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空の幻像



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【この小説が収録されている参考書籍】
空の幻像 (創元推理文庫)

空の幻像の評価: 4.33/5点 レビュー 3件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.33pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(5pt)

相変わらず美しいミステリ、シェトランドへ行きたくなります

シェトランド4部作と呼ばれる最初の4作品にとりあえず区切りがつき、その続編の「水の葬送」に続く作品になります。今回の舞台はシェトランド諸島で人が住む島の中では最北にあるアンスト島。英国では辺境と呼ばれるシェットランド諸島の本島が都会に見えてくるほどの田舎で、そこへはフェリーでイェル島を経由して行かなければなりません。海や空の色はどこか灰色がかったブルーで、ひんぱんに霧が降り視界が遮られる、今回も北国独特の淡い色彩と自然の描写が印象的です。

2つの殺人事件が起こります。殺されたのはまず、イングランドから休暇でやってきたカップル2組のうちの女性で、テレビの映像制作会社のオーナーでした。有能で黒髪が印象的な美貌でしたが、少し前に流産したという心の傷を抱えていました。アンスト島には、海辺の砂浜で踊る溺死した白い服の少女の伝説がありましたが、彼女は会社の命運をかけて、この幽霊話を取材し、番組を制作しようとしていました。
もう1人の犠牲者は、やはりイングランドからやってきて、地元の領主館を買い取ってホテルを経営していたゲイ・カップルの片割れでした。現地男性と結婚してアンスト島に定着しようとしている被害者女性の親友や、彼らの間にあった隠された三角関係や葛藤と憧れ、そして登場人物たちの家族とその先祖たちに起きた出来事まで遡って、事件はだんだんと複雑な様相を呈していきます。
主人公のペレスは時に起きる辛い体験のフラッシュバックにも耐え、捜査ができるほど充分に回復しています。べレスから学んだサンディ刑事も一人前の警察官としてかなりの成長を遂げています。そして今回も、インバネス署から派遣されてきたのは前作と同じウィロー・リーヴス警部でした。

この作者の文体は独特で、登場人物たちがまわりの状況に接し、行動し、会話しながら、それと同時に心の内の独白を混じえて描いていきます。突然挿入される前後と関係ない事々に、普通なら読んでいて混乱するところですが、それは翻訳の巧みさと文字の濃さを変えてあることで、戸惑うこともなくスムーズに頭に入ってきます。考えてみれば私たちも普段、自分の意見や過去の思い出などを混ぜて思考しながら、仕事をしたり友人と会話していると思いますが、そんな様子が流れるように自然に描かれます。

誰もが怪しく動機があるように見えてしまい、途中であれこれ推理してみるのですが、完全にはずれてしまいました。犯人は意外な人物でした。ただ、伝説やご先祖様たちの事情にまでさかのぼる伏線が重なって多様になりすぎた感があり、それに比べて犯人とその動機が意外に単純だったため、ちょっと拍子抜けしてしまいました。そのあたりは少し残念でした。

この作品は英国で2014年に出版されたもので、日本では2018年に翻訳されています。次作は”Cold Earth” という作品で、本国ではすでに2016年に出ているそうなので、今年あたりぼちぼち翻訳されるのではないかと期待しています。最近、海外作家作品が途中で出版されなくなることが多く、たとえば気に入っていたアン・ライス、サラ・スチュアート・テイラー、デイナ・スタベナウ、S・J・ボルトン、ケイト・キングスバリーなど、本国では続々と続きが発表されているのに、日本で出なくなってしまったのは本当に残念です。読みたいなら洋書を当たれということでしょうか(泣)。相当の部数が売れないと元が取れないという事情もあるのでしょうが・・・なんとかシェトランド・シリーズは継続していただけたらと思います。
空の幻像 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:空の幻像 (創元推理文庫)より
4488245102
No.2:
(4pt)

ペレス警部6作目。丁寧で堅実な英国ミステリです。

ペレス警部シリーズの6作目になる本作、発売から1年立つ頃にようやく読了しました。

今回はシェトランド諸島のなかでも北端のアンスト島が舞台。とにかく霧包まれることが多いのが特徴で白いドレスのリジーという幽霊話が絡んでくる。

これまでのシリーズ同様、様々な人物とその家族模様が描写されますが、幽霊話ともども丁寧に話を終結させてます。
読みといていくと奇妙な事件の背後にあるのはいつも島に生きる人びとの暗いけどありふれた感情なんですよね。
シェトランド諸島という限定空間に生きる人びとの人間模様がシリーズを重ねるごとに積み上げられ、そこに愛着と独自性を感じるのがこのシリーズの魅力でしょうか。
このシリーズ読んでいる人は皆そうだと思いますが、読んでいけはいくほどシェトランドに行ってみたくなるんですよね。
空の幻像 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:空の幻像 (創元推理文庫)より
4488245102
No.1:
(4pt)

アンスト島で起きた殺人に挑むペレスとウィロー

お待ちかね、ペレス警部シリーズの最新作。本作の舞台はシェトランド諸島のアンスト島です。

友人の里帰り婚のために集まった若いイングランド人たち。
そのなかでもひときわ美しく華やかな女性が謎のメールを送ったのちに死体となって発見されます。
地域の入り組んだ人間関係、カップル同士の軋轢、
そして地元に伝わる少女の幽霊の伝説……シェトランドの霧のような影が覆う中、
恋人フランを失った痛手からまだ立ち直り切れていないペレスが事件に挑みます。
前作にも登場した変わり者の女性刑事ウィローや若い刑事サンディも活躍します。

イングランド人と地元民の微妙な感情的対立、ペレスに寄せるウィローのそこはかとない思慕など
繊細で丁寧な心理描写が魅力的な作品。
「複雑な家庭」という言葉が本作のキーワードかもしれません。
謎解きの意外さは今一つの感があったものの、シェトランドという独特な場所の
雰囲気は充分に伝わってきましたし、静かに捜査を進めて核心にたどり着く
ペレスの人間的魅力が堪能できた小説でした。
空の幻像 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:空の幻像 (創元推理文庫)より
4488245102

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