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スクールボーイ閣下



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スクールボーイ閣下の評価: 4.64/5点 レビュー 28件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.64pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全26件 1~20 1/2ページ
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No.26:
(5pt)

ル・カレの作品らしく、緻密に構築された、アジアが舞台の謀略小説

前作「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」で宿敵になったソ連のカーラに、スマイリー達が仕返しを企み・・・というお話。

今回はアジアや中国、英領だった香港が舞台で、そこのイギリス人にカーラから報酬を受けていると思われる人物を探り・・・という展開になっておりました。

「ミステリ名作絶対201」というガイドブックの座談会で、評論家だった瀬戸川さんが、ル・カレについて、売れた性で中国や中東の事象に関らないといけなくなった、という発言がありますが、「リトル・ドラマー・ガール」が多分、中東問題で、本書が中国ではないかと思いますが、長い間翻訳されず、座敷童扱いだったエリック・アンブラーの「グリーン・サークル事件」でも中東問題が取り扱われているので、この頃の時代状況で、共産圏との確執と中東問題は、政治性に敏感だった作家は関わらざるをえなかった様に思えます。

その後、現在(2024年くらい)中国とアメリカの覇権争いや、ロシアのウクライナ軍事侵攻の時代になりましたが、ル・カレがどういう風に思ったり、作品にしたりしたら・・・とか考えてしまいます。個人的にも、中国対アメリカは想定内でしたが、ウクライナ戦争は想定外だったので、始まった際は結構驚きました。また世界情勢が緊迫していて、第三次世界大戦の戦前、或いはもう始まっているという状況ですが、戦争が人間の現象ではなく、営為みたいで悲しいです。英領だった香港も中国に返還されましたが、英領の頃の方がいい、という人も多いそうで、中国政府と香港在住の方で険悪になっていたり・・・とまだ謀略小説のネタになりそうな事象が多いのも不幸に思えます。

この人の作品は、一応好きで読んでおりますが、一回読んだだけでは判読できず、二回読む事が多いのですが、本書も二回読みまして、長いのでうまく読解できたかは微妙ですが、それでも何とか読み終わり、読解したーつもりですがー感じです。

という個人的な感想はともかく、本書も他のル・カレの作品同様楽しめたので、できれば「ティンカー、~」からシリーズ順に読む事をお勧めしておきます(前作で判明する裏切り者のキャラクターの名前がはっきり出てくるので)。

ル・カレの作品らしく、緻密に構築された、アジアが舞台の謀略小説。是非ご一読を。

蛇足ですが、作中で印象に残った文章を挙げると、

債権者刑務所に生まれて、自由を買いとるのに生涯をすごす世代がある

いまは政治よりも美女をのせる新聞が多くなればなるほど、世の中はるかによくなる可能性がふえるんだ

となりました。

失われた30年で生きづらくなった世代と、週刊誌でヘアヌードが増えたけど平和じゃない、今の日本を考えさせる文章に思えました。

あと、作中にピムという名前が出てきた様に記憶しておりますが、「パーフェクト・スパイ」の主人公ですかね?
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
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No.25:
(4pt)

思惑が交錯する先が読めないストーリー

スマイリー三部作というものの、ジョージ・スマイリーは脇役で、主役は優秀な工作員のジェリー・ウェスタビー。舞台は、英国、イタリア、香港、ラオス、ベトナム・・・と様々な国に移動しつつ、情報部と工作員との温度差や、予算不足により危険な異国の地で少人数での対応を強いられる工作員たち、情報部内の水面下の権力抗争、情報漏洩により惨殺されたり、命の危険にさらされる工作員や情報提供者たち、まるで将棋やチェスのように相手の出方を伺いつつ欲しい情報を得たり、目的の行動を促し、誤れば自身の身の危険に直結する会話の数々。作者は、情報部の機密漏洩に抵触しないように小説を書いているというものの、読者に違和感なく臨場感あるストーリー。読者は物語を通して、著者の組織の在り方に対する静かな抗議を読み取るのではないでしょうか。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
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No.24:
(5pt)

大河小説の趣

イギリス諜報部員ジョージ・スマイリーとソ連諜報部員カーラとの対決3部作の2作目ということで読み始めたが、大河小説を読む感動を覚えた。多くの人物を登場させて一人一人を丹念に書き込んでいる。これまでのル・カレの作品は、ヨーロッパを主な舞台とした現在進行形の物語だったが、本作では時空間を広げてみせた。主な舞台は香港を皮切りにアジア各地に及ぶ(本作から著者は現地取材を始めた)。時はイギリスが香港を英領植民地と宣言した1841年にまで遡る。リアルタイムで記述される物語の時期区分は、1974年のアジアの台風を起点とし、1975年のベトナム戦争終結まで。背景となる現実の世界は激動の時代だ。第一次石油危機直後の大不況。冷戦最中のアジアにおける熱い戦争。中国の文化大革命と中ソ対立の激化。
 スマイリーとカーラが直接対峙することはない。カーラは写真で登場するだけだ。スマイリーの執務室に、粒子があらわで亡霊のような彼の写真が架かっている。諜報部トップの執務室に敵の写真を掲げるとは異様な光景だ。それほどまでにスマイリーはカーラを絶えず意識し憎んでいる。その憎しみは時に公務を離れ私怨になる。どうしてそうなるかは、前作『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』(以下『ティンカー』)を読めばよくわかる。
 直接対峙するのは、イギリス諜報部の準工作員ジェリー・ウェスタビーと、香港の大富豪で、ソ連の闇資金の受取人で、ソ連のスパイ容疑がかかっているドレイク・コウだ。
 『ティンカー』での功績が評価され諜報部チーフに就任したスマイリーは、“人事の妙”を発揮し、トスカーナでぶらぶらしていたウェスタビーを現場に呼び戻した。ウェスタビーは任務に、そして任務に伴う冒険へと突き進んでいく。
 コウは上海生まれ。中華人民共和国誕生直後の1951年に香港に移民し成り上がった。富と名誉を手にした超大物で政治嫌いの彼が、なぜ共産主義国から資金を受け取っているのだろうか?
 ウェスタビーがコウの愛人に惚れてしまい暴走が始まった。香港蒲台島での2人の直接対決は、さながら巌流島決戦だ。ただし巌流島と違って、ヒーロー役のウェスタビーのほうが待ちぼうけをくわされるのだが。
 最後に一言。著者は本作の次に公刊された『スマイリーと仲間たち』のペンギン版原著の序文(日付は2000年10月とある)の中で、「私はスマイリーとカーラを不必要なものとみなすようになった。2人が登場していなかったら、『スクールボーイ閣下』はもっと出来のいい小説になっていたのではないかと今でも私は信じている」と回想している。スマイリーとカーラ抜きでこれ以上によくなる!?・・これはすごい告白だ。でも本人がいうのだからきっとそうなのだろう。ル・カレの息子で作家のニック・コーンウェルに是非、スマイリーとカーラ抜きの別バージョンを書いてもらいたいものだ。
スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels)より
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No.23:
(4pt)

スマイリー三部作の二番目

上巻を読み終えた時点の感想としては、前作の方が面白かったかな、という程度でした。

しかし、下巻まで読み終えた段階でこの上巻部分を振り返ると、上下に分けて評価するのはあまりにも意味のないことだったと考えさせられます。極めて細かい部分から、一つの物語の完結まで妥協なく積み上げ続けていく緻密さと、俯瞰的は構成力は圧巻です。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
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No.22:
(5pt)

心理描写の奥行き

ウェスタビーがなぜ、最後にあのような行動をとるに至るのか?
何が彼をそこに駆り立てたのか?
最後まで読み終えてわかったのは、この作品が一貫してそれを説明づけるために描かれたものであったということでした。

語りすぎず、しかし、決して置き去りにはしない。そんな場面が多くありました。

他のたくさんのスパイ小説やサスペンス作品のように、多数の人が死んだり血が流れるわけではないのに、確かな痛みを感じ、登場人物たちの内面に触れ、そして来るであろう悲しいクライマックスを受け入れる準備が積み上げられていきます。
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
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No.21:
(5pt)

薄っぺらな推理小説にうんざりの人に

格調高い作風で、じっくり読みたい読者向け。
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
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No.20:
(5pt)

対照的なふたりの主人公

本作では主人公がふたりになります。
 ひとりは我らがジョージ・スマイリー。〈サーカス〉のチーフ。
 そして、もうひとりはジェリー・ウェスタビー。〈サーカス〉の現地工作員。

 このふたりがことごとく正反対であり、交互に語られる物語にメリハリを生んでいる。
 幹部と末端。思考する小男と行動する大男。堅実さと奔放さ。先進国と発展途上国。
 あくまでも静かに仇敵カーラに迫るスマイリーのシーンと、銃撃や格闘、恋愛までもが混じるウェスタビーのシーン。

 ウェスタビーが入ったことによって物語に「動」が生まれ、エンターテインメントとしても一流のものになっていると思います。
 イギリス統治下の香港や戦時下のカンボジアなど、綿密な調査に基づく描写も雰囲気を作り上げています。

 さて、ふたりの主人公を待つ結末とは……。
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404321
No.19:
(5pt)

面白かった!

きれいな状態でよみました。興味深くたのしみました。
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404321
No.18:
(5pt)

時間をかけた取材による緻密なプロット構成。

このストーリに描写されていて読者が味わう臨場感は、著者のジョン・ル・カレが本書の上巻の序文で書いていたように綿密な準備によっている。
 著者は、香港をはじめインドシナ半島(ベトナム、ラオス、カンボジア、タイ)などへ足を運び取材していることは、本書を読む読者なら誰でも知ることになるはずだ。
 この物語の主人公ともいえる臨時諜報員(表むきには新聞記者)のジェリー・ウェスタビーが香港の活動に不安を覚えたサーカスは、ジェリーをベトナムへ飛ばすところから下巻は始まる。
 ジェリーがタイのアメリカ空軍基地に辿りつき、そこのマスターズ少佐(CIA諜報員)からベトナム戦争でアメリカが負けたことを聞くところで、その時が1975年5月初めだと読者は知ることになる。
 著者が戦時下のインドシナ半島の混乱を、ノンフィクションのように描写しているから、評者には、四十数年の時が過ぎたのに昨日のことのようにリアルに読ませてくれた。
 ネタバレになるが、ギラムの懸念が明らかになり、カズンズ(CIA)に、「トンビに油揚げさらわれて」しまう。
 ジェリーの唐突ともいえるパッションも悲劇として終焉をむかえ、香港外国人記者クラブで若輩どもの言動を聞きながら長老 「クロウ老人」 が怒り狂い、そしてスマイリーとカーラの対決に終わりなく、三部作の最終版『スマイリーと仲間達』も読むしかないなあ、と思いながら本作を読み終えたのです。
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404321
No.17:
(5pt)

フィクションと思えないジョン・ル・カレ作品。

「スマイリー三部作」の第一作『『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』を先に読んだのでどうしても第二作の『スクールボーイ閣下』を読みたくなってしまったので読むことにした。
 このスマイリーシリーズは、大昔読んだ記憶であるが、第一作が映画化されたからよく覚えていた。
 が、この二作目の『スクールボーイ閣下』1977年、(邦訳版1979年)の上巻を読みはじめてもほとんど忘れていた。
 第一作でサーカスの幹部のひとりビル・ヘイドンの裏切りからサーカス組織は壊滅的な打撃を受けていたが、この第二作目では組織に返り咲いたジョージ・スマイリーが、サーカスの組織を立て直すことに奔走する物語として著者は書きはじめる。
 出先機関から撤退する指令を受けた香港の情景から物語は始まるが、組織に残った少数の信頼できるメンバーだけでのサーカスの活動には限界がある(活動資金獲得の苦労なども描いている)。
 香港で工作員をしていたサム・コリンズがもたらしたロシア(カーラ機関)から巨額な資金の流れを知ったスマイリーが、その資金をプールする香港の胡散臭いコングロマリットの頭目ドレイク・コウの監視活動を始める。
 イタリアの片田舎に隠遁していたジェリー・ウェスタビーを呼び戻して香港へ派遣し、サム・コリンズの情報の裏を取ることから始める。
 ギラムの目線で語られるページが面白く読ませてくれるし、またストーリーが入り組んでいるから読み流すようなことは出来ないから疲れてしまう。
 一章の「サーカス、町を去る」から十二章の「リカルド復活」まで細かい文字を眼を疲れさせながら、『スクールボーイ閣下』上巻を読み終えた。
 第一作目よりインパクトには欠けるが、この第二作目もジョン・ル・カレならではの長いデティールに拘る描写を重ねてストーリー展開してゆくから、やはり惹きこまれて読み進むことを強いられ寝不足ぎみになってしまった。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
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No.16:
(5pt)

偉大な英国小説の伝統

長尺ではあるが、ル・カレ作品の中で最も読み易く、物語も起伏に富む。ル・カレ入門編としても勧めたい。
エスピオナージュとしてのプロットの構図の見事さ、茹だるような香港の描写、一見無表情な中に込められた胸裂かれるようなエモーショナルで悲痛な心情、全て英国小説の偉大な伝統そのもの。即ち点数は満点以外考えられない名作。特に視覚的描写も鮮やかな結末は忘れ難い。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404313
No.15:
(4pt)

現場とスマイリーとの同時並行

スマイリー三部作の第2弾である。前作は、スマイリーの孤独な探索をメインにした話であった。本作は、スマイリーよりも、現場工作員のジェリーの活躍が目立つ作品である。
 現場の過酷さを理解しながら、探索を続けるスマイリー。その周囲で、政治でうごめく安全領域にいる人々。長編でしか繰り出せない物語だ。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404313
No.14:
(5pt)

現実味のあるスパイ物

MI6とジエームズボンドの世界が、ほとんど同心円の中で育った世代にとって、どこか嘘臭くても、ひと昔前のスラップスティックのように大いに楽しめたことは言うまでもありません。ところがジョン・ル・カレの本を読むと、お話の世界から真実のスパイの世界に引きずりこまれるような感覚になります。綺麗なお姉さんさんもアストンマーチンも登場しないけれど、スパイの世界を身近に感じさせる迫力があるのです。
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No.13:
(5pt)

偉大な小説

無粋な上下巻の文庫版ではなく、真鍋博の知的な装丁の単行本こそ、この風格ある偉大な小説に相応しい。

宿敵カーラ率いるKGBに反撃するべく、ロンドンで再起をはかるスマイリー率いる英国諜報部の人間模様と冷徹な頭脳戦。返還前の権謀渦巻く香港の詳細な描写。動乱期のカンボジアのカオス的状況を生き生きと描き出す迫力。それらを背景にスパイに成りきれなかった男の任務の顛末が綴られ、その悲劇的肖像は結末におけるスマイリーの述懐とともに読者の胸に永遠に残り続けるだろう。

ジャンル小説としてのエスピオナージを軽視するつもりは全くないが、ル・カレを評価する際、比較対象となるのは凡百のスパイ作家ではなく、ディケンズやバルザックとなるのが正当に思える。
スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels)より
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No.12:
(5pt)

ジョン・ルカレ 最高です

一気読みできます。三部作 一気通貫。ぜひ読んでください。スパイ小説は色々ありますが、英国のは渇いた感じがイイです。
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No.11:
(5pt)

カレの最高傑作では?

ずっと以前にカレが好きで、ほとんど全部の作品を読んだと思います。発表された当時イギリスでも高い評価を得たと記憶しています。この作品ほど人間の心のひだをえがいた作品が他にないような気がして特にスクールボーイ閣下に魅かれました。残念なのは、このスクールボーイ閣下という訳なのですが、はじめてカレを手にする方には、少々イメージしにくい感じがします。そして、今の時代と国と国の緊張関係がおおきく変わっています。それをふまえた上で読んでみる事をお勧めします。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404313
No.10:
(5pt)

切ない

今まで読んで来たル・カレの作品の中ではちょっと毛並みが違って、
舞台はカンボジアから香港と幅広く、
作品名のスクールボーイ閣下も良く喋るし良く動きます。
007ほど派手なドンパチはありませんが、
車に爆弾を仕掛けられたりと手に汗握ります。

スクールボーイ閣下はスパイではあるが好青年で、
閣下が何日も考えて、自分が間違っていないと考える行動に出るところに、
とても好きです。この作品の救いだと思います。

ギラムの役に立たなさが笑えます。
会議中落書きしたり、女の子と上手く行ったり、骨折られたりしか
していません。(香港での運転は役に立ったかな)
スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下 (1979年) (Hayakawa novels)より
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No.9:
(5pt)

中核の作品

スマイリー3部作の中核を担う1冊。前作から 引き続いた形で、直ちにサーカスを建て直すべくスマイリーと仲間たちが動き出します。
この第2作は何と言っても実際の諜報活動に従事するスパイ、活動員たちが主役です。
表の顔を持ちながらスパイ活動を続ける種々雑多な彼らの中でも、現地に骨を埋めるような老スパイの確かな手管、直情型のスクールボーイが巻き起こす波紋。そして彼らを援護しリードするサーカス。
中でも一本の線で結ばれたかのようなスマイリーとスクールボーイは裏表の存在というべきでしょうか。
不貞の妻アンに対してスマイリーができなかった直情をスクールボーイはいとも簡単に軽薄なリジーにぶつけ、作戦を危機に落とします。
しかしそんな中でも心情的中に同調を感じるスマイリーの人としての複雑さ、奥深さ。

ストーリーとして一級であるとともに「情誼」という言葉が相応しい1冊です。
スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404313
No.8:
(5pt)

頑張ってでも読みましょう。

ベルリンの壁が壊された時、
「エスピオナージュ事情はどうなるんだ!?」と叫んだ私に父が
貸してくれた本著、初版刊行当時の私は20代の小娘でした。
 まあ、離陸が遅い遅い、知らない日本語だらけの描写に何度も挫けそうに
なりながらも頑張って読んだ。途中からはのめり込み、夢中で読み、
結末に唖然とした。甘ちゃんだったから、「そんなあ・・・」と。
女としてはタイトルもスマイリーシリーズの中ではキュンとなる主人公の
愛称だったこともあって、ベストワン作品だったと思う。

 以来、カレの作品はほとんど読んでいるが、スマイリーシリーズを越える
興奮はもらっていない。
 昨年『ティンカー・テイラー・・・』が映画化され、
また、私が最近はまっているスピッツの『夜を駆ける』という曲を
初めて聴いた時に浮かんだ情景が『スクールボーイ閣下』の結末に
味わった切なさとだぶり、そんなことがきっかけで、また読んでみた。

 息詰まる情報分析のやりとり、CIAとの駆け引き、それぞれ一癖も
ふた癖もある人間たちのエピソードの描写が、冗漫をギリギリで
かすめくぐり、
緊迫感と人間臭さをギュウギュウと私の胸に揉みこんでくるカンジに
やっぱり圧倒された。

 そして、頭が良いはずのスマイリーが不貞妻へいつまでも女々しく
執着する姿は、あの時の私には理解不能だったけれど、
今回は‘スクールボーイ閣下’とスマイリーの、‘できる’オトコの
人間としてのひび割れの相似形を透かして見ることができた。 
 でもスクールボーイ閣下が惚れた女はなあ・・・ やっぱり了解できない。
たぶんそういうことじゃないのね。女のため、じゃなかったんだ。
 今の私の理解はそこへ着地している。
 
 小娘だった私に、オクスフォード大学の食堂でMI6に
スカウトされることを夢想させ、
若かった時とは違う切なさと、読破した後の脱力感を与えてくれる
カレの作品をもうこれからそれほど多くは手にすることはできないことを
思うと、やっぱりとても残念だ。

 


スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150404313
No.7:
(5pt)

赤いもぐらの正体は?

「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ」に続くスマイリー三部作の二作目です。約20年前に単行本で読み、何度も読み返しています。多くの方にお薦めしたいので、こちらでレビューさせて頂きます。

本作を読む場合には東西冷戦時代に中ソ対立が一触即発の状態にまで高まり、互いに情報合戦にしのぎを削っていたことを念頭に置く必要があります。また、シリーズの他の作品と異なるのは、話の主な展開がヨーロッパではなくアジアであることです。

前作で、英国情報部(サーカス)は部内に潜むソビエト側スパイ(もぐら)により大打撃を受けました。内閣からの秘密の依頼により、引退したジョージ・スマイリーが部外から綿密な調査を行い、最終的にもぐらの正体を暴くことに成功しました。しかし、サーカスの信用はがた落ちになりました。今回、この廃墟と化したサーカスを立て直すべくスマイリーが運営責任者(コントロール)として乗り込んできます。彼は冷酷とも言える断固たる姿勢で体制を一新し、側近となる高級スタッフを新しく選任します。その中には、中国専門家のドク・ディサーリスや前作でも登場した超人的頭脳を有する女性コニー・サックスが含まれ、活躍します。

スマイリー達の部内資料の精査や聴き取りにより、香港在住の謎の中国人富豪ドレイク・コーへの不審な金の流れが明らかになります。すなわち、ソビエト情報部(モスクワセンター)の運営責任者でスマイリーの仇敵であるカーラから、複雑な経路を経て定期的に大金がコーの口座に振り込まれ、使われずに積立られていることが付きとめられます。

スマイリーの指令により現地でコーの正体に迫るのは、諜報員のジェリー・ウィスタビーです。彼は英国貴族の子弟で、そのために「honourable schoolboy(スクールボーイ閣下)」と冷やかされる直情径行の青年です。コーの愛人の英国女性リジー、リジーが激しい愛を抱く元恋人のパイロット(リカルド)、それにウィスタビーのリジーに対する複雑な思いなどがからまり、話が展開して行きます。

最終的に、中国共産党の中枢部にカーラの操るもぐらが存在することが明らかになります。さて、宿敵カーラに打撃を与えるために、スマイリーはこのもぐらを一体どのようにするつもりなのでしょうか?また、もぐらとコーの関係は?なお、最終場面で悲劇が待っています。

長すぎるという批判の多い作品で、私もそのように感じます。しかし、ウィスタビーの取りつかれた想いや肉親に対するコーの偏愛(彼の悲しい生い立ちが背景にある)など、冷徹な諜報の世界と狂おしい情念の世界が並行して描かれ、最後まで読ませます。そして、前作と本作はシリーズ第三作の「スマイリーと仲間たち」の最終章の伏線となっています。

非常に緻密で複雑なプロットで登場人物も多いので、リストを作りメモをしながら読まれることをお勧めします。
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