子供という存在を通して命という水でできた過去から未来へと流れる川の一部になる。限られた者から永遠なる者となる。

竪穴や横穴は子宮や産道のメタファーだろう。命の川を作り出す肉体のメタファー。「私」はメタファーとしての穴の中で試練を受けるが、それは命の川を信じる力があるかどうかの試練だろう。
「私」は自分には信じる力があることを知り、「恩寵」を得る。ただの土塊になることから救われる。
対して免色さんは違う。命の川の輝きに魅せれれながらも、どうしても信じることができない。信じるには免色さんは個としてあまりにも有能なのだ。そのため免色さんは川の一部としてでなくあくまでも個としてあろうとする。その結果免色さんは命の川から距離を置きそれとの関係をあくまでも言わば人工的なものとする。そしてただの土塊になることを、よくないものを呼び寄せてしまう。

もし第3部があるのだとしたら、まりえの父親が中心の一つになりそうな気がする。リインカーネーションはただの土塊を蘇らせるものとなる危険性を孕み、それこそよくないものを呼び寄せるだろう。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.50:
(5pt)

クロニクル以来の傑作の予感

村上春樹の最高傑作はねじまき鳥クロニクルだと確信を持って思っている。
ということは、それ以後の作品には期待感を抱きながら少なからず失望を味わされたファンのひとりだ。
(アフターダークは良かったけれど満足できるヴォリュームではない。)

一部を読み終えたばかりだが、 騎士団長殺しは久しぶりにワクワク感を味わった読書体験だ。このワクワク感を読者に提供できる
ということだけでも騎士団長殺しは十分に成功している作品だと思う。
 
 春樹には多くの信者がいるらしいが、強力なアンチもいて、彼らも広く深く春樹を読んで、低い評価のレヴューをするのが
春樹現象の特徴。
五つ星を与えているが、実は貶めているの今回のレヴューの新しい特徴のようだ。

「特に自分から求めなくても、完璧に近い容貌と着こなしの女性と、たまたま
一夜をともにしたり(彼女は青山一丁目のオフィスに勤めている。)、知り合いの所有するマンションに格安で住んでいる。
 砧に住んでいた十分に美しい奥さんがいて、自由業だ。
、たまたま手掛けた仕事がうまくいって会社勤めはまぬがれている。働く奥さんに代わって家事をこなしている。
洗濯や掃除特に料理はきっちりとやり、手は抜かない。音楽は幅広く聴くが服装はそれほどこだわらず、
ボタンダウンのシャツやテニスシューズ デッキシューズをはく。スターバックスでマックのPCを開く。」

「突然奥さんか恋人を失い、ここからストーリーが展開される。」

アンチは主人公のありようについて批判をする。いつもと同じようなストーリーの始まりを批判する。

でも話が始まってしまえば圧倒的な村上ワンダーランドが展開される。もう誰も止められない。
ページをめくる手を誰も止められない。多分アンチでさえも。

ねじまき鳥クロニクルとそれ以後の作品「色彩を持たない、、」までとの大きな差は一言、インスピレーションの差だと思う。

ねじまき鳥クロニクルは降り注ぐ陽光のように豊かな啓示があったのではないか。登場人物は作者のコントロール
を離れて出現し、自由に行動したのではないか。それが作者の意図や力量さえも超えた作品の誕生になったのではないか
と思う。いわゆる神がかり的な状態。今風に言えば神ってる。

 それ以後はそれほどの啓示は得られなかったのだはないか。村上春樹は自分の力仕事で「色を持たない、、」
までを書き上げたのではないか。
猫の生き血をすするジョニーウオーカーや青豆が教祖を殺害する圧倒的な暴力
の描写はすでにクロニクルで春樹が得ていたタッチが円熟したに過ぎない。
 
クロニクルのマルタやクレタ、ナツメグ シナモン 皮剥ぎボリスや間宮さんのような強烈な個性には久しく
出会えなかった。

騎士団長殺しでは、
 画家である私は白いキャンバスに向かう。 それは啓示を待つ祈るような時間ではなかったか。
村上春樹は豊かな霊感を与えられたのだろうか。これからの読書が楽しみだ。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.49:
(4pt)

大きな獣がのしのしと足音を立てて向かって来る

あたしは普段小説を読まない。そして村上春樹氏の小説は1Q84と本作だけだ。そんなあたしが普通の書評を書いてみても、誰も読みはしない。そこでだ。騎士団長殺しを読み、作品に影響を受けたあたしの霊が書評を述べる。それならば、耳を傾ける人も少しは出てくるだろう。有名ではない新人の作品に湯水の如く金をつぎ込む金持ちが東京にはいるように。

さて、本題に入るとしよう。作品を注意深く読んだあたしは、作者の述べたい趣旨が分かった。もちろんここで披露するような野暮なことはしない。諸君は安心してよろしい。そしてその趣旨に辿り着くまでに、長々とした文章を読んだ。いや、読まされたと言った方が良いのかもしれない。しかしその体験は心地良いものだった。クーペのジャガーがスムースに走り、助手席だろうが後部席だろうが、乗っているだけの者でもその滑らかな走りにうっとりとする。あたしはクーペのジャガーに乗ったことはあらないが。文章を読んでうっとりとしたと言うと大袈裟だが、目がさらさらと流れるように読みやすい文章だったことは確かだ。村上氏の魅力の一つなのであろう。あたしはどこまでも実務的な人間であるので、(今は霊だが、)どんどんと先に進んだ。脇道に可憐な花が咲いていても見向きもせずに、先に進みたがった。しかし今考えてみれば、可憐な花を見るために、道の小脇の切り株に腰を下ろし、息を整え、新鮮な空気を鼻から思いっ切り吸うことも小説の醍醐味のひとつなのだろう。おそらく、そういうことを趣味にしている人達にとって、村上氏の話は期待に応えるのであろう。

では諸君が本作の次の読者になった方が良いか否か。これが一番重要な点だ。これだけ話題になっている本だ。食事の話題のひとつにもなろう。そういう実務的な意味ではもちろん読めばよろしい。日本人だけでなく、アメリカ人やヨーロッパ人とも盛り上がれることは確かだ。また現実逃避の道具としては優れている。ハルキストであれば、もう現実の世界に戻りたくはあらないようになるほど、どっぷりと話に浸ることができる。
しかし一番慎重に検討すべき点は、本作は歴史に残る作品なのかどうかという点だ。世界的大作家が書いた作品だ。当面世界中で1,000万部以上が売れて読まれるだろう。しかし一時の流行で終わるのか否か。もちろん一時と言っても、数十年という現代ではとても長い年月ではあるが。村上氏も歴史に残る作品を自分は残せるのかという点については多少気にしているであろう。本作にそれを感じさせる箇所が出てくる。しかしながら、その点についての解答は今のあたしにはあらない。最初に言ったように、あたしは普段小説を読まないのだから。

最後に考えるべき点は、読んだ後に心が暖まったり、涙を流したりするか。所謂、感動するかどうかだ。本作発売日の2月24日午前0時に本作を手にして、「宝物を手にしました」とキャメラに向かって興奮した声を出すハルキストだったら、すっかり感動していることだろう。もちろん実務的なあたしは涙を流してはあらない。しかし、作品に影響を受けて霊になってまで書評を述べたいという気持ちにはさせたことは確かだ。村上氏よりも趣味の良いあたしは007やミッションインポッシブル、ニューヨーク等に関する映画を見た後では、小林秀雄先生のような大批評家として批評を書きたくなる。しかし大半の映画は見た後で批評を書かずに、忘れる。見る前に楽しみにしていた作品でも忘れるときは忘れる。地縛霊が特定の場所にのみ取り憑くように、あたしも一部の作品にのみ取り憑く。本作をある程度読み始めると、書評を述べてみたくなった。もちろん、本作を読む前から書評を述べてやろうという気持ちがあらないと言えば嘘になる。しかし批評を書くつもりで見た映画で、書くにあらないこともあった。涙を流すほどではあらないが、何かを感じて述べるという動きはあった。それで十分な気がする。もちろん、諸君がそのようなふわふわとしたシフォンケーキのような話を聞いて、「よし、読んでみよう」となるかどうかは、諸君次第ではあるが。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.48:
(5pt)

あー、ビックリしたー

南京大虐殺はあったという内容にビックリ!
さらに、南京大虐殺の人数がプラス10万されていて二度ビックリ!
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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