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皮膚の下の頭蓋骨
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皮膚の下の頭蓋骨の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.15pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
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P・D・ジェイムスの代表作ともいえる『皮膚の下の頭蓋骨』が気になり入手してしまいまいました。 大昔に読んだ『女には向かない職業』(An Unsuitable Job for a Woman、1972年)の続編なのに気が付いたのは購入してからでした。 彼女の作品は、ダルグリッシュ警視シリーズの『不自然な死体』を少し前に再読したところであり、評者の好みでない作家だったのを失念し、ついアマゾンで購入してしまったのです。 『女には向かない職業』を、何年か前ですが本棚から取り出して、何十年ぶりに再読を始めたのですが途中で投げ出したのを思い出してしまいました。 本作『皮膚の下の頭蓋骨』(The Skull Beneath the Skin、1982年)を読みはじめて、クリスティなどを彷彿とさせる古色蒼然とした古典的な探偵小説の系統を継いだ作家であることも思い出してしまったのです。 離れ小島の密室殺人事件であり、犯人は島に寝泊まりした限られたひとたちの中いるというおきまりのシチュエーション。 ただ一人だけの例外は、殺された女優のクラリッサ・ライルの依頼を受けて身辺警護を依頼された本編の主人公の私立探偵コーデリア・グレイのみ。 とにかく登場人物の心理描写や風景描写の繊細さにページを割き、事件を進めるスピード感のない作品なのです(島のビクトリア様式屋敷の描写だけで数ページを読まされるのですが、これらは著者の創造した実在しない島と屋敷なのです)。 ありきたりなフーダニットものであるにも関わらず文学作品にしたいという著者の意図も伺え、ことさら流麗な文章が連なります。 くわえて訳者の翻訳も流麗で難しい用語を用いていたのも少なからず散見され気になってしまいまいました。 たとえば「帯刀」とすれば誰でも理解できる言葉ですが、「佩刀」などとことさら難しく翻訳する意図が解せません。(P305) 他の例をあげれば「船着き場」と訳せばだれでも分かるのに、「バンド」と英語をそのままカタカナにしているのも理解に苦しみます(bund=「海岸通り」、「船着き場」)。 これなど英語に疎い読者を迷わすために意図的にしたのかとさえ思ってしまったのです。(P376) ネタバレになるからここでは書くことを控えますが、ミステリとして読む読者にとってこの物語の結末は、少々悪い食べ物を無理矢理食べて消化不良になったような気分を味わうことになるかも知れません。 著者は、他の探偵小説とは異なり格調高い文学的探偵小説にしたかったようですが、やはり探偵小説なのだから読者のカタルシスを満足させる結末で終えたほうがよかったのでは、と、評者は愚考してしまったのです。 580ページもの長編探偵小説だかなんだか知れないような作品でしたが、著者の努力(文章の多さと流麗さ)を啓して星3個進呈しておきました。 | ||||
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