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クロイドン発12時30分
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【この小説が収録されている参考書籍】
クロイドン発12時30分の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.32pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全38件 1~20 1/2ページ
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無事に届きました、有り難うございます! | ||||
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自分的には倒叙ミステリーより犯人当てミステリーの方が好きですね。 裁判の場面がなんか繰り返しが多くてちょいと退屈でした。 | ||||
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最近の、一人称や三人称が混在する、自由度の高い小説に慣れていると、堅苦しい形式に思える。 また、どうしてこの、あまり意味が無い描写を長々書くのかと、疑問に思う点もあり、時代の差を感じる。 | ||||
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※ネタバレ ある富裕層の男が、事故に遭った娘を見舞うために、イギリスからフランスに向かう機内で死亡する。……遺体から、シアン化カリウムが検出され、自殺と他殺の両方の可能性が推定される。 ……ここで、場面が一転して、この殺人を犯した犯人がどういういきさつで、どういう手口で犯行に及んだかが書かれ、次に、もうこのまま犯行が露見することはないだろうと高を括っていたところで、思わぬ"伏兵"が出現し、強請られ、その"伏兵"も"始末する"。……これで安心と胸をなでおろした矢先、急に逮捕令状を持った警部が来て、警察署に連行される。……裁判では、うまく仕組んだはずのトリックが、何もかもバレている。……裁判で有罪が確定する。……最後に、どうやって逮捕に至るまでの、証拠固めをしたかが、捜査にあたったフレンチ警部によって、明らかにされる。 ……"倒叙法"の形をとった推理小説で、犯人は最初の方で明らかにされ、あとは、どうやって警察が犯行を暴くかというのを、読者に考えさせるんだと思いますが、この話なら、犯人や手口を読者に推理させたほうが、面白い小説になったんじゃないかと思う。 ……犯行の動機や手口がまず明らかにされて、裁判の判決まで出たあとで、警部が仲間内の会合で、どうやって真相を突き止めたかを説明するので、読者は、犯人がやったことを思い出して、どこで"足がついた"かを確認するんだけど、やはり推理小説では誰が犯人で、犯行がどんなふうに行われたかということを、推理するほうが、面白いと思う。……倒叙法の話が少ない所以だと思う。 ……犯行の手口や、それを隠すトリックは、今ではそんなに目新しいものではないけど、犯人の心理描写や、裁判で犯行が実証されていく場面の描写は、淡々と書かれているだけに、人を惹き付ける力がある。……"倒置法推理小説の三大傑作の一つ"と言われるのも首肯ける。 | ||||
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倒叙ミステリーの傑作。 FWクロフツは過小評価されている作家だと思う。今日隆盛をとどめている社会派ミステリーやトラベルミステリーの元祖こそクロフツだと思う。人工的なトリックや超人的な名探偵が登場せず、極めて現実的な動機•犯罪方法で殺人が行われる。犯人の視点で、犯行が行われていく過程は極めてリアルで、まるで自分がその渦中に巻き込まれていくような錯覚さえ覚えた。特に予期せぬ目撃者が登場する中盤あたりからは自分自身の心臓の鼓動さえドキドキしてくる。後半の法廷での攻防まで最後まで緊張が途切れる事がない。 | ||||
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丁寧に書かれています。推理も細かく正確にされています。 個人的には少し説明が多すぎるのではと思いました。 | ||||
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ものすごく精緻に描かれている。徹底的に描かれ過ぎていて、犯人の動きをもう一度裁判でトレースすることになる。そこには、コロンボのように、公判維持に危ういやり方ではない、警察・検察の磐石な証拠がためがある。読み手とすれば、サプライズがあるのかどうか、見定めるように読み進めるが、結局、期待したものが見つけられなかった。ここから分かったのは、自分が読みたいものは、公判維持なんてどうでもいいから、どこか騙される、驚かされるという観点なのだと。 名作をとやかくいうのが気が引けるが、あえていうと、例えば、こういう結末はどうだろうか。開発か何かでカイボリすることになり、そこで死体が見つかる。そこから、何年か前の事件が捜査されていき、高明な実業家が最後に逮捕されるというのは。素人の戯言だが、そういう物語が読みたかった。 | ||||
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ミステリの名作が新訳で出たと聞いて手に取りました。大変読みやすい文章で、ストーリーも淀みなく展開するのでスイスイ読めました。 刑事コロンボ形式で、犯人が予めわかっていて、後半まで犯人目線で話が進行します。 主人公は言ってみればダメな人で、とにかく浅はかです。例えば、美しい令嬢に首ったけなのですが、令嬢は貧乏暮らしには絶対に耐えられないと断言していますので、破産寸前の主人公は見栄を張って文無しなのがバレる前に結婚に漕ぎつけようと画策します。 犯罪を犯してから何度もヒヤリとする場面があるのですが、楽観的な主人公は喉元を過ぎればすぐに忘れてしまいます。 そして突然の逮捕。なぜこんなことになったのか? 終盤にスコットランドヤードの警部が逮捕に踏み切るまでの経緯を語っています。なるほどなるほど、とスッキリ。 さすがの名作でした、楽しい読書でした。 | ||||
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ある犯行者の意識と行動を追う異色のミステリー。完璧と思われた行為が次々と暴かれてゆく様子は当事者でなくとも恐怖感を味わえる。『樽』に登場したフレンチ警部の活躍も見もの。 ・冒頭、被害者の孫がロンドンからパリはル・ブルジュ空港行きインペリアル航空の乗客として飛行する描写が秀逸だ。祖父とその執事と父親との小旅行。事故にあった母に会いに行くためとはいえ、10歳のローズにとっては大冒険だったはずだ。ときに1932年9月、クロイドン空港からフランス・ボーヴェ空港(霧のために行き先が変更された)への航空旅行を終えたとき、祖父が死亡していたことが明らかになる。検視尋問の結果、自殺の線で決着がつくが、ここから甥のチャールズの犯行への長い旅程が語られる異色の構成となっている。 ・倒産寸前の小型発電機工場を救うための、遺産の前貸し要請に耳を貸さない叔父への憎悪。「ひとりの命V.S.多数のいのち」「ひとつの悪V.S.ふたつの悪」チャールズの犯行へのきっかけは単純なものだが、そこに人の弱さが潜んでいる。一方的な熱愛を傾注するユナ嬢への恋慕は、行動を決定的にするのだ。 ・練りに寝られた計画に則って「行動」は成し遂げられる。後日あらわれた目撃者も、これも消してしまえば恐ろしいものは何もない。 ・安堵と高揚感。愛にあふれる未来の予感。だが、明晰な頭脳を持つスコットランド・ヤードのフレンチ警部の執念による捜査は、チャールズの意図を看破する。順風満帆な日々は、深夜の逮捕状をもって永久に崩れ去るのだ。 ・法廷に立った瞬間、チャールズは八方から注がれる視線(p284)におののき、訴追側の主任弁護士(検察側)の驚くような追及に精神的に耐え、「恐怖に恐怖が積み重なって」感覚の麻痺する状況(p344)に陥る様子は、臨場感あふれる描写力によっていっそう恐怖感がひきたつ。 チャールズが苦境の日常を変革するために行動に移るまでの日々、犯行後の恐怖感の毎日、みごとな公判の大きく三つのシーンから構成される。人間なるがゆえの弱さ、そして自らの心のスキへの対峙を考えさせてくれる傑作長編といえよう。 | ||||
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▽▽ 『クロイドン』がイギリスで発表された1934年(昭9)というのは極東の日本では小栗虫太郎『黒死館殺人事件』が「新青年」に連載されていた頃。後発のフレンチ警部登場長篇『船から消えた男』だと土屋光司・訳による日本公論社版が昭和12年に出ているのに、本作は戦前には日本語訳の単行本が出なかった。 今回訳者だけでなくカバーもスタイリッシュに一新、この本は「名作ミステリ新訳プロジェクト」の一環になっており、 ミステリ・ベテラン諸氏にも新訳『クロイドン』に手を伸ばしてみるのに良いチャンス。 ▼▼ 昭和以降の『クロイドン』の文庫を振り返ると、 長年流通してきた大久保康雄・訳による創元推理文庫の近年の版は購買欲が湧きにくいカバーだったのに比べて、 平成18年ハヤカワ文庫版ではカバー・デザインのセンスがぐんと向上、加賀山卓朗という訳者も悪くなかったと思う。 そして令和元年創元推理文庫新版。霜島義明・訳は確かに万人向けに最もソフトになっている雰囲気。 注文をつければ、アンドルー・クラウザー老人の語り口あたりにもう少し〝一族の長〟らしい重厚さがあったらな。 一緒にリニューアルされた解説については戸川安宣ばりの書誌データとかマニアックに読ませてほしかった。★ 3 / 5な内容。 ▽▽ 「クロイドン発12時30分」というタイトルは字面で見ても印象的だけど、アンドルー・クラウザーが急死する第一章において、 出立する空港がクロイドンという地名なのはまだしもアンドルー一行が搭乗する飛行機の便が12時30分発だとはどこにも書いてなく、やっとそれがわかるのは中盤にさしかかる検視審問シーンにおいて。本文中、他に言及されていたっけ?だからこの12時30分という時間はさしてこの物語の大事なファクターではない。 ▼▼ 主人公の日常が崩壊してゆくヒリヒリするようなサスペンス。発表当時はむしろこの倒叙での長篇というドラマツルギーが、 斬新だったのだが、一世紀近く経った現代では倒叙ミステリを用いたTVドラマさえ広く浸透してしまって、 この古典に向かって、いっぱしわかったように叩いている大口もある。 どこに問題が? 倒叙だと最初からわかっていても、主人公である犯人チャールズ・スウィンバーンの警察連行に唐突さはある。 その後の法廷シーンだけではチャールズがどこでミスを犯したのか、読者には100%解明されないまま最終判決が下って、 最後の23~24章フレンチ警部のトーク・タイムに至って、そこまで我々には腑に落ちなかった部分もようやく納得がいく。 そのビミョーな構成をしっくりこない読者もいるかもしれない。 私も初読時に、22章まで読んで「この詰めのまま終わってしまったら裁判官アカンやろ」と思ったクチだ。 ▽▽ そのような点はあるものの、ENDまで快調に物語に乗っかり、読了後にはキー・ポイントを振り返る楽しみに浸れる。 クロフツ=地味・退屈な作風といわれるが、本作は小難しい専門用語や延々と繰り返す取調べ場面もなく、 あまりミステリに馴染みが薄い読者にもクロフツのとっかかりとしてジャスト・フィットするはず。 だから『樽』『ポンスン事件』や他のフレンチ警部ものより、さしあたり『クロイドン』からスタートしてみてはどうか? もうひとつのクロフツ・ビギナーに薦めたい長篇『スターヴェルの悲劇』も早く新訳プロジェクトでリイシューされるとなおよろしい。 ▼▼ 余談だがこの物語の中でダントツに嫌な奴って、チャールズ・スウィンバーンでもなければ、彼に殺される被害者でもないし、 犯罪は暴くけど前面にはあまり出てこないフレンチ警部や他人の詮索に忙しいお喋りなシアマン夫人でもない。 チャールズが結婚したくて仕方がない女性…なんだけど男を選ぶ基準が「富」最優先というユナ・メラー、だろ? 「女を見る目は養うべし」というクロフツのアフォリズムがこっそりと。 | ||||
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主人公が情けないほど追いつめられる。心情が入ってしまう作品。 | ||||
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1933年、アンドルー・クラウザー翁は娘がパリで事故に遭ったと聞き、娘婿や孫らとともにクロイドン発12時30分の飛行機でフランスに向かう。しかし彼は機内食を食べた後に突然死亡してしまう。死因はシアン化合物。果たしてこれは自殺なのか、それとも他殺なのか…。 ------------------------------- 昨年暮れに読んだ『刑事コロンボ読本』の中でこの1934年に書かれた『クロイドン発12時30分』が世界3大倒叙ミステリーのひとつに数えられると紹介されていました。ぜひ読んでみたいと思っていたところ、この新訳版が先月出来(しゅったい)したと耳にして手にした次第です。 第1章こそ、被害者アンドルー・クラウザーの死亡場面が描かれますが、第2章以降は犯人である甥のチャールズ・スウィンバーンがどういう境遇にあり、叔父アンドルーを殺害する動機、その犯行の準備から実行への経緯、そして犯行が露呈しそうになって第2の殺人に手を染め、やがて逮捕・訴追へと至る展開が精緻に描かれていきます。 この小説が描く1930年代前半は大恐慌の波がイギリスをも呑み込み、電動機製作所の社長であるチャールズを苦境に立たせています。入札競争、設備投資、従業員の雇用確保などを巡って、経営者としての彼は二進(にっち)も三進(さっち)も行かない状況に追い込まれています。未曽有の不況の渦中にあって、若い従業員とその家族を路頭に迷わせたくないと焦るあまり、チャールズは次のように考えるのです。 「いくら考えてもおかしい。役立たずの厄介者が世に憚り、進取の気象(ママ)に富む有為な人材が早死にすることが多いとは。チャールズにとってアンドルー・クラウザーという存在は、己の行く手をことごとく阻む不幸の種でしかなかった。【……】おれ自身のためにも、叔父は死んだほうがいい」(81頁) これはドストエフスキー『罪と罰』の若き主人公ラスコーリニコフが老婆に対して抱いた疑念とまさに同じ。己の正しさを信じ、世間には失われてもかまわない命があると断ずる傲慢さがあります。思い返してみれば『罪と罰』もまた倒叙ミステリーであり、同じく倒叙ミステリーである『刑事コロンボ』のもととなった文学でした。その犯人が生殺与奪の権を持つと考える、歪んだエリートであるのも不思議ではありません。このあたりのチャールズの心理描写は、大恐慌という時代が生んだ犯人像として興味深く読みました。 さらにチャールズ逮捕後の裁判劇が重厚で迫力ある展開を見せます。イギリスの法廷ドラマですから、「(裁判長)閣下」や「博学なる友」といった英国ならではの仰々しく響く言葉遣いが登場して、おもわずニヤリとさせられます。被告側弁護人ヘポンストールの弁舌は理路整然、至極緻密。かりに自分が陪審員であれば「疑わしきは被告人の利益に」の原則に則って無罪評決もやむなしと思うほどです。 それだけに最終評決に至る展開は淡泊で、納得がいきません。法廷審理の過程でチャールズ有罪と納得させられるだけの材料が十分に提示されたとは思えないのです。 そうこうしているうちに最終2章でスコットランドヤードのフレンチ警部が推理と捜査の過程を滔々と披歴していくことになります。警察機構ならではの地道に足で稼ぐこの捜査過程こそが最大の肝であり、これを単に口頭で要約披露するのはかなりもったいないといえるでしょう。 倒叙ミステリーであるならば、犯人のみならず読者をも巧みにワナにかけるような頭脳戦が巧みに描かれるほうが断然楽しいはずですが、この小説のフレンチ警部は後景へと退いたままで印象はかなり薄いといえます。あえて倒叙形式は捨てて、フレンチ警部が複数の容疑者の中からチャールズへと絞り込み、追い込んでいくプロセスを同じ400頁近い紙幅を費やして描いていったほうがよかったのではないかと思わざるをえません。 最後にこの新訳を手掛けた霧島義明氏の手腕についても触れておこうと思います。霧島氏はこの長編小説を大変読みやすい日本語に移し替えてくれていて、ほれぼれとします。バタ臭い翻訳調の文章はなく、こうした海外の古典ミステリーを読むうえで障害となるような和文は一切見当たりません。霧島氏は近年、クロフツのミステリーの翻訳をずっと手掛けているようですので、その安心の翻訳で『樽』も読んでみたいと思っています。 --------------------- *81頁:「進取の気象」とありますが、正しくは「進取の気性」です。 *「検視審問」という表現が全編にわたって幾度か出てきますが、日本の新聞報道では英語のinquestには「死因審問」と訳すことが一般的なだけに、違和感がありました。特に10年ほど前に英国ダイアナ妃の「死因審問」が日本のメディアでも連日報道されただけに、それを覚えている日本人読者には「死因審問」のほうが耳慣れているのではないでしょうか。 . | ||||
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まだまだ読んでいないミステリの名作ってあるんだよな、ということを本書を読み終えてしみじみと思った。それぐらい堪能した、という意味である。僕はそれなりに名作・傑作の誉れ高いミステリを洋の東西を問わず読んできたつもりであるが、本書クラスの知名度の作品はけっこうスルーしているのだ。クロフツは『樽』だけの作家ではないのですね、当たり前だけど。 『クロイドン発12時30分』は、フランシス・アイルズの『殺意』、リチャード・ハルの『伯母殺人事件』と並ぶ、3大倒叙ミステリだそうだ。倒叙ミステリとは何かを語るとき、テレビドラマシリーズの『刑事コロンボ』がよく持ち出されるが、じゃあこれらの諸作がコロンボみたいな話かというと、そうでもなく、それぞれにスタイルは異なっている。共通しているのは、犯人が最初から分かっている、という程度だろう。 本書では1章でまず殺害場面が描かれ、2章以降からフラッシュバックして犯人の殺人に至るプロセスが描かれる。いよいよ後半に入って警察の捜査も始まるが、しかし主人公は犯人であるチャールズ・スウィンバーンのままだ。警察がどんな捜査をしているか、ということはずっと伏せられている。つまり、コロンボのように探偵VS.犯人の構図はなく、捜査側はあくまで遠景なのである。 だから、エッジの効いた落とし方で「ジ・エンド」となるはずもなく、犯人は普通に逮捕され、公判にかけられ、ラストは法廷ミステリ風になっていく。もちろん最後には「実は裏でこんな推理と捜査してたんですよ」とフレンチ警部によって種明かしがされるわけだが、おしなべて趣は犯人の心の動きを追った心理サスペンスだった。それはそれで面白かった。 古い海外小説ファンにはおなじみの翻訳家・大久保康雄氏の名前も懐かしかったけれど、2カ所ほど写植ミスと思われるところを発見したので、覚え書きを残しておきたい。399ページ12行目の「その夜…」は「その後…」としなければ話が通らないし、404ページ10行目の「証人席から…」は「被告席から…」が正しいと思う。 | ||||
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倒叙ミステリの原点の一つと称される本書。 さすがに面白かったです。 年がたっても色あせないと思わせるところはさすがに「原点」,「古典」と呼ばれるだけあります。 まだ本書を読まれていない読書好きの方にはぜひ読んでいただきたいです。 犯罪者側の心理をここまで詳細かつ,ドラマティックに描ける想像力,構成力はすごいと思います。 警察サイドの捜査の停滞・進展に応じて揺れ動く主人公の心理描写は,ドキドキさせるとともに,「悪いことを隠して生きること」について,誰もが感じたことのある姿,気持ちを的確に捉えています。 殺人の「仕方」については,ごく一般的なものであり奇抜なトリックがあるというもではありませんので,そのような認識で本書を手に取るとがっかりすると思います。 一つの物語として,主人公の立場から,じっくりお楽しみください。 | ||||
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ミステリとしての魅力は他の皆さんも書いているので、私はちょっと別の方向から。私は正直、それほどミステリ、推理小説のファンではないのですが、中学生時代に子供向けの本で読んで以後、30代で文庫を快い、今でもよく読み返しています。犯人の心理がとてもよく伝わってきて、会社を守りたいというよりも、むしろ恋人をつなぎ留めたいという意識、あと、ちょっとは、社員を守りたいという意識が、金を持っているくせに支援をしない叔父を許しがたく思って殺人に至る・・・そのあたりがすごく説得力あるし、青酸カリを買うシーンとかもリアル。そして、裁判での、希望を持ったり絶望したりの繰り返し。どこか憎めない気弱な経営者が、ちょっとしたきっかけで殺人を、しかも不器用に犯してしまう・・・そんな矮小な人間のドラマとしても読めます | ||||
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大げさなコピーだが世界3大倒叙古典傑作の一つとして名高いクロフツによる本作。 他の2編がユーモア小説だったり純文学っぽいテイストであるのに比べて本作は有名推理作家のクロフツが手掛けているだけに、最も本格テイストの倒叙作品になっている。 今からこの3大古典を読むなら本作が一番楽しめるだろう。 刑事コロンボなどが生まれる遥か以前の30年代の創生期の作品のため、毒殺とネタはシンプルで展開もシンプルだが、それでも犯人側からの視点をじっくり書き込むことで、思わず感情移入させられてしまい、捜査の進展によるサスペンスはかなりうまい。 クロフツのフレンチ警部ものの一作だが、この倒叙形式を取り入れたことで際立って作者の作品群の中でも後世に残る作品となった。 | ||||
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クロフツの長編作品を古い順に読んでいる所です。この作品はクロフツ作品では初めてだと思いますが、犯人の側から、これからどうやって自分にとって都合の悪い人間を殺害しようか、と言うストーリーが語られると言う「誰が犯人か?」と言うミステリーでは欠かせない犯人捜しの楽しみがないと言う変わった作品になっています。もちろんフレンチ警部は登場はしますが・・・多くは語らないようにします。一読の価値はあると思います。人によっては好き嫌いはあると思いますが、私は中々面白かったと思いました。 | ||||
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金に困った主人公が遺産目当てに祖父を殺そうと企てるが・・・というお話。 ここで使われている所謂倒叙形式は古くは、100年前くらいから書かれ始めたと言いますが、この作品で一つの完成を見たと言ってもいいのではないかと思うほど、後の同じ形式を使ったフィクションの原型を彷彿とさせるくらいの完成度に思えました。 何故この様な形式を使って書いたかは本人に聞かないと判りませんが、恐らく登場人物の犯罪に至る心理や機微を刻銘に描く事で小説としての完成度を高め、尚且つ推理小説全体のグレードアップを図ったのではないかと思いましたがどうでしょうか。この後に推理文旦に登場するジュリアン・シモンズが提唱した「探偵小説から犯罪小説へ」の流れを形成した意味でもこの小説はとても重要な作品に思えます(蛇足ですが、ここで使われている「犯罪小説」という言葉はアメリカで流行った「クライム・ノヴェル」とは若干ニュアンスが違う様に思えます)。 という上記の歴史的価値を抜きにしても、抜群に面白い推理小説として今でも一読の価値のある作品であるという感慨は読んだ人なら言うまでもありません。 推理小説としての歴史的価値と抜群に面白い小説としての二重の意味で重要な作品。是非ご一読を。 | ||||
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購入決定後に初めて出品者コメントとして、表紙デザインが画面とは異なるとでてきた。 内容はいっしょだからとあったが、表紙のデザインが気に入って購入したのだが、少しがっかり。 あたりまえのようなコメントはちょっと無神経。 | ||||
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素人の犯罪はこんなものだろうなあと思うくらい、突っ込みどころ満載の犯人の不器用さが超リアル。当然のことながら、フレンチに手もなくひねられる。警察の前でビクビクキョトキョトしてしまう犯人には、コロンボに出てくる犯人のような自惚れぶりも敏腕刑事と対峙する意気込みも無い。なので、倒叙の醍醐味でもある犯人に骨のあるシーンを期待すると裏切られる。とにかく、シロトが犯罪はやめとこうぜ!と思わせる一冊で、そこが読みどころとも思う。これが面白かったら、シロト+倒叙のぎっしり詰まった「クロフツ短編集1・2」と「殺人者はへまをする」もお勧めです。 | ||||
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