パーフェクト・スパイ
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冒頭からル・カレのエスプリが効いている。スマイリー三部作に勝るとも劣らぬ傑作。じっくり味わって読めるスパイ小説。 | ||||
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スパイ小説のカテゴリーから考えると本書『パーフェクト・スパイ』は型破りの作品である。 ル・カレのスマイリー5部作のあとを継承するような小説を期待して読んだ読者は戸惑うはずである。 評者も本書の上巻の半ばまで読んでくるまで正直いって面白い作品だと思えなかった。 が、主人公のマグナスと偶然知り合ったアクセルとの織りなすエピソードに引き込まれながら読み進むことになってしまった。 レーガンとゴルバチョフと会談するレイキャヴィークが、ル・カレがこの小説を発表する同じ1986年であるから、時代背景としてリアリティがある。 アクセルがマグナスに「もう潮時だ!コンピュターで二人の関係も知られてしまう」と話すところなどは、ル・カレの作家としてではなく、元スパイとしての経験から創造したことだろうと思いながら読んでしまった。 真実も嘘も国家の秘密など表裏のパラドックスでしかない、所詮人間なんかこんなものだよ、というル・カレのメッセージと言ってもいいように読めば納得することもできるエンディングである。 内省的な物語進行で地味な物語に終始するこの作品の評価は読者の好みで分かれるだろう。 巻末の解説で作家の高村薫さんも述べていたように、スパイ小説の傑作であることだけは確かである。 | ||||
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著者のジョン・ル・カレは、イギリス情報部MI6で諜報活動した経験もあり、スイスのベルン大学に在学した経験もあるから、この物語で語られる背景にリアリティを感じながら読まされることになる。 本書『パーフェクト・スパイ』を、ありきたりなミステリを読むつもりで読み始めた読者は多分戸惑うだろう。 主人公マグナス・ピムは、隠れ家の二階で少年時代の自分を語ったと思うと、次ページでは上司だったジャック・ブラザーフッドや息子のトムあてに手紙を書くような文章で場面を展開していく。 闇屋上がりの詐欺師のような父リチャード(リック)・ピムへの自分でも理解できないマグナスの感情表現などル・カレならではの筆致で読ませてくれる。 謎の男アクセルとの出会いも物語に色を添えながら物語は進んでゆく。 丁々発止とスパイが渡り合う派手な物語ではないが、ページを繰るごとに諜報活動の裏面にのめり込んでゆく。 ネタバレになるから内容を書くことは控えるが、下巻を読むのが楽しみに思いながら上巻を読み終えました。 | ||||
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元来ルカレの作品は、読みづらくややもすると筋が追い切れなくなる。だが、余りにも詳細に過ぎる風景描写や、内省的すぎる人物像の 掘り下げも、圧倒的な最終章までの伏線であり、その何とも言えぬ深く継続的な読後感が、たまらない。私は間違いなくルカレストだと自負 している。全てのルカレ作品を複数回ずつ読んでいる私にとって、間違いなく最も難解でなかなかページをめくる手が進まなかったこの 作品「パーフェクト・スパイ」を30年ぶりに再読する。出来るだけゆっくりと、場合によっては、何ページか戻りながら読む。やはり難解だ。 マグナス・ピムという英国外交官の父が死ぬ。彼はそれを機に姿を消す。いや、ある隠れ家に籠って、自分の息子に残すべく自分の歴史を 綴る作業を始める。ピム自身が主格になったり、第三者が主格になったり、どんどん話者が変わるだけでなく、時代も現在(1982-1983年 頃)から、戦中、戦後、何の説明もなくどんどん切り替わる。この作品は、詐欺師を父に持ったルカレの自叙伝とも言われている。それだけに 思い入れが大きいのか、あるいは、いつものように読者に阿ることを一切排除するカレの作風ゆえか、筋の進み方も遅く、ついて行くのが しんどい。この作品を通じて、主人公であるピム自身の実態が分からない。いや、そのような人物をルカレは敢えて描いてみせる。英国や チェコ側のコントローラー、そう彼は二重スパイである、両方から彼は絶対的な信頼を得る。それはスパイとしての技術や経験を通してではない。 人間として愛される。彼はどのような人間にもなってみせる。だから、生まれながらの「パーフェクト・スパイ」なのだ。ある意味、ルカレの殆どの 作品で描かれる主要人物に共通するのは、純粋な魂である。滑稽なくらいの純愛や、友情が何の衒いもなく書かれる。この、ピムも そのような「純粋な魂」の権化かも知れない。これを深いエスピオナージ作品ということも出来るだろう。だが、これは人間の魂が如何に 純粋であり続けようとして葛藤していく人間ドラマであり、紛れもなく純文学であろうと思う。 | ||||
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あるスパイが勤務先から消え、隠れ家で自らの半生を文章にし始めるが・・・というお話。 兎に角、読みにくい作品で、主人公のスパイが自分の若い頃を回想するのに三人称をつかったかと思うと、いきなり一人称になったり、若い頃から老年に至るまでを時系列に沿って記述しないで、色々な場所や時間に話が飛び、そこにピムを巡る登場人物の行動等が挿入されるので、かなりの精読が必要になります。これは多分、主人公のマグナス・ピムを英国の現在・過去・未来のメタファーにして滅びゆく大英帝国の欺瞞・虚無・破滅を語りたかったからだと思いました。主観と客観が入り乱れるのも一つの事象や想念をあらゆる角度から検証しようという実験的な作法故ではないかとも思いました。 ラウリー「火山の下で」並みに難解な小説で、娯楽小説としての面白さは若干欠けるきらいはありますが、スパイ小説史上絶対に読んでおかなくてはならない重要な作品。是非ご一読を。 | ||||
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