■スポンサードリンク
千尋の闇
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
千尋の闇の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.46pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全13件 1~13 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この物語の肝はエドウィンとエリザベスの破局だと思うのですが、種明かしされてもしっくりこないんですよ。こんな理由でふたりが破局するなんて信じられません。何故、エリザベスは確かめようとしなかったのか。この重厚な長い物語にあってここはちょっと間が抜けてんじゃないでしょうか。もちろん破局しないとこの物語が成立しないことは重々承知してますが、ここが引っかかって仕方がないんですよ。かと言って、訳者が後述してる題名の訳について、これはなんとも思わないんですよね。十人十色ってことかな。上巻はちょっと冗漫、エリザベス登場の下巻からぐっと面白くなります。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
過去20年のあいだに今回を含めて3度読んだ。ゴダートと同じ1954年生まれの私の記憶力はすでに朦朧とし,物語の筋も大半を忘れていた。ミステリーが繰り返し新鮮なのは加齢の利点である。 この作品はゴダード30代のときの出世作である。作中の歴史教師マーチン・ラドフォードは小説の設定時代である1970年代末には30歳であり,性的スキャンダルによって教師を失職し,離婚していることが明かされる。その主人公がマデイラ在住の実業家セリックの依頼で,かつてのイギリスの有力政治家ストラフォードの残したメモを手掛かりにして,その1910年の突然の政治的失墜と婚約者エリザベス・ラティマーからの拒絶,1951年の死亡の原因を調べる。ストラフォードをめぐる人々の裏切りの構図が明かすべき謎である。主人公もまた自らが招いた苦境のなかで調査を行う。その結果,会ったこともなく,すでに1951年に75歳で死んでいるストラフォードに対する共感を深め,クーシュマン夫人として90歳近くの高齢となったエリザベスとの交流のなかで,ついにはストラフォードに代わって,彼女の名誉を守る行動にでる。時代と世代をまたいだ共感に基づく主人公再生の物語である。 この小説のささやかな限界は,高齢者が読めば簡単に気が付くことだが,高齢者の心理と行動が,30代の著者が描く30代の主人公の目をとおして表現されているという点である。享年75歳のストラフォード,1977年において,90歳のエリザベス・クーシュマンはもとより70代のセリックも,30代の著者の想像によって描かれている。実際のところ加齢は人の感情と行動の在り方を変える。例えば,大半の老人の読者には30代の主人公の行動は単なる迷惑でしかなく,また,美しく身勝手な女性歴史家イブ・ランドールに対する主人公の情欲ゆえの行動は見て見ぬふりをしたい無様なものでしかない。逆に,大半の若い読者には本書の時代背景や,老人の行動そのものが了解不能であろう。 これはこの小説が世界的ベストセラーになりながら,日本ではすでに絶版となっている事情とも思える。元々は時代と世代を超えた共感の話に魅力を感じる少数の読者のための上質の娯楽小説である。その読者を対象にして,現在の邦題『千尋の闇』ではなく,原題の「Past Caring」の意味を反映した適切な題名を工夫して再刊されることを望む。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
一読してその物語の闇の深さと語り部であるゴダートの巧みな物語の紡ぎぶりに感嘆し、しげしげと手に取った本を眺めたのを憶えています。 それ以来、ゴダートの著書は発売されれば即購入、即読していますがいまだにこの「千尋の闇」を超える読後感を得ることができていません。 私のとってはゴダートのベストと言いますか、今まで古今東西のあらゆる小説を読んできたつもりですがすぐに読み返したのはデュマの「モンテクリスト伯」とこの本だけです。 人生とは無常なものであると当時30歳の私に教えてくれた本。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ミステリというより歴史小説に近い感じがします。 ロイド・ジョージやチャーチルなど当時の歴史が好きな方にはお勧めです。 文章も上手いですし内容的にも読ませる作品だと思います。 なのですが、元歴史教師の主人公にどうにもこうにも感情移入できず、 イライラすることが多かったです。誘われたとはいえ、生徒と そんな関係になるわ、女性が絡むと仕事よりもそっちにウェイトが 行ってしまっていい加減にしろと。途中反省したりはするのですが、 結局丸め込まれたり騙されたり。何だか色々悩んだりしているのですが 自業自得じゃないの?と思いました。人によってはそれが人間味があって 良いと感じるのでしょうが、私には無理でした。 それでも、せめてラストくらいはきっぱりとしてくれていたなら、 もう少し高い評価だったかもしれません。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
数年ぶりに読み返しましたが、やはり数多くあるゴダード作品の中の最高傑作でしょう。なかなか日本人にはなじみのないポルトガル領マデイラ諸島ですが、改めて行きたくなりました。過去と現代を結び合わせた「騙しのテクニック」を堪能させてもらえる日本作家の誕生が待たれます。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
オオマケにオオマケして☆4つ。本来は☆3つくらいか。 10年ほど前にブームとなり、作品の多くがいきなり文庫で刊行されたゴダードの「最高傑作」の呼び名高い本書を初めて読んでみた。 力作である。プロの仕事だと思う。「二重底、三重底のプロット云々」という評もあるが、そういうテクニックよりは本格的な物語志向を持っている。超絶的なテクニックやミステリ的なトリックは大したことはない。南アフリカ共和国、ポルトガル、イギリスを空間的な舞台とし、20世紀初頭から第一次、第二次大戦、そして戦後の小説内現在までが時間的な舞台となる。 「純文学でござい」とすましている多くの非力な作家には、到底描き得ない題材であり、構成だ。 それを重々認めたうえで、言いたい。 本書のファンはゴダードを読んだ後に、トーマス・マン『魔の山』や、エリアス・カネッティ『眩暈』や、ヘルマン・ブロッホ『夢遊の人々』へも向うだろうかと。そして、ゴダードよりも、こうした歴史と人間の群像を描いた巨編をこそ「本物の小説だ」と思うだろうか? ゴダードの『千尋の闇』を乱暴にまとめると、下巻381ページの次の一条になる。 「ストラフォードの高潔、クーシュの欺瞞、セリックの復讐心、エリザベスの変わらぬ威厳」。 正しい人は正しく、悪い奴は悪い。はっきり言って人間はこんなものではないのだ。退屈である。お話としてはよくできているのに、退屈だ。それが大衆文学ではないかといえばそれまで。しかし、本書のファンは、相当に小説そのものが好きなのだろうということを認めたうえで、敢えてこれを「退屈ではないですか?」と挑発したい。 評者のクソレビューに反対票を投じる前に、是非、上に挙げた小説を読んでもらいたい。 何?既に読んでいる。失礼しました。しかし、それでもゴダードのほうが面白いですか。うん、確かに面白くはある。でも、何か退屈じゃありませんか? 評者は、ゴダードファンが、たとえばオルファン・パムクあたりをむさぼり読み始めれば出版業界は変わりうると思う。そして何よりも読者の世界も変わる。カネッティでもよい。グラスでもよいかもしれない。莫言でもよい。 何でお前にそんなことを言われねばならないのか? とまあ、ゴダードファンの皆さんは言うだろう。しかし、ついつい、口が滑ってしまう。評者の見る範囲では、ゴダードファンほどの小説愛好者であるにも関わらず、マンを読んだことがなく、カネッティ、ブロッホをその名さえ知らないという御仁がほとんどなのだ。これでは、小説はダメになってしまう! と思う。 それにしても、若島正ほどの英文学者にして小説読みが、本書を手放しでご推奨しているのが腑に落ちない。繰り返す。本書を力作として認めるのはやぶさかではないが。『ロリータ』(若島訳!)のほうが、『ユリシーズ』のほうが、ドストエフスキーのほうがはるかに面白い!!! | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
少しばかり長くてかつ重苦しい作品でした。読みながら主人公たちの置かれた立場に涙した小説はこれが初めてです。ジェフリー・アーチャーに往時の勢いがあれば、もっと洒落た作品に仕上げたかもしれません。この快作を盛り立てたのはやはり翻訳の巧みさだと思います。翻訳小説のぎこちなさがなく、訳者がストーリーを、場面をちゃんと理解して訳していることがよく分かりました。原著者のみならず訳者にも拍手を贈りたいです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
英国が生んだ‘稀代の語り部’との評判をうけて、初めてゴダードを読んだ。本書は、’86年のデビュー作で、日本では’96年に翻訳されて以来、新たなファンを獲得しつつ読み継がれ、今に至るも版を重ねており、著者の代表作といっていい程のロングセラーである。 ストーリーは、元歴史教師で現在失業中のバツイチ男が、半世紀以上前に、確たる理由もなく婚約者に去られ、閣僚の座を追われた青年政治家ストラフォードの謎を、ある資産家に雇われて探るというもの。彼はストラフォードが著した回顧録(メモワール)をもとに、解明の旅に出る。 最初は比較的単純に見えた謎の探求が、意外な妨害を受けたり、またさらに新たな事件(事故か自殺か、それとも殺人か)や謎を生んだり、登場人物たちの敵味方が入れ替わったりして、迷宮を思わせるような小説世界が展開する。そして彼はついに真相を著したストラフォードの追記(ポストスクリプト)を手に入れるのだが・・・。 二重底、三重底の、深まってゆく謎のつながった物語は上・下巻分冊合計822ページものボリュームもなんのその、息つく間なくずいずい読み進むことができる。 本書はまた、大学で歴史を専攻した著者ならではの、ふたつの世界大戦をはさんだ英国の自由党、保守党、労働党の内閣組閣抗争をはじめとする政治状況や婦人参政権運動も正確に記され、ロイド・ジョージ、チャーチルといった実在の人物も登場するなど小説のバックボーンもしっかりとしていて興味深い。 本書は、‘当代随一のストーリーテラー’ゴダードの評判どおりの、小説の醍醐味あふれる傑作であり、“巻措くをあたわず”の読書が楽しめること請けあいである。ミステリーファンのみならず一般の小説好きの方にも是非おススメしたい。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ゴダードの作品はミステリに分類されており、確かにそのとおりではあると思う。そして、ミステリとしてのできは秀逸としか言いようがない。しかし、読むことを止めることができないほどの魅力を持った作品であるより大きな理由は、人の心の襞を丹念に描いていることにあるだろう。 そんなゴダードの作品群の中でも、本書は最高傑作といってもいいのではないだろうか。心にしみる言葉と、十重二十重に張り巡らされた謎に酔うことができるだろう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
失業中の元歴史教師のマーチンは、ある屋敷に招かれ、一冊の回顧録を渡される。それは英国議会で大臣まで勤めたことのあるストラフォードが生前記したもので、ある日突然政治家生命を断たれ、愛し合っていた婚約者にも捨てられたいきさつを精細につづり、前途洋洋だった人生がなぜ失意のうちに幕を閉じようとしているのか不明なまま終わっていた。マーチンは「ストラフォードがすべてを失った理由を調査せよ」という依頼を受け、喜んで引き受けたのだが・・・ 前々から気にはなっていたが暗くて複雑そうだという印象があって先延ばしにしていたこの作品。確かに明るい話とはいえないが、暗いとは思わなかったし、人間関係も思っていたよりスッキリと分かりやすい。確かに人の死はからむのだが、ミステリーというより人間ドラマの色合いが濃い。真相が薄皮をはぐようにその全貌を現し始めると同時に、読者は糸で絡め取られるように物語に引きこまれてゆく。早いうちから筋が読める部分はあったが、それでも次々に展開する物語に、最後まで引き込まれたままだった。 徐々に明らかになってゆく、嫉妬、裏切り、悪意、しかし、ストラフォードの人柄のせいで、決して救いのない話ではなく、同時に愛情や信頼も描かれた、深い余韻の残る物語となっている。イギリスらしい、素晴らしい作品。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ゴダードを読もうとする人には、最もお薦めの1冊である。現時点でゴダードは14の作品を生みだし、そのうち13作が邦訳で読める。この「千尋の闇」はそのゴダードの1986年に出された処女作である。残念なことに、ゴダードの作品は90年代にはいると、やや質が落ちてきている、というのが一般的な評価であり、読むのなら80年代のものをお薦めするが、特にこの作品は秀作である。この本を読まずしてゴダードを語ることは出来ないし、この本を基準として、後のゴダード評ができあがっているわけである。そういう意味でも、是非とも読んでいただきたいと思う。 さて、内容であるが、歴史教師の知り合った実業家、彼の住む家と彼の出生に関する秘密。そこに登場する若き政治家の数奇な運命。読み進むうちに、この政治家にどんどん感情移入していき、切ない気分になってくる。この政治家と、歴史教師の人生がいれこ方式になっているのに気付くと、やや展開が読めてしまうのが、上巻の後半部分からだが、その部分のわずかな弛みをやり過ごせば、一気に最後まで読み切ってしまうだろう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この本を読み進めて行くうちに、探していた一冊にやっとめぐり合えたと感じました。素晴らしい描写力と、展開の速さは圧巻です。緻密で計算しつくされた繋がりが、解けては別の部分と繋がり、二転三転して物語は意外な方向へと進みます。最後まで一気に読み通しました。しかもよくあるサスペンスのように、”あー楽しかった”というだけで終わらず、心に残る、素晴らしい物語でした。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
1つの回顧録をもとに、謎にせまっていくあたりが読者をぐんぐんと引き込んでいきます。次はどうなる?この人危ないのでは?など自分も一緒に考え、「あっ」という間に読んでしまっていました。こういう流れはさすがだなぁと思います。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!