■スポンサードリンク
パーフェクト・スパイ
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
パーフェクト・スパイの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.86pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全14件 1~14 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
冒頭からル・カレのエスプリが効いている。スマイリー三部作に勝るとも劣らぬ傑作。じっくり味わって読めるスパイ小説。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
スパイ小説のカテゴリーから考えると本書『パーフェクト・スパイ』は型破りの作品である。 ル・カレのスマイリー5部作のあとを継承するような小説を期待して読んだ読者は戸惑うはずである。 評者も本書の上巻の半ばまで読んでくるまで正直いって面白い作品だと思えなかった。 が、主人公のマグナスと偶然知り合ったアクセルとの織りなすエピソードに引き込まれながら読み進むことになってしまった。 レーガンとゴルバチョフと会談するレイキャヴィークが、ル・カレがこの小説を発表する同じ1986年であるから、時代背景としてリアリティがある。 アクセルがマグナスに「もう潮時だ!コンピュターで二人の関係も知られてしまう」と話すところなどは、ル・カレの作家としてではなく、元スパイとしての経験から創造したことだろうと思いながら読んでしまった。 真実も嘘も国家の秘密など表裏のパラドックスでしかない、所詮人間なんかこんなものだよ、というル・カレのメッセージと言ってもいいように読めば納得することもできるエンディングである。 内省的な物語進行で地味な物語に終始するこの作品の評価は読者の好みで分かれるだろう。 巻末の解説で作家の高村薫さんも述べていたように、スパイ小説の傑作であることだけは確かである。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
著者のジョン・ル・カレは、イギリス情報部MI6で諜報活動した経験もあり、スイスのベルン大学に在学した経験もあるから、この物語で語られる背景にリアリティを感じながら読まされることになる。 本書『パーフェクト・スパイ』を、ありきたりなミステリを読むつもりで読み始めた読者は多分戸惑うだろう。 主人公マグナス・ピムは、隠れ家の二階で少年時代の自分を語ったと思うと、次ページでは上司だったジャック・ブラザーフッドや息子のトムあてに手紙を書くような文章で場面を展開していく。 闇屋上がりの詐欺師のような父リチャード(リック)・ピムへの自分でも理解できないマグナスの感情表現などル・カレならではの筆致で読ませてくれる。 謎の男アクセルとの出会いも物語に色を添えながら物語は進んでゆく。 丁々発止とスパイが渡り合う派手な物語ではないが、ページを繰るごとに諜報活動の裏面にのめり込んでゆく。 ネタバレになるから内容を書くことは控えるが、下巻を読むのが楽しみに思いながら上巻を読み終えました。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
元来ルカレの作品は、読みづらくややもすると筋が追い切れなくなる。だが、余りにも詳細に過ぎる風景描写や、内省的すぎる人物像の 掘り下げも、圧倒的な最終章までの伏線であり、その何とも言えぬ深く継続的な読後感が、たまらない。私は間違いなくルカレストだと自負 している。全てのルカレ作品を複数回ずつ読んでいる私にとって、間違いなく最も難解でなかなかページをめくる手が進まなかったこの 作品「パーフェクト・スパイ」を30年ぶりに再読する。出来るだけゆっくりと、場合によっては、何ページか戻りながら読む。やはり難解だ。 マグナス・ピムという英国外交官の父が死ぬ。彼はそれを機に姿を消す。いや、ある隠れ家に籠って、自分の息子に残すべく自分の歴史を 綴る作業を始める。ピム自身が主格になったり、第三者が主格になったり、どんどん話者が変わるだけでなく、時代も現在(1982-1983年 頃)から、戦中、戦後、何の説明もなくどんどん切り替わる。この作品は、詐欺師を父に持ったルカレの自叙伝とも言われている。それだけに 思い入れが大きいのか、あるいは、いつものように読者に阿ることを一切排除するカレの作風ゆえか、筋の進み方も遅く、ついて行くのが しんどい。この作品を通じて、主人公であるピム自身の実態が分からない。いや、そのような人物をルカレは敢えて描いてみせる。英国や チェコ側のコントローラー、そう彼は二重スパイである、両方から彼は絶対的な信頼を得る。それはスパイとしての技術や経験を通してではない。 人間として愛される。彼はどのような人間にもなってみせる。だから、生まれながらの「パーフェクト・スパイ」なのだ。ある意味、ルカレの殆どの 作品で描かれる主要人物に共通するのは、純粋な魂である。滑稽なくらいの純愛や、友情が何の衒いもなく書かれる。この、ピムも そのような「純粋な魂」の権化かも知れない。これを深いエスピオナージ作品ということも出来るだろう。だが、これは人間の魂が如何に 純粋であり続けようとして葛藤していく人間ドラマであり、紛れもなく純文学であろうと思う。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
あるスパイが勤務先から消え、隠れ家で自らの半生を文章にし始めるが・・・というお話。 兎に角、読みにくい作品で、主人公のスパイが自分の若い頃を回想するのに三人称をつかったかと思うと、いきなり一人称になったり、若い頃から老年に至るまでを時系列に沿って記述しないで、色々な場所や時間に話が飛び、そこにピムを巡る登場人物の行動等が挿入されるので、かなりの精読が必要になります。これは多分、主人公のマグナス・ピムを英国の現在・過去・未来のメタファーにして滅びゆく大英帝国の欺瞞・虚無・破滅を語りたかったからだと思いました。主観と客観が入り乱れるのも一つの事象や想念をあらゆる角度から検証しようという実験的な作法故ではないかとも思いました。 ラウリー「火山の下で」並みに難解な小説で、娯楽小説としての面白さは若干欠けるきらいはありますが、スパイ小説史上絶対に読んでおかなくてはならない重要な作品。是非ご一読を。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
スパイという仕事?は過酷でしかも虚しい。防諜は諜報と裏腹だ。敵に情報を与えるように見せかけて相手から情報を盗み取る。互いにこんな虚しいことを繰り返していた時代。ル・カレの作品はスパイを決して賛美しない。スマイリー三部作でもそうだ。スマイリーたちは虚しさの中で、それでも自分が生まれた国だから忠誠を尽くす。マグナスは愛情に忠誠を尽くした。でも彼は真の愛情を受けることはなかった。とても悲しい作品です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ブンガクってあるよね? ディケンズ「オリバーツイスト」とかトマス・マン「トニオ・クレイゲル」とか 芥川龍之介「ある阿呆の一生」とか。 ・・・あるいは映画「太陽の帝国」の日米にすり寄るクリスチャン・ベール英少年の生き様といわないともう判らないかな。 社会的に、精神的に、孤児の少年が、自身の弱さに直面して 生存本能で、いじめっこに自分の宝物あげたり 好きでもない教師にすり寄ったり、大人のふりをして赤面するような嘘をついたり そういう辛い思い出、痛々しい自分を文章にする、ブンガクショウセツ(文学小説)って奴。 文体も含めて、こういう19世紀ショウセツを読むのが好きでないと本作品の読書は辛いと思う 作中の少年は、人の歓心を買うため、年中、素敵な嘘をつき、誰をも喜ばせ やがて義務徴兵制で軍務に付き、英国情報部、チェコ情報部、敵味方の下っ端に買われる。 双方を喜ばすため、相互に情報を売るうちに、 「凄い感じのいいパーフェクトなスパイ、いやまじいい奴」として20年、30年のスパンで出世。 でも最後、アメリカ情報部の「いや、それ二重スパイじゃね?売国奴じゃね?」と追求を受け、 破滅するちょっと悲しいストーリー 作者も中欧で軍役に付いた時、似た経歴たどったし たまたま作者がモデルにした実在の二重スパイ(なんとかヒルビーという人らしい)も、 中欧でコミンテルン系のチェコ人の管理教育を受けたらしいし 1987?だったかな、発表当時、英米の読書界では絶賛だったらしいよ | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
カレはMI5職員であったと言われるが国家公務員秘密保持法?に抵触するのか詳しいことを語ったことがない。007のイアン・フレミングもそうだ。カレのスパイ小説は007や同世代のレン・デントン(スパイではない)と比較すると文学的で娯楽色は薄い。大体は陰惨なエスピオナージュの世界の「裏切り」や二重スパイが描かれている。優れたスパイはダブル・エージェント的な性格を持っている。誤解を恐れずに言えば「人間はみなスパイ」ともスパイ的性格を持っている。職業にしてるかパーソナりティか処世術である。企業には産業スパイ。会社には部長の「スパイ」がいてうわさ話に耳をそばだてていることは経験してることだろう。奥さんは旦那のスーツのポケットを探り「尾行」までする人もいるそうだ。もう自分以外はみな「スパイ」果たして私自身は何者なのだろう?この小説は自伝的な色彩が強い。冷戦構造は終わり007も定年退職。しかし「スパイ」は終わらない。友人、隣人、同僚、上司。国会議員。公安調査庁には中国、ロシア、北のスパイがゴロゴロいるそうだ。緒方長官自身が逮捕され起訴された。もう丸ごとスパイ機関。スパイ機関がスパイなのだから日本は不思議な国だ。ビビンバ外相もいた。スパイ天国。カルト天国。ジョン・ル・カレもビックリ。次回は日本が舞台だそうだ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
読みにくさ自体は「ドイツの小さな町」以後のルカレのたいていの小説に関して言えることで、彼のファンだったら、もう慣れっこになってる筈です。私的には「スクールボーイ殿下」なんかの方がまだプロットが錯綜してるように感じました。またスパイ小説の王道というわけでもなく、そういうものを求めるなら彼の過去の作品にあたった方が良いかも知れません。 本書の真髄は彼の特質であるレトリックの技量(?)が過剰とも言えるほど発揮されている点で、生半可な文学作品が吹っ飛んでしまうぐらいの凄みがあります。小説を純文学系とエンタメ系に分けるなら、後者における最高作とみなす人が多いのも良く分かる出来栄えです。 実際クロードシモンとかフォークナークラスの作家を引き合いにでも出さない限り、これに抗し得る作品をSF・ファンタジーや推理・サスペンスのジャンルから探せとってもなかなか見つからないんですね。 高村薫さんが「ものすごい小説を読んだ」「嫉妬に狂ったものだった」とか、宇野功芳みたいなテンション高めの解説を書いてますが、よくわかる気がします。 たしかに受ける感銘の質がむしろ純文学に近く、構成も複雑なので、読むのに多少の覚悟がいる小説ですが、いったん手に取ってみると、冒頭の「たたずむにも動くにも常にその同じ姿勢で、イギリス人は遠い植民地に旗を掲げ、大河の源を発見し、沈みゆく船のデッキに立ってきたのだ」の一文あたりから引き込まれて、案外最後まで読み通してしまうかもしれません。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
完璧な作品。ル・カレの最高傑作であり、かつ、スパイ小説の最高傑作であるだけでなくイギリス文学の最高峰の作品の一つといってよい。確かに読みにくい(特に冒頭の少年時代の描写)が、最初の100ページを我慢すれば最高の読書体験が得られる。なお、ル・カレが初めてという方は、スマイリー三部作から入られることをお勧めする。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ル・カレのお父さんが詐欺師であったらしく これはスパイ小説という側面も持ちながら、作者の自伝 ともなっています。おそらく、彼の作品の中で最も文学性が高く(ということはもっとも 読み進めにくい)作品かもしれません。でも、僕的には断然最高傑作です! ル・カレの作品はいつもの通り、個々人と国家との利害の対立がテーマになっていますが、1人、1人の人物像、くどいくらいに 書き込まれているので、利害や運命に翻弄される主人公の気持ち が痛いほどわかります。スパイというのはつくづく因果な商売、不幸な職業ですね。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ル・カレのお父さんが詐欺師であったらしく これはスパイ小説という側面も持ちながら、作者の自伝 ともなっています。おそらく、彼の作品の中で最も文学性が高く(ということはもっとも 読み進めにくい)作品かもしれません。でも、僕的には断然最高傑作です! ル・カレの作品はいつもの通り、個々人と国家との利害の対立がテーマになっていますが、1人、1人の人物像、くどいくらいに 書き込まれているので、利害や運命に翻弄される主人公の気持ち が痛いほどわかります。スパイというのはつくづく因果な商売、不幸な職業ですね。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
稀代の詐欺師を父親にもつマグナス・ピムが波乱に満ちた少年時代ののち、 イギリス情報部へスカウトされ、やがて東側のスパイとも通じるように なるまでの精神的な変容を克明に描いている。 少年時代の、父親のインチキ会社を綴ったあたりのエピソードは確かに ブンガクしていて非常に読みづらい。19世紀かなんかの古典の文体で書かれたル・カレの文章を更に翻訳で読むわけだから取っ付きにくいのは当 たり前なんだけど(^^;; このハードルをクリアさえすれば(大意をつかめればいいじゃん)、いつも のル・カレの組織論的エスピオナージュとして楽しめる。ピムの視点だけ でなく、妻や上司、CIA側からも描かれているので、単調さは感じない。スマイリー三部作で東西冷戦のスパイゲーム一応の決着をつけたル・カレ が、エスピオナージュの形を借りて、犯罪者の父の影から生涯逃れられず 裏切りと偽りの道を突き進んだ男を掘さげた<悪の成長物語>が本書だ。 お終いの方で出てくる<パーフェクト・スパイ>の一語の重みを味わって いただきたい。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
欧米最高のエスピオナージュ作家、ル・カレの最高傑作。スパイ小説が最高の文学にもなっている。こんなスパイ小説には二度とお目にかかれないだろう。スパイ小説などというのはくだらんマティーニと美女にまつわる話だと思っている人は是非手にとってほしい。ル・カレの作品はどれもこの分野の最高の到達点を示しているが、これは文句なくその中でも最高。未だ読んでいないあなたがうらやましい。これから素晴らしい読書体験ができるのだから。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!