影の巡礼者
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どういう風の吹き回しだろう。ちょっと前に読んだConrad本「Dawn Watch」の中でle Carreへの言及があり、それに触発されたからだろうか。 さらには著者のJohn le Carreが亡くなってから2年ぐらいだろうか。彼の伝記も公認・非公認も含めていくつか出版され、著者の陰影に富んだ生涯もある程度明らかになってきただろうか。 何はともあれ、本棚の奥から探してきたのが、この作品だ。中を見てみると1991年10月に購入している。140ページほど読んだようだが、いつものパターンで途中で放り出している。この後30年以上、著者の作品を購入することはなかった。 もう一度ゆっくりと読み始めてみた。驚くべきことに、思った以上に読みやすい。これには幾つか理由が考えられる。 まず、本作品はエピソードの集積、つまり短編集なのだ。というわけで、著者の作品に共通する複雑なプロットとその熟成のプロセスがこの作品には欠落しているのだ。著者のプロット作成は、英国特有の小道具(風景、言葉づかいやjoke)の多用と独特な雰囲気の醸成に色濃く彩られており、相当な英語力と英国自体についての知識がなければ、ついていけない。ましてや、楽しむなんて。ところが、本書はある人物(英国情報部の新人研修所所長)の時系列的にたどられた回顧録(個別のエピソード)という形式を取っているためだろうか、この苦しさからある程度解放されるのだ。 第二に、本書は三人称的な叙述という形ではなく、主人公Nedが一人称で、自分の英国情報部(SIS、本書ではCircusと称される)でのキャリアの興亡を語るという形を取っているために、読みやすいなのだ。 第三に、nedがこの長い人生の思い出を語る際に、その引出役になっているのが、George Smileyなのだ。隠遁先から、Circusの新人研修所に招待されたSmileyが新人たちの疑問や質問に答えながら、Nedに話を振っていくのだ。これがnedの隠された思い出を引き出す刺激となっていくのだ。どのエピソードもそれ自体は散文的なものだ。華やかさもなければ目を見張る幕引きもない。振り返れば、どうでもいいような出来事の集積と繰り返しなのだ。 話は、時系列的に語られていく。ned自身は戦争中(1940年ごろか)に生を受け、その特異な出生の経歴(オランダ語がnative)から、おそらく1963年ごろにcircusにリクルートされる。彼自身はle Carreの他の作品には登場していないようだ。 本書の設定はソ連崩壊後の1990年代前半に設定されているようなので、当時の情報機関が直面した存在論的な危機を反映しているようだ。この後、le Carreは30年以上、この冷戦期の情報戦を舞台とする作品を書くことはなかった。というわけで、本書はある意味で、le Carreの冷戦を舞台としたこの種のスパイ小説への告別宣言ともいえる。 特に終盤のChapter12では、著者のそれまでの執筆活動の基盤であった彼の哲学がsmileyの口を通して語られていく。冷戦が共産圏の自滅により終了することになっても、情報やスパイという職業や機能がこの世から消え去ることはけっしてありえない。それらは人間や国家さらには政治という存在が本質的に必要とするものであり、その対象が共産圏からテロ組織、麻薬組織などに変わっていくだけ。世界をおおうイデオロギーは我々の自己が作り出した一種の売春婦のようなものというニヒリスティックなものだ。本書はinternetが登場する前に書かれた作品だ。最後にsmileyが指摘するのは、国家機能の拡大による自由の侵害だ。 興味深いのは、ロシアという存在についての彼の考えだ。2つの考えがここでは開陳されるが、ソヴィエト崩壊から30年以上たってロシアによるウクライナ侵攻に直面した今、そのどちらがその後の展開を正確に予測していたであろうか。 というわけで、時代の経過を感じさせることのない作品なのだ。 | ||||
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スマイリーという偉大なアイコン、そして冷戦時代のスパイたちに別れを告げる、1991年に出版された珠玉の連作短編集でした。 全部で13の短編からなっており、冷戦時代を生き抜いた語り手であるネッドのスパイ生活の始まりから終わりまでを通して描かれます。 特に、9番目の作品は圧巻の出来でした。 私にとって、敬愛するル•カレの作品に期待したり想像しているものとは趣の異なる傑作が思いがけず現れました。 キリマンジャロの雪を初めて読んだ時と同じくらい、深く感動しました。 最後のスマイリーの語りなど、現代のロシアの暴走の真っ只中を生きる我々には深く考えさせられるものがあります。 スマイリーは、そしてル•カレは、このような世界の展開を予見していたのではないでしょうか? | ||||
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ル・カレの『影の巡礼者』(1990年)を読んだ記憶がなく入手して読むことにした。 情報部新人研修所チーフのネッドが新人たちへ講師として隠遁生活しているジョージ・スマイリーを招くところからこの物語は始まる。 講義を終えたあと図書室の暖炉の前でスマイリーを囲んだ新人たちが、コニャックを手にしたスマイリーの語る世界に耳を傾ける。 スマイリーの語ることからネッドがスパイとして働いていた昔を思い出し、ネッドの回想録として語る11篇のエピソードで本書は構成されている。 ネッドの語る11のエピソードは、ル・カレならではのエスピオナージ短編を読ませてくれた。 評者が最も印象に残ったのは、カンボジアのジャングルで消息を絶った諜報員ハンセンの話であった。 カンボジアのジャングルでロン・ノル政府軍と激しい戦争を展開していたソルボンヌ出のクメール・ルージュたちのトップに立ったポル・ポト派が、ジャングルでゲリラ活動していたころの話である。 このエピソードの主人公ハンセンは、とある小さな村で隠密に無線でゲリラの拠点などをアメリカ空軍へ知らせるなどの活動をしていた。 サーカス本部にハンセンが消えたとの知らせが来て捜索任務に就いたネッドが探し当てたハンセンの悲しい話は、フィクションなのに、評者にはリアルに感じてしまったのです。 「情報部は地獄に落ちろ」低い声で彼はいった。「西側世界は地獄の底の底まで落ちろ。こんなところまできて戦争し、自分たちの宗教の処方箋を押し売りする権利なんかない。われわれはアジアにたいして罪を犯してきた。フランス、イギリス、オランダ、そして今度はアメリカだ。エデンの子らにたいして罪を犯したんだ。神よ、われらを許したまえ」 と、ハンセンは叫ぶ。 この件をよみながらジョン・ル・カレの世界観が伺えたような気がしたのは評者だけだろうか? 2020年12月12日、89歳で冥府へ旅立ったル・カレを偲びながら『影の巡礼者』を、興味深く読み終えました。 | ||||
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主人公は一人称のネッド、もと英国諜報部ロシアハウスチーフ。彼が元上司でサーカスの伝説的存在であるジョージ・スマイリーを新人研修の講師に呼ぶことで物語は始まる。物語と言っても、スマイリーの話す、示唆に富んだスパイたちのストーリーが中心だ。ネッドが主人公の物語が殆どで、ルカレの作品に出てくるカーラや、どうもリトルドラマーガールのモデルのような女性が出てきて、それだけでルカレファンにはたまらない。まるで連作の短編集を呼んでいるかのような作品群はどれもさすがルカレの作品、それぞれが立派な純文学といってもいい。その分、ストーリー展開の面白さにはかけることは否めないが。諜報部の下請けで働く者達、いわゆるジョーたちの物語はせつなく、悲しく、そして滑稽だ。スマイリーが最終章で語る、ロシアという熊に対する考え方も極めて示唆的だ。 | ||||
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It was first introduced to me by our teacher, as the first choice to read during the summer vacation. Once I`ve picked it up,I found that I could hardly put it down. It was amazing! | ||||
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